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屈折領域・裏鏡


一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第2話


「得難き友人」

 喫茶『アルトリア』
 学園都市の郊外に貸し物件として紹介されていたログハウスを改装して、今日オープンする。






 喫茶店『アルトリア』の最初の客は、二人の女性……いや、片方は少女だった。

「お久しぶりです。衛宮さん」
「ああ、久し振りだな、桜咲と葛葉さん。適当な席についてくれ」

 二人はカウンター席に座った。というか、カウンター以外には二つしかテーブルはない。

「それで、用件とはなんです?」

 葛葉さんは未だに一月前での戦闘について禍根を残しているらしく、どうにも対応が冷たい。
 声も冷たい。ついでに言えば気配も冷たい。
 対して桜咲はどちらかと言えば冷たいというより無愛想だ。
 二人とももう少し柔らかい表情すれば文句なしの美人(美少女)なんだろうが、惜しい。

「一月前、二人の刀を折ってしまっただろう? そのお詫びとして、代わりを用意させてもらった」
「必要ありません。代刀はとっくに用意しています。そのような施しは受け取れません」

 にべもない。というか、ここまで嫌われてると本当に申し訳なくなる。
 剣士にとって己の体の一部とも言える剣を折られるのは、何ものにも代えがたい屈辱なのだろう。
 ほぼ無尽蔵に剣を作り出せる俺には分からない感覚だ。いや、ある意味この身こそ一本の剣であるとも言えるのだが。

「まあ、そう言わず見るだけ見てみてくれないか。でなければ折角用意した苦労が水の泡だ」
「…………分かりました」

 渋々、という感じで葛葉さんが頷いた。桜咲は相変わらずの沈黙を保っている。

「持ってくるからコーヒーでも飲んで待っていてくれ」

 そう言って俺は二人にコーヒーを差し出す。
 喫茶店として営業するのに何も出さずに返すわけにもいかない……と言いつつ、これは単純に俺が二人を“お客”として招きたいからだ。
 二人の反応が良ければ自信もつく。もっとも、二人はコーヒーの感想などついぞ聞けなかったのだが。




「これは……!」
「…一体どうやって」

 それぞれ、桜咲と葛葉さんの反応は予想していたものと違わなかった。
 俺が差し出したのはかつて二人が使用していた大太刀だ。
 投影で創り出した偽物ではあるが、その性能はオリジナルにも引けをとらないと自負している。

「100%同じ、というわけではないが、それなりに再現できているはずだ。使ってくれ」
「どうやって、これを?」

 葛葉さんの問いは当然のものだろう。
 折れた剣は二人がそれぞれ回収していたようだし、そもそも修復できたとしても折れた剣というのはその時点で命が終わるものだ。戦闘に耐えうる強度は永遠に失われる。
 打ち直す事でより強くなる場合もあるが、それにしたところで一度折れたという概念はどうしようもないのだ。
 来歴、剣が辿った歴史は、直接的な性能に関係はなくとも重みを失くす。折れた剣は軽いのだ。どうしようもなく。

「企業秘密、というやつだ。これを商売にしていくつもりでね。今回は全面的に私の落ち度だから無料だが、以後は料金を頂く」
「確りしてるんですね……しかし、どうやってこれほど精巧なものを…」

 桜咲はさかんに首を捻っている。まぁ、その気持ちは分からなくもないが。

「それで、どうかな?使って頂けるようなら有り難いのだが」
「ええ、これほどのものならば以前と同じように扱えるでしょう。重さまで全く変わっていません。純粋に驚きです」
「それは良かった。桜咲は?」
「ええ、こちらから感謝したいぐらいです。夕凪は恩人から預けられたものでしたから」

 桜咲は普段と違いずいぶんと柔らかい表情だ。
 しかし、真剣を見て表情が柔らかくなるってのもどうなんだろうな?

「では、一応使用上の注意をしておこう。その刀は剣としての機能を保つことが出来なくなるほどのダメージを受けた場合、自動的に私の元に転移する。破壊されたらもう一度私の所に来るまで使用できないからその点にだけは注意して扱ってくれ」
「衛宮さんの所というのは、この店ですか?それとも貴方自身ですか?」
「一応、私自身ということになるかな。破壊された本体はこの店でもない別の場所に送られるが」

 ちなみに、真赤な嘘だ。
 俺が投影した剣は破壊されれば融けるように消える。
 ただ、こう言っておけば俺の能力がアポーツだと思われるし、余計な詮索を受けないで済む。
 何より、自身の情報は極力漏らさない方がいいだろう。どんな状況であったとしても、可能な限り。相手は、身内というわけではないのだから。

「それと、一つ個人的な頼みがあるのだがいいかな」
「何ですか?」
「いや、なに。武器の修繕や購入を希望する者がいたら私を紹介してほしいのだよ。喫茶店はあくまで副業、カモフラージュのつもりなのでね。それに、魔法先生や魔法生徒の戦力が強化されるのは良いことだろう」
「この学園にはあまり戦士系の魔法使いはいないですから、それほど需要があるとは思えませんが……一応声はかけてみます」
「ありがたい。期待して待つことにするよ」

 葛葉さんは席を立つ。
 コーヒーは既に空になっていた。

「ごちそうさまでした。では」

 一礼の後に振り返ることなく去っていく。実に、彼女らしいと思った。
 その反面、現れる時は一緒だったのに、未だ動こうとしない桜咲に違和感を覚える。
 この少女について俺は特に詳しい事を知らないが、似たような刀、似たような剣筋であったのだし師弟の関係であると思っていた。
 師弟の関係であるからと言って、ここで葛葉さんの後を追わないのがおかしいというわけではない。
 だが、どことなく桜咲からは緊張が感じられる。
 何か、面倒な話でも始めようとするかのような。

「で、何故残ったのか聞かせてもらってもいいのかな、桜咲」
「コーヒーがまだ残っていたから……では、いけませんか?」
「いいや、構わないさ。ここは喫茶店だからな」

 桜咲は無言でコーヒーを啜った。
 何かを切り出そうとする雰囲気を出しているのに一向に話し出さないのは、彼女にとっても言い出しにくい内容なのだろうか。
 タカミチが来ると言っていた時間まではまだあるし、彼女がのんびり過ごしたいというのなら店主としては一向に構わないのだが。

「あの、衛宮さん。何で喫茶店なんて始めたんですか?」

 桜咲の質問は、おそらく本題ではないのだろう。
 場繋ぎの話題だと分かってはいたが、俺は一月前を振り返って語りだした。

「ん?ああ、それは――」





















「情報提供、かね?」

 近衛翁は、疑いの目で俺を見る。

「ああ。名前やら素性やら、大体のところは思い出せたのだが、どうにも私の記憶している知識とこの環境に齟齬がある。その齟齬を埋めなくては、行動の指針も立てられないのでな」

 広場から移動して学園長室にて。俺は近衛翁と高畑相手に取引をしていた。

「齟齬とは具体的にどのようなものなんじゃ?」
「まず、私はこの学園の事を知らない。それに、あなたたちが使う術式も初めて見るものだ。
 裏の世界を生きて久しいと思っていたが、これだけの組織を知らないということはまずないと思うのでな。
 どうにも、私は記憶を弄られたのではないかと考えたのだ」
「ふむ。確かにそれならばそう考えるのは妥当じゃて。情報収集を第一に考えるのも良策じゃろう。
 つまり、君が望んでいるのは情報を提供できる人材ということかの?」

「いや、調べる手段があるのなら自分で調べる。私が欲しいのは身分と衣食住だ。
 この学園に留まるにせよ去るにせよ、ある程度自由に行動できなければ話にならん。
 私の記憶にある私の素性が正しいとしても、戸籍なぞとうに抹消されているしな」
「それは難儀じゃのう。よかろう、君にこの学園の警備員の仕事を与えよう。給料も払うし職員寮も紹介する。
 情報収集ならこの学園には大きな図書館があるからの、そこで大半の事は調べがつくぞい」

 そこで、タカミチが会話に割って入った。

「いいのですか、学園長。彼は危険です」
「いいじゃろ。彼がその気ならばここで取り引きなんてする必要はないからの」
「そうだな。そんなつもりはない。大人しく監視下に入るさ」
「ほ。それはつまり、ワシらの監視を誤魔化す自信があるということかの?」

「参ったな、そういう風にも聞こえるか。私は単純に、余計な争いを起こすつもりはないと言っているだけなんだが。
 監視は当然の処置だし、この状況で私を監視しない組織がこれほどの大きさを保てるわけがない。
 そこの男ほどの実力者がいるのがいい証拠だろう」
「素晴らしい洞察力じゃな。まあ、監視の件は置いておいて、君は病室に戻っておきなさい。
 どうせ抜け出してきたんじゃろう? 明日には退院できるように手続きはしておくから、の」
「了解した。何から何まで痛み入る。この恩は必ず返すと約束しよう」
「ふぉっふぉっふぉ。期待せずに待っているとしようかの」

 そして、俺が退室した後もタカミチと学園長は会話を続けていたようだが、俺はそのまま病室へと戻ったのだった。







 ◇








 それから2週間。俺は警備員としての仕事をほとんどすることもなく、図書館島に籠りっ放しだった。
 一度、学園に侵入しようとしている賊の退治という依頼があったので、タカミチ(おそらく監視役)と一緒に殲滅しに行ったぐらいか。
 そしてなぜ、俺が喫茶店を始めることになったかと言うと……






「まあ、簡単に言えば趣味だな。しばらく……少なくとも数年はここに留まろうと思うのでね。折角だから店を持つことにした」
「何だか、あの時と同一人物なのか疑問に思えてきますね。あれほどの戦気を持つ人が、のんびりと夢を語るなんて」
「別に、店を持つのが夢だったわけじゃないんだがな。
 ただ、昔の戦友が……店を出してみたらどうかと勧めてくれたことがあってな。いい機会だと思った」

 この店の名前にもなっている彼女だったな。最初に店をどうのと言い出したのは。
 彼女と過した短い時間の中の、他愛のない雑談だったけれど。
 彼女の事は、今でも思い出せるから。
 それに。
 あの時、もしも桜を救えていたのなら。
 二人の店を持つ、なんて、幸せ過ぎる未来があったのかもしれない。
 そんな事を、考えもした。

「でも、調理師免許とかはどうしたんですか?」
「ああ、その辺は学園長を脅して用意させた。借金はできたが、まあのんびり返していくことにするよ」
「脅したって、学園長をですか?」
「ふふ、学園長も人の子ということだ。身内、特に孫娘は大事と見える」

 シュン、と空気は冷えた。
 激情渦巻く瞳で殺気を振りまいているのは、もちろん桜咲。
 冷静になろうとして、その努力を途中で放棄したような塩梅。
 まだ15にもなっていない中学生がこれだけの殺気を放てるとは末恐ろしいものだ。

「もし、貴方がお嬢様に危害を加えたというのなら――」
「斬って捨てる、か? 心配しなくても君の大切なお嬢様には手を出してないさ。
 それどころか姿を見たことさえない。私が知ってるのは学園長に孫娘がいるってことだけだ」
「それでも、貴方がお嬢様に害を成さぬとは限りません」
「確かに、そうだな。言葉とは信頼に値するものではない。信用していいのは、己の目だけだ。君には、俺がどう映る?」
「私、は―」

 桜咲は言葉に詰まる。殺気もいくらか和らいだようだ。
 真剣に悩む桜咲が少しだけ可哀想に思えてきたので、ここらで誤解を解くとしよう。

「いや、いい。第一印象が最悪だったのは理解しているからな。信頼は、時間をかけて培うことにするよ」
「それは、今後お嬢様には手を出さない、ということですか?」
「いや、それは違う」

 一瞬解けかけた桜咲の緊張が、再び頂上まで強くなる。それも、当然の事ではあるが。

「それでは意味がな――」
「守る為に手を出すのも禁じられては敵わないからな。もしもの時は、助っ人として働こう」

 拍子ぬけしたように、桜咲は浮きかけた腰を戻した。
 その眼には、からかわれた事に対する怒りなのか、どう好意的に見ても正には見えない負の感情が見え隠れしている。

「それとな。学園長を脅した、という件だが。少し言質を取っただけだ」
「言質、ですか?」
「ああ。孫娘には聞かれるわけにはいかない会話をな、録音してやった」
「それはその、どういった内容だったんですか?」
「聞きたいのか?」

 少し顔を赤らめながらも、彼女は頷いた。

「だが、ダメだな。学園長には誰にも話さないという契約をしている。残念ながら、学園長の慌てっぷりも聞かせてやれない」

 いやはや、本当に残念だ。あのオロオロした様子は学園長に謀れたことのある奴なら誰でも聞きたがるだろうに。

「……残念だな。それは僕も聞いてみたかったのに」

 タカミチが入口の鐘の音を響かせて来店していた。
 来店と言っても、ここが喫茶店であることを知っている人は、まだほとんどいないのだが。

「やあタカミチ。思ったよりも早かったな」
「うん、仕事が早めに終わったからね。君ともゆっくり話してみたかったし」

 士郎とタカミチはこの一月でそれなりに仲良くなっていた。
 そもそも、士郎には戦友と呼べる男友達が全く存在しなかったし、タカミチにしても自分と同年代(精神的には)で自分より遥かに強い仲間というのは久しぶりだった。
 そしてお互いに、『魔法使いとして落ちこぼれ』というシンパシーを感じていることも関係している。

「おや、刹那君も来てたのかい?」
「はい。先月に折られた夕凪の複製を受け取りに」
「夕凪の、複製?」

 タカミチは士郎に視線を移す。説明を求めているようだ。

「俺が折ってしまったものだしな。幸い刀剣の複製技術は人より上だと自負している。
 時間はかかってしまったが、それなりのものができたと思うぞ」

 タカミチは表面上納得した仕草を見せる。士郎自身、タカミチが訊きたい内容とは違うということを理解した上で、あえてぼかして話したのだ。
 そしてタカミチも士郎が話せないのだと言うことを理解したから、少なくとも納得した様子だけは見せたのだろう。
 刹那と隣、先ほどまで刀子が座っていた席にタカミチは納まった。

「では、私はそろそろ失礼します」
「もう帰るのかい? 僕は別に構わないよ」

 タカミチは引き留めるが、刹那はそれを断った。

「目的は達しましたから。それでは先生、また明日」
「うん、また明日」

 背を向けてドアノブに手をかけた刹那に、士郎は声をかける。

「桜咲。その夕凪の感想、今度会った時に聞かせてくれ」

 分かりましたと頷いて、桜咲は出て行った。
 何故か、俺とタカミチの間で沈黙が流れる。

「……追い出してしまったかな?」
「まあ、いいんじゃないか。帰りたいというのを無理に引きとめても仕方ない」

 それはそうだけど、と。タカミチはどうにも納得しない。
 だが、個人的にはもっと優先すべき話題がある。

「何か頼んでくれないか。これでも一応今日から開店ということになっているんだ。
 客が葛葉さんと桜咲の二人だけじゃあ淋しいからな」
「じゃあ、マスターのお勧めをお願いしようかな」
「任せておけ。昼はまだ食ってないんだろう?」
「うん。でもそんなにお腹は空いてないから軽めでいいよ」
「了解」

 軽め、ということなのでクラブサンドを作ることにした。パスタでもいいが、紅茶にしろコーヒーにしろ、こちらの方が合うのは確かだ。
 調理の手を緩めることなく、俺は疑問を正直に口に出してみた。

「なあ、タカミチ。お前は確か女子中等部の教師をやってたよな?」
「うん、そうだよ」
「なら、もしかして桜咲の担任だったりするのか?」
「ははは、よく分かったね。刹那君だけじゃなくて、他にもいろいろワケ有りの生徒を固めてあるんだ。だから僕が担任をしてるんだけど」
「なるほど。タカミチでなければ担任が務まらないクラスというのも恐ろしいな」

 タカミチは苦笑する。いい子たちばっかりなんだけどね、と。

「元気すぎる、か?」
「そうだね。いい事なんだけど」
「それはさぞかし、桜咲はクラスで浮いてしまっているんだろうな」
「やれやれ、君の洞察力には感服するよ。まあ、彼女の場合進んで独りになっているフシがあるけどね」
「真面目で義理を通すのは彼女の美点だが、頑固なのは玉に瑕だな」
「君が言えた義理でもないだろうに」
「クッ、違いない」

 二人は笑い合う。
 タカミチはおそらく、この前の仕事の事を思い出しているんだろう。
 士郎とタカミチがちょっとした口論になった時だ。

「君も慣れてきたみたいだね。この麻帆良学園に」
「最初は驚きの連続だったけどな。さすがにそろそろそういうモノなんだと理解した。
 一番信じられないのは学園長が交じりっ気なしの人間だと言うことだがな」
「ハハ、士郎も口が悪いね。学園長も傷つくよ?」
「別に構わないだろう? あの爺さんは多少傷ついて自重してくれた方がいいさ。それに、喜ぶ人間も多少なりといるはずだ」
「まあ……いやいや、あれでも人望もあるし尊敬されてるんだよ」
「確かに、そうでなければこれ程の組織のトップを務めることなんてできないだろうけどな」

 のんびりとした雑談を、調理の合間に続けていく。そう時間もかからずに、メニューにはないクラブサンドセットが出来上がる。
 クラブサンドに舌鼓を打ち、食後のコーヒーまで済んでようやく、タカミチは本題を切り出した。

「君に頼まれていた件だけど、まだ許可はできない。この前みたいな学園周辺での仕事をいくつかこなしてもらって、その後で判断するそうだよ」
「そうか。まあ、こちらとしても性急に過ぎたとは思うし、今回は諦めるとするかな」
「君の場合はほとんど偽造の身分だからね。すぐには無理だと思うよ」

 前回の仕事をタカミチと一緒に果たした後、俺はタカミチにより難易度の高い仕事、つまりは『魔法世界』での仕事を回してくれるように頼んだ。
 タカミチは既に俺の実力を十分に理解してくれていたので、この依頼に対して尽力してくれている。
 だが、魔法世界に行くには面倒な手続きが必要になるらしい。
 その手続きをパスさせるには、現状では実績が足りなさすぎるということなのだろう。ゴリ押しを裏付けるものが無ければ学園長の信用問題にも関わる。

 故に今回の処置は納得できるし、予想していたものでもあった。
 だが、諦めるつもりなど微塵もない。
 正義の味方を目指して足がき続け、結局捨てきれなかった理想のために。
 その為に、多少のリスクは受け入れる。それが、必要な事ならば。


 この学園は居心地が良かった。
 会う者みな善意を持ち、活力に満ち溢れている。
 つまり、この場所、この土地が好きだった。好きになった、というべきか。
 だから、どうせ身を寄せる場所などない自分は、ここに定住してもいいなどと考えている。
 かつての、いや、つい数か月前の自分からは、信じられないような気持ちの変化だ。

 だが、それでいいとも思う。今更、全てから逃げるような生活を望むはずもない。全てに挑み、そして敗れた人間は、大人しく骨を埋めるべきだ。
 でも、やはり俺は諦めきれない。いいや、もう、それ以外の生き方を知らない。
 この命が尽きるまで、ただちょっと、この世界の流儀に合わせる形で、信念を貫く。

 だが、それを叶えるためには信頼できる人間を作らなければならなかった。
 信用でき、なおかつこの学園でそれなりの地位にあり、しかも責任者ではない人間。
 総合的に、高畑・T・タカミチ以外には有り得なかった。
 ウマが合う、というのも大きな一因にはなっているが。
 どこか似たところを見つけ出せたからかもしれない。
 己の事情を、話しても大丈夫だと思ったのは。

「タカミチ。これから話すことは他言無用だ。学園長でも、家族であろうとも伝えて欲しくない。
 それを守れるのなら……俺は、全て話そうと思っている」
「全部というのは、君の目的のことかな?」
「目的なんて大層なものはないさ。ただ、絶対に譲れない信念があって、俺はそのためだけに生きる。
 俺が話すのは、俺の過去と秘密……かな」
「秘密、ね。何故、それを僕に?」

 タカミチの眼は、こちらを探るものだ。
 それは即ち、まだまだこちらの事を理解などできない。
 信用できないし信頼もできないという事を表している。

「信頼できて、信用してくれる人間が欲しい。
 こちらに来て一番仲がよくなったのはタカミチだし、学園長は学園長としての責任から俺を切り捨てなければならない時もあるだろう。
 そういう立場を抜きにした人間関係が欲しいんだ」
「要するに。友達になってくれって事かな?」

 友達。その単語に、俺はしばし呆然とした。
 何と、懐かしい言葉だろうか。
 思えば、俺には故郷を旅立ってから友と呼べるヤツはいなかった。
 特に同性は。
 裏切られることも多かったし、裏切ってしまったこともあった。
 結局自分から壊してしまっているのでどうしようもない。
 理想と友情を天秤にかけて、俺は必ず理想を選んできただけのこと。
 笑いが、漏れた。
 単純にうれしかったのかもしれない。
 人間関係を、すぐに友達と訳せる人に出会えたのが。

「ああ。よければ、俺と友達になってくれないか――?」





 その日。本当に久しぶりに、友達ができた。












タカミチ「そうか、士郎……そんなに友達がいなかったのか」
士郎「違う! これでも学生時代は、慎二とか美綴とか後藤君とか……」
タカミチ「三人、だけなのかい?」
士郎「いや、本気で凹んできたからこの話題はこの辺にしよう……」(拍手)




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>>来歴、剣が辿った歴史は、直接的な性能に関係はなくとも重みを失くす。折れた剣は軽いのだ。どうしようもなく。

 1度オーディンに折られた後も鍛え直されてファフニール竜を討伐したという伝説を作った北欧神話のグラムのように、折られて尚強力な武器の伝説は少ないながらありますよ。 

2014.05.27 | URL | トーリスガリ #FmpzBwwE [ 編集 ]


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