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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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番外編:17.8話


工房『エミヤ』の注文履歴④<とある女剣士の場合>



 バイト・神楽坂の参入により、幾分楽になった土曜日の喫茶『アルトリア』。
 神楽坂、明日菜は昼のピークの後、賄いを食べて帰って行ったが、元々夜はあまり客が多いわけでもない。
 今日ものんびりと慣れた手つきで閉店作業を進め、最後の客を送り出して一息つこうと自分用の紅茶を淹れた時、珍しい客が訪れた。
「こんばんは、衛宮先生」
「私はもう先生ではないよ。葛葉先生」
 葛葉は、カウンター席の中央に腰を下ろす。彼女には珍しく、緊張しているような印象を受けた。
「しかし、珍しいな。明石教授や神多羅木は一緒じゃないのか?」
「いえ。今日は私用ですので」
 声の調子は普段と変わらないが、どうにも違和感がある。
 そもそも、葛葉一人でこの店を訪れるのは初めての事だ。
 今まで、明石に誘われたのか神多羅木に付き合ったのか、教師陣の誰かと一緒に来店する事は何度かあった。
 しかし、単身乗り込んでくるのは初めてであり、それが緊張して、となると怪しい。
「それで、一体何の要件かな。わざわざこの時間帯に、そんな物騒な物を持って」
「別に、ここに来る為に持ち出したわけではありません。基本的に、神鳴流は帯刀していますから」
 しかしそれは嘘だ。神鳴流とは言え、現場から退いた人間はそこまで常の緊張を保っているわけではない。
 詠春の場合は関西の長としての役目を優先し、だからこそ夕凪を桜咲に託したのだろうが、葛葉、というより女性の場合は少し事情が違う。
 女性の場合は、結婚により引退が認められるのだ。
 目の前の葛葉も、そうやって神鳴流を抜け関東にやってきたと聞く。
 現在独身である事を考えれば……いや、その事には触れまい。
「今日は、依頼に来たのです。工房『エミヤ』に」
「ほう?」
 最初の頃は魔道具屋を名乗り、続いて鍛冶屋、最終的に工房で落ち着いた裏の名前を口に出すとは、二重の意味で驚きだ。
 何しろ、鍛冶屋よりも工房の方がそれらしいんじゃないか、とタカミチから提案があったのは僅か1週間前の事。
 それを知っている事も、わざわざ今や学園の特異点である我が店を使おうとする事も。
「それで、何を御所望なのかな」
「その前に、幾つか確認しておきたい事があります」
「ん? 何だね?」
「まず、この依頼について、例え誰であろうとも、拷問されても口外しないと誓えるか否か」
 物騒な単語に、こちらも若干の緊張を孕む。相手が相手だけに、冗談や酔狂ではあるまい。
「依頼人が望むのならば、それは構わないが。その場合内容によっては引き受けられんぞ」
「分かりました。では、次ですが」
 まだあるのか。
「貴方は本来刀鍛冶……刀剣類の作成に秀でているようですが、装備品アクセサリーの類も依頼は可能でしょうか?」
「内容次第だが。君たちが使う術式に合わせられるかが分からんぞ」
「ああ、それならば問題ありません。戦闘に使うものではありませんから」
 戦闘に使う物ではない?
 だとするのならば、俺には不向きな依頼になりそうだ。
 元々、剣から外れた物を投影するのは難しい。
 アクセサリーの類は、時間を掛けて自分の手で術を編み込みながら作った方が確実な程。
 よって、寧ろ刀なんかよりも余程材料経費は大きくなるのだが、不審に思わせない為には値段を引き下げなければならないのだ。
 正直気は乗らないが、ともかくは内容だな。
「で、肝心の内容は? 私に何を作って欲しいんだ?」
「……あの、魅了、です」
「は?」
「ですからっ、魅了の効果がかかったアクセサリーです!」
 ………………………………………。
 唖然。
 というか、時は止まった。
 カチ、カチ、カチ、という古時計の音だけが響く。
「あー、えー」
 口から出てくるのは唸り声ともつかぬ奇声だけだ。
 待て待て待て。状況を整理しよう。
 まず、葛葉の依頼内容を他者に口外しない事。その上で、装備品に類が作成可能か尋ねられた。
 で、肝心の作成依頼は、魅了の魔術効果を付与したアクセサリー。
 …………彼女も女、という事でファイナルアンサー?
「取り敢えず、今聞いた言葉は誰にも口外しないと誓おう」
「それは、良かったです。もしも喋る気配を感じたら口を開く前に斬り落とすつもりでした」
 ……何をだ。
「それで、質問なんだが。何故、わざわざ私に頼む?」
「学園外で入手しようとすると、必ず他の魔法先生に、特に明石教授辺りには感づかれますから。それに」
「それに?」
「貴方ならば、笑わずに聞いてくれるのではないかと思いまして」
 そう言って、恥ずかしそうに俯く。
 しばし呆気にとられた。全く、今日だけで彼女のイメージが随分塗り替えられてしまうな。
「分かった。そういう事ならば協力しよう。割高にはなるかもしれないが、私なりに最高の物を仕上るとするよ」
「では、契約成立という事で。どの程度時間がかかりますか?」
「何せ、初めて作るものだしな。オーダーメイドである以上は多少の時間は欲しいところだ。最速で一週間というところだろうな」
「そんなに早くできるのですか?」
「まあ、最速で、だ。それより、アクセサリの形体はどうする?」
「と、言うと?」
「私はイヤリングなどがいいと思うのだが、指輪やネックレスがいいというのなら対応できるぞ」
「貴方にお任せします。少なくとも、貴方の剣を見る限り、そのセンスは嫌いではありませんから」
「それは光栄な事だな」
 まあ、装飾の類はほぼ完全に宝具を真似ているだけだから、心苦しいものはある。
 魅了の効果はともかくとして、単純にタリスマンの類ならば既にタカミチの時に作成しているから、そこまで無理難題という事もない。
 その後、葛葉は紅茶を一杯飲んで帰って行った。全く律儀な人間である。















 そして、完成した。
 途中、魔法世界への出張、ほぼ全力の戦闘をこなしたせいで一週間では終わらなかったが、製作そのものはそう難航するものではなかった。
 結局、俺程度の腕前では異性を強く意識させる程度の効果しか発揮できそうもない。
 こちらの術式が使えればよかったのだが、それを可能にするにはとにかく時間が足りなかった。
 数年も研究すれば、多少はマシな物を作れる自信もあるのだが、これ以上の効果を求めると恐らく犯罪の域に達するので自重せねばなるまい。
 人の心を操る事を良しとする事などできないのだから、その効果も装飾品で本人の魅力を引き出すという範囲内で収まるものでなければならない。
 そういう意味で、葛葉が工房「エミヤ」に注文したのは正しかった。
 こちらの世界に存在しないはずの方式で編まれた術ならば、相当に高位か特定の異質な才能を持つ人間以外には、ソレはただのイヤリングでしかないのだから。
 デザイン的にも、芸術面で一癖あるというレベルで、一般人には珍しく感じる程度である。
 既に完成の連絡は入れてあるから、そろそろ彼女もこちらに来るだろう。
 だから、何とかして未だ帰る気配のない二人組に帰ってもらわなければならない。
「で、そろそろ閉店時間なんだが」
「何言ってるんですか、士郎さん。このお店では、閉店してからがお楽しみじゃないですか」
「そうは言うがな、佐倉。喫茶店にも工房にも用がないのなら、先約を優先するに決まっているだろう」
「先約、ですか?」
 最近入り浸るようになった二人組の年長、高音が引き継いで尋ねる。
「ああ。工房の方の仕事だ。今日、受取に来る手筈になっているから、お前たちはそろそろ……」
「その人って、女性ですか?」
「は?」
「いえ、ですから、その依頼人は、女性なのかなーと思いまして」
「別に、男だろうと女だろうと関係ないだろう。何でそんな事を聞くんだ? 佐倉」
「何となくです。何となく。で、女の人なんですね?」
「しつこいな……ノーコメントだ。今回は、依頼人に対する黙秘も依頼に含まれている。裏の仕事というのは、総じて信頼で成り立つものだ。殺されても口にする事はない」
 ここまで言えば流石に二人も引き下がる。
 最近の佐倉は何だか凄く強気で、桜の黒い部分が流れ込んできているんじゃないだろうかと恐れてしまうぐらいだが、『じゃあ確かめてみます』なんて言って襲いかかってくることは流石にない。
 もし仮に、そこまできたら正直付き合いを考え直さなければならないが、今のところ最悪の一線は越えてないようなので安心だ。
 というか、影使いなら本来高音の方が共通項多いんだけどな。名前はともかくとして。
「では、飲み終わりましたら帰ります」
 その点、最近の高音は物分かりがいいというか、以前のように議論を吹っ掛けたりはしなくなった。
 何となく張り合いがなくなったというか、自分もそれなりにあの議論を楽しんでいたという事を思い知り、何とも複雑な心境なのだが……高音が分かってくれたのならばそれでいいだろう。
「うーん、仕方ないですね」
 俺と高音を交互に窺っていた佐倉は、納得はしつつも不満気な顔で諦めた。どうにも、彼女の行動原理は高音が基準になっているようだ。
 そして、宣言通り紅茶を飲み終わった高音が席を立つ。佐倉は高音を待っていただけだった。
 だがその時、タイミング悪くも客が来た。そう、葛葉だ。
 いつもよりのんびりお茶を飲んでいた高音が悪いというか、話を引っ張った佐倉が悪いというか、来る直前に連絡も入れない葛葉が悪いというか。
 いや、俺が一番悪いのだろうが。
 とは言え、何故か硬直した時間の中で、動けたのは佐倉だけだ。
 視線で葛葉が客なのかを俺に聞いている。だから、聞かれても困るというのに。
 極力答えが分からないように、その視線には気付かない振りをしたが、状況証拠は出揃っている。
 さて、どうするか…と考えているところ、葛葉が何事も無かったかのように注意した。
「高音さんに佐倉さん。こんな時間に生徒が出歩いているべきではないと思いますが」
「すみません、葛葉先生。もう帰るところだったんです。では、衛宮さん、お代はここに置いておきます」
 一礼して去っていく高音と、それを追いかける佐倉が消えてから、漸く葛葉は席についた。
「私が来る前に人払いは済ませておく約束でしたが」
「来る前に一報入れない君もどうかと思うが。まあ、こちらの落ち度だ、すまない」
「いえ、彼女たちならば余計な詮索もしないでしょう。それで、例のものは?」
「ああ、これだ」
 完成した一組のイヤリングを差し出す。葛葉は鑑定するようにそれを眺めた。
「これが、本当に?」
「ああ。身につけないと効果がないし、男性しか対象にしていないから見ただけでは分からないかもしれないが」
「確かに美しい宝石細工ですが、これのどこに術式を埋め込んだのですか?」
「それは企業秘密というやつだ。不安だと言うのなら、テストしてみればいいだろう」
 それもそうですね、と頷いて、長い髪をかきわけて魅惑のイヤリングをつけた。
 その姿に、やたらと色気を感じる。普段は隠されている首筋、小首を傾げてイヤリングをつける姿など。
 これは、別に魅惑のイヤリングこんなもの必要なかったのではないか。そんな疑問が渦巻く中、葛葉はイヤリングをつけ終わり言った。
「どう、ですか?」
 イヤリングは髪に隠れている状態だが、それでも十分に効果があった。というか、我ながらとてもマズイものを作った気がする。
「取りあえず、日常生活でそれは使わないでくれ」
 思わず視線を逸らす。長時間見ていると、分かっていてもマズイ雰囲気になりそうだった。
「何故ですか?」
 そう言いながら、髪をかき上げ左耳を見せる。しかも、位置の関係上挑戦的な上目づかいだ。
 っていうか、絶対分かってるだろこの女!?
「フフフ、どうやら成功しているようですね。顔、赤くなっていますよ」
「なっ!?」
「冗談です」
 今度こそ本当に頭に血が上った。しかしこの状況、イヤリングがある限り勝てる気がしない。
「ソレは身につけるだけで効果があるが、直接相手にイヤリングを見せた時が最も威力が高い。使用には細心の注意を払ってくれ」
「ええ。分かっています」
 嬉しそうにイヤリングに触れる葛葉。心底先行きが不安だ。
「一つ、こちらからも条件を出したい」
「何でしょう?」
「この依頼、いかなる状況になっても製作者が私だとは口外しない事」
「当然です。私にも羞恥心というものがあるのですから」
「私が言っているのはバレてしまった場合だ。その手のモノはもう作らない方が良さそうなんでな」
「分かりました。確約しましょう」
 よし、これで何とか未来の不幸を回避できた、と思いたい。
「それで、報酬の件だが」
「ええ。分かっています。指定された口座に振り込んでおきますよ」
「頼む。最近バイトを雇ったのでな、最低限給料は出さねばならん」
「バイトですか。確かに、今までいない方が不自然でしたね」
 そうかも知れない。まあ、超包子本店よりはマシだと思うのだが。
「それでは、長居も迷惑でしょうし、これで」
 葛葉が席を立つ。まあ、迷惑という程でもないが、早く帰ってくれるのならばありがたい。
 と、ドアに手を掛けた葛葉の背中を見て、一つ思い出した。
「そうだ、一つ頼まれてくれないか?」
「何でしょう?」
「結婚式には呼んでくれ」
 振り返った葛葉は一瞬きょとんと表情をなくし、次の一瞬頬を染めた。
「ええ。必ずお呼びします」
 背を向けて一言。言い終わると同時、彼女はドアを開けて去って行った。
「やれやれ。バツイチから卒業できる事を祈っているぞ」
 面と向かっては決して言えない言葉を吐いて、士郎はいつものように地下に潜った。
 工房『エミヤ』への注文、たまにはこんなものも好いものだと、平和に未来を想いながら。





愛衣「葛葉先生だなんて、意外ですね」
高音「その、メイ、そろそろ私たちも帰りますよ。覗きなど立派な魔法使いを目指す者がしていい行為ではありません」
愛衣「でも、お姉さまだって気になるんですよね? あっ、衛宮さんが照れてますよ!」
高音「えぇっ!?」


刀子「バツイチって言うなーーっ!!」
 
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