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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第4話


「魔術適性」
 その日、タカミチが「アルトリア」を訪れたのは日が暮れた頃だった。
 タカミチはいつも事前の連絡もなしにふらりと現れると、食事がてらに小一時間ほど雑談をして帰ることが多かった。
 基本的には今のように店が閉まってからの来店で、だからこそ訪れる時間だけは決まっていたのだが。
 ここ最近は、報道部の朝倉という子の広報活動のおかげでまともに喫茶店として機能しており、そこそこお客も増えていたから、タカミチとの会話の内容を考えると閉店後に来てくれる方が助かるので文句はない。
 ただ、いつもと違ったのは、彼から血の匂い……いや、戦いの残り香のようなものを感じたところだ。
 それが、たまらなく嫌な予感を掻き立てる。

「今日は何かリクエストあるか?」
「いや、食事はもうとって来たよ。だから、コーヒーを貰えるかな」
「了解」

 いつもなら、コーヒーを淹れている間にも適当な雑談で時間を潰していたものだが、今日はそれもなかった。コポコポという音だけが静かに響く。

「ほら」
「ん、ありがとう」

 タカミチはコーヒーを一口分含み、ゆっくりと味わう。ただ、普段はないその動作が、迷いのように感じられた。

「何かあったのか?」
「まあ、ね。いつものことではあるんだけど、ちょっと自分の力不足を痛感しちゃってさ」

 目の前にある命を救えないほど、辛いことはないとタカミチは零す。それは、俺にも共感できる思いだ。
 そう、痛いほどに。或いは、悲しい程に。

「誰でもそうだろう。全てを救うことなんて、人間にはできやしないんだ。例え、英雄であってもな」
「そうだね。ナギさんにも、救えないものはあった」

 タカミチは、噛み砕くように呟いた。いつか、彼らが守れなかったものを思い出しているのだろうか。
 ……俺のように、英雄になっても救えなかった人たちを。英雄であるからこそ、守れなかった者たちを。

「タカミチ、何を迷っているんだ?」
「迷っているように、見えるかい?」
「ああ。今のお前は、前を向いているようには見えない」
「でもね、士郎。たまには後ろを振り返ることも大切だよ。でないと、何を守るべきかも定まらなくなる」

 その言葉は、胸に深く突き刺さった。
 何を守るべきか。何を守りたかったのか。
 俺は結局、何一つ、誰一人……そう、いつまでも自分を想ってくれた姉さえも――――。

「至言、だな。耳に痛い。でも、俺にはもう遅い言葉でもある……」
「それは、君の守りたい人がこの世界にはいないからなのか?」
「そうでもあるし、それだけでもないな。俺は、もうとっくに一番守りたかった人を失ってる。
 だが、だからこそ、俺は前を向いていなければならない。
 彼女が望んだ俺であり続けるために、後ろを振り返る余裕なんてない。
 振り返るのは、死ぬ間際の走馬灯で十分なんだ」

 そして、カウンターで向き合ったまま、お互いに黙り込んだ。
 タカミチも俺に言いたいことがあるんだろう。それでも、という思いは、分からなくもない。
 ただ、俺は未だに自分の幸せというものがよく分からない。幸福が心地よいと感じない。
 だから、そう思えるその時までは、彼女たちの事を胸に刻んで生きていこうと決めていた。

「相談があるんだ、士郎」

 たっぷり数分間の沈黙を破り、タカミチは口を開く。
 おそらく、それが本来の目的だったのだろう。タカミチの顔に、もう迷いはなかった。

「君の言う通り、僕らはいつまでも後悔を引きずるわけにはいかない。
 より多くの人々を助けられるように、前に進まなくてはならない。
 でも、僕はそろそろ自分の限界ってものを感じ始めてる」

 俺は、その類の問題を意識したことはなかった。
 そもそも、魔術とは対価次第で己の限界など容易に突破できるものだ。
 アヴァロンという世界最高の防衛・蘇生宝具の投影に成功した時点で、無茶の利子を気にする必要もなくなった。
 凡人だから。常人でなくても、天才ではないから。
 俺は、むしろ自分の限界をよく知っている。肉体が引き出せる限界値においては、だが。
 精神が引き出す限界に、際限はない。あるとしても、それに気づいた時点で全ては終わっている。
 限界を破り、その状況に肉体が慣れて上書きされ、また限界を破り。その繰り返しで、強くなった。
 その度に、白い姉には怒られていたけれど。

「士郎は感じた事はないかい?」
「あるさ。寧ろ、俺の戦いとは自分の限界を打ち破る戦いだ。限界を超えれなければ死、超え過ぎても死が待っていたからな」
「なら、どうやって自分の限界を破って来たんだ?」

 タカミチの眼が輝く。いや、これは意思の炎、とでも言うべきか。その純真さを、綺麗だと思った。

「俺の扱う魔術というものは、限界を超える事そのものは容易いんだ。ある種暴走のようなものだからな。
 ただ、行きすればあっけなく死ぬし、良くても後遺症は残る。俺の髪が銀に染まり、肌が黒くなったのも後遺症の一つさ」
「魔法とは随分リスクが違うんだね」

 平坦な声で、タカミチが感想を述べた。
 確かに、この世界の魔法に比べれば遥かに魔術は危険だろう。使う度に死を覚悟する。
 そんな在り方は、この世界では異常に映るはずだ。

「そうだな。まあ、俺は特に落ちこぼれだったから、余計に危険も大きかったんだが」

 その度に助けてくれた姉はもういない。相棒たる剣の騎士ももういない。
 それでも何とか生き延びていることを考えれば、ようやく自分も一人前になれたのかもしれないと、ふと思う。

「その魔術。僕も使うことはできないだろうか?」

 唐突というわけでもなかったし、寧ろ会話の流れを考えるのなら当然の質問だったのかもしれない。
 タカミチは、先天的に魔法が使えないと聞いた。そのハンデを、弛まぬ努力によって埋めているとも。
 察するに、タカミチは魔法に対する憧憬が大きい。
 そして何より、伸び悩んでいる自分の目の前に、扱えるかもしれない『魔法』があったとしたら、手を伸ばすのが当然でもある。

「タカミチ、その疑問に答える前に、もう少し魔術というものについて説明しておく必要がある」
「聞くよ」

 タカミチは真剣な瞳のまま、即答した。俺もそれに応えるように説明を開始する。

「まず、魔術とは基本的に魔術回路と呼ばれる体内の疑似神経を介して行われる。
 これは大気中のマナを自分の魔力に変換すると共に、こちらの魔法における発動体の役目も果たすんだ。
 つまり、この魔術回路がなければ魔術は使えない」
「それは、誰でも持っているわけではないという事だね?」
「そうだ。そして生まれつきその本数も決まっている。俺の場合は27本。初代の魔術師としては破格だが、普通の魔術師よりは少し少ない程度か」

 もっとも、衛宮になる前の士郎という少年について、分かっていることは何もない。本当に初代なのかどうかも判然としないが、少なくとも魔術師の家に生まれたわけではないことは確かだ。

「なら僕は……僕には、その魔術回路はないのか?」
「一見したところ、無いな。少なくとも、現状タカミチには魔術回路が存在しない」
「現状?」
「そう、現状だ。魔術回路というのは最初隠れている。
 本人でさえ、自分の魔術回路の本数に気づかず生涯を終える魔術師もいるだろうし、ましてやそれが魔術さえ知らない者ならその存在も、な」
「僕も知らずに過ごしていた、と?」

 正直に言えば、その可能性は低い。
 俺は、この世界の魔法を扱えない。技量の問題ではなく、単純に原理の問題。
 どうやら、魔術回路は壊滅的にこちらの魔法と相性が悪いらしい。
 何回かの実験の末分かった事だ。今の所、魔術回路が精製する魔力が問題なのか、魔術回路そのものなのか、俺の固有結界が問題なのか、単純に資質の問題なのか……それは分からない。
 けれど、俺が使えないからこそ、タカミチが魔術回路を持ち得る可能性がある。
 もしも魔術回路が原因で、こちらの世界の魔法が使えないのなら。
 同じように、魔法を使う事ができないタカミチも、或いは同じ原因を持ちうるかもしれない。

「その可能性はあるって事だ。まあ、実際調べるのは簡単だがな。少々手荒な方法になるが……」
「頼むよ、士郎。調べてみてくれ」

 もう、タカミチはどんな事を言っても止まらないだろう。それは分かっていたけれど、言わずにはいられない。
 あらゆるリスクを払ってまで魔術に手を染める必要はない。少なくとも俺はそう思う。
 既にタカミチは十分強いし、己の限界を知っているからこそできる事もある。
 だが。男として、守りたいものがあって、その為に力を欲する。
 その気持ちは、よく分かるから。
 僅かな逡巡の後、結局俺は首を縦に振った。

「分かった。地下の工房まで来てくれ」

 地下の工房とは、鍛練場兼仕事場である。
 アーティファクトショップとしての鍛冶屋『エミヤ』の仕事場であり、魔術使い衛宮士郎の研究結果がごろごろと転がっている。
 まだ麻帆良に来てから一月半。それほどに乱雑ではないが、魔剣の類が整然と並び、一種の結界さえ成していた。
 そんな、麻帆良にとっては異質な空間に、俺はタカミチを連れて来た。

「ここは……」

 タカミチは居並ぶ剣たちのあまりの存在感に、ゴクリと喉をならす。
 その存在感に気付けるのなら、可能性は高いのかもしれない。神秘について、人間ならば本能的に理解し得る部分はある。
 けれど、霊が見える人間と見えない人間がいるように、その認識において差が生じるのは必然だ。
 魔術師として、その神秘により近く在れるのならば、それにこしたことはない。
 万が一が有り得るかと、俺も若干の緊張をはらみながらタカミチに立ち位置を指定した。

「そう、中央に。自分が瞑想しやすい態勢でいい。目を閉じて力を抜いて」

 強敵を前にしたかのような緊張感の中、タカミチは素直に指示に従う。威圧感を前に目を瞑る事に抵抗感を感じたようが、気力で平静を保った。
 俺は座禅を組んだタカミチの背後から肩の辺りに手を添え、一息でその呪文を呟く。

「解析、開始<トレース・オン>」

 瞬間、タカミチに電流のような痺れが奔る。思わず跳ね上がった時には、俺の解析は終了していた。

「心臓に悪いね…」
「手荒だと言ったろう。だが、喜べタカミチ。お前には魔術の素質があるようだ」

 素質。或いは才能。
 それは、タカミチにいつも纏わりついてきた言葉だったろう。
 魔法の才能がないばかりに、何もかもうまくいかなかった。守れなかったものも、失ったものもあって。
 だが、雌伏の時を経て、ついに彼は憧れ続けたその力に手が届く方法を手に入れた。
 その歓喜は、似たような境遇だった俺にも計り知れない。タカミチは、半ば放心するように表情を忘れていた。

「だが。まだ、俺はタカミチに魔術を教えるつもりはない」

 そう、何ら慈悲はなく、ただ冷厳に告げる。
 少しだけ、爺さんの、衛宮切嗣の気持ちが分かった気がした。

「士郎、お願いだ、僕に魔術を教えてくれ! 報酬ならいくらでも、僕にできることなら何だってする!」
「そういう問題じゃない。違うんだよ、タカミチ」

 落ち着け、と言われたぐらいで、タカミチが平静を取り戻せるはずがない。これは彼の人生に関わる、大きな岐路だ。
 俺だけが頼りであり、俺だけが突破口。感情的になっていることを咎められる人間など、いてはならないだろう。

「お前は、まだ魔術がどんなモノか理解していない。アレは言葉で説明されたぐらいで受け入れていいものじゃない。
 リスクを見つめなおした上で、冷静に判断しなくちゃならない」
「僕は冷静だよ、士郎。命を懸ける覚悟だってある」

 タカミチの眼は、相変わらず熱い炎を灯している。だが、だからこそタカミチを、魔術使いである俺は受けれてはならない。
 魔術とは。もっと暗くて、決して希望にまみれた力などではないのだから。

「それが解っていないと言うんだ。己の命を懸けるのは魔術の第一条件。制御に失敗すれば、他人を巻き込むことだってある。
 俺は、制御しきれず一つの街を吹き飛ばした魔術を見たことがあるんだ」

 もちろん、タカミチ程度ではそんな大規模な儀式魔術は使えるはずもない。
 そもそも俺が知らない魔術は全て独学でこなさなければならない上に、この世界では教本となり得る魔術書も無いだろう。
 魔術師として初代であることも加味すれば、それ程の暴発が起こる可能性はほぼない。

 だが、その言葉はタカミチを冷静にした。
 魔法よりもあまりに大きい失敗のリスク。助けられない、ではなく、己が害になる可能性。俺なら、考えるだけでぞっとする。

「すまない。僕が熱くなりすぎた」
「いや、少し言いすぎた。俺も、人のことを言えた義理はないってのに」

 少しだけ、思い出す。魔術の暴走。いいや、固有結界・“無限の剣製”の、暴走。その被害を。

「タカミチ、これから24時間程度の休みを取れるか?」
「明日は日曜だし、出来ないことはないけど…」

 突然の質問に、タカミチは戸惑う。
 タカミチに休日はあってないようなもの、らしい。
 教師としての雑務の大半をしずな先生に頼んでいるようで、色々と負い目が重なっているのだとか。
 まあ、それさえ笑ってしずなという教師は手伝ってくれるのだろうが。

「よし。なら今から“魔術師”を見てもらう。付いてきてくれ」

 言うが早いか、士郎はタカミチを引きずって行った。








 ◇







 タカミチを連れて来た場所、それは図書館島の地底図書室だった。
 神木の魔力に守られた、大いなる魔法使いたちの遺産の眠る地。
 そこに居る、少しばかり俺の苦手な性悪司書に用があった。

「士郎、こんなところで何をするつもりだい?」
「ん、会えば分かるさ。奴に貸しを作っておくのも悪くはないしな」
「奴?」
「向こうはタカミチの事知っているようだったし、もうすぐ分かる」

 その言葉でますますタカミチは混乱したようだが、その混乱が治まるのを待つつもりもない。歩みは止めず、ペースも変えなかった。
 やがて、大きな扉のある間に辿り着き、そしてその扉の前には、

「グルォオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 竜が居た。
 大きな扉を、その体全て使って隠しているかのような巨体。
 タカミチが何も言わず咸卦法を成そうとした瞬間、俺はすっと剣を突き出した。
 “竜殺し”の異名も持つ、太陽剣グラム。竜種を相手取るのに、これほど適した剣もない。
 もっとも、それだけで勝ち得る程竜種は甘くない。全力で戦えば、こちらにも甚大なダメージを受ける可能性はある。
 だが、俺が剣を掲げると、あれ程敵意を見せていたドラゴンは怯えたように扉を明け渡した。

「どういう事だい?」
「アイツは以前この剣で半殺しにしてやった事があったからな。どうやら、俺ではなくこの剣で脅威を覚えていたみたいだ」

 まだ喫茶店の形も出来ていなかった頃。この世界での活動方針を決めるため、この図書館島深部において、俺は色々と調べ物をしていた。
 その間、トラップやら幻想種やら盗掘者やら、まぁいろいろあったわけだが、その中でも特大のイベントだった。

「その剣も、すごい業物みたいだね」
「ああ。竜殺しの伝説を持っている」

 そう言ってニヤリと笑った。タカミチが更に問いかけようとした時、竜が守っていた扉が開き、フードで顔を隠した人物がゆったりと歩み寄って来る。

「おやおや。来るなら来るで、連絡ぐらいは欲しいものですが」
「あ、アルっ!?」

 タカミチが驚くのも当然。
 彼はアルビレオ・イマ。かつて『赤き翼』として世界を救ったパーティーの一人である。
 だが彼は、ナギが行方不明になると同時期に行方が掴めなくなっていたはず。
 ――というのが、後から知った史実だったわけだが。

「やあタカミチ君。久しぶりですね」
「久しぶり、ではありませんよ。今まで一体どこに……」
「どこと言われても、私はずっとここに居ましたよ?」

 飄々と答えるアルビレオに、タカミチは脱力して顔を覆う。

「全く、貴方の事もずっと探していたんですよ……ハッ、もしかして知らなかったのは僕だけですか?」
「いえいえ、エヴァンジェリンも知らないはずです。というより、知っているのは学園長ぐらいなものですが」

 あのバルタン星人ならそれぐらいはするだろうな、と俺はあの怪奇生物についての理解を深める。
 アルはエヴァンジェリンに自分の存在をバラさないようにと念を押して、こちらに向きなおった。

「それより、どうやら覚悟が決まったようですね」
「フン。貴様に貸しを作っておこうと思っただけだ」

 その会話で、タカミチはある一つの可能性に気づく。

「まさか……『イノチノシヘン』を?」
「ええ。私も彼の過去には多大なる興味を惹かれますから」

 『イノチノシヘン』とは、端的に言えば人生録作成のアーティファクトである。
 ただ、彼が作る人生録はそれ単体で魔導書としての価値を持ち、彼はその魔導書の力を借りることで短時間だけその人間に“成る”ことができる。
 もちろん、自分よりも強い人間の再生時間は極端に短くなり、そもそも彼より強い人間というのは殆ど存在しない為さしたる意味もない、というあまり使い勝手がいいものではないのだが。

 ただ、彼には『他人の人生の蒐集』という何とも人に嫌われそうな趣味があった。
 その彼にとって、突然学園に現れた、規格外の力を持つ者に対して興味を抱かないはずがない。

「この貸しはいずれきっちり払ってもらうからな」
「手厳しいものです。まあ、それでこそ貴方の過去に価値が出てくるというものですが」

 フフフフフ、とアル。ぶっちゃけ笑顔が不気味すぎる。

「確かに『イノチノシヘン』なら過去を見るのには適しているだろうけど……いいのかい?
 君の事があまりバレると……」
「まあ、リスクはあるが、コイツ相手なら少なくても数年の余裕はあるだろう。何とかその間に信用を得るさ」

 そう言われても納得しかねるようだったが、ここで自分が騒いだところで結局結果は変わらないことに思い至ったのか、タカミチは黙りこんだ。

「ところで、一体どういう経緯でここに?」
「ああ、それは―――」

 魔術、という異世界の技術形態も含めて説明する。どうせ人生録を見れば分かる事だ。
 今更隠しだてしたところで意味はないし、どうせ必要なのだから出し惜しみするより恩を売っておいた方がいい。

「なるほど。異世界の魔法ですか。しかしそれではガトウが少々報われないような」
「うっ。いやでも、師匠なら許してくれるんじゃないかな、とか」
「どうでしょうねぇ。あれで中々弟子想いでしたし。草葉の陰で泣いてないといいのですけど……」

 などと、アルがタカミチを弄って遊んでいる。これも彼らなりのコミュニケーションなのだろう。
 タカミチの年代を考えれば、大戦での英雄には頭が上がらないだろうし。

「いいからとっとと始めよう。そもそもまだ魔術を教授すると決めたわけじゃないんだ。
 俺の過去を、その魔術師の在り方を見て、それからタカミチが判断することなんだからな」
「はいはい、分かっています。それではタカミチ君、覚悟はよろしいですか?」
「大丈夫です」

 アルが衛宮士郎の人生録に手を添えて夢見の魔法を行使する。
 俺は二人の意識が帰ってくるのを、紅茶でも飲みながら待つことにした。もちろんアルの秘蔵の茶葉で。
 その件について一悶着あるのは、また別の話であり。
 俺の過去を見て、結果的にタカミチがどういう決断を下したのかも、もう少し後の話になる。






士郎「ん。いい茶葉を持ってるじゃないか。少し貰って行こう」
アル「コラ。待ちなさい士郎」
(拍手)











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