Twitter

FC2カウンター

カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

カテゴリ

最新記事

最新コメント

リンク

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:


検索フォーム

アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
351位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
二次小説
180位
アクセスランキングを見る>>

屈折領域・裏鏡


一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

TOP > スポンサー広告 > 愛衣優勝SSTOP > 記念・企画 > 愛衣優勝SS

スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

愛衣優勝SS


第一回夢破れし英雄人気投票優勝企画

「夢と名前と星空と」



 夕暮れの日差しのせいか、士郎さんの顔に朱が混じっていた。
 私はと言うと、きっと日差しのせいなんかじゃなくて赤くなってる。
 それぐらい、私と士郎さんの距離は近くて、私の胸は高鳴ってた。
「愛衣……」
「し、士郎さん……」
 士郎さんがまた一歩、私との距離を縮める。
 私は一歩後ろに下がろうと思ったのに、体はあろうことか逆に距離を詰めてしまった。
 そう、もう抱きつくぐらいの距離に。
 士郎さんの両手の重みが、私の肩で感じられた。
 勇気を出して士郎さんの顔を見上げる。
 徐々に近づいてくる顔。私の視線は、その唇から離れなくなっていった。
 一度耐えきれなくなって目を閉じて、それでもやっぱり薄目で確認して。
 士郎さんの吐息を肌で感じて、唇が――――







 ◇






「うひゃあああああっ!?」
 飛び起きた。二段ベッドの下段、上段の底に思いっきり頭突きをするように跳ね起きてしまった。
「うわ、わわわわ、わうーーっ!」
 愛衣は、あまりにも鮮明に思い出せてしまう先ほどの夢から復帰する為、大きく深呼吸。
 の後、やっぱり鮮明に思い出してしまってボンッと小規模な爆発を起こした。
「う、うーん。またですかぁ……」
 眠そうに、二段ベッドの上から顔を出すのはルームメイトの夏目萌。愛衣たちはナツメグと呼んでいる。
「あ、ごめんね。起しちゃった?」
「それは、いいんですけど。どうせそろそろ起きる時間でしたから」
 時計を見れば、成程。確かに時間はいつもより少し早いくらいで、朝が早い人ならそう不思議でもない時間帯だろう。
「それよりも、また例の夢ですか?」
「え? いや、そのぉ……うん」
 例の夢、とは最近師事しているとある男性……衛宮士郎に言い寄られる夢の事だ。
 最初に見たのは2週間前。その後、必死になって忘れた頃にこうして似たような夢を見ている。ちなみに、これで4回目だった。
「私って、欲求不満なのかな……」
「うーん。好きな人の夢を見るのって、そーゆー願望があるからだって言いますけど」
「べっ、別に好きとかってワケじゃ……!?」
「でも、嫌いではないんでしょう? よく話してくれるじゃないですか。衛宮士郎さんの事」
 まあ確かに……なんて愛衣は頷く事はできない。
 愛衣は、自分が姉と慕う高音が士郎に対する恋慕……最近は少しその気持ちに変化が見られるような気もするけれど、少なくとも自分よりは士郎に対する感情が強いと知っている。
 だっていうのに、ただ高音に協力しているだけなんて中途半端な状態では、その感情に名前なんて付けられなかったし、認める事も出来ない。
 黙りこみ、眉間に皺を寄せる愛衣に、萌は少しだけ苦笑して、したり顔で誰でも言えそうな助言を口にする。
「とにかく、後悔だけはしないようにしないと。本当に欲しいものなら、相手が高音さんでも退いちゃダメです。愛衣ちゃん、ただでさえ奥手なんだし」
「それは、ナツメグさんには言われたくないなぁ」
 口を尖らせ反論する頃には、顔の赤みも薄れていった。









 苦笑いで誤魔化したものの、愛衣には高音相手にどうこうするつもりはなかった。
 単純にそれ程の気力が湧いてくるような深い想いではないし、仮に本気になったとしてもライバルは高音だけではないという事くらい知っていた。
 それに、愛衣はあの夢の中での“相手”が士郎だと言う事に、特別さを感じていなかった。
 単純に、愛衣の周りで一番近い異性だから。
 女子校に通っている女の子としては、士郎との修行というのは刺激が強すぎるわけで。
 その刺激が触媒となってあんな夢を見てしまったのだろう、と。思いこむ事にしたのだ。
 そうしないと忘れる事さえできなかったから。
 普段よりもぼーっと授業を受けて、友達の話も聞き流し、放課後になるとすぐ帰る。
 そんな友達を見つけたら、真っ先に恋愛話に持っていくのが佐倉愛衣という女の子だったのに。
 愛衣は、今の自分の行動を全く意識する事無く、少しだけ久しぶりな士郎との修行に足を運んだ。









 でも、結局。
 集中できてない状態で、士郎との戦闘なんていうのは、自殺行為みたいなもので。
 愛衣は、その日の修行であっさりと気絶してしまった。








 ◇









 闇の中から少しずつ意識が浮上していく。
 ぐわんぐわんと揺れる世界は、いつまで経っても慣れる事はない。
 目を開けるだけの気力もなくて、心地よい闇の中に留まる事を無意識に選択したのに、耳は勝手に世界の音を拾っていた。
「しかし、それでは愛衣が……」
「私が責任もって明日までには連れ戻す。頭を打っているんだ、下手に動かすのは危険だしな」
「……分かりました。帰ってきたら私にもメールをお願いします。朝、出来うる限り迎えに行きますから」
「分かった。必ず連絡すると約束しよう」
 私は、多分その声で目覚める事はできたと思う。
 起き上がって、もう大丈夫ですお姉さま、とでも言って一緒に帰る。
 そうすれば、お姉さまも士郎さんと一緒に帰る事が出来ただろうし、私も明日の事なんて考えなくていい。
 でも、そうしなかったのはきっと、今のままの状態でいることが、私には耐えられなかったから。
 私は、完全にお姉さまの気配が感じられなくなってから、ゆっくりと瞼を開いた。
「大丈夫か、佐倉」
「はい。心配をおかけしてすみません」
「いや。もう少し早く目覚めていれば高音もいたのだがな。すまない、先に帰らせた」
「その、私も士郎さんに話があったから丁度いいです」
 もう実は起きていました、なんて言えないな。
「今から急げば高音たちには追いつけるかもしれない。背負ってやるから、ほら」
「あ、はい」
 つい。そう、つい促されるままにお世話になってしまった。
 士郎さんの背中は異性を感じさせる広さで、私なんかとは全然違う、がっしりとした頼りがいがある。
 このままお姉さまに追いついたら意味がないな、と思いながらも、背中から伝わる熱が心地よくてそのまま体重を預けてしまう。
「それで、話とは?」
 その声で、これではいけないと思い直す事ができた。
 幸い、士郎さんは頭を打っていた私に対する配慮なのか、ゆっくりと、しかし揺れをほとんど感じないように動いてくれている。
 これなら、そうそうお姉さまに追いつく事もない。
 だから、落ち着いて私は話を切り出した。
「自信が、ないんです」
「自信?」
「はい。お姉さまは、士郎さんを目標にして頑張っています。長瀬さんも、理由を聞いた事はないですが士郎さんとの修行を楽しんでる。でも、私は修行が楽しいと思えないし、強くなってるとも思えないんです」
「修行が嫌なのか?」
「いえ、そういう事じゃないんです。ただ、私には強く願う事がないから……。魔法使いの家に生まれたから、それ以外の選択肢なんて考えた事なくて、マギステル・マギを目指すのが当たり前なんだ、って。周りに流されていただけなんです」
 士郎さんは、黙って私の話を聞いてくれている。歩調は、最初よりもずっと遅くなった。
「お姉さまは、強い意志でマギステル・マギを目指しています。きっと、だから私はお姉さまに憧れたんです。でも、私は……お姉さまのように強くもないし、夢も理想もない。こんな私が、一緒に修行してていいのなって……」
「今の私には、佐倉に適切な助言を出せそうもない。私は、夢にも理想にも破れ、ただ強さだけが残ってしまった骨董品だ」
「強いだけじゃ、ダメなんですか?」
「……昔、まだ私も強くなるのに必死だった頃。何かを救いたいと願うなら、まずは自分が幸せになれと諭された事がある。幸せが何なのかも分からない異端者には、何を救うべきかも定まらない、とな」
 士郎さんの声のトーンが、少しだけ下がった。
 何となく、今度は私が聞く番なのだと悟る。
「しかし私は、幸福を理解できなかった。万人にはそれぞれの幸せの形がある。万人に共通する幸福のカタチなど、存在するはずもない。結局、私は分からないまま救いを押しつけていった。その末路が、今の私だ」
 何故『末路』なのか、私には分からなかった。
 士郎さんは、強く、優しいというより厳しいけれど、気付けば後から見守ってくれているような、そんな人だ。
 私の目には、士郎さんの姿は地に堕ちた者ではなく、そびえる頂きを歩く仙人に見える。
 憧れの対象が零す嘆きには、共感する事ができなかった。
「佐倉。守りたいと思うものはあるか?」
 その質問に、私はたっぷり数分間の時間をかけた。
 何も語らず、ただ待ってくれた士郎さんには感謝したい。
「私、は。私は、お姉さまや、友達や、家族や先生や……私を取り巻く世界を、守りたいです」
「なら、強くなる理由なんてものはそれでいい。救いは、押しつけるものじゃなくて与えるものだ。幸せでない人間に、救いを与える事なんてできない。だから、君は自分が望むように、大切なものを守ればいい」
「……はい」
「もしかしたら、そうやって歩いた先がマギステル・マギと呼ばれるものかもしれない。高音を守るというのなら、そうなる確率は高いだろう」
「いいんでしょうか。そんな、成り行きで」
「英雄などと呼ばれる者たちも、最初から世界を救おうなどと考えていたとは限らない。ただ、自分の我を通した先が英雄だったという方が、私には自然に感じるな」
 そう、なのかもしれない。
 大戦の英雄だったサウザンドマスターも、何か守りたいものの為に戦って、世界を巡る陰謀に巻き込まれていっただけなのかもしれない。
 私がそんな凄い人たちに追いつける事はないと思う。
 でも、ただ目指すだけならば、理由なんていらないんだって。そう思う事ができた。
「今はまだ、難しく考えなくてもいいんですね」
「ああ、そうだな。考えずとも先に進める時間は、今しかない。ならばその貴重な時間を捨てる必要はないだろう。生き急いだところで、いい事など何もないからな」
「それって、経験談ですか?」
 少し元気が出て、私は明るい調子で尋ねてみた。一瞬の後に、明るく訊けるような事じゃないって気づいたけど。
 でも、口から出てしまった言葉は取り消せない。
「ああ。そうなのかも、しれないな」
 暗いというわけでもなくて、いつもと変わらない声の調子。
 でも、少しだけ肩の筋肉が強張るのを、背負われている私は感じる事が出来た。
 こんな時、朗らかに場を和ませる事ができたら、どんなにいいだろうって思う。
 私は、ただ緊張するだけで、何もする事ができない。出来るほど、大人じゃなかった。
 だから、そのまま沈黙だけが積もっていく。
 10分ぐらい経って、気まずさも少しは薄れてきて、ついでに私も微かに揺れる暖かい背中に眠気を誘われていた頃。
 唐突に、士郎さんの方から会話を切り出した。
「一つ、頼みがあるんだが、いいか」
「あ、ハイ。何ですか?」
「あー、誤解しないように聞いて欲しいんだが……佐倉ではなく、愛衣の方で呼んでも構わないか?」
「ふぇっ!?」
「ヘンな声を出すな。……私の後輩に桜という子がいてな。料理の弟子みたいなもので、私が高校を退学するまでは一番時間を共有した他人だった」
 驚きも引いて。
 何となく、私は納得できていた。何故、私はあんな夢を見ていたのか。
「君の名前を呼ぶ時、どうも彼女の姿が脳裏を過ぎる。勝手なワガママで申し訳ないんだが、下の名前で呼ぶ事を許可してくれないだろうか」
 きっと、私の名前を呼ぶ声に、隠しきれない親愛があったから。
 だから勘違いしたし、誰かじゃない、私自身に向けられた感情が欲しかった。尊敬する人に認められないという、少し幼い感情だったけど。
 愛衣、なんて呼んでくれる関係を、私はあんな形でしかイメージできなかったから。
 でも、今なら。自然な気分で、愛衣として答えを返せると思う。
「はい。私も、そっちの方が嬉しいです、士郎さん」
 その時の私は、上手く笑えていたか分からない。どうせ士郎さんから私の表情なんて窺えないのだから、私の顔なんて関係なかっただろうけど。
 折角願いが叶ったのだから、笑えていればいいと、思う。
「助かるよ、愛衣」
「はは……」
 簡単にそう告げる士郎さんに、私は気が抜けた。同時に、安心もしていたのだけれど。
 これで、お姉さまの邪魔をするでもなく、私はただ応援し続ける事が出来る。
 やっぱり私には、まだ恋愛なんて早かったんだ。いつか、等身大の私を見てくれる人が現れるまで、この気持ちは大切に、大切にもっておこう。
 失恋というには満足感があり過ぎる、他愛もない勘違いの一つだったけど。ほんの少しだけは、私も大人になれた気がしたから。










 やがて、森を抜け市街地に戻ってきた。
 となると、夜ではあっても深夜という程でもないこの時間帯はまだ人通りがある。
 そんな中で背負われたままというのは私が恥ずかしかったので、もう大丈夫だと下ろしてもらう。
 他愛ない世間話を続けながら、比較的明るい世界樹広場に差し掛かった頃だった。
「ん?」
「何ですか、士郎さん」
 私の質問に答える事はなく、士郎さんは私との距離を詰めた。
 今は、夕焼けじゃない。でも、夢の場所はこの辺だったような……と、一瞬あの夢がフラッシュバックする。
 だから、その、つい私は目を閉じてしまった。
 何だか、士郎さんの真剣な表情が、本当にあの夢と重なってしまって。
 がしっ、と。頭に士郎さんの手が添えられた。
 え?
 ま、まままままままさかっ!?
 ほ、本当にキ、キ――――――?
「ああ、やっぱりな。向こうでは夕暮れだったから気付かなかったが、腫れてしまっている。早いところ帰って冷やした方が……って、何をしているんだ、愛衣」
「へ? あ、いや、何でもないです……」
 舞い上がった分だけテンションは奈落へ急降下。
 先ほどの納得はどこへやら、私はしおしおに脱力して士郎さんを見上げる。
 本当に何も分かっていなさそうな顔が、何だかとてもムカついた。
「あのっ、女子寮こっちなので私もう行きますね!」
「ん? 送っていくぞ?」
「いえ結構です! ではまた今度!」
 なんだかこのままのテンションだと、自分が何を言い出すか分からなかったから、私は戦略的撤退を敢行する事にした。
 お姉さまの気持ちが、今なら少しだけ分かる気がします。
「高音には連絡入れておけよー!」
 遠くから聞こえた士郎さんの声にまたも脱力して。
 もう見えないところまで走ってから、溜息を一つ。呼吸を整えて、前を向く。
 見上げた星空は、麻帆良にしては綺麗だった。

 







高音「わ、私の出番はどこですかーっ!?」
楓「諦めも肝要、でござるよ」
 
関連記事

管理者にだけ表示を許可する
« | ホーム |  »
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。