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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第3話


「喫茶『アルトリア』の来客模様」

「暇、だな……」

 喫茶店「アルトリア」は今日も絶好調にガラガラである。
 開店から一週間経過し、普通の店でもそれなりに客は入るだろうに、やはり立地が悪すぎたのが一向に普通の客がやってこない。
 ここまでくると人払いの結界でも張ってあるのではないかと疑ってしまう程に、だ。

「暇だ……」

 だが今日は確実にお客さんを一人ゲットできるはずだった。
 まあ、こちらからお礼ということで招待しているので正確に言えば店の客ではなく俺の客なのだが。
 五ヶ月前、瀕死の俺を助けてくれたという少女に、まだ確かなお礼をしていないことを思い出し、都合のつくという今日に来てもらう運びとなった。
 友達も連れてくるということだから、かなり気合を入れて準備していたのはいいのだが、やる気を出しすぎてしまったせいで仕事がなくなり、結局暇だ暇だと呟く日常を繰り返しているだけである。
 もっとも、暇だ暇だと繰り返しながらもその手が止まることはついぞなかったのだが。





 ◇





「ごめんくださーい」

 そう言って我が店のドアを開けたのは那波の友達らしき少女だった。ついで全然少女に見えない少女、那波千鶴も入店した。

「お邪魔しますね」
「いやいや、今日はよく来てくれた。那波も、君も、とりあえず座ってくれ」

 二人は促されたままカウンター席についた。俺は紅茶の準備を始める。

「では軽く自己紹介をしておこうか。私は衛宮士郎という。ここで店を開くことになった」
「そういえば、お名前を聞くのは初めてですね」
「そうだったか? それは失礼な事をしたな。すまない。それで、そちらの君は?」
「あの、私は村上夏美です。ちづ姉の友達で……その、迷惑じゃなかったですか?」
「いや、構わんよ。むしろ歓迎したい。立地が悪いのか一向に客が来ないのでね。客が増えるというのなら喜ばしい限りさ」
「はあ」

 きょろきょろと周りを見回す村上。勿論、他に客などいない。断言してしまえるのが口惜しいが。

「もしかして、私たちの為に貸し切りにして下さったのですか?」
「いや、単に客が来ないだけ、だな」

 二人とも俺が若干気落ちしたことに気づいたようだが、かける言葉は見つからないらしい。そんな姿は、少し微笑ましかった。

「まあ、君たちのお眼鏡に適うようならここの宣伝でもしてくれると助かる」
「あ、任せといて下さい!」
「ええ。尽力させてもらいます」
「やれやれ。無理やり言わせたようで心苦しいが、今日の目的はお礼だからな。気にせず楽しんでいってくれると嬉しい」

 手際よくこなしても、紅茶を淹れるのには数分を要する。その間は適当な雑談でもと思っていたが、いざその場となると話題もないことに気づいた。
 さてどうしたものかと思いながら、黙々と一連の作業をこなしていると、那波の方から話しかけてくる。

「電話でもお聞きしましたが、その後体調はいかがですか?」
「見ての通り、健康そのものだ。体の頑丈さならば自信があってな。怪我だけなら一月ほどで完治していたらしい」
「あれ? でも、ちづ姉が助けたのは半年くらい前で、目覚めたのは一ヶ月前ぐらいじゃなかったけ?」
「血が足りなくて脳の回復だけ遅れてたんだよ。実際半日ぐらい記憶喪失になってたしな」

 実際は、輸血もするのだからそんな事態はあり得ない。
 方便、というよりちょっと考えれば分かる嘘だが、そこは雰囲気で押し通す。
 一応は輸血が遅れると一部細胞が壊死する場合もあるし、一概に間違っているというわけでもないのだが、その場合は基本的に回復などしない。特に脳は。

「へぇ~、記憶喪失ってどんな感じでした?」
「よく覚えていないが……例えるなら、井戸の底に落ちてしまったようなものだ」
「井戸の底、ですか?」
「ああ。まあ、分からないならそちらの方がいいさ。そんな経験は役に立たないからな」

 と、ここでようやく紅茶が完成する。同時進行で進めていたケーキの切り分けも完了し、既に皿に盛り付けてある。

「さ、雑談はここまでにして、お礼の品を受け取って貰おうか。手作りのもので済まないのだがね」
「いえ、そんなことは。とても美味しそうです」

 そう言って差し出されたケーキに口をつける那波。村上を追従してケーキから食べ始めた。

「!! 美味しい!」
「本当に。こんなに美味しいケーキは久しぶりです」

 美味しいものを食べた時の綻んだ表情というのは、作り手として何より嬉しいものだ。百の麗句よりも雄弁に感情を表してくれるし、何より笑顔は見ているだけで穏やかな気分になれる。

「是非紅茶の方も堪能してくれ。おかわりもあるから遠慮しなくていいぞ」

 黙々とケーキを攻略しだす少女たち。そこまで喜んでもらたのならこちらこそ幸いというものだ。これもまた眼福、とな。








「今日はどうもありがとうございました」
「いや、私も楽しい時間を過ごせたよ。これからもよろしく頼む」

 二人を見送り、いつものようにカウンターに戻った。
 暇だ暇だと連呼していていも、このカウンターから見える店内はそれなりに好きだ。
 まあ、アルトリア、などと大層な名前を付けておきながら全く彼女のイメージと合致しないというのが悩みの種ではあるのだが。
 さて、片付けやら念のため客が来たときの為の準備とかが終わってしまうと結局暇になってしまう。

 そういう時は本を読むことにしていた。何分まだまだこの世界の知識には疎い。
 参考書として適当に見繕って貰ったものを図書館島から借りてきている。
 まあ、選定した人間がイマイチ信用できない男だから、いろいろと不穏なのだが。
 どうも、この世界にはイタズラ好きが多すぎる気がしてならない。正直、いろいろ愉快すぎて対処に困る。

 だが、本には罪はない。俺は吸血鬼に関する項を無心に読み進める。
 世界が違えばその発生方法も異なり、こちらの吸血鬼というのは能力はともかくとして俺の世界よりは深刻な脅威ではないようだ。
 もっとも、人間に戻ることができないのは変わらないようだが。

 カランカラン。ドアに備えつけていたベルが鳴った。
 本から顔をあげ、来店した客に接客しようと立ち上がる。

「これはこれは。なかなか珍しい来客だ」
「私も、できれば君の顔など二度と見たくなかったよ」

 ドカッという感じでカウンター席に座るのは、学園教師ガンドルフィーニだ。機嫌が悪そうな顔でこちらを睨みつけてくる。
 まあ、そもそもの第一印象がアレだったから、その反応は自然なものだ。
 加えて言えば、彼は直接的に戦って俺に負けたわけではないというのも一因を買っているだろう。
 戦いのアクションを起こすことさえできず無力化されたのでは、消化不足もいいところだ。

「それで、貴方がここに訪れるとは何の用かな。貴殿は私のことを嫌っている様子だったが」
「別に、嫌っているというわけではない。ここに来たのは学園長からの言伝を伝えにきただけだ」

 全く信用できないような社交辞令をありがとう。嫌いな人間に嫌いでないというのも中々ストレスが溜まりそうだ。

「ほう。それで?」
「図書館島で見つけたモノについて話があるから、近日中に出頭せよとのことだ」
「出頭か。穏やかじゃないな」
「君がやらかしたことを考えれば当然だ。私にしてみれば、なぜ君にこんな自由が許されているのか理解できない」

 確かに、俺もこの処置には幾許かの疑問が残っている。正直、こんなに甘い待遇を得られるとは思っていなかった。
 学園長の人の良さ、というのも確かにあるのだろうが、それだけではないような気がしてならない。

「己より強いモノに対する対処は三通りしかない。排除か、無視か、取り込むか、だ。排除も無視もできないのなら、選択は決まっていたというだけだろう」

 俺の答えが不満なのか、やたらと不機嫌そうに顔を歪ませる。怖いというよりは、笑えてしまえるところが不憫だ。

「それと、君は魔道具屋<アーティファクトショップ>を経営するそうだな」
「ああ。まだ客はないがね」
「なら、私が最初の客になろう」

 至極真面目な表情。冗談ではないようだ。

「一応、理由を聞いておいても?」
「君は、客にいちいち購入目的を尋ねるのか?」

 銃を買うのにも身分証明書が必要なのだ。相手が信頼に足るか否か、何の為にソレを必要とするのかを確認するのは当然のことだろう。
 とはいえ、仮に目の前の男が俺の剣を悪用したとしても、俺はその場でその剣を破壊することができる。
 大きな問題ではないし、そもそも教師であるのなら悪用の心配も薄いだろう。

「まあ、構わないがな。それで? 用途、形状、能力、要望はあるかね?」
「ナイフを。何か特殊効果が付いているものがいい」
「西洋風でいいのか?」
「ナイフであるのなら、そうであるべきだと私は思っているのだが」

 人種的にはおそらく南米辺りの出身であろうに、ヘンな価値観を持っているな。

「今使っているナイフがあるのなら見せてくれ。極力それに近づける」

 ベルトから抜き取られたソレは一般人でも手に入れやすいだろうミリタリーナイフだった。

「これで西洋風などとのたまうのは、いっそ犯罪的ですらあるな……」

 このテの人間が使い易さを求めただけの、機能性重視タイプは概念付与に適していない。
 可能不可能で言えば可能だが、剣群の主としてはそんな中途半端が許容できるハズがない。
 というワケで、折角最初の依頼であるワケだし、それなりに仕掛けを施してみることにした。

「一週間後に取りに来るといい。あっと驚くモノを用意してみせよう」
「フン。期待はしない」

 そう捨て置き、ガンドルフィーニは去った。
 士郎はガンドルフィーニがわざわざ注文した真意を考える。

「余程嫌われているようだな、俺は」

 要するにこちらの戦力調査。いずれ敵になった時のことを考えているのだろう。
 初めから敵のようなものだったが、こうまで嫌われているというのもやり難い。まあ、慣れていることではある。

「やれやれ。ようやく退屈から解放されるかな」

 作業は、夜から開始する事にした。







 ◇








 喫茶『アルトリア』の開店時間は特に決まっていない。
 そもそも開店日さえ決まっていないのでやる気はあるのかと説教されてもおかしくないだろう。
 ただ、ここ1週間の平均を取るのなら、大体朝7時には開店している。
 士郎は朝食を終えると店を開けているので、生活リズムが崩れない限りは自然とそれが定刻になるのだ。

 しかし、今日は少しばかり事情が違った。
 学園長からの呼び出しに応じ、何故か仕事を押し付けられて、図書館島でひと暴れして帰りついた頃には既に日が昇っていた。
 どうせ開店日などと決めているわけでもないので休んでしまってもいいのだが、その辺いい加減に済ませるのが我慢ならないのはもう動かしようのない自分の性分だ。
 それで結局大して客も入らないのだからなんとも虚しいことだが、日も暮れて店を閉める直前、彼女はやってきた。

「おや、もう閉めるのかい?」

 その少女、というにはあまりに大人びた褐色の女性は、那波や村上と同じ制服を着ていた。
 那波も中学生離れしすぎていたが、彼女もなかなか現実味がない。
 制服を着ていなければ中学生であるなど信じられないだろう。
 いや、着ていても正直信じられないのだが、那波という実例を目にしてしまった以上、この世界はそういうものなんだと認識する他ない。
 ただ、異質なのは彼女の纏う雰囲気。自分と近しい空気、戦場の残り香を感じるのだ。

「客だと言うのなら歓迎するが」
「なら、客ということにしておこう。刹那からの紹介、と言えば分かるかな?」

 カランカランという鈴の音を鳴らしながら士郎はこの訪問の目的を考える。解析するに、一丁の小型拳銃を所持しているのだが、戦意のようなものは感じられない。
 俺が開けたドアに彼女は滑り込むと、何も言わずカウンターについた。

「注文は?」
「ケーキセットを。ドリンクはコーヒーで」
「少し待っていてくれ」

 コーヒーの準備をする俺の背中に、少女? は語りかける。

「単刀直入に尋ねるが、一体どうやって魔法先生たちを無力化したんだ?」
「それは、一月前の事を言っているのか?」
「ああ。あの場に私はいなかったのでね。この学園最強の存在が入れ替わったというのなら、それがどんな人物が興味が湧くというものだろう?」

「何も、私が最強というわけでもないさ。私は学園長の実力を知らないし、タカミチに聞いた話では吸血鬼の真祖もいるのだろう? 流石に真祖相手では私も勝てる気はしないな」
「その真祖は力を封印されてるから、事実上貴方がトップになる。学園長も実力者とはいえもう高齢だ。前線に出てくることもないだろう」
「仮に、それが真実だとしても、得体のしれない者が最高戦力であるなど認めるわけにはいかないのが組織というものだ。一応、私の能力はタカミチの下、権限は魔法先生の最下級ということで登録されている。特に不満はないがね」
「へえ、意外だな。ならば何故、この麻帆良に?」

 俺はケーキを切り分けながら答える。

「なに、偶然の産物というヤツだ。事故で転移した先が此処だったというだけの話だ。そもそも行くあてなどないし、目的を達するにはここの図書館島は有用だったのでな。居座ることにした」
「ほう。目的、ね。確か図書館島を狙うアーティファクトハンターの類も、時折賊として侵入するという話だが」
「ふ、そのような輩ではない、と言ったところで信用はして貰えないかな?」
「いいや。私の勘が、貴方はその程度ではないと告げている」
「それは、女の勘というヤツかな?」
「いいや。戦士の勘、だよ」

 少女は不敵に笑う。その笑みを見て、ようやく士郎はこの学生が完全に興味本位で来訪したのだということを理解した。

「ケーキセットだ」

 苺のショートとコーヒーを差し出す。

「随分と慣れた手つきだったが、本職なのか?」
「いや、趣味のようなものだ。本職は鍛冶屋さ」

 へぇ、と頷きながら、少女はケーキを口に運ぶ。瞬間、少女の顔が年相応に綻んだ。

「これで本職ではないとは。転職したらどうだ」
「そこまで褒めてもらえると嬉しいものだが、生憎とそれはできないな」

 俺も笑みを返しながら冗談っぽく首を振る。殺伐とした会話から一転、和やかな空気が流れた。
 しかし、落ち着いて見てみるとこの少女、なかなかの手練だった。
 頬を緩ませ甘味に舌鼓を打っているように見えて、俺への警戒を解いてはいない。
 その右手は常に一息で拳銃へと届く位置から離れないし、それを悟らせない自然な動作も心得ているようだ。
 まさしく常在戦場を体現しているらしい。
 戦士の勘、というのはあながち間違ってもいないのだろう。最強だと何だのという話は的外れではあったが。

「それで。目的とやらは黙秘かな?」

 ケーキを半分ほど消化し、彼女は蒸し返した。

「お互い名前も知らない間柄で話すようなことではないだろう」
「そう言えば忘れていたな。私は龍宮真名。麻帆良学園女子中等部2-Aの生徒だよ」
「俺は衛宮士郎。今は寂れた喫茶店のマスターだ」
「今は、ね。昔は何を?」
「特定の仕事に就いたことはない。路銀稼ぎにアルバイトをしていたくらいだよ」
「へぇ。料理関係の仕事で?」
「まあ、賄いぐらいならやっていたが。本格的に修行とかはしてない。そんな暇はなかったしな」

 龍宮がコーヒーに口をつける。一方こっちは手持ち無沙汰で、余裕があるものだからのんびりと目の前の人間を分析していた。
 いや、正確には自分自身を。
 俺は、自分がいつもよりもフランクに会話している事を自覚していた。
 アーチャーのような話し方ではなく、衛宮士郎本来の話し方に近い。

 一つの要因として、中東地方に滞在していた期間が長かった故にあの地方には知り合いが多く、似た気質を感じる龍宮には親近感を抱いてしまうということ。
 中東出身なら無条件にというわけでもないが、敵意もなくただの興味本位となるとつい気が緩んでしまう。
 おそらくだが、刹那やらガンドルフィーニやらが見たら多少の驚きを持つ程度には、俺はべらべらと情報を吐き出してしまっているだろう。
 もっとも、俺にとって知られてはいけない事と言うのは己の扱う魔術や異世界人であるといったことであり、無駄に疑われない程度には語る方が危険度は少ない。
 まあ、語る相手は間違っているかもしれないが。

「ところで、例の目的とやらは話してくれないのかい?」
「先ほどは大げさに言ったが、目的と言ってもそう大したものでもないんだ。語るほどのものでもないし、聞いて楽しいものでもなければ、私にそう関係がある事でもない」

 龍宮は一呼吸分の空白を溜めて、それほど興味もなかったのか話題を転換した。

「そう言えば、私は刹那とは同室なんだが、近頃の話題は貴方の事ばかりだ。一体何をしたんだ?」
「何、と言われても特に思い浮かばないな。強いて挙げれば、俺が折ってしまった刀の代刀を用意してやったくらいか」
「夕凪か。アレが折れた時の刹那の落ち込みっぷりは相当なものだったからな。複製でも嬉しかったんだろう」
「アレは譲り受けたもののようだしな。あの子なりの思い入れもあったんだろう」

 夕凪という刀は名刀であると同時に、何代にも渡って受け継がれていた式刀でもあったようだ。
 それは士郎の解析により判明したことであり、刹那も、また彼女に夕凪を譲った人物も知っていたかどうかは定かではない。
 ただ、かの名刀はそれだけの時を保ち、人から人へと大切に扱われてきた一品であるということだ。
 そのような名品を折ってしまったのは心苦しいのだが、済んでしまったことを悔やんでも仕方ない。
 もっと別の方法もあった、と言うのは容易いが、あの時はそんな余裕などなかった。

「しかし、刹那が男を話題にすることなんて初めてだったんだぞ。普段はお嬢様か剣しか頭にないような奴だからな」
「お嬢様というのは、学園長のお孫さんだったか」
「そう。近衛木乃香。私や刹那のクラスメイトで、まあ、資質はともかく一般人として生きている」

 その話は学園長から聞き及んでいた。
 膨大な魔力を保有しているが、親の意向で一般人として教育されており、その魔力を狙われる可能性もあるということで、有事の際の優先保護対象であると。
 ついでに婿にならんかだのと言い出すのには辟易したものだが。

「近衛のことは置いておいて、だ。刹那は貴方の事を気にかけているようなんだが、それについては何かコメントは?」
「コメントと言われてもな。あの刀を折ってしまったことは申し訳ないとしか」
「何も分かっていないコメントをどうもありがとう。思ったよりも面白みのない人だな」
「確かに、自分が面白い人間であるとは思わないが、面と向かって面白くないなどと告げるべきではないのではないかね?」
「それは失礼を。っていうか口調が変わってるぞ」
「私は基本的にこんな口調だ。君には何故か地が出てしまったがね」
「ふうん?」

 マズイ、と士郎は感じた。そう、アレはあの、赤い悪魔とかと同じ匂いがする笑みだ。
 しかも困ったことに、ここは自分の店で相手は客で、逃げることなんてできやしない。
 よって、性急なる話題転換を目論むっ。

「そうだ、龍宮も何か注文してくれないか。剣の類ならいい品を取り揃えているが」
「悪いけど遠慮しておくよ。私の得物は銃だしね」
「その左腋にあるものか?」

 龍宮は一瞬驚いた表情を見せると、静かに右手の位置を変えながら答えた。

「よく気づいたな?」
「見れば分かる。改造は施してあるが、30発のBB弾を発射できるエアガンだろう? そのまま使ってもダンボールぐらい貫通しそうだな」
「…どんな魔法を使ったんだ?」

 龍宮の額には汗が浮かんでいる。彼女の中に戦意が渦巻いているのが士郎には分かった。
 確かに士郎の発言は軽率に過ぎた。服の上からどこに銃を隠し持っているのかを見当てることまでなら可能だろう。
 ただ、それがエアガンであるか、何発式なのかなんて分かるわけがない。
 加えて、龍宮のそれは外見上はどこまでも本物に近いのだ。
 魔法を使ったと悟らせるのは容易い。

「企業秘密だ。少なくとも透視や読心したわけじゃないから安心しろ」
「やれやれ。これは、思ったより厄介な化け物だな」

 龍宮は右手を元の位置に戻しながら、そう毒づいた。
 その影で、話の流れを無事逸らせたことに安堵している男がいる事は秘密である。




 結局、その日龍宮は、閉店時間を一時間過ぎても帰らなかった。







龍宮「で、本当に透視じゃないのか? 透視ならば代金を請求するが」
士郎「女子中学生が身を売るような真似をするな!」(拍手)







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