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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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番外編:15.4話


「佐倉愛衣の相談」/「高音・D・グッドマンの憂鬱」


■『佐倉愛衣の相談』


 喫茶「アルトリア」は、マスターが副担任なんて形だけの教師職をしている間も、特別な用事がなければ平日の夜と休日は開店していた。
 いつも通りに客を捌いた平日の夜、久しぶりに閉店を待つ『関係者』の姿を見つける。
「寒くないのか?」
「ひやぁっ」
 そんなに驚くこともないだろうに、と思いながらも後ろから声を掛けたのは失敗だったと反省する。
 でも、3月になったとは言えまだまだ寒い夜を丸まって待っているくらいなら、初めから店の中で閉店を待てばいいのにといつも思う。
「あ、あの、別に私は不審者とか門限破りとかそういうのじゃなくてですね、つまり何が言いたいのかと言いますと、」
「ああ、いい、分かっている。確か、高音と一緒にいた子だな? 今日はどうしたんだ?」
「あの、その、お姉さまのことで相談が……」
 しかし、いつの間にこの店は関係者の相談所になったんだ、と思わなくもない。
 龍宮やら桜咲やら高音やら、あとはタカミチに明石教授、終いにゃ学園長までもが出没する始末。
 いや、別にお得意さんが増えるのは一向に構わないのだが、関係者は決まって閉店間際を狙ってやって来るのだ。
 最近では閉店を待つ間隠れるポイントも把握している。
「分かった分かった、話は聞いてやるからとりあえず中に入れ」
 何故か泣き出しそうにしている佐倉を、半ば無理やりに店の中に放り込んだ。
 少しだけ触れた服は、案の定冷たくなっていて、一体どれだけ外で待っていたのだか。
 それだけ真剣になっているという事は、相談というのも深刻なものなのかも知れないと考え、思考回路を一段日常から遠ざけた。
「で、確か高音について、だったか」
「はい」
 思いつめた表情で返された。
 佐倉が高音をお姉さまと呼び親しんでいるのは知っている。時々店を訪れては正義議論を吹っ掛けて自己満足の末帰っていく高音の、正義以外の話題と言ったらこの子と魔法についてだけだった。
 高音は佐倉を大切にしていて、佐倉もまた高音をよく慕っているのだろう。
 この店に、俺に相談に来るぐらいに心配できるというのは、お姉さまという呼び方などいろいろ危ない空気もあるが、良くも悪くも純粋という事で納得できる。
 しかし、前回、だいたい2週間前くらいに高音が店に来た時はそれなりに元気そうだったが、一体どうしたというのだろうか。
「最近、お姉さまがおかしいんです」
「ふむ、具体的にはどんな感じなんだ?」
「遠くを見て溜息をついたりとか、人の話を聞いてなかったり、急にダイエットを始めたりしてるんです」
「いや、それは単純に体重が増えたとか、女の子特有の病気みたいなものじゃないのか?」
 俺には良く分からないが、と付け加える。
 だって、男にとって女の子の感性というのは永遠に彼岸の存在だ。魔法使いでもその溝を埋めることなどできはしまい。されても困るが。
「いえ、お姉さま、体重も増えてるわけじゃないんです」
 何故知っている。自称妹。
「それに、お姉さまは今まで甘いものでも何でも、それ以上に運動すれば大丈夫と言って、好きなだけ食べた後にスポ根みたいなノリで修行してましたから…」
 詳細を想像できてしまう自分が嫌だ。つーか高音はスポ根とか好きそうだなぁ。
「つまり、ダイエットで悩んでいるわけではない、という事か。しかし聞く限り何かに悩んでいるのは間違いなさそうだな」
「そうなんです!それで、最近お姉さま私を置いてよくこの店に来ていたみたいなので、もしかしたら衛宮さんなら何か知っているんじゃないかと思いまして」
 むしろ原因が俺にあるかのような言い方だった。
「すまないが、力になれそうもない。2週間程前は元気だったのだが」
「え? 2週間前ですか?」
「ん? それがどうかしたか?」
「いえ、一昨日もお姉さま、お店に行こうとしてたみたいなんですけど」
「一昨日は高音は来てないぞ。一昨日は……確か、龍宮が来てたはずだ」
 今日の佐倉とは違って、閉店間際にやってきてそのまま居座り続けたのだが。
「龍宮さん、ですか?」
「ああ。知っているのか?」
「はい。一緒にお仕事をした事はないんですが、かなり腕の立つガンマンだと聞いています」
「確かに、彼女は腕が立つ。軽く佐倉の百倍は強いな」
「そ、そんなに、ですか?」
「ああ。実際に戦ったら1秒で終わるぞ」
 本当のところは1秒ではなく1発の間違いだが。そもそも、銃弾を使う必要すらないかもしれない。
「え、衛宮さんなら……?」
「それは、私と龍宮が戦う場合かね? それとも私と君が?」
「あの、私とだったら」
 凄くいい辛そうに呟く。
「まあ、やりようによっては私を倒せるかもしれないな」
 というか、そもそもこちらの世界の魔法使いは殆ど俺を倒せる可能性がある。
 こっちは物理攻撃に対する耐性は自分の肉体と、せいぜいが干将・莫耶による対物の加護くらいのもので、特別な戦場でのみ着る聖骸布も物理的な防御力はそれほどのものではない。
 よって、見習魔法使い程度でも気配を完全に殺す道具なんかを用いて最大攻撃を不意打ちで使えば、まあ何とか倒す事はできるだろう。
 見習い程度では俺を殺すことができるほどの魔法を習得しているとは思えないから、せいぜい一日の病院送り程度だろうが。
「え、その、そんなの絶対無理な気が……」
「まあ、方法はあるというだけの話だ。私はほぼ魔法防御ができないからな。直撃を食らえば耐えられるものではない」
「魔法防御ができないって、簡易障壁もですか!?」
「ああ。あるのはこの体に備わっているなけなしの魔力抵抗と、あとは様々な装備品だな。一応、フル装備ならば下位魔法の完全無効化、中位魔法の半減効果はあるんだが」
「え!? それって十分凄いですよ!」
 佐倉が身を乗り出して驚く。
「あのな、そんなゴテゴテの装備を日常生活で付けていられるか? 佐倉ができるというのなら、一式貸してやろう」
「あ、ははは……遠慮しておきます」
 かつて高音にも振る舞ったホットココアを佐倉にも差し出す。
 一口飲んで、その熱を愛おしそうに包みながら幸せそーに綻んだ次の瞬間思い出す。
「あ! それで、お姉さまの事なんですけど」
「ん、ああ。そうだったな」
「最後にお姉さまがこのお店に来たのはいつですか?」
「だいたい2週間前ぐらいだな。それがどうかしたのか?」
「いえ、一昨日もですけど、確か一週間前にもこの店に行くと言って外出されていたはずなので」
「つまり君は、高音の変調の原因が、この店、ひいては私にあると勘繰っているわけか」
「いえ、別にそういうわけじゃ……」
 と言いながらも、目を逸らしている辺りそうなのだろう。
「しかし、来ていないのに原因になっているわけもなかろう?」
「いえ、寧ろそっちの方が原因としては考えやすいんですけど」
 じろっっと、恨めしそうな目で睨まれた。一体何だと言うんだ。
「ところで、一週間前は誰が来ていたんですか?」
「ん、ああ、そもそも一週間前は別件で店は開けていない。来客は、あった事はあったのだが」
 明石教授との二者面談、というか殆ど腹の探り合いの政治会談だったような気もする。
「また女の子ですか?」
「は?」
「だから、その来客というのは、女の子だったんですか?」
 何でそんな事を聞いてくるのか理解できないまま、佐倉の迫力に押されて答えた。
「いや、寧ろ真逆の中年親父というか。同僚だよ、今は」
「そうですか。ならいいです」
 何がいいのか。いい加減説明が欲しいが、そんな事を言い出せそうな雰囲気でもない。
「うーん」
 一人思考の海にダイブする佐倉。
 何だか何を言っても勝てそうになかったので、皿洗い等の閉店業務を進めることにした。
 だが、時折ちらちらと視線を感じると、正直やり辛い。
 しかも、
「うーん、やっぱり、そういう事なのかなぁ……でも、お姉さまの事だから自覚してないっぽいし。お姉さまも私も女子校だから、男の人に免疫なんてないし。衛宮さんも顔立ちは整ってるし、大人だし、お姉さまがコロっといってもおかしくは…」
 なんて感じで思考が駄々漏れだった。というか、俺の名前を出すな。
 いい加減どういう内容なのかはうっすらと理解できてきたが、まあそれはない。
 寧ろ俺は高音に嫌われているだろう。
 だいたい、俺は異性に嫌われることはあってもモテたりは絶対にしない。
 いや、この店の名にもなっている彼女とは契りもしたし、愛し合っていたが、以後の人生を考えても告白なんてされた事はないし、あって命令くらいのものだ。
 まあ、妹分(姉より大きい)には慕われていたとは思うけど。
 姉は俺が女性と関わると決まって機嫌を悪くしていたが、それは過剰に反応していただけなのだ。うん。
「おーい佐倉。そろそろ帰って来い」
「はひゃ!? あ、すいません」
「で、高音の件なんだが」
「あ、はい」
「一応、今度店に来た時にそれとなく探りを入れておくから、今日のところはもう帰った方がいい。今日は送って行ってやるから」
「え!? わざわざそんな」
「いいから送らせてくれ。こんな時間に女の子が独り歩きするもんじゃないからな」
 佐倉はしばし迷っていたようだが、やがて了承した。


 この判断が、翌日の愛衣の苦境を引き起こすものだったとは、この時知る由もない。
 





高音「メイ、昨日はお楽しみだったようですね……?」
愛衣「え‶!?」

士郎「はあ、佐倉って名前は言い易くてマズイな。つい馴れ馴れしくなっちまう」
桜「うふふ、先輩ったら……私を殺しておいて酷いんですね(幽霊なのに真っ黒)」









■『高音・D・グッドマンの憂鬱』




 最近、あの店に行くのが少し怖くなった。
 いや、そもそも最初の時点で言い負かされたのはトラウマになりそうで、次に訪れた時は決死の思いではあったのだけど。
 ただ、一度彼が納得するような、憧れるような優しい目をした時から、お店の雰囲気も随分と居心地が良くなった、と思っていたのに。
 それは、彼が少しだけ過去を話してくれて、距離が縮まった。そんな錯覚をしていたせいかもしれない。
 麻帆中2年、子供先生のサポートとして副担任の仕事に就いたと聞いたから、僅かながらお祝いをしよう、と思って店に行けば、お店は閉まっていた。
 明かりは見えたが、流石に外から大声で呼びつけるわけにもいかない。
 お祝いはまた今度にしよう、と手の中の重みを少しだけ残念に思いながら、その日は帰った。
 ところで、喫茶「アルトリア」の閉店時間は客によって変わる。
 早ければ8時半が一応決まっている閉店時間だ。
 だが、知り合いが居る場合はその限りではない、らしい。
 学園教師の中では、衛宮士郎支持派と否定派が存在するが、その支持派の中でも彼と最も親しい高畑先生などが夕食を食べに来て、仕事やプライベートな会話を始めると滅多に来ない分長くなり、店を閉めないまま日が過ぎる事もある、というのは店主である衛宮さんから聞いた話。
 そして今日も似たような状況なのか、店は一向に閉まる気配を見せなかった。
 既に9時半を過ぎている。
 麻帆良学園都市の寮生は、都市内から出ない限り厳密には門限というものは存在しない。
 一応、形骸化した就寝時間が設定されているだけで、各寮母さんもあまり厳しくはないのだ。
 だからと言って、規則を破るのは自分の本位に反する。
 偉大な魔法使いの見習いたるもの、どんな事でも人の模範となるよう自分を戒めなければならない。
 就寝時間が0時と決まっているのなら、それまでに翌日の予習を終わらせベッドに入る。
 それは私にとって当然の事だ。
 だから、この店の閉店時間は早ければ早い程嬉しい。
 どうも彼と話しているとアツくなりすぎてしまうようで、他のお客さんがいる状態だと迷惑をかける。
 だから、基本的な閉店時間である8時半から1時間、ずっとこの茂みの中で隠れていたのだけど……。
 この茂みからではカウンター席は見えない。店を閉める為、準備中の看板に切り替える際にすぐ分かるが、店からも道からも見えない、隠れて待つには絶好のポイント。
 しかし、こんな事をしていると自分は何をしているんだろうと、とても虚しくなる。
 時間ももうすぐ10時になる。そろそろ帰らないと、勉強が間に合わない。
 仕方がないから、しぶしぶ帰ろうとは決意するものの、今日の『お客さん』は誰だったのだろう、と正面の道を通って確認した。
 今思えば、そんな事を気にせずに帰っておけば良かったのかもしれない。
 でもその時は、一体誰が彼と仲良く話しているのだろう、と支持派の一人として確認しておこうと思っただけだったのだ。
 見えたのは、褐色の少女の後姿と、楽しそうに話す店主の姿。
 それを見て、言いようのない衝撃を受けた。
 別に、相手が見知らぬ女生徒だったからではない。
 衛宮さんが、自分に見せたことがないような笑みを見せていた事。
 それが、何より驚きだった。
 もしかしたら自分のしていた事は、あの議論は、彼にとって迷惑だったのではないのか?
 彼は少なからず辛い過去を背負っていて、それを思い出させるような話を振って来る人間を、好意的に受け止められるだろうか?
 そんなわけ、ない。自分ならば、そんな事にはきっと、耐えられない。
 逃げるように駆け出して、その後、どうやって自分の部屋に帰ってきたのかは覚えていない。
 ただ、その日は結局、勉強に手がつかない上に、眠れなかった。










 翌朝、眠れなかったのだから当然だけれど、私は体調が悪かった。
 睡眠不足からか、食欲もない。
 メイが心配してくれていたみたいだけど、私は安心させてあげる余裕もなかった。
 今悩んでいるのは……彼にとって迷惑だったのではないかとか、そういう事じゃなくて、自分自身の正義についてだった。
 以前、それでも努力に価値はある、と自分は言った。
 その言葉に迷いなんてないけれど、やはり自分の意思は失った事のない者の甘えでしかないのか、そう考えてしまう。
 私は、所謂エリートの道を歩んできたと思う。
 勉強で壁に当たった事はあったけれど、立ち直れないくらい大きな挫折なんて経験した事はない。
 誰かを助けた事はあっても、それは誰にでもできる親切の範囲内で、誰かの命を実際に救った事もなければ、逆に助けられなかった事もない。
 だから、不安になる。
 自分の理想は、現実を知らない子供の絵空事なのではないだろうか、と。
 麻帆良学園にて、こうして実際に偉大な魔法使い見習いとして活動しているが、ここの守りは鉄壁であり、戦闘を行う事なんて殆どない。
 戦闘訓練を欠かした事はないが、衛宮士郎という正体不明の魔法使いの前には何の役にも立たなかった。
 私なんて路上の小石と同じ、と言える程強い人が、それだけの力を以ってして『救えない』というのなら。
 一体どれだけの努力の末に、『救える』ようになるのだろうか。
 努力が苦しいわけでも、辛いわけでもない。
 ただ、どれだけの努力を重ねても、『救えない』という現実を実感してしまった時、私がそのまま努力を続けられるか。それだけが、不安であり心配だった。







 ◇






 高音・D・グッドマンという人間は、悩むとドツボに嵌り易いが、いつまでも悩んでいる事を良しとしない人間である。
 よって、最も簡単な解決法、最近またもや苦手になりつつあるあの店へ特攻することにした。
 まずは無遠慮だった事を謝り、その上で相談に乗ってもらおうと思っていたのだ。
 が、閉店後のそこに居たのは自分が面倒を見ている妹分の姿。
 言いようのない怒りが、何故か高音に根付いた。
「フ、フフ、フフフフフ。いい度胸ですね、メイ……」
 とは言え、この店のマスターに迷惑を掛けては謝りにきた意味がないし、完璧に本末転倒だ。
 まだまだ出てくる気配がない以上、ここで待っていても仕方ないだろう。
 仮に出てきたとしても、何となく気まずいし、高音には一旦帰る以外の選択肢はなかった。
 どうせ愛衣とは明日会う事になる。問い詰めるのはその時でもいいと判断した。
 ちなみに、自室へ帰る高音の表情は、とてもじゃないが立派な魔法使いには相応しくなかった。
 





 ◇





「メイ、昨日はお楽しみだったようですね……?」
「え゛!?」
 秀才である愛衣は、それだけで昨夜起こった事実を理解し、昨夜の自分の推理が外れていない事を確信した。
 こんな風に確信なんてしたくなかっただろうが、時既に遅し。怒れるお姉さまは眼前である。
「あの、何のことでしょう……?」
 過去最大級の身の危険を感じ、士郎を恨みながらも愛衣は生き残る為の選択をした。
 つまり、しらばっくれる。失敗したら確実にデッド、リスキーな選択肢である。
 だが、勝算はあった。というか、実際的に人が変わったような高音を前にして、未だに愛衣は高音を信じていた。
「昨日、メイ『アルトリア』に行っていたでしょう?」
「え、ええ、そうなんです。ちょっと相談したいことがあって……」
 内心ビクビクしながら答る愛衣。確信は最早揺るぎない。
「水臭いですよ。相談ならいつでも乗ってあげるのに」
 相談内容に相談するわけにもいかない。愛衣の心の叫びは、決して高音に聞こえる事はない。
 しかし、どうする?
 愛衣は苦笑の裏で必死に解決策を考える。
 しかし、愛衣には恋愛の経験値なんてゼロに等しくて、こんな状況の対処法なんていくら考えても浮かぶはずがない。
 必然、焦って焦って内心オロオロしていた。
「それで、衛宮さんには何を相談したんです?」
 瞬間、愛衣はこれだ!と思った。
「あ、その、戦闘訓練です! 修行の事で、少し話がありまして!」
 全部が全部ウソというわけでもない。実際に、少しだけだったけれど似たような話はした。
 まあ、愛衣の能力ではなく、士郎の能力に対する言及で、単なる興味本位ではあったのだけど。
「ああ。神鳴流の魔法剣士が、彼と修行しているというあの噂の事ですか?」
「へ?」
「あら、私はてっきり愛衣も衛宮さんに修行を頼んだのかと思っていました」
 高音が言っている噂というのは、実の所噂というほど具体的に出回っている話ではない。
 何より、衛宮士郎に関わろうとする魔法関係者の数がそう多いものでもないし、刹那との鍛練について知っているのはタカミチとエヴァだけだった。
 高音への情報経路は、タカミチ→明石→夏目萌→高音というものだが、実はこの4人と本人たち以外の人間には全く知られていない。
 唯一、修行場所の提供者としてエヴァは知っているが、刹那の現状の師である葛葉さえ知らない事だった。
「あれ? お姉さまは衛宮さんを修行に誘った事があるんですか?」
「ええ。断られましたけど」
 あっさりと答える高音ではあるが、その表情は悔しそうだ。
 そして、その表情を見て、愛衣は追い詰められていた自分なんてすっかり忘れ去り、高音の手を取り叫んだ。
「お姉さま、私協力しますから! 私に出来ることがあったら何でも言って下さいね!」
「は? いえメイ、何を言って……」
「いいえ、いいんです! 何も言わなくて私は全部分かってます。何気にライバルは多いかもですが、私はいつまでもお姉さまの味方ですから!」
「はぁ、それは嬉しいですけど……」
「取りあえずは一緒に修行する所からですよね。早速今夜『アルトリア』に行きましょう」
 半ば強引に、愛衣は高音を引っ張って行く。
 高音は訳が分からないまま、為すがままの体で妹に引き摺られて行った。






 その後、高音と愛衣が、衛宮士郎と一緒に修行できたか否か。それはまた別の話である。








高音「アレ? 何だかおかしいような?」
愛衣「え? 何の事ですか、お姉さま」
 
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