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屈折領域・裏鏡


一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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番外編:19.2話


「高音と愛衣の弟子入り日記」

 高音は悩んでいた。
 先の敗北、というよりは、勝負の舞台にさえ立たせて貰えなかった、あの夜。
 自分の力不足を痛感した。
 いや、自分の無力さに絶望さえした。
 彼にとっては、自分なんて正しく路上の小石でしかない。
 どこまでも追いつけない、追いつけるようなビジョンが浮かばない。
 空を突き抜けているんじゃないかと思えるぐらいに高い壁に、人生初めての挫折を味わった。
 だが、転んでもただでは起きないのが、強者の、そしていつか輝ける者になる為の条件だ。
「メイ」
「……」
「私、本格的に衛宮さんに弟子入りします」
「ええっ、でも、お姉さま。今だってちゃんとお師匠は……」
「それでも、です。あの人に戦い方を学んで、それであの人を倒せるとは思えないけど。でも、きっとそれが一番近道だと思うのよ」
「お姉さま……」
「協力、してくれますか?」
「勿論ですっ!早速作戦立てましょう!」
「ありがとう、メイ……」
 こうして、二人の弟子入り計画が始まった。






・1日目



 夕方、お客さんが減ってきたタイミングを見計らって、二人でアルトリアに突撃した。
「ああ、久し振りだな、二人とも」
 迎える店主は、先日打ちのめした事など忘れ去っているかのように普段通り。
 その態度が、高音の敗北感を更に深めた。
「今日は、お願いがあって来ました」
「ふむ、何だ?」
 本来、裏に関係する事柄ならば、喫茶が閉店してから、というのが衛宮士郎に対する時の不文律になっている。
「私たちを、弟子にして下さい!」
 よって、この時間帯に現れたという事は、士郎としては表の話だと判断するのが普通であり、よもやこんな内容だと予想できるものではなかった。
「それは、以前にも断ったはずだがな」
 昼間から、ある種滑稽な依頼をしている女子高生に対して、あえてその事には触れずにカウンター席を促した。
 そもそも、衛宮士郎が魔法使いに対して教えられることなどない。
 なぜなら、士郎は魔法が使えない。厳密な意味でも、この世界の常識的な意味でも。
 ならば、魔法使いに対して教えられる事などないし、教えた所で悪影響にしかならないだろう。
 士郎がタカミチを弟子として魔術を教えたのは、タカミチが魔法使いでなかったからに他ならない。
 刹那の稽古に付き合ったのは、刹那が剣士であったからだ。
 基本的に呪文詠唱が前提になってくる魔法使いの戦闘スタイルに、助言できる事などない。
 だからこそ、以前頼まれた時も遠まわしに断りを入れたのだが…。
「それでも、私は貴方に追いつきたいんです!」
「無理だな」
 士郎は冷酷に宣言する。
 高音・D・グッドマンでは、いかなる努力の果てであろうとも、この背中さえ見る事は敵わない、と。
「……え?」
 士郎に対して、厳しくも思いやりがあるというイメージを持っていた愛衣は戸惑った。
 しかし、戸惑いという点で言えば、高音の方がダメージが大きかっただろう。
 この人は、努力と、その過程だけは肯定してくれる人だと信じていた。
 あの日、正義を議論した彼が唯一認めたのは、ひたむきな努力だけであったのだから。
「そもそも、生まれが違う。君は、君たちは、私と同じ道を歩む必要などないし、歩んではいけない」
「生まれ、ですか?」
「私は、元々裏の世界など何一つ知らず、関連のない家に生まれた。今こうしてこの世界にいるのは、単なる偶然に過ぎない」
 高音にしても、芽衣にしても、両親共に魔法使いであり、魔法使い以外の道など考えた事もない。
 元々一般人である人間が裏の世界に踏み込もうとする時、そこには劇薬が必要だ。
 衝撃的な、人生を変える程の出会いが。
 生まれた時から魔法使いとしての正道を知っている人間が、わざわざ邪道を歩む必要はない。
 邪道とは、本来それしかない者に許された、唯一の道であるのだから。
「君たちの前には幾つもの道が拓けていて、どれを選ぶ事もできる。これは経験談だが、光ある道を進めるのなら、光の中で生きた方が、より多くを救えるんだ」
 士郎は、そう言いつつも、そんな事は信じていない。
 光ある場所で救えるのは、光だけだ。
 士郎が救いたい者たちは、理不尽な影に侵食された者たちだったのだから、影にならなければ救えなかった。
 でも、光の中で、光を救う者たちがいるからこそ、士郎は影の中で理不尽を殺せる。それも、また一つの真だった。
「しかし、しかしそれでも、私たちは貴方の強さを学ぶことができる。違いますか!?」
 高音は諦めない。ただ、諦めない事を頑張っている。
 ここで折れたら、もう前には進めないという強迫観念が、高音を責め立てていた。
 そして士郎は、それを知ってか知らずか、厳しい声で言った。
「今日は帰れ。営業の邪魔になる」
「士郎さん!」
「帰れ、と言っている」
 士郎が凄味をきかせれば、二人に抗う術はない。
 そもそも、士郎の言っている事は全くの正論で、事実二人は営業妨害と取られてもおかしくない事をしているのだ。
 今更何食わぬ顔で客として居座る事ができるような神経を、生憎二人は持ち合わせていなかった。
「また、来ます」
 それさえ迷惑だと、分かってはいたけれど。
 諦めきれない思いの丈だけを残して、二人は店を後にした。








・2日目




「…………」
「…………」
「……………………」
 無言。というより無視だった。
 まあ、紅茶一杯で2時間もカウンター席を独占し続ける客など迷惑この上ないのも事実ではあるが。
 二人は、話を再び蒸し返すこともできないまま、こうして座っていることしかできない。
 二人が顔を出して席についた時に見せた、とても嫌そうな表情のせいでもある。
 だがしかし、一応は客としてそこにいて、他の客の迷惑となるような行動を起こさないというのなら、士郎としても追い出す理由はない。
 実際の所、士郎はそこまで機嫌が悪いという事はなかった。
 ただ、純粋な二人の少女が、少しばかり眩しかっただけだ。
 二人に士郎なりの戦闘理論なんていうものを教え込むのは、二人にとっては不幸でしかないという士郎の考えは変わっていなかったし、何よりそんな責任を背負い込む事は出来ない。
 士郎は、麻帆良学園においていつ放逐されるとも限らない身の上であるし、放逐されるような行動でも士郎が必要だと判断したのならば躊躇せず実行する。
 修行が終わるまで、確かな形を為すまで見守る事ができないのならば、初めから口を出すべきではないだろう。
 そんな思いが、考えが士郎にはあった。
 こうして、無視している内に諦めてくれればいい、と。
 もしも諦めてくれないのならばどうするべきか。その答えを、無言の中に探しながら。






・3日目


 そろそろ、士郎にも高音たちの狙いが『三顧の礼』にあるのだという事が分かってきた。
 今日も高音と愛衣は最初に注文だけを済ませると、じっと士郎を見つめたまま動かない。
 それに対して、士郎は鉄面皮で返す。流石に、少女の視線程度で怯む士郎ではない。
 だからか、実際の所高音たちは焦っていた。
 士郎の表情には欠片の変化もなく、結局昨日もお客に対する対応のみで帰された。
 ある意味、今までは割と親密に接してくれていたのだ、という事に気づいてしまって、客に対する態度というものが苦しくなってしまったのは高音だけではなく愛衣にしても同じこと。
 だが、勇気を出して話を切り出してみても、
「衛宮さん、先日の話ですが……」
「失礼ですが、プライベートな話でしたら営業時間外にお願い致します」
 と、今まで培った関係など欠片もないのだと、そんな事を考えさせるような対応だった。
 焦る以上に、これでいいのか、と考えてしまう。
 こんな風に、普通の会話さえできない状態になってしまうのなら、せめて“相談相手”としての立場で接してくれるように、今までの関係を修復すべきなのではないか、と。
 特に愛衣にはその傾向が強い。口にこそ出さないものの、しきりに高音の表情を窺っていた。
 だが、高音は諦めたくなかった。
 一度正しいと信じて始めたものを、途中で放り出すなんて事は出来ない。
 それが間違っていると気付いたわけでもなく、ただ居心地が悪いから、なんて理由で信じた事を放り出すような人間が、立派な魔法使いになれるわけがない、と。
 だから、今日も高音は閉店までカウンター席を独占し続けた。






・4日目

 そんな二人に転機が訪れたのは、挫けそうになる心に喝を入れていざ士郎との睨めっこに臨もうとしていた時だった。
「そこのお二人。衛宮士郎殿に弟子入りを希望しているというのは真でござるか?」
「誰ですか、貴女は」
 店の前で気合いを入れようとしていた高音は突然の横槍に機嫌を悪くする。
 だが、『衛宮士郎』と『弟子入り』というキーワードを無視する事はできない。
「拙者も士郎殿に弟子入り……というか、稽古をお願いしている者。だが、多忙を理由に断られ続けているのでござる。できればお二人と協力したい所なのでござるが……」
「それは渡りに船ですね。是非よろしくお願いします。私は高音・D・グッドマン。こちらは佐倉愛衣です」
「うむ、拙者は長瀬楓。楓と呼んで下され」
「あの、よろしくお願いします」
 と、自己紹介を済ませた上で作戦会議。

「成程……しかしそれは私たちにも適用されるでしょうか?」
「勢いでいけば大丈夫。と、言いたい所でござるが……」
「でもでも、睨めっこよりはいいですよ、お姉さま。やる価値はあります」
「確かに……ではそれでいきましょう」

 入店後、いつもの席を陣取る高音と愛衣。その高音の隣に楓、と座ったのだが。
「長瀬。生憎その席は指定席だ。佐倉の隣に移ってくれないか」
 士郎の注意により、愛衣を真ん中に据える形になった。
「で、注文は?」
「拙者はあんみつで」
「私はレモンティーをお願いします」
「カプチーノを」
 右から注文を取って、士郎はそれきり無口な喫茶店のマスターとしての姿勢を崩さない。
 いつもと同じ、話かけるのが難しい雰囲気だったが、楓はエアリード機能は未搭載ですと言わんばかりに本題を切り出す。
「以前お願いしていた稽古の事でござる」
「……一度手合せはしただろう。私は約束を守った。文句はあるまい?」
「一度知った蜜の味は、中々忘れられぬものでござるよ」
 その言い草に、高音も愛衣も驚きを通り越して呆れた。彼女たちが目指す“立派”というベクトルとはあまりにかけ離れた自分本位。
 だが、士郎はふっと、力を抜くようにため息をついて。
「よかろう。この貸しは大きいが、払い切れるか?」
「無論。商談成立、でござるな」
 あまりに呆気なく話を纏めてしまった。
 高音も愛衣も、あまりの展開に混乱中で、何がどうなっているのかサッパリだ。
 まず、トントンと楓に脇腹を小突かれた愛衣が復活し、自分たちも便乗しようと口端を切る。
「あ、あのっ。私たちも一緒にお願いします!」
 その声に、高音もようやく再起動。
「私たちで払えるものならば、払います。ですから、」
「いい。その先は言うな。……ほら、注文のあんみつとレモンティーとカプチーノだ」
 まだ、確固たる答えを貰っていない二人はもやもやと落ち着かなかったが、流石にこれ以上の追及は機嫌を損ねるだけである事は分かっているので黙るしかない。
 細々と、無言で注文したドリンクで喉を潤す。一人だけ、楓だけはいつもの細目のまま、笑顔を保っていた。
 三人が注文した物も食べ終わり飲み終わり、士郎も別の客の注文を処理している中、またも居心地悪く待たなければならないのかと若干鬱になりかけた時、背中を見せたまま士郎が呟いた。
「週末……土曜日は三人とも空けておけ。長瀬、場所の用意は頼む」
「は、ハイッ!」
「了解でござるよ」

 結局、何故受け入れてくれたのかは分からないまま、こうして高音と愛衣、ついでに楓は士郎に弟子入りを果たした。














楓「黙っておけ、と言われていた事なのでござるが……」
高音「何です?」
楓「実は二人の事を教えてくれたのは士郎殿でござる。あれでなかなか、可愛い所もあるようでござるな」
高音「そう、ですか……私たちの思いが、伝わっていたという事でしょうか」

愛衣「(感動している所悪いけど、士郎さんに可愛いって形容詞はちょっとなぁ」
士郎「口に出ているぞ、佐倉」
 
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