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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第42話


「リセット」


 白き翼は空を行く。
 刹那は、木乃香を抱き抱えたまま、流れるように夜空を飛んでいた。
「お嬢様、御無事ですか?」
「う……ん。あ……」
 刹那の気付けの呪文によって、木乃香の意識が覚醒する。
「ああ、せっちゃん……やっぱり、また助けてくれたんやなー……」
「お嬢様……」
 刹那を見上げる木乃香の瞳は、優しかった。
 最後は刹那が助けてくれると、そう信じ切っている表情。この結末は当たり前のものなんだって、当たり前に安心している。
 そして、そんな受容の精神は刹那にも安心をもたらすものだった。
 でも、それも一瞬後に崩れ去る。
「せっちゃん、その背中……」
「あ、その、これは」
 刹那は慌てた。仲間の為に、友達の為に、なにより木乃香の為に決断したとしても、傷を負う瞬間を受け入れたいわけではない。
 それも仕方がない事だと、諦めに似た覚悟があろうとも、だ。心に嘘は付けない。
 だが、それも要らぬ心配だった。いや、ある意味で木乃香に対する侮辱とも言えるだろう。
 近衛木乃香は、たったそれだけの事を認められない程狭量だと思われていたのか、と。
「キレーなハネやなー。せっちゃん、天使みたいや」
 羨ましそうに、木乃香はそう言った。
 そんな素直な肯定に、果たしてどれだけ刹那が救われたか。
 明日菜やネギが拒否しなかったのとは度合が違う。木乃香は魔法というモノを何も知らなかったのだから。
 だから刹那は、言葉を紡げない。何を言えばいいのか、そもそも口に出すべき何かが己の中にあるのか、それさえ定まらないまま放心する。
「ウチ、せっちゃんに謝らんとアカン」
「え?」
 刹那の、その複雑な表情をどのように解釈したのか、木乃香は突然語り出した。
「士郎さんとの事。たぶん、かなりせっちゃんを困らせたから」
 ふと、もう遠い日の出来事のような、修学旅行の初日を刹那は思い出した。
 あまりに突然だった、木乃香の宣言。いや、告白とも言えるか。
 それに対して困ったかと言えば、確かに刹那は困った。自分の在り方、存在意義について悩みもした。
 けれど、この翼を見せたその時に、そんな悩みは吹っ切れている。
 もう姿を現せないというのに、今更その程度の小事で困ることなどない。
 感覚が麻痺しているとしか言いようがないが、今の刹那にとっては取るに足らない事ではあるのは事実だった。
「私は、お嬢様が何を言っているのか分かりません」
「せっちゃん、士郎さん好きやろ?」
 訊かれて、一瞬だけ刹那は考える。
 嫌いなわけがない。あれほどの恩を受けておいて、嫌悪を抱けるはずもない。
「好きですよ。でも、それはお嬢様が考えているものとは違います」
 友情、というには年が離れ過ぎていて。
 色んな意味での“師”なのだと、刹那は思う。
 単純に、人生経験という意味においても。その戦略眼、戦闘経験という意味においても。
 具体的な、一時的接触なんていうハプニングがあったとしてもそれは変わらない。変えられない。
 少なくとも今、刹那の心に嘘はなかった。
「…………」
 木乃香が刹那の瞳を見つめる。その奥に隠された真意を探るように。
 その、顎を突き出した仕草に、刹那は胸の高鳴りを感じて眼を逸らした。ついでに、木乃香が今裸であるという事実も思い出した。
「うん、まぁ……せっちゃんがそう言うんなら、別にええんやけど」
 刹那が視線を逸らした理由を正しく理解したのか、木乃香も頬を染めて顔を逸らす。
「なら、お嬢様は本当に?」
 衛宮士郎を好きなのか。親愛や尊敬ではなく、恋愛感情として。
 別に、刹那はそれを咎めようと思ったわけでもなく、ただ純粋な疑問として尋ねただけだ。
 思えば、刹那が知る限り士郎と木乃香に接触はほとんどなかった。あの宣言も、突然過ぎて驚いたという意味合いが大きい。
 刹那の疑問も当然だった。やっと冷静に、この問題について考える事ができるようになったのかもしれない。
 その刹那の問いに対して、木乃香は頬を染めたまま、
「秘密や!」
 眩しい笑顔で言い放った。































 フェイトが士郎が潜んでいると予測した辺りまで辿り着けたのは、幸運という他なかった。
 意図的に吹き飛ばされることによって距離と時間を稼ごうとはしたが、それもあまりに強い力を相手にして狙い通りになるわけがない。
 同じ事を二度やれと言われてもできないだろう。こうしてここまでたどり着けた事が、フェイトにとってさえ実力ではなく幸運。もしくは運命なのかもしれない。
 だが。フェイトには、肝心の士郎の正確な位置は掴めていなかった。
 士郎にとってはこのまま隠れていればフェイトが自滅するのだから、姿を表す必要など皆無だ。
 既に射撃地点からは離れているだろうし、フェイトが士郎を追うのと同様に、士郎がフェイトから逃げていたのならどうしようもない。
 だが、士郎には逃げるわけにはいかない理由が二つあった。
 一つは、この森を抜けてしまうと隠れる場所がない事。
 歩く程度のスピードでしか移動できない今の士郎にとって、それは致命的だ。
 飛び上る事もできないのなら、地に伏せてやり過ごすしか手はない。
 二つ目に、エヴァンジェリンが失敗した場合。
 士郎の魔力は残り少ないが、それでもまだ多少の時間稼ぎはできる。
 もしもエヴァンジェリンがスクナ殲滅に失敗する、もしくは彼女を以っても有効打を為し得ないのなら、迎撃と殲滅の役割を交代する必要があった。
 それが、フェイトにとっては2つ目の幸運。
 フェイトにとっては、これ以上先に逃げられていたら終わりという状況で、士郎の居所が分からない。
 普通に考えれば、どうしようもない。だがフェイトは希望を捨てず、この森に士郎が潜んでいる可能性に懸けた。
 しかし、今のフェイトに呪文を詠唱している余裕などない。否、詠唱にしても魔力にしても、全ては防御に割り当てる必要がある。
 それを怠れば、奇跡のような確率に挑戦するまでもなくフェイトは終わる。紅い光は呆気なくフェイトを貫いていくだろう。
 故に、フェイトからの攻撃はない。その点について、士郎はほぼ確信があった。
 そうでなければ、幸運になど頼らずともフェイトはこの場所まで辿り着ける。もしくは、赤原猟犬を無効化できるだろう。
 その油断、慢心と呼ぶには余りに小さ過ぎる思考が、士郎を窮地に追い詰める。
「っ!?」
 思わず、地面に伏せて身を潜めていた士郎は息を飲んだ。
 フェイトは、今まで通りに赤原猟犬を逸らしているに過ぎない。
 だが問題は、そうして逸らした赤原猟犬を使って士郎を炙り出そうと森を削っている事だ。
 それが偶然ではなく意識的なのは、言うまでも無い。
 回避行動がとり難い森の中に自ら身を投じるのは、大きなリスクを負うからだ。
 確かに、周りに在る障害物が赤原猟犬を多少は減衰させるかもしれないし、なぎ倒される木々は赤原猟犬の正確な位置を示す。
 しかしそれ以上にリスクが大きい。運の要素次第では、後数発の抵抗限界を残すまでもなくフェイトは自滅する事になるのだから。
 それは足掻きに近い。
 どうせこの森を抜けるまでは自分が保たないのだと悟り、その上で赤原猟犬の射線上に士郎が潜伏している事に期待している。
 まるで、眼を瞑ってホームランを打とうとしているかのような所業。
 だが、天はフェイトに味方した。
 薙ぎ倒される木々で赤原猟犬の位置を知る事ができるのはフェイトだけではない。
 士郎はフェイトが弾いた瞬間に、それが自分の潜んでいる周辺を掠める事を悟った。
 掠める直前で消すことは、可能。だがそんな事をしては、存在証明をしてしまうようなものだ。消すのならば、まだフェイトがその射線を理解していない、弾いた直後のこの一瞬。
 思考と決断はほぼ同時だった。
 爆音が、鳴り響く。つまり、壊れた幻想。
 ただ消すだけでは能がない。この森に士郎が存在する事は明かす代わりに、少しでも時間を稼ぐ。
 爆心地付近に居たフェイトのダメージは、しかし士郎が予想したほどではなかった。
 フェイトは赤原猟犬に対抗する為に、普通の魔法使いならば非効率とさえ断じる程の魔法障壁を形成していた。
 神秘の宿る赤原猟犬の、宝具の一撃を“逸らす”ことが出来る程の防衛能力。
 例えそれが幾層にも積み重ねた魔法障壁を犠牲にした上でようやく勝ち取れたものだとしても、物理的な爆発程度で破られるものではない。
 迎撃の後、魔法障壁も残り少なくなっている状態である為、ダメージは当然あるもののそれで決着となるほど甘くはなかった。
 煙はまだ晴れない。士郎もフェイトも、その間に次の一手を準備した。
 士郎は干将・莫耶。フェイトは障壁術式の補充と分身を。どのような状態でも、取りあえず戦えるだけの戦力が必要だった。
 やがて、煙はゆっくりと晴れていく。もう士郎も隠れようとはしなかった。
 煙がある内に動けば、折角視界を遮り時間を稼いだ意味がなくなる。音で気付かれないとは限らないのだ。
 それにもう、隠れる場所などありはしない。どうせ隠れた所で範囲攻撃を受ければ終わりだ。ならばまだ、問答の余地を残し罠でも張った方が生存確率が上がるというもの。
「全く恐ろしい力だ、衛宮士郎」
「ただ一人で本山の戦力と拮抗した貴様もな」
「貴方でも出来た事だ」
 士郎は、敢えて否定しなかった。
 かつての宣言通り、それが必要となるならば衛宮士郎は成すだろう。
 スクナを一時的とは言え戦闘不能にさせる事ができる程の力があれば、本山の制圧ぐらい条件と作戦次第でどうとでもなる。
 だがそれは逆に、このフェイトにもその程度の力はある、という事だった。
「しかし、足を斬り落とすとは、僕でも予想できなかった。桜咲刹那の左腕と言い、君は治癒魔法にも長けているようだ」
 士郎は答えない。余計な情報を与える必要などないからだ。
「逃げなくてもいいのかね?」
「確かに、この魔力反応は……僕たちの失敗という事になるだろう。そちらの援軍は予想以上に強力なようだ」
「当然だ。援軍は、ダークエヴァンジェルだからな」
「成程、相手が真祖では僕も分が悪いね。貴方のせいでかなり疲弊してしまっているし、これ以上ここに留まっても利はなさそうだ」
 双方、戦いの準備を終えていたが、避けられるのなら戦いを避けたい、というのは一致していた。
 フェイトは魔力の残りが少なかったし、士郎はそもそも両足が戦闘に耐えられる状況ではない。
 故に、フェイトが身を翻すのを止める必要はなかった。逃がしてもいい。いや、逃がすべきだった。
 けれど、士郎には最後に一つだけ、訊いておかなければならない事がある。
「完全なる世界、だったか」
 フェイトが振り向く。一瞬で、空気は戦闘待機から警戒へと移り変わる。
「お前たちの目的は何だ? 完全魔法無効化能力を使って何をしようとしている? いや、そもそも……何故貴様が生きている?」
「……近衛詠春か。何れにしても、貴方は知り過ぎているようだ」
 士郎とて、返答が得られるとは思っていない。ただ、その反応から重要度を知ろうとしただけだ。
 フェイトがこの情報を、士郎が知っている事を、危険なレベルだと排除するのか。
 だとしたら、それだけで価値がある。
 士郎が片手間とは言え受けているアルビレオからの依頼、その調査に、多少なりとは役に立つかもしれない。
 その考えが、士郎に無謀とも言える問いを許してしまった。
 士郎とフェイト、その余力はほぼ互角。
 戦闘回数こそ少なかったものの、満足な睡眠も取らずほぼ活動続きだった士郎は疲弊しているだけでなく、その両足の怪我が機動力に甚大な影響を及ぼしている。
 対して、フェイトは魔力こそ少ないものの五体満足、疲れを感じるわけでもない。
 士郎とて勝機がないわけではないが、不利は否めなかった。
「戦うというのなら容赦はしない。その命、ここで潰える事も覚悟しろ」
 士郎は使い慣れた双剣を構える。フェイトは無言で接近、掌底を繰り出す。
 だが、足が不自由とは言え接近戦ならば士郎に経験という点で軍配が上がる。
 動く必要すらなく、極力足に負担をかけないようにフェイトの攻撃をいなした。
 そんな事が可能なのは、士郎には既にフェイトとの対戦経験があったからだ。その戦闘スタイルは、武術として形式的であるからこそ士郎には対処が容易い。
 もっとも、完全に無力化して優位に立っているわけではない。その場を動けない士郎の不利はどんなに先読みしようとも変わらないのだから。
 このままでは埒が明かぬとフェイトは距離を取る。同時に士郎も武装を剣から弓へと持ち替えた。
 双剣は投擲、後壊れた幻想による追撃。予備にもう一組双剣を投影して、更にそこから矢による追撃を行う。
 だが、これに関してはフェイトも対処に経験があった。赤原猟犬を何度も弾き返した、死の淵での攻防は確実にフェイトのスキルを高めている。
 双方ともにダメージはない。しかし、どちらともが長期戦を望んでいなかった。
「I am the bone of my sword」
 既にエヴァンジェリンがスクナを倒したのは見えていた。士郎も出し惜しみはない。
 フェイトが多重魔法障壁により攻撃を逸らすというのなら、その魔法障壁ごと削り取る。空間そのものに影響を与える偽螺旋剣ならば、それも容易い。
 しかし、その効果、威力の程を見せつけられているフェイトがそれを許すはずもない。
 フェイトは地面を穿ち、土煙で視界を塞いだ後準備しておいた分身体を玉砕覚悟で突っ込ませる。
 こちらの世界の魔法の、特にこれ程の精度の分身体について、士郎は存在を知らなかった。
 故に、士郎は魔力充填が未完成なままカラドボルグを放つ。
 異変には、一瞬で気付いた。フェイトの分身体に当たる直前に、それが偽物であると看破する。
 しかし遅い。矢は既に放たれている。士郎は急ぎ足元の双剣を手に取ろうとして、
「これで終わりだよ」
 余りに殺気の欠けた、平坦な声を背後から聞いた。
 振り向き様に莫耶を振るう。しかし、全てが遅すぎた。
 最後に振るった莫耶が、確かにフェイトの脇腹に刺さったのを見て取って、士郎の意識は闇に落ちた。
 
 
 




























 士郎とフェイト、その両者の戦いは、その時誰の注意も引いていないはずだった。
 ネギはそもそも意識を保つので精一杯。
 明日菜はそのネギを支えており、刹那と木乃香は遊泳飛行中。
 エヴァンジェリンはスクナにトドメを指すのに忙しく、天ヶ崎千草に関しては言うまでもないだろう。
 にも関わらず、この戦い、その結末には観測者が存在する。
「ナルホド……これで整合性は保たれるというわけカ」
 超鈴音。
 高所から倒れ伏す士郎を見下ろすその姿は、本来この場に在るはずがないものだった。
「これは、私たちの方も大幅に計画を変更しなければならないネ。イレギュラーを排除する為には……」
「そこまでだよ、超」
 超の背後に、いつの間にか真名が姿を現していた。銃口を突き付け、静かに超を威圧する。
「一応、私は君の雇い主なのだがネ」
「悪いが、今は士郎さんが雇い主さ。本人はあんな状態だが、少しでも情報を漏らすわけにはいかない。それが私の仕事だからね」
「フム。ならばどうするカ? 私を始末するとでも?」
「この場では士郎さんの依頼が優先されるとしても、貴女は雇い主だからね。早急な退場を願うだけにしておこう」
「ならば大人しく従っておく事にするヨ。欲しい情報は手に入ったからネ」
 真名は銃を下ろした。その眼が問うような視線へと変化する。
「やはり、士郎さんを引き入れるのか」
「不満カ?」
「いいや。むしろ嬉しいとさえ感じるよ。だが、その危険性が分からないわけではないだろう?」
 特に、今回の彼の行動を見たのなら。そう、真名は付け足した。
「確かにリスクは高い……だが、必要な事ダヨ。イレギュラーは極力排除しなければ、ネ」
「ならば、精々気を付ける事だ。きっと彼は、私たちの想像を置き去りにしていくぞ」
 まるでそうなる事を期待しているように、真名はにやりと笑った。
 


























 ネギは木乃香との仮契約、そのアーティファクトによって助かった。
 明け方、予想よりもずっと早く到着した腕利き達の手によって本山の防備も再び固められている。
 石化された者たちも皆回復し、呪術協会の人間は休む事もできず慌しく動いていた。
 その喧噪からは離れた場所で、士郎は休んでいた。いや、休まされていた。
 チャチャゼロが士郎を発見してから、士郎は目を覚ましていない。
 治癒術師の言葉を借りるのならば、外傷はないらしい。
 あるにはあるのだが、それは戦闘で受けた傷ではなく、無茶をし過ぎてボロボロになった両足と全身疲労。
 体力さえ回復すれば、その内目を覚ます。
 そう刹那に告げて、彼女は士郎の部屋を出て行った。最後にポンっと、刹那の肩に手を置いて。
「士郎さん……」
 眠っている士郎は、まるで死んでいるように見えた。薄く上下する胸板がなかったら、本当に取り乱していたかもしれない。
 刹那は脇に座して、士郎を見つめる。
「ダメですね、私は。未練があり過ぎます」
 刹那は、別れを言う為に士郎の元を訪れていた。
 結局使ってしまった禁忌の力。見せてはいけない姿を見せてしまった。
 今更、烏族に戻れるわけではないとしても、それは掟。もう二度と、彼女らの前には姿を現す事ができない。
 それを、後悔しているわけではないけれど。
 やはり、どうしても拭いきれぬ未練はあった。
 木乃香の事も。明日菜の事も。ネギの事も。そして、士郎の事も。
 まだ恩を返せていない。返しきれていない。
 いや、士郎にだけはあの姿を見られていないから、また会う事もできる。
 その時は、何とか恩を返したいと……否、恩を返すのだと、そう約束したかった。
 けれど士郎は起きる気配がない。その眠りの深さが、昨夜の無茶を感じさせて、刹那は自責の念にかられる。
 士郎が望んだ事とは言え、その足を斬り落としたのは刹那であったし、何よりそうした士郎の助力がなければどうなっていたか定かではない。
「士郎さん、すみませんがこのカード、記念に貰って行きます」
 刹那はそっと、士郎からオリジナルの仮契約カードを引きぬいた。
 刹那にはカモが作ったコピーカードもあったが、カードを残していては足がつく。
 士郎と刹那が仮契約していると知っているカモならば、刹那の居場所を探る為にカードを使う事を発案し、それを士郎も承認するだろう。
 だから、置いていけない。いや、追ってきて欲しいという思いはあったけれど、逃げた自分がどんな顔をして会えばいいのかも分からない。
 結局、オリジナルのカードも持っていく方がいいと判断した。
 次、もう一度会えた時に返そう。刹那の心の中での誓いが、また一つ増える。
「次会う時は……私も士郎さんの助けになれるよう、強くなっています。だから……」
 刹那はその先を言わなかった。否、言えなかった。
 士郎の目が薄く開いたからだ。
 ぼんやりとした表情で、部屋を眺め、刹那に視点を合せる。
「気が付かれたのですか?」
 少々興奮気味に、刹那は浮かしかけた腰を下ろして士郎に近づいた。
 それでも士郎は刹那を見て困惑気に、告げる。
「……君は、誰だ?」
 

 
 刹那の時は、まるで石化したように、止まった。















刹那「私、もう自分の扱いが良いのか悪いのか分からなくなってきました……」
高音「出番があるだけマシです!」

(拍手)
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