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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第39話


「反撃の予感」



 その時詠春は、木乃香に全てを伝える為本山の中でも奥に位置する部屋に居た。
 何から伝えるべきか。話を聞いた愛娘が、どういった反応を示すのか。等量の期待と不安に苛まれながら、瞑想するように佇む。
 だからこそ、気付く事ができたのだ。
 詠春の術者としての力量は、高いとは言い切れない。もちろん並みは遥かに超えるが、ここ関西呪術協会に彼を超える力量の持ち主がいないわけではないのだ。
 もしも詠春がこの時、集中状態になかったら。または、詠春の傍らに衛宮士郎が鍛えた黒刀『暮星』がなければ、呆気なく皆と同様に石化を受けてしまっていた可能性がある。
 だが、現実は襲撃者にとっては不運なものだった。
「やれやれ。神鳴流に衛宮の刀は反則だね」
「貴様、一体何者だ。並みの術者に本山の結界は破れない」
「なら、僕が並みではないということだろう? 現状を認識したらどうなんだ、近衛詠春。関西は既に、我々の手に落ちている」
「何を。今ここで貴様を倒せば、何の問題もないっ」
 踏み込む一歩は神速だった。煌めく刃を、フェイトは寸前でかわす事に成功する。それも、数多の障壁で剣速を緩和して、ようやく。
 まさしくこれ以上ない脅威だ。衛宮士郎でさえ不意を打ち、別の人間を巻き込むことで無力化できたというのに、ここにきて彼以上の障害が存在したのはフェイトにとって予想外。
 近衛詠春について、フェイトが得ていた情報は平和のぬるま湯でふやけ切ったかつての英雄、というものだ。
 実際に、数か月前までの詠春ならばそう言い切られても仕方がないほどに力を落としていただろう。
 しかし、士郎との決闘が、詠春の精神に多大な影響を及ぼしていた。久方ぶりの緊張感のある戦い、そしてその中で上手く動かない体。
 詠春はあの戦い以降、自分の鍛練に割く時間が増えていた。それでも全盛期の力を取り戻すには全く足りなかったが、今の詠春の手には規格外の戦力がある。
 フェイトが脅威に感じている詠春を構成する要素の多くは、間接的に士郎が与えたものだった。
ッ」
 閃光のような太刀筋を、フェイトは辛くも石剣で防ぐ。いや、防げたかに見えたのは一瞬、詠春が気を張るとまるで粘土のようにたやすく剣は解体される。
 しかしフェイトもさるもの。詠春が武器破壊という一動作を行っている間に距離を取り、呪文を紡いでいた。
 だが、神鳴流の、それも最上位に位置する使い手を前にして、その距離はないに等しい。
「小さき王、八つ足の――」
「遅い」
 斬った。が、それも右手に裂傷を作っただけ。とても勝負が決まるような深い傷ではない。
「衰えたとは言え流石は大戦の英雄か……近接では分が悪い」
 言うや否や、フェイトは逃げだした。
 そもそも、いくらフェイトとは言え、近接で戦いになるという時点でどれだけ詠春が衰えているかが知れるだろう。もしも詠春が全盛期の力をそのまま使えていたのなら、既に決着はついていたはずだ。
 だが逆に、衰えているとは言え接近戦に持ち込めているという事は、戦いの主導権は握れているという事になる。腐っても鯛か、その経験値は馬鹿にならない。
 しかし決め手に欠けるのも事実だ。今もこうして、あともう一太刀というところで逃している。
 詠春は一歩遅れてフェイトを追った。その速度は確かに神速と例えられるに相応しいものだったが、フェイトとの距離は縮まらない。
 地の利は詠春にあるはずだった。この地において、長である詠春以上に効率よく動けるはずがない。しかしフェイトは、構造物の全てを理解しているかのように上手く煙幕を張り、結果詠春の視界から消えた。
 とは言え逃げた先について、おおよその予測はつく。転移魔法を行使する余裕がないからこその煙幕による足止めであり、となれば単純に足で距離を稼ぐしかない。
 いくらフェイトが速く、本山の構造を熟知していたとしても、総合的には詠春に敵わない。
 追い詰めたという確信を持って角を曲がった詠春が見たのは、意外な人物だった。
「お父様」
「木乃香っ、こちらに髪が白い少年が来なかったか!?」
「来ませんでした」
 裏をかかれたか、と詠春は焦る。しかしこの場で木乃香を保護できたのならば上々だ。
 今この場所に、木乃香がいるのは別段不思議ではない。木乃香は詠春の居た奥の間を目指していたはずだから、時間的に考えればむしろ遅い方だ。
 それが逆に幸いした。現在最優先されるのは敵の撃破ではなく木乃香の防衛であり、申し訳ないがその他の犠牲者たちについては弐の次だ。どうせ朝到着する予定になっている応援さえ揃えばこちらの勝利条件は満たされるのだから、その判断は当然と言える。
 そう、詠春は最善の選択を取った。だから、この結果は敵の作戦勝ちと言う他ない。
「石化の邪眼」
「は――?」
 振り返った詠春は無意識にレジストしたものの、直撃は避けられなかった。
 全く意識していなかった背中。守るべきものがあったハズの後方からの攻撃など、避けられるわけがない。
「うん、やはり一次接触なしでは十数秒が限度だね。最も、外面だけでも効果は十分のようだ」
「まさか、貴様ッ」
「そうだよ、近衛詠春。君の娘に化けさせてもらった」
 霞が晴れるように木乃香の姿は消えていき、残ったのはフェイトの感情のない顔だ。
 詠春は受けた呪文を必死にレジストしようとするが、進行を遅らせるのが限界。それを見て既に十分だと判断したのか、フェイトは転移を開始する。
「さて、今度こそお姫様をもらいにいかないとね」
「待てっ」
 水を使った転移魔法で消えゆく姿に詠春は固まりかけた手を伸ばすが、それが届くわけもなくフェイトは転移を成功させた。
「くっ、私とした事が……」
 嘆く詠春だが、最早どうしようもない。詠春は士郎が何とかしてくれる事に期待しているが、その士郎も既に負傷して動けないでいる。
「長っ!」
「ん、君か」
 あと数十秒しか残されていない状態で、幸運にも詠春に近づく味方が居た。士郎の治療をしていた治癒術師である。
 彼女は運よく、フェイトの襲撃を逃れていた。あるいは、彼女に戦闘力がまるでない事を悟られた上で放置されたのかもしれないが、今は幸運だったと噛み締めるしかない。
「ご無事、ではないようですね……」
「全くしてやられました。貴女はこの術を解呪できますか?」
「石化の進行が速過ぎて私の術では……申し訳ありません。私がもっと修練を積んでいれば」
「いえ、仕方ありません。それよりも、私にはもう時間が残されていない。これから話す事を、衛宮士郎に伝えなさい」
「しかし、彼が無事であるとは……」
「希望を捨ててはいけません。現状この地に彼以上の戦力は見込めない。石化さえ逃れてくれていれば貴方の術でも負傷は治せるはずです」
「……分かりました。この一命をかけて、衛宮士郎を戦わせます」
 激しすぎるその言に、詠春は苦笑しかけた顔を固める。実際今は、士郎の都合など関係なく戦ってもらう他ない。また借りが出来てしまうことになるが、そんな事を気にしていられる程余裕がある状況ではないのだ。
「頼みます。では――」
 そして、詠春は簡潔に語り出した。



















 刹那は、もう何も考えずに駆ける事ができない程度に忘れてしまった本山を、それでもあらゆるものを度外視して疾走する。
 それはもう、走るというより跳ぶと言った方が正しい。ただ速く。尚止まらずに。
 そうして駆ける事ができたのは、木乃香の現在位置におおよその当たりがついていたからだ。
 木乃香は詠春に話を聞く為、奥の間に移動していたはず。ならば考えられる全経路を式神を用いつつ通り奥の間へと移動、詠春と合流すれば問題はない。
 その思考に間違いはないし、刹那の知り得る情報では最善の答えだった。
 だが、実際に木乃香が居たのは真逆の客間。明日菜と一緒に刹那を探していた最中だった事など、知る由もあるまい。
「刹那さんっ!」
「ネギ先生?!」
 ここで一つの幸運が起きた。ともすればそのまま詠春の石像まで行きついてしまったかもしれない刹那に、正確な情報を与える事ができる者との遭遇。
 ネギは、明日菜との念話でそのおおよその位置、現状を理解している。
 明日菜が木乃香と行動を共にしてくれていた事も幸運の一つだろう。これで、最低限追撃に必要な戦力は整いつつある。
「ネギ先生、状況はっ」
「今の所木乃香さんに問題はありませ――んっ!!」
 額に汗を浮かべるネギに、刹那も最悪の状況を予感する。
「っ、まさか」
「……ハイ。アスナさんとの念話が途切れました。とにかく今は急がないと」
 急ぐ刹那たちだったが、ネギ先導ではそこまでのスピードは得られない。いっそネギに場所だけを聞いて、先に行こうかと考えた時、
「ここですっ!」
 力任せに障子を開ける。
 一歩踏み込んで、すぐに二人は理解した。
 ――既に、遅かったと。一目瞭然、倒れ伏した明日菜と、姿の見えない木乃香。
 それだけで、何が起こったのか、推測は容易い。
 二人は急ぎ明日菜に駆け寄る。
「大丈夫ですか、明日菜さん! 何があったんです!?」
「ご、ごめん……刹那さん。このか、攫われちゃった」
 辛くも、予想していた事。刹那に驚きはなかった。
 問題は、誰が、どのように、具体的に何分前、木乃香を連れ去ったのかという事だ。
 今は少しでも情報が欲しい。追撃の為の準備は、一分一秒を賭して為さねばならないのだ。
「き、気を付けて。あいつ、まだこの辺に――」
 ぴくり、と。刹那の背中に、電流が走った。
 刹那がフェイトの襲撃に気づけたのはまったくの僥倖。一度、その襲撃を体感していたからこそだった。
 無音の掌底を、裏拳で弾く。体勢が崩れるのは理解していた。更なる追撃には、小回りの利く白結で対処する。
 が。
 鞘ごと受け止めたその打撃は、踏ん張りが利かないほどに重かった。
 せめて、鞘から抜く余裕があればまだ別の結果もあっただろうが、これが現実。深刻なダメージではないものの、刹那の腕は痺れ、一瞬の隙ができる。
 そこに、今度こそ重い一撃が入った。ガンッという重低音は、人間の肉体で生まれる音だとは思えない。
 少年は、いや、まず間違いなく木乃香を攫った下手人であろうフェイトは、ネギに向き直り無言で佇む。
 ネギもまた、無言で対した。最早、言葉などいらない。
 明日菜を、刹那を傷つけた。それだけで、ネギの戦う理由には十分だ。
「ラス・テル マ・スキル――」
「止めておいた方がいい」
 すっ、と。手で制止されただけ。ただ、それだけの動作であったのに、ネギは呪文が紡げなくなった。
 始動キーから先、何を唱えればこの少年に通じるのか。
 幾つもの選択肢が一瞬で浮かんでは消えて、どうしようもない、と気がついた。
 ネギは威圧で気圧されたわけではなく、力の差を理解したわけでもない。
 刹那を素手で打倒し得る相手に、数歩の間合いで相対している。その時点で、魔法使いである自分に勝ち目などないのだと。そんな単純な結論に、理性が辿り着いてしまったのだ。
「いい目だ。でも、僕と戦うには早過ぎたね。今の君では、無理だ」
 冷静で冷酷な宣告。事実、ネギとフェイトにはその言に違わぬ力の差があるだろう。
 少なくとも、この場では勝てない。それだけは痛烈に理解して、ネギはフェイトの転移を止めなかった。
 今は、深追いするべき状況じゃない。それを頭ではなく、肌で感じ取っていた。或いは明日菜か刹那が健在ならば、ネギもフェイトを追っていたかもしれない。
 しかし負傷した仲間の存在が、ネギを冷静にしていた。
「水を利用した『扉』……こりゃかなりの高等魔術だぜ。石化もアイツの仕業だとしたら、相当な手練だ」
 カモの分析は的を射ている。
 ネギも、刹那も、これまで以上に敵の強大さを感じ取っていた。ネギは小太郎と、刹那は月詠と比べて、彼ら彼女らを打ち破ってきた二人だからこそ分かる。
 アレは、次元が違う存在だ、と。
 奇しくも、それは刹那が詠春や士郎に抱くイメージと似通っている。だからこそ、より強く敗北をイメージしてしまっていた。
 だが、いつまでもうじうじと悩んでいるわけにはいかない。立ち止まる猶予はなく、事態は今も取り返しのつかない方向に進んでいる。
 どうするか。如何にして木乃香を奪還するのか。どうやって、明日菜や刹那を痛めつけた報いを、受けさせてやるのか。
 ネギは、結論を出せない。出せないが、一つだけ通さなければならない決意があった。
「アスナさんはここで待っていて下さい。このかさんは僕が必ず取り戻します」
 宣誓。言葉として口に出す事で、ネギはより自分の中で確固たる決意が生まれてくるのを感じた。
 もう、迷わない。今は勝てない、なんて逃げたりしない。
 次がないのなら、玉砕覚悟でも足掻いてみせる。教師として、何より友達として。必ず取り戻してみせる。
 その決意に、刹那も呼応した。
「ええ、とにかく追いましょう。気の跡を辿れば……うっ」
 刹那が先ほど攻撃を受けた脇腹を押させて蹲る。骨にヒビぐらいは入っているのかもしれない。
「刹那さん、軽い傷なら僕でも治せます」
「すみません、よろしくおねがいします」
 ネギが治癒の呪文を唱えた。何とはなしに、場がむず痒いような沈黙に支配される。
 今闇雲に追いかけていって何とかなる相手か、そんな事はネギも刹那も理解している。だから、今は傷の治療に専念した。勿論時間をかける事はできないが、生半可な覚悟で奪還が為し得るとも思えない。
 ふつふつと、静かに闘志を燃やすネギと刹那。その二人に、いっそ場違いなまでなハイテンションでカモが口を開いた。
「そうだっ、名案を思いついたぜ!」
「何ですか、カモさん」
「おうよ。ズバリ、刹那の姉さんと兄貴がチュウするんだぼへぅっ!」
 途中で明日菜に上から潰されたカモは最後まで言い切る事ができずに悲鳴を上げた。
「違うよ違うんすよ、姉さん。仮契約っす」
 その言葉に三人ともがピンと閃く。
 仮契約には恩恵が多い。魔力の譲渡は言うに及ばず、アーティファクトの存在や念話・召喚機能など多岐に渡る支援効果は、何らかの役に立つだろう。
 だが、決断を下すには時間がなかった。ネギによる刹那の治療はほぼ終了し、これ以上のタイムロスは無駄でしかない。
 思考は走りながらでもできる。策も決まらない内から動き出す事は、本来なら下策も下策、叱り飛ばされておかしくないものではあるが、今は何よりも決定的な状況へと移行しないように敵の行動を阻止する事こそが最重要。
「ネギ先生、話は後にしましょう」
「そう、ですね。それではアスナさん、僕たちは行ってきます」
「ちょっと待ちなさいよ! 私も行くわよ!」
「しかし、明日菜さんだって敵にやられて……」
「もう大丈夫。それに、私だって木乃香の親友なんだから。ついていく権利、あると思うけど」
 そこまで言われれば、ネギにも言い返す事はできない。今自分が木乃香の為に危険を顧みず戦いの場へと向かうのは、明日菜と全く同じ感情があるからだ。
 その感情を否定しては、ネギも動けなくなってしまう。
「分かりました。行きましょう」
 後ろ髪を引かれるような思いを残しながらも、ネギたちは戦場へ駆けだした。

 



















 彼女が衛宮士郎を見つけたのは、彼にと与えられた客室だった。
 士郎の姿は赤い外套に隠され完全には見えなかったが、少なくとも石化していない事は見てとれる。
 その事に安堵し、一歩踏み込んで、気付いた。
 足が、ない。
 否、石化した足は、彼の右脇に抱えられていた。よく見れば畳には這ったような跡があり、血痕もわずかに残っている。
 戦闘の形跡はない。ないからこそ、その光景は異常と言えた。
「足を、落としたのですか」
「君か」
 答える士郎の額には、流石に汗が浮かんでいる。けれど、表情はない。
 相当の激痛が今も襲っているはずなのに、顔色も変えず淡々と確認を取るその姿は、いっそ滑稽ですらある。
「この足、治せるか?」
「既に完結した術、それもこの程度の大きさなら私でも対処はできます。しかし、治療までは魔力が持ちません」
「それでいい。頼む」
 ぽんっと気軽に、士郎は己の足を投げて渡した。そのあまりの非常識に、彼女は思わず声を上げる。が、一言物申す時間も惜しいと感じたのか、黙々と術式を開始しようとした。
「ああ、その前に、一つ尋ねたいのだが」
「何でしょう」
「この石化を解いた時、術者に解除された事は伝わるか?」
「特殊な術式ならばそれも可能かもしれませんが、今回は数が多いですから。即時干渉するメリットよりも、術者のリソースを削られる分だけデメリットの方が圧倒的に大きいと思われます」
「そうか。ならば、無理に足を落とすこともなかったな」
 士郎が刹那に己の両足を切断させたのは、衛宮士郎という戦力が既に戦線を離脱した。そう、敵に思考を植え付ける目的がある。
 もっとも、ルールブレイカーを使えば足を失う事も無く石化を解除できたかもしれない。
 だが、試した事はなかった。
 あらゆる契約を破棄する裏切りの短剣、その契約破りとしての特性は士郎が扱っても結果は変わらない。
 けれど、魔術の初期化という点において、士郎の投影した劣化品ではランクの関係上キャスターほどの効果は期待できなかった。
 あの時、石化の進行速度を考えれば、ルールブレイカーによる初期化が失敗した場合そのまま術は全身を覆っていただろう。
 加えて、宝具クラスの投影には時間がかかる。一瞬の隙ではあるが、その一瞬を見逃す相手でもなかった。
 事実、フェイトは士郎が足を落とすまで、士郎の射程外からこちらを窺っていた。あわよくば再び転移魔法で接近し、刹那もろともトドメを差すつもりだったのだろう。
 刹那の存在、こちらにある戦力、その効率的運用。そして、近衛詠春の存在。様々な思考の末、士郎は呆気なく自分の足を斬り落とす事が最善であると判断した。
 その結果として、今がある。
 あの場で二人もたついているぐらいなら、一人でも先に進んだ方がいい。それも事実。
 確かにルールブレイカーという賭けに成功していれば、そもそも木乃香を奪われる事もなかっただろう。
 けれど、士郎にとっての誤算は詠春の敗北だ。せめて、士郎の準備が整うまでは状況を維持できる、それだけの能力があると信頼していたのだが、甘かった。
 これは決して士郎の責任ではない。ベストではなくベターを選択した、ただそれだけ。
 しかし、今こうして治癒術師の治癒を受けることが出来ているのだから、魔力消費という観点においてはこちらの方が都合が良かったのかもしれない。
「終わりました」
 彼女の額にも汗が光っていた。士郎の両足は石化を解かれ、元の黒ずんだ色を取り戻している。
「助かった。君は――」
 しばらく隠れていろ、という言葉は遮られる。
「いいえ。まだ、少しは魔力も残っています。私の使命は貴方を戦わせること。それが、今は関西の為になるのです」
 決意。己の居場所を、この家を守るためならば、いけ好かない男の手でも借りる、と。自分が精根尽き果て、意識の限界まで力を注ぐ事が、すこしでもこの戦いの力になるのなら。
 それが、彼女の戦い方なのだろう。戦う力を持たない者の、戦う手段なのだ。
「伝えるべき事も、あります。長からの伝言、です」
 見るからに辛そうな表情で、残り少ない魔力を士郎の治療に注ぐ。献身的では全くない。むしろ、親の仇でも目にしているかのように、彼女は顔を歪ませる。
 その、あまりに苦しみを湛えた表情が、彼女の限界が近い事を物語っていた。
「『敵は、先日話した“奴ら”だ。木乃香だけでなく彼女も頼む。他人に化ける術に気を付けろ』、と……」
 そこまで言って、今度こそ本当に、限界まで魔力を消費した彼女は崩れ落ちた。
 その体を支えた士郎は、ゆっくりと彼女を床に横たえる。
 足は、繋がっていた。過負荷がかかれば骨ごと折れるだろうが、それでも立つ事ができる程度には回復している。
「借りとは思わない。君の努力は、私が結果として実現してみせよう」
 詠春からの伝言を胸に留め、彼女の覚悟と力を背に抱え。
 その足で、士郎は今度こそ戦場に向かって歩き出した。





 







詠春「いえ、仕方ありません。それよりも、私にはもう時間が残されていない。これから命ずる事を、貴女は全うして下さい」
女性「勿論です。何なりとご命令下さい」
詠春「では、この機に衛宮士郎を抹殺してきて下さい」
女性「――――は?」
詠春「抹殺です。できる限り証拠を残さないように、秘密理に処理する形で」
女性「あの、長?」
詠春「大丈夫です。士郎が居なくたって京都編が解決するのはコミックス6巻が証明しています! どうせエヴァンジェリンが美味しいトコ総取りするんだから、後々木乃香が士郎の毒牙にかからぬよう今の内に――げふぅっ」
女性「さて、衛宮士郎を探しに行きますか」
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