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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第47話


「舞台裏の事情」 「超包子とアルトリアの共催、ね」
「そうアル。ま、学祭期間中のみ、という条件は付くけどネ」
 閉店間際、いきなりやってきて散々捲し立てられた事を要約すると、つまりそういう事だった。
「だがな、実際のところ超包子にそんな事する必要性はないだろう?」
「いやいや、これが大アリネ。学祭期間中はいつも人手不足。おかげで毎年何人も倒れるヨ」
「おいおい……」
「料理長の五月は大丈夫とは思うけどネ。毎年保険は用意しているんだヨ」
 まぁ、喫茶・アルトリアとしては、ウマい話ではある。超包子は麻帆良でも随一の人気チェーン店。対してアルトリアは隠れた穴場、知る人ぞ知る不定期経営店。
 知名度や収入などを考えれば、一も二も無く了承するのが自然な提案だ。
 だが、だからこそ疑ってしまうのは悪い癖。どうにも裏がある気がしてならない。
 代理が欲しい、とは言うが。そんなもの、他から幾らでも調達できるだろう。私を推薦する必要など全くない。ないのだが。
「それに、五月の推薦だしネ。五月のワガママなんて初めてだから、意地で叶えたいヨ」
 そんな事を言われてしまうと揺らいでしまう。四葉とは、確かに一度一緒に調理した事があった。学年末のお祝いパーティー。アキラの件が印象的過ぎて忘れがちではあるけれど、四葉と仕事をするのは確かに楽しかった。
 初対面で、ああも阿吽の呼吸というのが実感できる相手もいない。俺としては、四葉と働けるのならそれだけで引き受ける価値があるのだが……やはり怪しい。
 超の提案は、論理的に心情面が加味されて、俺としても否定できないものになっている。
 実際のところ、裏があるにしてもこの件がそこまで重大な選択にはなりようがないだろう。この選択が大きなものになるのなら、どうせここで断っても面倒事に巻き込まれる仕組みになっているはずだ。経験的に。
 ならば、こちらにはメリットしかない提案という事になる。受けるのが吉、か。
「ああ分かった。私としても四葉と仕事できるのは楽しそうだしな。受けよう」
「おお、助かったアルネ。全く焦らさないで欲しいアルヨ」
 割と本気で安堵の溜息をつく超に、俺はかまをかけてみる。
「だが。何もこんなに回り道をせずとも、話ぐらいは聞いてやるぞ」
 超は、溜息をついた後の、少し間の抜けた表情のまま告げる。
「まったく士郎サンは意地悪ネ」
「ああ。時々言われるな」
 超は、席から立ち上がり出口に向かった。
 そして、そのまま帰るのかと思いきや、くるりと反転して俺に向き直る。
「士郎サンは……私にとって、最強の切り札か、最悪の敵に成り得る存在ネ」
 敵か味方か。
 例えば今、俺とエヴァンジェリンの関係はあくまで中立、敵でも味方でもない。けれど、状況次第ではお互い最大の障害になり得る。
 それは目的の違いからくるものだし、生き方の問題でもある。
 状況次第で流動的に関係が変化するのは珍しい事ではなく、むしろ自然当然な事だ。けれど、敵か味方か、状況に関わらず固定されてしまうような関係というのは珍しい。
 それはつまり、相手の不理解が引き起こす状態だ。
 それぞれ、双方には目的があり、それが一致しているかが分からない。
 同じように見えて、根本が決定的に違う事などよくある。
 快楽殺人者と、一を切り捨てる者。結果は同じ、手段が同じでも、目指すところは対極だ。勝手な思い込みで相手を判断すると痛い目を見る。
 超が言っているのはそういう事だろう。こうして回りくどくも徐々に関係を深めていくのは、その見極めの為というわけだ。
「慎重だな。だが、突然過ぎるのではないか? これでは疑ってくれと言わんばかりだ」
「そうダネ。が、コチラにも都合があるヨ」
 俺は、超を中学生扱い、子供扱いはしない。例えば龍宮や、或いは那波、四葉。そういう芯の通った人間を子供扱いすれば、手痛いしっぺ返しを食らう。
 超には覚悟があるのだろう。覚悟を必要とするような目的が。過去に裏打ちされた、もうどうしようもない強い意志。
 そういう目をしている。今まで俺が、何度も斬り捨ててきた、魔術師のような目を。
 だから、その目的の内容、方向性によっては、俺は超と敵対するだろう。或いは、超の目的に賛同し、力を貸す事もあるかもしれない。
 たが、内容も聞かずに二つ返事できる相手ではなかった。それは超に限らず、この学園、この世界の誰もがそうだ。
 例外を上げるのなら。同じ志を持つ魔術使いのみ、だ。
 そういう意味で、俺は俺なりに、超を見極める時間は必要だろう。目的を話してもらって、その結果俺がどう選択するのか、という基準の為ではなく。
 その目的が、超の真意なのかどうか、という見極めの為に。
「まあ、いいさ。とりあえずは合同屋台の件だ」
「そういう事にしておいて貰えると、助かるネ」
 その夜は、かなり遅くまで計画を練った。
 アルトリアから提供するメニュー。俺が覚えるべき超包子のレシピ。出資・収入の分配率。期間中のシフト。
 諸々こなして、次は四葉を交えて会議する、という段になって、俺は超を送って行った。
 と言っても、送った先は工科大の研究室だが。
 そして別れ際、超は少し寂しげに口を開いた。
「士郎サンは、未来人というのに興味はあるカ?」
「ないな。基本的に、面倒しか呼びこまないような非日常系の存在に興味はない」
「連れないアルネ。なら、士郎サンの故郷を訊いてもいいカ?」
「また突然だな。……もう帰れないぐらいに遠い場所、とだけ答えておこう」
「ホウ。私と似ているネ」
 どこか遠くを見ているようで、何か大切なものを想っているようで。
 超は、タタッと数歩、俺の前に出ると別れを告げた。
「ここまででイイヨ。セキュリティがあるからネ」
 なら、と俺は踵を返した。後ろの気配が、一向に動こうとしないのを不思議に思いながら。











◇ ◇












 その日、最後の客が出て行ったタイミングを見透かしたかのようなタイミングで、電話が鳴った。
「やぁ士郎。元気にしているかい?」
「また突然だな。何の用だ、詠春」
 近衛詠春。関西呪術協会の長であり、俺にとってはお得意様になる。
 向こうは向こうで勝手に恩義を感じているらしいが、しかしながら俺にその間の記憶はない。記憶がない事について謝罪を述べられた挙句、様々な優遇を押しつけられてしまって、互いが互いに頭の上がらない関係になってしまった。
 そんな詠春が電話をかけてくるというのは、あまりいい予感はしない。また面倒事が舞い込むだろうという予測は、麻帆良に来てからの経験則だ。近衛の一族には、どうも手を焼かされる運命にあるらしい。
「ああ。犬上小太郎という少年を覚えているか?」
「いいや」
 知らない名だ。もしかしたら知っていたのかもしれないが。
「そうだったな。京都に来てからの事は全て忘れているのだったか……簡潔に説明すると、京都で謀反を起こした一味の仲間だったのだが」
 詠春の話では、その小太郎という少年と俺は戦った事があるらしい。と言っても、ほぼ一方的に俺が討ち倒しただけで、その戦闘も一度きり。その戦いがあった事は、本人からの事情聴取で分かったようだ。
 本人は金で雇われただけで、更生の余地もありまだ幼いという事でほとんど刑はなかった。あと一月も大人しくしていたのなら、それで自由の身になれたのだが。
「逃げだした。それも、この麻帆良に、ね……」
「そういう事だ。しかも、貴重な魔道具まで持ち出してね」
 要するに、脱走で罪が重くなったと。ただ、それも何やら理由があるらしく、詠春は救済策を用意した。
「麻帆良への親善留学生という立場に据えて、両者の交流を図る為の人身御供として活用する」
「という方便で自由にしてやる。そういう事か」
 まぁ、そういう事になる。と、詠春。
 甘いも極まったり、缶のカフェオレみたいな甘さだ。とは言え、これはある意味詠春にとっては都合がいいだろう。
 関東は魔法協会……メガロメセンブリアと太いパイプがあるが、関西は詠春がトップであるからこそかろうじて繋がっているレベル。
 関西は関東よりも土着の傾向が強いし、純日本式の魔術として歴史も勝るから、無闇にあちらとの関係が強くなり過ぎるのは拙い。けれど、詠春としてはある程度の関係性を保っておきたいと考えているのだろう。
 関西が生き残っていく為に。国内で無用の争いを起こさない為に。双方に抑止力がある状態が、最も望ましい。
 その抑止力の最有力として俺が数えられているのは正直迷惑だ。が、かと言って現状俺に何ができるというわけでもない。
 俺がいつか、フリーとして麻帆良を離れる事があったとしても、近衛翁や詠春と言った個人とのパイプまで失うわけにはいかないのだ。そう言ったコネは、いつか必ず役に立つ。というより、スムーズに動く為には必要不可欠なものだ。
 麻帆良や京都と言った組織相手の繋がりではなく、あくまでアンダーグラウンドな個人間の繋がりを。
 俺が麻帆良に居座り続ける理由の一つとして挙げられるそれを、おそらく詠春も犬上小太郎という少年に託しているのだろう。
 特に、スプリングフィールドの……ネギに対する繋がりとして。
 まぁ、とは言えそれは布石というにも足らない。いずれ大きくなるかもしれない種を蒔いておこうか、という程度のもの。期待しているわけでもなく、土台作りの一環なのだろう。
「それで? 一体俺に何を求めているんだ?」
「簡単だよ。犬上小太郎を保護し、君の預かりとして欲しい」
「簡単ではないだろう、それは。詠春、君も私の立場は知っているものと思っていたがな?」
 アキラの時とはワケが違う。彼女は無力だし、こちらの言いつけは守ってくれるだろうという信頼もある。それに対して、小太郎とか言う少年について、俺は何一つ知らない。
 詠春に対しての信頼から、無条件に信じられるわけもない。詠春の部下管理能力にとやかく口を出すつもりはないが、その辺俺は基本的に組織というものを信用していないからな。
 俺は俺なりに小太郎という少年を見極め、信頼がおけると判断したとしよう。しかし、それでも問題はある。
 まず俺の立場。いわゆる問題児、イレギュラー、アウトローである所の自分が戦闘能力を持つ部下を手に入れたらどうなるか。反乱とまでは考えられなくても、何らかの計画の為の手駒、などと疑われては敵わない。
 まぁ、そういう事を言い出せば高音や佐倉、桜咲も拙いのだが。彼女らの場合は彼女たち自身の意思だから大事にはならない。
 けれど、これが「関西呪術協会近衛詠春からの依頼」である事が問題だ。表向きそういう形式にならずとも、つい先日西絡みで疑惑を持たれたところなのだ。要らぬ猜疑心を受けたくはない。
 学園長からのゴリ押しを受けても問題、関西の後押しなど問題外。他のコネはアキラの記憶消去に関して上手く纏める為に使ってしまったから多用はできない。
 正直、八方塞がりだった。
「分かってはいるつもりだが。刹那くんと対して変わらないだろう?」
「桜咲は俺の預かりというわけでもないだろう……俺は最近、ネギへの接触にだって気を使っているんだ。更に厄介事を抱え込むのは勘弁してもらいたい」
「むぅ。そこまで言われては引き下がる他ないな。だが、多少は便宜を図ってくれないか? 彼も学園では知り合いなんて殆どいないんだ。君にできる範囲で構わないから気にかけてやって欲しい」
 できる範囲、ね。
 どうにも嫌な予感がしてならないが……仕方がないか。
「分かった。俺が行動した範囲については、後で報告を入れよう」
「いや、それは学園長にしてくれれば構わないよ。どうせお義父さんからも連絡が来るようになっているし」
「了解した。要件は以上か?」
「ああ。邪魔をしたね」
「いいや。ではな」
 電話を切って、一息つく。
 犬上小太郎、ね。問題は、脱走した理由と持ち出した魔道具の方かもしれないな。
 詠春は、言外にその辺りの後片付けを俺に任せる、と言っている。
 面倒ではあるが、やらないわけにもいかないだろう。特に今夜は、少しばかり厄介な用事がある。
「景気はどうだい?」
 タカミチが、ベルを鳴らして店内に入ってきた。約束の時間よりは少し早い、か。
 俺はタカミチの迂遠な経過確認の意を読み取り答える。
「まあまあだな。詠春と桜咲に……エヴァンジェリン経由でネギ、それと明日菜本人にもそれとなく、と言ったところだ」
「アスナ君にも?」
「心配するな。明日菜は何も思い出していない。先日お前が愚痴っていたように、平和そのものさ」
「ああ、いや、まぁ……あの時は悪かったね。どうにもネギ君と一緒だと、ああいう事が多い気がするよ」
 ああいう事というのは、タカミチにとって元教え子であるところの神楽坂明日菜の全裸を目撃してしまった件についてだ。
 突然深夜に訪ねて来て盛大に愚痴った挙句、最後には人生相談になっていた事は記憶に新しい。
「では、本題だ。情報交換といこう」
 お互い、資料を交換する。
 俺は、修学旅行で明日菜に起こった変化について纏めた資料をタカミチに渡す。
 タカミチからは、明日菜の生い立ち、タカミチの知っている事全てが書かれた資料だ。
 今夜の会合の目的は、俺達の明日菜に対するスタンスを決める事。
 タカミチは明日菜に関して学園長からも一任されているし、書類上でこそ学園長が後見人になっているものの、実際に動いているのはタカミチだ。
 あくまで俺はタカミチの相談に乗るというスタンスだが、俺達のこの会議で明日菜の処遇が決まる。
 と言っても、要するに秘密を秘密として守り続けるのか。彼女が魔法に触れた今、その秘密をどう扱っていくのか。
 明日菜にとっての最良は。それを、勝手に決め付けてしまおうというわけだ。
 しかし、こうした表現をすると独善的に聞こえるが、これは必要な措置だろうとは思う。
 資料を読み進める程に、その考えは確固たるものになっていった。
 忘れていた方が幸せな事も、ある。かつて、それを明日菜本人が望んでいたのだから。かつて望んだ幸せを捨て去るように進んでいく明日菜を見ているのは忍びない。
 正直、精神年齢15歳の、長い間一般的な女子生徒でしかなかった明日菜が受け止めきれるとは思えない。
 ただ、知らせない事で更に不幸に突き落としてしまう可能性もある。明日菜は、既に知ってしまっているのだから。自分がかつて居た世界を。裏側の、日の当たらない世界の存在を。
「この暴走状態……記憶も戻っていると考えるべきかな」
「どうだろうな。一種のトランス状態だろう。思い出しているとしても、一瞬で膨大な記憶が浮上したせいで処理が追い付いていない可能性が高いと思うがな」
「成程。でも、だとすると拙いね」
「ああ。これを繰り返していけば、記憶の枷は外れやすくなっていくだろう」
 明日菜に対する記憶処理は、通常の魔法バレなどとは比較にならない程膨大だ。術式の量もさることながら、あらゆる方法を用いて記憶を封印している。
 いっその事、俺がされたように記憶破壊でもされていれば後腐れもなかったのかもしれないが。
 魔法無効化を持っている明日菜自身がその記憶処理を受け入れていなければ、確実に無効化されていたであろう術式群。そして実際にその何割かは無効化されている。
 現状は、魔法薬による記憶回帰の錯乱と多重封印が効いている状態だ。この状態なら、本来無意識にまで記憶封印は作用する。
 だから、基本的には先のような暴走状態……かつての能力を一部とは言え使う事など有り得ない。表層意識が無意識を取り込んで新たに習得し直した、というわけでもないのだから。
 しかし、現実に明日菜は咸卦法を使った。魔法無効化は能力というよりは体質だから、記憶に依るものではない。だが、咸卦法は使おうと意識しなければ使う事ができない類のものだ。
 いや、正確にはその精神性は無我に近いものがあるが、少なくとも無意識的に発動するものじゃない。儀式様式が必要である以上は。
 それに、ハマノツルギ。あのアーティファクトの封印を自力で解いたという事実もある。
 もしもハマノツルギが無限の剣製に登録できていたのなら、記憶が消されていても解析は可能だし、詳細も掴めたのだが。
 タカミチの資料を読む限りでは、おそらく乖離剣と同じく俺の世界が弾いたのだろう。アレは、無限の剣製にとって自壊因子に等しい。
 マナを精霊ごと初期化する剣。破格ではあるが、俺との相性は最悪だ。何せ、登録してしまった場合、無限の剣製を展開しようとする側から容赦なく消されていってしまう。プラスとマイナスはイコールでゼロだ。
 ……と、今はそんな事関係ないか。
 今推測できる事は、明日菜の魔法無効化能力が増大しているのではないかと言う事。
 その理由としては二つ考えられる。
 一つは、肉体的成長が器そのものを大きくした結果、予定調和的にかつての記憶封印から無意識領域がはみ出している可能性。
 そしてもう一つが、ネギが与えている影響だ。
 実際の魔法使い。現実に何度も魔法を目にするという経験が、精神的にあの頃に近づいていっているのではないか。
 それに、ネギがサウザンドマスターの実の息子であるという事もある。予測し得ない影響の一つや二つあっても不思議じゃない。
「俺が提案できる方策は、記憶封印を重ねておくか、いっそ過去を語ってやるか、だな」
「過去を語るって……それは、封印を解くという事かい?」
「いいや、そこまでしては意味がなくなるだろう。むしろ状況は悪化する。今の明日菜に、純粋な知識として伝えておくだけだ。実感は、そのうち自然と身に付くだろうからな」
 とは言え、どちらを選んでもリスクはある。
 これ以上魔法に深く関わる事がないのなら、記憶封印を強化しておけばいい。それで万事解決だ。魔法無効化も、不審に思われなければ発動しない。薬品を用いるのなら幾らでも方法はある。バイトの賄いに混ぜるとかな。
 しかし問題は、明日菜は魔法に深く関わる道を邁進しているという事。下手をすれば、魔法世界まで行ってしまうかもしれない。
 明日菜が暴走を引き起こした原因に魔法との関わりがあるのなら、いくら記憶封印を強化しても時間稼ぎにしかならない。俺にしてもタカミチにしても、常に近くで監視していられるわけではないのだから、また暴走し、最悪の事態を招くリスクはどこまでいっても存在する。
 ならばいっそ、事実を伝えてしまったら。
 その場合、明日菜がどこまで自分の過去を受け入れられるかにかかってくるが……不安定になるのは間違いないだろう。
 受け入れられず、暴走か逃避か。いや、受け入れない方がいいのかもしれない。
 受け入れないという事は、拒絶すると言う事。己の過去を拒絶するのなら、魔法に近づくこともない。
 それで幸せを実感するのは難しいかもしれないが、それは明日菜が選ぶ事だ。
 ただ、明日菜ならば大丈夫なのではないか、という信頼はある。何となく、あの明るい少女ならば、乗り越えてくれるのではないかと。
 けれど、タカミチはそう思えないらしい。それも当然か。彼女がまだ明るくなかった頃、過去に自分の境遇に塞ぎ込んでいた頃を知っているのだから。
 だから、タカミチが出した結論に、俺は否を唱えるつもりはなかった。
「現状維持……封印を強化しよう」
「それで、いいんだな」
 タカミチは、それでも迷っているように目を瞑る。
「うん。正直ね、これでいいのかとは思うよ。アスナ君がこのままネギ君と共に歩む以上、いつか必ず語らなければならないと思う。でも、まだ早い」
 再び目を開いた時には、決意の色が見えた。
 自分の選択に対する覚悟。我が侭にも等しい言い分を、絶対に最良の結末に導いてみせるという意地が。
「それまではさ、君にも迷惑をかけるかもしれないけど……それでも、彼女だけは幸せにしてあげたいんだ」
「くく、まるでプロポーズだな」
「ははっ、からかわないでくれよ」
 まぁ、いいさ。友の、人生を懸けた頼みならば無碍にできるわけもない。
 俺達は似た者同士だから、言葉なんていらない。互いが互いの信念を尊重し、そうして目指した先は同じものだと信じている。
 その過程が違って、衝突する事があったとしても。それだけは、違わないと。
「さて、士郎。ちょっと外に付き合って貰えるかな?」
「ああ。恐らく、俺の客だろう」
 気配があった。こちらを観察する視線、殺気こそ隠しているものの、隠蔽するつもりもない存在規模。
 この店は、囲まれている。少なくとも学園の者ではない。明らか過ぎる魔の気配だ。
 タカミチもそれに気づいたから、この店を戦場にしない為にわざわざ申し出てくれた。
 学園結界さえ侵して押し入る刺客となれば、タカミチを狙う方が妥当性はある。知名度の問題だ。
 けれど、最近は俺も中々派手に動き過ぎたようだし、そろそろこういった手合いが現われてもおかしくはなかった。
 店を出る。取りあえず姿は見えない。だが、そう遠くもないだろう。
 俺達は移動した。店の裏手の林には、少し開けた場所がある。丁度タカミチの居合い拳の射程圏内程度の広さで、戦闘には丁度いい“狭さ”だ。
 それに、ここは時折高音たちとの修行で使っているから、簡易の防音結界も張られている。色々と都合が良かった。
 待つことしばし。あからさまに武装してやると、ようやく敵も姿を見せる。
「そこまで誘われたのならば、隠れているわけにもいきますまいな。ワタクシ、上位悪魔のディストと申します」
 俺達の正面に降り立った初老の男は、そう名乗った。
 そして俺達を包囲するように、他二人の男が姿を見せる。
「これでも一応爵位を持っていましてな。没落したとは言え貴族の出なのですよ。このような雑事、あまり気分がいいものではなかったのですが――思いの外、楽しめそうですな?」
「ふむ。楽しむ余地があればいいがな」
 俺はタカミチとアイコンタクトする。
 上位悪魔……つまり魔族は、この世界において竜にならぶ存在だ。爵位まで持っている上位ならば通常の戦闘手段では滅ぼせない。
 日本で言えば鬼神に通ずるところがある、精霊寄りの存在だ。
 が、自我が強い分通常はそこまで大きな力は持っていない。パワーだけならここ麻帆良に眠る鬼神たちの方が数段上だろう。
 しかし相手がヒトガタである以上、戦闘経験が占めるウェイトは大きい。基本的に不死である連中だ。その経験値は推して知るべし。
 ――――だが。
「タカミチ、魔術の使用を許可する」
「――へぇ。いいのかい?」
 ニヤリ、と。タカミチが、普段からは想像もつかないような笑みを見せた。
 彼がもっと幼ければ、その笑みは力を開放する喜びと見て取れたろうに。今ではもう、獲物を前にした眼にしか見えない。
「ああ。前衛は任せる。丁度いい練習台になるだろう」
「まぁ、普通悪魔相手に余裕なんて見せられないけど。君と一緒なら、そこまで怖い相手でもない」
 そうさ。俺達が組んで、勝てない相手なんていない。
 少なくともそれが悪であり、俺達の信念を害する存在なのならば、絶対に。
「これはこれは。舐められたものですね――」
 キッ、と。上位悪魔の睨みと共に、戦闘は開始された。








アキラ「次は私が活躍? 予定」(拍手)
 
関連記事

なんかタカミチはかつてと同等以上のポテンシャルにまでなっているようですが、士郎は何処がどれくらい成長しているんでしょう?
というか、成長してますよね?精神面じゃなくて、戦闘に関して。

2009.10.06 | URL | 檻 #- [ 編集 ]

檻さんへ

タカミチは、一応魔術アリでかつてと同等、もしもかつての自分と戦ったら相討ちってところまでは強くなりました。設定上は。
まぁそれでもまだ完全に昔以上とは言えません。出力的にはまだ弱いので。
士郎に関しては幾つかあります。次で出すかは分かりませんが、いつかは出てくるはずです。
ただ、士郎に関しては強くなったというよりは、手強くなったという感じ。
色々技を覚えて、開発して戦闘の選択肢が増えた事が一番の要因です。総合的には強くなってるんだけど、個々のスペックを見ても大して変わってないという。
ま、魔法世界編ぐらいまで行けばそこそこ出てくると思いますが。

2009.10.06 | URL | 夢前黒人 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

はじめて感想書き込みます。

なんと言いますか…こちらの小説、連載初期の頃から読んでいて構成しっかりしてるし文章力も問題ないのに、なぜか違和感を感じていたんですよね。

で、何が違和感の元なんだろうと不思議に思ってたんですが
本作品の『エミヤシロウ』は皮肉を全然言わない、と言う事に気がつきまして。
もちろん、作者様の構想において独自の道を歩んだシロウなのですから、アーチャーとは違い皮肉成分のないシロウになったのは十分理解できます。
ですから、個人的には本作のシロウはよくも悪くも半オリキャラな感じなんです。そして作者様が故意に排しているであろう『つい皮肉を口にしてしまう』程度の余裕や精神的遊び。ソレが無いシロウ中心に話が進行していく為、ネギまの持つコメディ的な要素もほとんど無い、と言った作風がFATE、そしてネギまの二次創作であると自身に認識できず違和感として感じていた、と。

いや、だから良い、悪いではないんですが、こんな風に捉えてる奴もいるんだなぁと創作する上で役立ててもらえれば幸いです。
長文になってしまいましたが、お体には気をつけて執筆活動頑張ってください。

2009.10.06 | URL | コロ #- [ 編集 ]

修学旅行での記憶は消えていた筈なのに、何故にアスナの能力開放を覚えているんですか?
読み返したわけではないので、三日目限定で消えているのだとしたらすみません。

2009.10.07 | URL | Nameless #CIa1sYkY [ 編集 ]

Re;

・コロさんへ
皮肉に関しては、ところどころ意識して入れてるつもりなのですが……そう見えないという事は、ただの私の力不足です。
半オリキャラに関しては意識してやってますね。キャラを崩すのではなく、まだ届いていない。
衛宮士郎でもなく、アーチャーでもない彼を書きたかった……というより、そういう設定であるのなら、どちらでもあってはいけないと思ったんです。
私的に、アーチャーってアレ、演技だったんじゃないかなって思っているので。演技を続けていたら、いつの間にか素を忘れてしまったような。
その辺の人格設定と、表面上のキャラの移り変わりっていうのは、一応作品の肝でもあるので深くは語れませんが。
いつか、本編中で納得して貰えるような展開にしていきたいです。

Fateらしさ、ネギまらしさ。私なりに混ぜ合わせた結果、プラスマイナスゼロになってしまっているのが現状ですね。これじゃあマズイとも思っているのですが……反面、ただネギまらしさ、Fateらしさを取り入れればいいとも思えなくて。
どうにも中途半端な状態になっています。けれど、これもキッチリ作品の方向性として、何か新しいモノを確立させてみたいものです。

最後になりましたがご指摘ありがとうございます。


・名無しさんへ
ちょっと分かり辛かったかもしれませんが、士郎は詠春や刹那などから明日菜についての情報を集めています。
だから、実際明日菜の暴走を目にした記憶はありませんし、それを伝聞としてでしか知りません。
ただ、状況証拠的に、タカミチの知っている事も含めて考えた時に咸卦法を使ったのだろうと思考が及んだ、という感じです。
咸卦法に限らず、その他についても同様。
本当はこの辺もっと詳しく書くつもりだったのですが、現状ちょっと誤魔化すしかないというか。
私なりにネギまの真相ってのを予想はしているものの、どうせ当たっているわけでもなさそうですし。
よって、あからさまな伏線としての役割だけを全うさせた、と。まぁそんな感じです。

2009.10.07 | URL | 夢前黒人 #qiIB0A1Q [ 編集 ]


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