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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第48話


「芽生える不信(前)」  大浴場。今は特に3-Aの生徒で貸し切り状態だった。
 大河内アキラもその一人だ。その胸元には、普段は服で隠されているネックレスがある。
 剣にも見えるし、十字架にも見えるそれは、鎖でぐるぐると雁字搦めにされていて、普段アクセサリーの類をあまり使わない彼女が着けているせいか、特に印象が強い。
「ね、アキラ。前から聞こうと思ってたんだけど、そのネックレスどうしたの?」
「ん、これ?」
「そ。お風呂にまで着けてくるなんてさ、かなり気に入ってるみたいじゃん。もしかしてプレゼント?」
「うーん……」
 どこまで言っていいのだろうか。ふとアキラは考える。
 このアクセサリーは、装飾品という意味合いが薄い。普段から肌身離さず着けているのも、春の経験故、士郎の助言故だ。
 大浴場は、かつても一事件あった場所なので、どうにもこの魔除けのお守りを離す気にはなれなかった。
「うん、貰い物なんだ。お守り代わり」
「へぇ。もしかして男?」
「ち、ちがっ。違うって! これはその、そういうんじゃなくって……」
 そういうの、というのが何を指しているのかも分からないまま、アキラは言い訳染みた言葉を口にする。
「そっかそっかー。ついにアキラにも春が来たかー」
 照れなのか、赤面して黙り込む。湯あたりにしても早すぎだ。
「で、誰なの? もしかしてネギくん?」
「ネギ先生は……可愛いと思うけど」
 好奇心、なのだろうか。そう、少しだけ自問してみる。
 大河内アキラにとって、衛宮士郎がどういう存在か。それは一言では言い表せない、複雑な関係だ。そうなってしまった。
 魔法。夜の世界。アキラたちが知らずとも良い、知らない方がきっと幸せでいられた世界。
 それを、アキラは知ってしまった。
 魔法を、その真実を、アキラは忘れる事も可能だったのだ。全て忘れて今まで通り、何も知らないまま、夜を知らないまま、日の当たる世界で生きていれば良かった。
 でも、それをしたくないと、覚えていたいと思ったのは……その理由は、少しだけ変わってきているのかもしれない。
 修学旅行で何か事件があった事を、アキラは感づいていた。実際、士郎が記憶を失ったという話を聞いてその確信を深めたわけだが。
 知っているだけで何もできないというのは思いの他大変な事ではあったけれど、だからと言って士郎との約束を反故にしてまで力を求めようとは思えなかった。
 努力さえすれば、その力を持てるとしても。それでは意味がないのだと、それぐらいの事は分かっていた。
 ネギが魔法使いである、という事も知っている。魔法という存在さえ知ってしまえば、何故今まで気づかなかったのか不思議なくらいに、ネギの周りには魔法関係のトラブルがあった。
 何となく、ネギを目で追っていたのは確かだが、それは状況を知るためという意味合いが強い。
 知っている事。分かっているだけでも、できる事はある。それを実証する為に、どんな小さな事でも気づけるようになっておこう。
 そこまで具体的に考えていたわけではないけれど、士郎の秘密を知り、魔法というものを知ってから、アキラは飛躍的に洞察力を養っていた。
 例えば。
 四天王の強さとか。エヴァンジェリンの特異性とか。明日菜が魔法の存在を知っている事とか。のどかの持っているカードが、魔法関連のものであるとか。オコジョは喋るものなのだとか。最近、夕映あたりも怪しいな、とか。
 朝倉とはアルトリアで会っていたから、互いに魔法についての理解がある、という事実は知っていたけれど、あれから特にその話題を出した事はない。何ら変わりがないから、きっと朝倉も士郎と似たような約束をしたのだろうと、勝手に想像していた。
 その事に関して、少しばかり思う事はある。けれど、こうして浴場で見かければ分かる事だが、朝倉の胸元に魔除けのお守りはない。それらしき装飾品を身につけている姿を見かけた事もない。
 それが、何となくアキラに優越感をもたらしていた。自分が特別なのだと感じる事ができたから。それがイケナイ事だとは思いつつも、特別である自分を嬉しく感じていた。
 だからアキラは自問する。自分は士郎にとってどういう存在なのか。自分にとって士郎はどういう存在なのか。
 答えは出ない。出したくないのかもしれなかった。
「恩人から貰った記念品なんだ。だから、失くさないようにいつも着ける事にしたんだよ」
 ま、取りあえず現状、そこが終着点だった。アキラも明確な答えを出さない現状に納得しているし、その答えを見つけたいわけじゃない。
 ただ、ぼぅっと考えてしまう事があるだけで。本当に、ただそれだけの事。
 やがて、アキラのアクセサリーに関する話題も流れていった。美肌効果とか小顔効果とか、実に女子中学生らしい話題に。いや、アキラのアクセサリーもまた、色恋という見方をすれば女子らしい話題なのだが。
 閑話休題。
 唐突に。アキラはその異変に気付いた。
 周りではクラスの皆がぬるぬる君Xとかがどうのと騒いでいて、アキラもまたその騒ぎからそう遠くない浴槽の中に居たのだが。
「ナ、ナニ!?」
 ぐにっと。何だか柔らかいものを掴んでしまった。声がしたから慌てて離してしまったが、よく見ると小さい女の子が浴槽の中を泳いでいる。
 直感的に、或いは経験的に。コレが、魔法に縁のあるモノだということはすぐ分かった。
 明らかに透明で、こんな生き物が他に存在するはずがない。騒ぎもコレが原因なのだろうと推察し、一瞬だけどうするか迷う。
 自分の身だけ考えるのならば、取りあえずこの場を離れ、士郎に連絡するのが最上の手だ。後は士郎が何とかしてくれるだろうし、それこそアキラが魔法を知っている意味でもある。
 けれど、この場にはたくさんの友達がいた。
 仮にこの生物が皆に害を与えるようなモノだとすると、自分だけが逃げると他の皆が被害を受けるだろう。
 では、何かがいるから皆離れて! と叫び出したらどうか。この場合の問題は、この生き物が皆を纏めて“消して”しまえる可能性だ。
 魔除けの札が効力を発揮するのはアキラに対してのみ。そうなってしまったらアキラにはどうする事もできず、士郎に助けを呼ぶのも間に合わない。
 なら、今アキラにできるベターは何か。それは。
「っ!」
「ぐにっ」
 意を決して手を伸ばす。偶然ではなく、今度は意識してその生き物を掴んだ。
 そう。アキラの選択は、今彼女自身がこの生き物を捕まえる事。
 害がなければそれでいい。何度だって謝り倒して、士郎の判断を仰げばいいのだから。
 もしも害があるとしても、一番安全なのは魔除けを持っているアキラだ。仮にアキラがやられたとしても、周りのクラスメイトは異変に気付いてくれるだろう。
 不用意に近づいてくる子もいるだろうが、それにしたって結局この生き物が武力手段で訴えてきた場合には早いか遅いかの違いでしかない。
 まぁ尤も。アキラの思考はそんな損得まで考えていたのではなく、単純に自分が捕まえるという選択肢が一番皆が安全であると判断したからだ。
 友達と一緒に逃げられるように。魔法というものに対する知識は、友達を守るために使うと決意したアキラだから、自分だけ逃げる事はできない。
 後で士郎にどれだけ怒られようとも、これだけは譲れなかった。
「チッ、コノ、離しヤガレ!」
「ごめん、暴れないなら離すけど、君たちの目的は……」
 と、最後まで言う前にもう一匹のスライムが動いた。背後から覆いかぶさり、アキラを捕えようとする。
 しかし魔除けに触れた途端、電撃でも食らったかのように弾かれた。
「ググ、コイツ、マジックアイテムを持ってるゾ」
「切り離せばいいだけデス」
 手をブレードのように変えて、少女の形をしたスライムはアキラの胸元目がけて斬りつける。アキラも必死に避けようとするが、もう一体が固く捕らえられて身動きがとれない。
 ポチャンと、魔除けの守りは湯船に落ちた。もうアキラを守るものはない。呆気なく、悲鳴さえ上げられずに、アキラは囚われの身となった。

















 ディストとか言う悪魔は、殺気こそ鋭かったものの自分から動くような事はしなかった。
 二人を包囲する三人の、いや三匹と言った方がいいか。ディストの部下であるだろうところの彼らは、愚直なまでの正直さで突っ込んでくる。
「士郎!」
「心得た」
 士郎とタカミチが前衛と後衛を入れ替えた。タカミチは一歩下がり装備を整え、士郎は双剣を地面に突き刺し、弓を構えて迎撃する。
 超人的な速射。もはや斬撃にさえ見えてくる剣弾は、三方向から突進してくる魔族全員を阻んだ。いや、阻むどころか縫い付けている。
 足を。または腕を。肩を。急所だけは上手い具合に外し、しかし行動の自由を封じていた。
 士郎がその気になれば、この攻撃でそのまま送り還す事もできただろう。剣弾の格さえ上げれば、そのまま消滅させる事もできるに違いない。
 が、今回士郎の目的は現段階のタカミチの魔術がどの程度魔族に対してダメージを与えられるのかを確認する事だ。
 最終的には親玉を締め上げ、今回の襲撃の目的と召喚主について吐かせる事ではある。しかし、今優先すべきはタカミチの魔術のサポートだ。敵の打倒ではない。
 士郎は後で準備していたタカミチを視界の端に収める。タカミチは既に武装・技法ともに準備が終わっていた。
 武装とは言うものの、タカミチの装備は複数のタリスマンにやたらとごつい革手袋だ。
 そのグローブは分厚い。力を籠めてようやく握り拳を作れる程度で、とてもポケットには収まりきらない大きさだった。
 それに、グローブには刃のように鋭い鱗のようなものが多数ついている。仮にポケットに入ったとしても役に立たないだろう。
 つまり。この装備を用いる以上、タカミチの攻撃手段に居合い拳はない。
 そもそも居合い拳とは、初動を隠すことで相手の体感速度を誤魔化す為の技法だ。かつて、魔術回路を得る前の、咸卦法を用いていた頃の居合い拳も完成形ではなかった。
 そして新技法は居合い拳との相性が悪い。だからタカミチは今回、居合い拳を完全に無視することにした。自分の今までの戦闘スタイルを捨て、今新しく構築しているスタイルのみを用いるのだ。
 タカミチの構えは至って平凡なファイティングポーズ。平凡であり、何の特殊性も持たないからこそ隙がない。
 まして、士郎の剣に縫いとめられ身動きが取れない魔族たちに、その拳に抗う術はなかった。
「破ッ!」
 爆発のような瞬動。魔族に分かったのはそれだけだった。荒々しく、静けさなど皆無であるはずなのに、タカミチの気配は魔族にとって唐突に感じられてしまう。
 そして、痛みさえも遅れてやってきた。
「ナ、ニガ?」
 拳は貫通している。血こそ流れていないものの、その痛みは想像を絶するだろう。魔族であるからこそ死を免れているというだけで、人間が食らえば即死は確実となる一撃だ。
 だが、それだけならばまだまだ咸卦法を、居合い拳を用いていた頃の方が遥かに強い。タカミチの修行の成果はここからだった。
「Du brennst(汝は燃えゆく)」
「グ、ガアアアアッ」
 魔族の腹を貫いたその拳から、魔術は成った。
 炎という程派手ではない。火というにも何か違う。それは、燃えるという現象そのものだった。
 少しずつ、けれど確実に。焚き火よりも小さなそれは、魔族を体の内側から灰にしていく。
 耐えきれず、その魔族は本来の姿を見せる間もなく退場した。
「まず一体」
 タカミチの視線が次の獲物を探す。それを察知した残りの二人は、即座に人の殻を捨てた。
 片方は巨鬼のような外見で、上半身と下半身のバランスが悪い。もう片方は細身の骸骨、スピードタイプであるように見えた。
 どちらも人よりは大きい形態を取ったからか、士郎の剣による束縛が外れる。
 二体は一斉にタカミチを目指し突進してくるが、この時タカミチへの士郎の援護はなかった。
 残る最後の一体、ディストが動いたからだ。無言で、静かに、まるで暗殺者のようにひっそりと。
 タカミチはこの動きに気付かなかったのか、単に士郎を信頼しているからなのか、自分を標的とした攻撃に見向きもしなかった。
 光線系、或いは範囲系の魔法は士郎にとって防ぎ難い種類の攻撃だ。避けるのならば容易くとも、防ぐとなると士郎は弱い。一応最上級の守りを持っているとしても、投影に一瞬の隙を必要とする以上この場での使用は危ぶまれた。
 故に、士郎が取った行動は先を潰す事。魔法が成る前に攻撃する。一瞬でも遅れたら大打撃となる、一か八かの賭けだ。
 だが、士郎は絶対の自信を持ってその右手を斬りつける。慌ててディストは手を引っ込めた。
「なるほど、彼らが危険視するわけですな!」
「その“彼ら”とやら、洗いざらい吐いてもらおうか」
 剣戟は舞のように、一撃二撃三撃と。二刀が絶え間なくディストを襲う。
 それら連撃を魔力をまとった拳で、或いは障壁でいなしながらディストは魔力を高めていく。
「カッ!」
「くっ」
 ディストの放った衝撃波   いや、風圧か。士郎は剣を交差し身構えるも、僅か及ばず吹き飛ばされる。
 体勢を崩すことはなかったものの、空中では無防備だ。そこに、容赦なく魔力を溜め込んだ一撃が放たれる。
 だが。
「甘いな」
 虚空瞬動。
 字の通り、空中において瞬動を可能とする技術だ。そもそも士郎は瞬動からして完全に体得したとは言い難く、実戦でも使わない。
 タカミチからアドバイスを受けつつ、ようやく形になったのもつい最近の事だ。不確かなモノではあるが、この状況においてはそれが最も可能性の高い選択であると判断し、士郎は迷うことなく実行したのだ。
 結果、それはこれ以上無いほどの完璧な成功を見せ、士郎はディストの背後に回り込む。
 しかし、敵もさるもの引っ掻くもの。士郎の一閃に対して逆に反撃までしてみせた。
 だが、その対応力が逆に仇となった。いや、これは素直に士郎の策を称賛すべきか。
 士郎がディストの背後から繰り出した攻撃は“一閃”。つまりは一刀、夫婦剣の片割れのみ。それが意味するものは。
「ぐうぅっ?!」
 ぐさり、と。全く意識しない、有り得ない角度から莫耶が突き刺さった。
「これは、一体」
 あの虚空瞬動の一瞬、士郎は同時に莫耶を上に放り投げていた。背後に周り、それでも決定的な一撃を加える事が出来なかった時の為の保険として。
 夫婦剣の互いに引かれ合うという特性を利用した。背後からの攻撃に対応し、対応できてしまったが故にできた最上の隙を、油断なく如才なく刺し貫く為に。
 そしてその目論見は成功した。が、それだけではまだ高位の悪魔を滅ぼせるような一撃ではない。
 莫耶が更に上格の、聖剣魔剣の類であったのなら、或いはこの一撃で勝敗は決していたかもしれないが、もしもを語っても意味はない。
 故に、士郎は更にその隙を攻め立てる。腕を斬り落とし、更にもう一刀を胸に突き刺し、ディストが人の形を保てなくなったと見るや、即座に距離を取った。
 そして、今度こそ決定的な一撃を。
 
 壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 爆発。轟音。そしてチラチラと燻ぶる炎。
 森の中だから、普段なら火事が心配ではあったが、雨のおかげでとりあえず問題ないようだ。
 煙が晴れた先には、元の姿   角を生やし牙を持ち悪魔の翼を広げた   悪魔らしい姿があるはずだった。
 しかし実際はどうだ。胴体はかろうじて繋がっている程度であり、角は折れ、翼はもげている。
 かろうじてその牙だけは無傷であったようだが、そんなものは些細な事だ。
 勝敗は決した。ほぼ不死身である悪魔であろうとも、この状態からの回復には時間がかかるだろう。
「口は開くかね?」
「カ、カカッ。ここまで私を滅ぼしておきながら、尚も口を開けとは非情なものですな」
「ふん、加害者の言うことになど聞く耳持たん。それで、この襲撃は誰の命令だ?」
 士郎たちの背後、それほど離れていない場所で、未だタカミチと他二体の戦いは続いている。
 士郎もまた、タカミチを信頼しているのだろう。特に背後の戦いを気にした様子はなかった。
「私もまた、乞われ喚ばれ契約した身。悪魔とは、契約を重んじるものなのです」
「口を割るのなら見逃してもいい、と言ったら?」
「くどいですな。今の戯言は聞かなかった事にしましょう」
「そうか」
 士郎は一瞬だけ躊躇して、ある剣を投影した。聖剣として名高い一振りだ。
 およそ聖剣聖槍の類というものは、悪魔魔族の魔を冠する夜の住人には強力な効果がある。そう、その存在そのものを滅ぼしてしまう程に。黄金の輝きは、闇を照らしつくし一片の存在も許さない。
 振り下ろし、刎ねる。瞬間、その体は灰と化した。
 完全に消滅した、と断定はできないものの、おそらくはもう復活することもないだろう。
 少なくとも、再び士郎の前に立ちはだかる事はあるまい。
「さて、タカミチの方はどうなったか」
 一瞬で感傷を捨て去り、士郎の足は再び戦場に向いた。





「これで終わり、かな」
「ああ、そうだな」
 士郎の援護もあってか、タカミチは容易く最後の一体を燃やし送還した。
 士郎がディストを倒した時点でタカミチも既に残り一体に王手をかけている状態であり、駆け付けた士郎の一射が決め手となってあっさり戦闘は終了した。
「どうだ、手応えはあったか?」
「そうだね。まだまだ要改良ってところかな。士郎が倒した方の、ディストだったっけ? あっちだとかなり苦戦しただろうからね」
「ふむ。今のお前だと、乱戦の方が一対一より向いているか」
「そうかい? まあ、今回も各個撃破しただけだからね。そう変わらないと思うけど」
 二人のレベルで、二人の汎用性ならば、向き不向きは然程問題にならない。乱戦、一対多の戦いであっても、結局のところ一対一のスパンを繰り返すだけであって、短い瞬間であっても一対一に持ち込む事ができるスキルがあるからだ。
 だから、今回の戦いにおいて、士郎とタカミチの配役を入れ替えたとしても、結果は変わらないだろう。
 違いがあるとしたら、送還されるか否か、というぐらいのものだ。
「士郎どのっ」
「長瀬か、どうした?」
 まさしく忍者、というような装いで登場したのは楓だった。すたっと着地すると同時、周囲の状況を確認する。
「こちらは既に終わっているようでござるな」
「こちらは? 別働隊がいるのか」
「そうでござる。今ネギ坊主たちが戦っているでござるが……」
「分かった。タカミチ、後処理を頼めるか」
「それは構わないけど……楓くん、あっちにはエヴァもいるだろう?」
 楓が頷く。エヴァンジェリンは学園結界と直結している。そういう契約、そういう呪いだ。呪いに制約を付け加えたのは後になってからだが、ともかくエヴァンジェリンは学園結界の管理システムを経由する事なく境界越えを感知できる。
 今回の侵入者はかなりの実力者だ。感知に対する対策も持っていただろうが、それでもエヴァンジェリンに全く気付かれないというわけにはいかない。
 というのが、タカミチの見解だった。
「士郎、君がわざわざ姿を見せる必要はないんじゃないか?」
 確かに、エヴァンジェリンならば上手くやるだろう。ネギたちが勝利するにしても、敗北するにしても、だ。
 士郎の情報というのは、味方においてさえ重要視されているように、麻帆良の外においては特に貴重なものになっている。
 京都での一戦により多少緩和されたとは言え、未だ衛宮士郎という男は不透明であり、真偽の判断がつかないような噂が蔓延していた。
 知る人ぞ知る。事情通のみに知れ渡っている程度だが、だからこそその情報の精度が問題視されている。
 衛宮士郎というのがどのような者か、それを知りたがっている勢力は多種存在するだろう。
 ただでさえ、今回の件に関しては士郎は後手に回っている。
 少なくとも、ディストたち魔族を打倒し得る力を持つ、という事は、彼らを召喚した者たちには知られてしまうのは確定。
 ならばこれ以上、士郎の情報を渡してしまうリスクを持つぐらいならば、極力不干渉を貫いた方がいい。
 今の麻帆良での立ち位置としても。今回は、ネギたちの方にも刺客が差し向けられているおかげで、こちらの襲撃に関してはある程度誤魔化せるだろう。
 楓と、エヴァンジェリンが黙っていればいい。結界の管理システムに感知されているのなら既に手が打たれているだろうし、その可能性を考える必要はなかった。
 つまり、このまま無視を決め込むのなら、士郎が受ける損害は最小で済む。
 だがしかし、ネギたちの救援に向かって学園内の注目を受けたのなら、こちらの襲撃も感づかれる。そうなれば、また厄介な事になるのは目に見えていた。
 『衛宮士郎がいたから、襲撃があったのではないか』
 その考えは事実だろうし、士郎が危険を呼び込むというのが立証されてしまえば麻帆良での立場を失う。
 タカミチの目算では、この方法での襲撃が上手くいかないという事が分かってしまった以上、再度の襲撃はない。けれど、それは確証のない推察だ。
 学園長は納得してくれるだろうが、京都の件などで風当たりの強い今、ガンドルフィーニたちが納得してくれるかどうか。
 万難を排するのなら、動かない方がいい。それは自明の理だった。しかし。
「そういうわけにもいくまい。狙いが俺だと言うのなら、早めに芽は潰しておかねば。内敵よりはまず外敵だ、タカミチ」
 裏切られるのには慣れているからな、と。
 そう、タカミチにだけ聞こえる声で、士郎は言った。
「できればそうしてもらえると有り難いでござる。あちらはアスナ殿以下、千鶴殿や大河内殿などが捕まっている故」
「何? ……タカミチ、どうやら無視はできなくなったようだ」
「そうみたいだね」
 明日菜以下、他の生徒についてはともかく、士郎はアキラについては保護責任がある。魔法を知った生徒に対する責任。
 そこには、その生徒が魔法を触れ回らないという事だけでなく、その生徒への安全も含まれる。
 救出は、必要不可欠だった。
 そして何より、生徒が危険な目に瀕しているのを捨て置ける男ではない。士郎も、タカミチも。
 むしろタカミチだって我先にと飛び出したいぐらいだ。
 しかしタカミチはエヴァンジェリンを信頼していたし、何より士郎が出向くというのなら自分の出番はないだろうと考える。
 タカミチもまた、不用意に自分の情報が漏れる行為をするわけにはいかないのだし。
「なら、後は頼んだ」
「ああ、任せてくれ」
「よし、長瀬。案内を頼む」
「承知!」
 そうして、二人は戦いの場へと急行した。
 


















「連れてきたでござるよ」
「フン。随分早かったな。流石というところか」
 エヴァンジェリンは士郎と視線を合わせず、独り言のように口にした。
 早い、というのはここに来るまでの時間ではなく、ディストたちを倒すのに要した時間の事だろう。
「それより戦況はどうだ?」
「何、今のところ坊やが押されている。このままでは勝ち目がないな」
「上位悪魔が相手なのか。ならば善戦している方だろう」
「フン、敵も手加減している。それで善戦程度では意味がない」
 とは言うものの、今のネギたちが上位悪魔の本気と対したら数秒持つかというところだろう。その後に待っているのは敵の目的次第だが、最悪の場合死だ。
 とても、こんな風に悠長に観戦している場合ではない。
「援護に入るぞ」
「待て」
 エヴァンジェリンが士郎を押し留める。
 士郎は単純に、今のエヴァンジェリンがこの戦いに介入できるだけの戦力を持っていないから、こうして観戦しているだけなのだと思っていた。
 茶々丸を投入しないのも、真祖の吸血鬼、魔の最上位に当たる彼女の監視を悟られない為だと。
 だから、この制止の意図が掴めない。まさか、弟子が死んでもいいと考えているわけではあるまいに。
「何故止める?」
「決定的になってからだ、割って入るのはな。勝利にせよ敗北にせよ、結果を生まねばこの戦いに意味はない」
 つまり、エヴァンジェリンはこの戦い、命を賭した戦いをも修行として見ているという事だ。
 師として、弟子の成長の為、敢えて見殺しにする、と。ここで死ぬならそれまでの者なのだと。
「生憎と、今回は私も当事者であり被害者だ。君の制止ぐらいで止まるわけにはいかないな」
 士郎の視線が向かうのは、水牢に囚われたアキラの姿だ。他にも、明日菜や刹那、おそらくは魔法を知っているのだろう生徒たち。
 那波が何故捕えられているのかは疑問だったが、士郎は彼女らを救わずにはいられない。
 アキラに対する保護責任などとは関係なく、衛宮士郎という人間の在り方として。
 故に一歩を踏み出す。戦場へと歩き出す。
「チッ。ならば取引だ。貴様刀を打つと言っていただろう。二つ目の条件は破棄する」
 忌々しげにエヴァンジェリンは吐き出した。
 士郎は先日、エヴァンジェリンとある取引をした。それは、刀を鍛える為の場所を提供してくれ、というもの。
 『アルトリア』の地下室では設備が足りなかったし、エヴァンジェリンの別荘の中ならば時間を気にせず作業に打ち込む事ができる。
 利点は多かったが、その分条件も出されていた。
 一つ目は、ネギの修行の邪魔をしない事。ネギが修行している間は別荘を訪れないというものだ。
 そして二つ目が、士郎の目的である刹那用の刀だけでなく、茶々丸用にもう一本剣を鍛える事だ。
 出来る限り自分の情報を漏らしたくない、特にその刀剣類については使用者を見定めたい士郎としては、あまり受け入れたい条件ではなかったのだが……。
 一応、士郎なりに茶々丸は信用できたし、エヴァンジェリンとてどうせこの学園に縛られている以上、大したことはできないだろうと了承していた。
 だが、材料の問題など多々面倒な事はある。できれば避けたいというのは事実だったし、この条件が解消されるのは素直に有り難い。
 しかし、この取引に意味はなかった。衛宮士郎という男が、自分の負荷と他人の命を天秤にかける事はないのだから。
 だが。
「よかろう。君に免じて、今は介入しない。ただし、万が一の時は手遅れになる前に消すぞ」
 士郎の手には黒塗りの大弓。番えられる矢は明らかに強力な一振り。
 ネギは士郎にとっても大切な存在だ。ネカネから託されたというか、お願いされている身だからというのが一番の理由だが、アルからの依頼もある。
 今回の一件も、士郎と同時にネギが狙われているのなら、何らかの繋がりはあるのだろう。
 となれば、今ネギが消えるのは士郎にとっても都合が悪かった。
 尤も。いくら面倒を装ったところで、エヴァンジェリンとてネギが死ぬのを望んでいない事ぐらい士郎だって分かっている。
 だから、その意思を慮る心配りを見せたのだ。これが妥協点だろう、と。
「仕方ないな。ギリギリまで待てよ」
 愚痴るように零すエヴァンジェリンに、茶々丸が相槌を入れる。
「良かったですね、マスター。これでネギ先生は安全です」
「何がいいものか。まったく、坊やのせいで余計な取引をする羽目になった」
「しかし、士郎さんが来られるまでは内心ハラハラ半ばオロオロで見守っていたではありませんか」
「茶々丸……いい加減その方向の突っ込みはよせ。今は割と真面目な話をしているんだ」
 と、そんな会話の中でネギたちの戦いが動いた。
 対する上位悪魔が、顔の部分だけ本来の形を見せる。それにどんな意味があるのか、士郎には分からなかったが、結果は一目瞭然だった。
 暴走だ。爆発と言ってもいい。
 ほぼ完璧な瞬動、圧倒的な打撃、今までのネギと同一人物とは思えない圧倒的飛躍。
 冷たく、けれど激しく。冷静に狂っている。
 こういう手合いがとことん厄介だと言うことを、士郎は知っていた。そして、それ故の脆さも。
 士郎が発射体勢を整える。目まぐるしく位置を変える二人を、一瞬たりとも見失う事無く常に照準を合わせておく。
 こうなれば、或いはネギたちの勝利もあり得た。だが、逆に崩壊するとしたら一瞬だ。その一瞬を見逃さないように、士郎は目を細める。
 そして、その瞬間は呆気なく訪れた。ダメージを受けたからなのか、敵の上位悪魔はその真の姿を晒し、確実に決め手となり得る魔力の高まりの後、光線を放とうとする。
 士郎の眼には、暴走しそのまま突っ込もうとするネギも、そのネギを無理やり押さえつけようと駆け付ける黒髪の少年の姿も、はっきりと映っていた。
 少年が間に合うだろう事も理解していたが、悪魔の攻撃範囲によってはネギはともかく黒髪の少年は危ない。
 故に士郎は念の為その一射を放つ。直接悪魔を狙うわけではない。その口元、光線が発射される砲台、砲身を射抜く。
 風圧か、もしくは剣弾の威力なのか。石化光線は一瞬で打ち消された。おそらくその事に気付いたのは当の本人、悪魔だけであったろう。風圧は、近くにいたネギたちにも等しく降りかかっていたから、それを攻撃と勘違いしても、おかしい事は何もない。
 そして、ネギたちの反撃はそこからだった。水牢に閉じ込められていた木乃香たちの脱出を切っ掛けに、不安材料がなくなったからか、とても即興とは思えないコンビネーションでネギたちは悪魔を撃破した。
 その手並み、確かに才能が感じられる。尤も、ネギのみに関して言えば、やはり先程の暴走状態こそが、恐ろしいまでの才能の片鱗ではあったのだが。
「もう、いいだろう? エヴァンジェリン」
「ああ。私が見ていた事は坊やには言うんじゃないぞ」
 そう言って、エヴァンジェリンも消えた。後処理は士郎に任せる腹なのだろう。
 士郎も、アキラが心配だったので現場に急ぐ。突然現れた士郎に生徒たちは驚いたが、朝倉だけはどこか納得した様子だった。
 それに、今はまだ殆どの眼がネギと悪魔を追っている。その会話に聞き耳を立てながらも、士郎は大きめの毛布を投影しアキラに与えた。
「その、すみません、士郎さん。私また……」
「詳しい話は後で聞こう。どこか痛いところはないか?」
「大丈夫、です。それより、」
「すまない、今はあちらが先だ」
「あ……」
 最低限の気配りを見せた後、士郎はネギと倒れている悪魔の元へ向かう。


「どうかな? やはり私はまったくの悪人かもしれぬぞ。何せ、悪魔だからねぇ」
「……それでも。僕はトドメを刺しません」
 ネギの答えに、悪魔は笑った。その甘さが滑稽に思えたのか、そんな甘い者に敗れた自分自身に対する物だったのか。
 しかし、その笑いは唐突に途切れた。
「悪いが。私はトドメを刺させてもらう」
 グサリ、という擬音が聞こえてきそうな程に、その剣は深く深く突き刺さった。既に消えかけていた悪魔を磔にし、強制的にその場に留めてしまうくらいに。
「エミヤッ、シロウかっ」
「そうだ。残念ながら、私は貴様を見逃せる程甘くはない」
「く、よもやディストリアテスがこんな短時間で撃破されるとは……噂に違わぬ、という事か」
「滅ぼされる前に言え。召喚主は誰だ? 我々を狙った目的は?」
「フン……ネギくん、コノエコノカ嬢ならば、いずれあの村の住人を治療する事が可能やも知れぬ」
 悪魔、ヘルマンは士郎の事を無視した。
 ディストと同じく、語る事はない、という意思表示なのだろう。
「士郎さん、止めてください!」
「……デュランダル」
 ネギの制止も虚しく、士郎はその剣の真名を呟いた。発動した聖剣は、悪魔の悲鳴と共にその存在を壊し尽くす。
「何で、何でですか、士郎さん。あの人はそんなにヒドイ人じゃなかった! 殺す必要なんてなかったはずです!」
「いいや。アレは悪だよ。少なくとも、君たち人間にとってはな」
「そんな事ない。あの人は人質に危害を加えなかったし……」
「理由にならんよ、そんな事は。悪魔とは、召喚され、契約すれば、その内容がどんなものであれ全うする。この場で見逃せば、いつか何らかの悲劇の種になる存在だ。君は、責任を取れるのか? 奴が今後殺す人々に」
「そ、れは……」
 厳しい言葉だった。
 確かに、ネギの選択も間違いというわけではない。この場で見逃し、あの悪魔がどこで誰を殺したところで、ネギと同じ境遇の人間を生み出したところで、ネギに直接の関連があるわけではない。
 悪魔は道具なのだから。悲劇を生みだす為の。諸悪の根源ではない。悪いと言えば、それは確かに召喚主が悪いだろう。
 だが、だからと言って、回避し得る悲しみを回避しないのは、愚か者のする事だ。
「ネギ、覚えておけ。殺さないという事が、時には最悪の暴力となる。その選択の意味をよく考える事だ。その上で考えた事なら、私も口を挟まない」
 何もかも救いたいと、敵でさえ、悪でさえ救いたいと願ってしまった男の成れの果てが、そんな事を呟くのは滑稽でしかないだろう。
 しかし、夢破れた彼がその人生の終着点で見たものは、そんなありふれた真理なのだ。
 その生き方に後悔がなかったとしても、その結果に満足していたわけではない彼の、身を切るような助言だった。
 それは暗に『自分のようにはなるな』と言っているに等しい。タカミチ辺りが聞いたのなら、一体どんな反応を示しただろうか。
 或いは、まだ騎士王と共に在った頃の衛宮士郎が、今の言葉を聞いたのならば。
「よく悩んでおけ、ネギ。きっといつかまた、同じ選択に悩む時が来る」
 それだけ言い残し、士郎はアキラを連れて去って行った。









アキラ「裸見られたー!」
(拍手)
 
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はじめまして

うぉおおおおおお!やっと更新やー!
てかはじめましてTOKIというものです。
9月に夢破れし英雄を見ましたがネギまのクロスオーバーでこれほどの良作はなかなかありません。
今後の更新も期待しています。

2009.11.18 | URL | TOKI #- [ 編集 ]

Re: はじめまして

あはは、更新遅れてすみません。
初めましてTOKIさん。これからも楽しんで頂けると幸いです……と言いつつも、はたして次の更新はいつになるやら。
番外編を含めて50話以上書いてるのにまだ予定の半分終わってないから、完結するのはいつになるかな。首を長くしてお待ち下さい。

2009.11.18 | URL | 夢前黒人 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

更新キター

いつも楽しみにwktkして待ってます。

就職活動大変そうですが頑張って下さいね。

完結するまで応援してます。

2009.11.18 | URL | なまにく #jYbOzkUY [ 編集 ]

ようやく続きが・・・
楽しませていただきました

2009.11.19 | URL | NoName #- [ 編集 ]


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