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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第38話


「開戦」



「ああー綺麗な夕暮れだなー。古都・京都、それも山奥で見る景色ってのもいいモンだよね」
「さて朝倉。現実逃避はそれぐらいにしてもらおうか」
 ま、こんな事で煙に巻けるとは思ってないけど、少しぐらい情緒を解する心を持ってもいいでしょうに。
「何か言ったか?」
「いえ、何でもありません! サー!」
「サーなどいらん。そもそもだな……」
 そろそろ足も痺れて説教を聞いている余裕もないこの状況を、少しは分かってほしいものだと思う。もちろん口には出さないけどね。
 そもそもの発端は、私の浅慮というか、いやいや私なりに考えた末の行動が生み出した結果ではあるのだけれど、ともかくそれが士郎さんの堪忍袋を刺激した事だった。
 具体的に言えば、私が宮崎にカードの使い方を教えた事。ついでに、その後パルたちをここまで連れてきた事もかな。
 弁明するのなら、前者はともかく後者は完全に私の意図した事じゃない。実際『連れてきてしまった』というのは事実だけど、私なりに必死に抵抗したんだから。
「先ほどから“私なり”に、という単語が頻繁に出てくるが、そんなものは免罪符にはならないぞ。こちら側に関わろうというのならそれ相応の覚悟が必要なのだからな」
 重たいお言葉。多分、私が“分かっている”つもりになっている事は全て氷山の一角で、その下には士郎さんが目くじら立てるに相応しいだけの闇が潜んでいるんだと思う。
 それを今更、分かったなんて軽く口に出すわけにはいかないし、出すつもりもない。
 ただ、無知は無知らしく、知ろうとする努力ぐらいは許されるんじゃないか。
 士郎さんの言う、必要な覚悟とやらがどの程度のものなのかっていう具体的なところは分からないし、おそらくそれを説明する気はないと思う。
 だから、私は私なりに後悔しないように行動するだけだ。
「ね、士郎さん。私は士郎さんの言う“こちら側”っていうのに関わってみたくて、士郎さんはそれを阻止したい。ならさ、私の記憶も消すの?」
「……朝倉?」
 今まで従順に説教を受けていた私が、いきなり態度を変えたからか、士郎さんは怪訝な表情で私を見つめた。
「答えてよ。じゃなきゃ、私は諦めきれない。私は、“私なりに”最善だと思う行動を取るよ」
 それは、多分士郎さんにとっては脅し文句にもならない、ただの勘違いした中学生の虚勢にしか見えなかったかもしれない。
 無茶をする、と宣言しているような発言だけど、実際はそんなつもりは更々なかった。やはり、私は怖さを感じている。
 刹那さんも木乃香も、士郎さんのバイクに跨って登場した時は朝見た時とは違う服装で、ほのかに血の匂いがした。
 そこから何があったのか、ネギ君がボロボロだった事も合わせて想像するのは容易な事。
 ソレが私の身に降りかかるのなら、それはやはり怖いと思うし想像するだけで身が竦む。ここでそんなのは平気だと思えればいいんだろうけど、散々脅されてきた私は生憎とそこまで自分を信じる事ができなかった。
 だって、私はそこそこに士郎さんとの付き合いが長い。もっとも、私が知っている衛宮士郎っていう人物像は、喫茶店のマスターだったり臨時の副担任だったりとその程度のもので、彼の裏の顔を知っているわけじゃない。
 でも、記者の勘として、この人がいい人だっていう事ぐらいは分かるつもりだ。密着取材して損はない、むしろここで引いたら一生後悔するっていうのが予感できるくらいに。
 だからさ、やっぱり私も頑張ってみようと思う。私ができる事なんて大したことないだろうし、士郎さんの言う通り何も知らない振りして日々の生活に埋没するのが賢い選択なんだろうとは思うけど、それでも。
 私、朝倉和美には、こういう生き方しかできないんだって、認めよう。そして、認めてもらう為に。私は、ここで説教を受けているだけで終わるわけにはいかない。
「今の所、君の記憶を消すつもりはない。君の性格を考えれば、記憶を消したところで再び偶発的な事態に遭遇した時、同じように真実を突き止めるだろう。ネギがいかに気を付けていたとしても、避けられない可能性はあるからな。だからこそ、私は君を説得している」
 はぁ、全くお優しい事。本当、喫茶店のマスターも板についてると思うけど、あのまま学校の先生っていうのも良かったんじゃないかな。
「士郎さん。私は士郎さんと敵対する気なんて毛頭ないし、むしろ協力したいと思ってる。でも、士郎さんがそれを必要ないと考えるなら排除してもいい」
 目を合わせ、逸らさずに告げた。私の決意と、行動方針。そして、ほんのちょっぴりの覚悟を。
「でも、私は抵抗するよ。自分の欲の為にね。それで破滅するなら本望……とは思えないけど、自業自得だから、士郎さんは気にする必要ない」
 士郎さんは、何故か黙って私の宣言を聞いていた。何か思うところがあったのか、それともただの気紛れなのか。どちらせよ私にとっては好都合。
 私は正座の態勢から立ち上がって、士郎さんから視線を離した。
 そのまま去って行こうかとも思ったけど、まだ私は士郎さんの答えを聞いてなかった。それは多分、無理に聞き出すべき事じゃなくて、いずれ私が受け入れなければならない未来なんだろう。
 だから、私の口から出た言葉は、私が意識しているよりかなり明るい声になってしまっていたと思う。
「士郎さん。もしも私を止めるのなら……ちゃんと責任取ってよね!」
 勿論安全の。もっとも、それをどう解釈するかは、士郎さん次第だけどね。























 士郎は、和美の後姿が消えるまで無言で見送り、その姿が完全に消えると溜息をついた。
 やれやれ、とでも呟きが聞こえてきそうな背中は、本人の感情は別としても哀愁を感じさせる。
 遠くを眺める彼の瞳に、何が映っているのか。それは誰にも窺い知れないし、その思索の果てに何を考えるのかも、問う者がいない以上明かされる事はない。
「大変だな、君も」
 いや、いた。驚かせようとでも考えていたのか、詠春が気配を殺して士郎の後に立つ。
「覗き見は、いい趣味とは言えんぞ」
「ああ、すまない。聞くつもりはなかったんだが、女性の声はよく通るからね」
 そして士郎はまた溜息をついた。詠春を一瞥するも、すぐに視線は本山の自然に吸い込まれていく。
 視線を合わせようとしない士郎に対して、詠春は話の切り出し方を考える。しかし、背中を向けたままの士郎が先に口を開いた。
「いいのか? こんなところで油を売っていて」
「構わないさ。木乃香たちは本山の結界に守られていて安全だし、今日の業務は終わっている。後は、宴の準備ぐらいのものだが、それこそ管轄外だからな」
「そうか。では、何の用だ?」
「おいおい。用がなくては友と雑談に興じる事もできないのか、私は」
「暇というわけでもないだろうに」
 士郎が言っているのは、木乃香や刹那について。魔法使いとして覚醒しつつある木乃香に対する説明や、刹那に対する労い。
 それに、親子としての時間も中々取れない家庭なのだから、こんな時ぐらい水入らずの時間を過ごしても罰は当たらないだろう。
 今の詠春に差し迫った仕事はなくとも、やるべき事はいくらでもある。それなのに、わざわざ士郎の元を訪ねたのには当然理由があって然るべきだった。
「……今回の件について、感謝を述べたい」
 少し間を置いて、詠春はゆっくりと語る。
「護衛以外の面でも、木乃香が迷惑をかけたようだ。親として謝罪する。すまない」
「よせ。私はこの仕事の間、一度も近衛に迷惑をかけられたなんていう認識はないぞ。親が謝る必要などない。むしろ自慢していいぐらい、あの子は良く出来た子だ」
「そう言ってくれると、ありがたい」
 詠春の用は、これで終わりだったのか、話はそこから続かなかった。形容し難い沈黙が場を支配する。
 詠春は士郎の視線の先を追った。特に何があるというわけではなく、ここでは珍しくも無い桜林があるだけだ。
「何か、悩んでいるのか?」
「さて、な。悩んでいるというには、答えは出ているが。迷っている、と言った方がいいだろうな」
「話せない事、なんだな」
「そういうわけではないが……己で決めなければ意味がない事だ」
 相変わらず、振り向きもせずに、士郎はどこか遠くを見つめている。詠春は一歩前へ出て、士郎と並ぶように同じ先を見つめる。
「しかし、君でも迷う事はあるのか」
「ふ、近衛詠春の眼に映る衛宮士郎は、悩みとも迷いとも無縁に見えるか?」
「ああ、そうだな。少なくとも、必要な時に必要な決断を迷う事はないと思う」
「ならば、私は今までかつてと変わりなく在る事ができていたという事か。やはり、答えは決まっているのだろうな」
 自己完結した言葉は、誰に理解を与えることもなく空へ溶ける。区切りをつけて、士郎は振り返った。
「さぁ、そろそろ宴会なんだろう? 主催者が居なくては始められないぞ」
 そう言って士郎は先を歩き出す。
 一瞬見えた士郎の横顔に、決断ではなく諦めの色を見てしまった詠春は、曇った顔のまま士郎の後を追った。





















「ふぅ」
 ちゃぷちゃぷと揺れる波をどこか放心したように眺めながら、刹那は息をついた。
 思えば朝から気を張りっぱなしで休まる間もなかった刹那にとって、友人と無防備に湯に浸かっていられるこの時間はとてもありがたいものだ。
「ふぃ~~。こんな広いお風呂を2人で貸切ってスゴイ贅沢よね」
「そうですね。これもご褒美のようなものでしょうか」
 実際、女子中学生が負うべきではないリスクを乗り越えてきた2人だから、これくらいの計らいはあってもいいだろう。
 刹那としては既に詠春から感謝の言葉を貰って精神的には大いに充足しているのだが、明日菜は特に得るものもなく今回の件に関わっている。最後くらいはのんびりとした思い出で締めたいと思うのは自然な事だった。
「あ、そうだ。昼間はさ、士郎さんがそっちに行ってから帰ってくるまで随分かかったけど、何してたの?」
 服も変わってたし、と付け加える。
「あの、その、何と言うか……」
 刹那にとっては、あの後の事はあまり思い出したい事ではない。
 幸せ気分で抱きつかれていたのも数分、士郎が既に到着していると気がついてからはただ恥ずかしいばかりで、しかし刹那の方から木乃香を引き剥がす事など出来ようはずもなく、結局数十分はそのままだったのだから。
 その後は士郎からお札とお金を借りて、新しく買った服に着替え、無理なバイクの三人乗りで帰ってきた。
 どれを取っても刹那にとっては嬉し恥ずかし、幸せなのかどうかさえ考える余裕もない場面の連続で、語り出せば確実に赤面してしまうので出来うる限り敬遠したい。
 というか、既に刹那の視線はふらふらと彷徨い、顔は赤く染まっているので色々と手遅れではあるのだが。
「あ、ごめんごめん。困らせるつもりじゃなかったんだけどさ。まぁ、あらましは木乃香と士郎さんに聞いてたんだけどね」
「いつの間に。というか、もう知っているのなら私に聞く必要はないじゃないですか」
「それはそうなんだけど。刹那さんは、お昼の事をどう感じてるのかなって。まあ、さっきの反応で丸分かりだけど」
「もうっ、アスナさん!」
 刹那は、怒ったフリをした、ように明日菜の眼には映った。実際刹那の感情は怒りというほど激しくはない、ただのテレ隠しだ。
 ははは、と笑って誤魔化す明日菜は、内心で安堵のため息をつく。
 刹那と木乃香が仲直りできたのなら、これで明日菜的には修学旅行における懸案事項は全て解決した事になる。後は、普通に旅行を楽しむだけだ。

 と、そんな頃合いだった。ネギと詠春、それに士郎が風呂場に入ってきたのは。
「この度はウチの者たちが迷惑をかけて申し訳ありません」
「い、いえ」
 湯船に入った三人のうち、主に会話をしているのはネギと詠春だ。士郎は特に口を開く必要もないと感じているのか、のんびりと広い風呂を堪能している。
 かに、見えたのだが。
「…………」
「(気付かれてます! 気づかれてますよアスナさん!)」
「(え、マジ? って、私の足見えちゃってたかも!)」
 今更隠してももう遅い。男三人が入ってきたときに隠れるという選択肢を取ってしまった以上、刹那と明日菜はこのまま隠れているしかない。
 士郎が気づかないフリをしてくれるのを願いつつ、慌てて動き出してしまいそうになる体を必死に抑えつけるのみである。
「しかし、今回は士郎が同行してくれて助かりました。こう言っては何ですが、おそらくネギ先生と刹那君だけでは木乃香を守り切る事はできなかったでしょう」
「そう、でしょうね。刹那さんはともかく、僕は何もできませんでしたから……」
「いえいえ、ネギ先生も十分助けになってくれていますよ。ねぇ、士郎」
「そうだな。私が10歳の頃など、君の足元にも及ばなかったさ。誇っていい」
「それでも、今回僕が役立たずだったのは事実です」
 詠春と士郎は視線を交わす。アイコンタクトの末、口を開いたのは詠春だった。
「ネギ先生。過去を悔むより未来を案じましょう。失敗は成功で取り返せばいいのです」
「そうだ。君からすれば私たちは強く頼もしく見えるのかもしれないが、私たちだってここに至るまで何度も失敗し、挫折を味わってきた。私たちは、君より少しばかり早く生まれてきたに過ぎないんだよ」
 そこまで聞いてようやく、ネギの顔にも沈んだ色が薄れていった。
「……そうですね。僕、これからも頑張っていきます。父さんみたいなマギステル・マギになる為に!」
「ふふ、ナギみたいな、ですか」
「あれ? 父さんの事、知ってるんですか?」
「ええ、よく存じ上げていますよ。何しろ私はあのバカ……ナギ・スプリングフィールドとは腐れ縁の友人でしたからね」
「え……」
 ネギは先ほどまで落ち込んでいたのが嘘のように放心する。
 だが、いつまでも放心しているのは、状況が許してくれなかった。図書館組と朝倉、残った女子たちが浴場に近づいてくる声がする。
「緊急事態です、ネギ君! 裏口から脱出しますよ!」
「あ、あわわ」
「おい待て! そっちは……」
 士郎の制止は間に合う事なく、吸い込まれるように二人は明日菜と刹那が隠れている岩陰に向かって行った。
 ドシッと重い音が響く。何故か、後ろを走っていたはずのネギが明日菜とぶつかってしまっていた。
「…………」
 士郎は一瞬だけ考えて、浮きかけた腰を下ろす。
 よくよく考えてみれば下手に逃げるよりは視線を合わせないようにする事を最優先にすべきで、一旦彼女たちには下がって貰うなりすれば良かったのだ。
 そうすれば、こんな悲鳴が響きわたることはなかったろうに。
 そんな事を考えながら、彼女たちが士郎に一瞥もくれずにネギと明日菜に注目しているのを気配で察知した士郎は、人知れず別ルートで離脱した。



















 月が、綺麗な夜だった。
 風呂上がりだと言うのに制服を着ている刹那に、士郎は一歩離れて語りかける。
「やれやれ、災難だったな」
「本当です。気づいているのなら助けてくれてもいいではないですか」
「まあそう言うな。助けてやろうにも、他の連中が来るのが早過ぎたんだ」
「ふぅ。言い訳が上手ですね」
「大人になれば、誰でも上手くなっていくものだ」
 風が吹く。舞散る桜吹雪が月光に光り、幻想的な風景を映し出した。
 二人は、それに見惚れているわけでもないのに口を閉ざす。刹那は語るべき言葉を持たなかったし、士郎は問いかける言葉に迷っている。
 でも、いつまでも沈黙は続けられない。何かに急かされるように、士郎の方から口を開いた。
「行かなくていいのか」
「行こうとは思っています。でも、今はまだ桜を眺めていたいんです」
 近衛木乃香に対する魔法使いなど諸々の説明は、親の責任として詠春が行う事になっていた。
 そして、それに刹那も随伴して欲しい、とも詠春は告げている。
 刹那はそれを了承した。断る理由はないだろう。むしろ、刹那から願い出てもおかしくはない。
 だと言うのに、刹那はこんなところで黄昏ている。決心がつかないかのように、夜桜を眺めて佇んでいた。
「何か、悩みでもあるのか?」
「いえ。ただ、この修学旅行では色々ありましたから……心の整理を付けているんです」
 無理もない、と士郎は考える。
 刹那にとって、この3日間は忙し過ぎたのだろう。
 戦い、傷を負い、木乃香との溝に悩んで、また戦い。刹那と木乃香は確かに近づいたのだろうし、得る物もまた多かっただろうが、それでも中学生が経験するには強すぎる刺激だった。
「そろそろ時間ですし、行きます」
「ああ」
 振り向いた刹那の瞳に、迷いはない。純粋で、純真で、士郎には強すぎる輝きだった。
 けれど、だからこそ惹かれるものがあったのか。士郎はやや無遠慮に、その意志の炎を覗き込む。
「あの、何でしょ――っ」
 自然な疑問は、最後まで言い終わる前に強引に止められた。
 士郎が力任せに刹那の体を抱き抱えて、体を入れ替えるように押し倒してきたからだ。
「し、士郎さんっ!?」
 動転して刹那が叫ぶ。だが士郎はそれに答える事無く、刹那を突き飛ばすようにして起き上がった。
「投影、開始」
 虚空に現出する数本の剣が、先程まで刹那たちが居た付近に投げ込まれる。
 その段になってようやく、刹那は状況を理解した。
 二人は奇襲を受けて、士郎が刹那を庇い、その後迎撃したのだと。
 士郎が投げた短剣は、確かに襲撃者を貫いたが、その影はぴちゃりという音と共に崩れさる。
「幻影か……逃げ脚の速いことだ」
 そう言って、士郎は刹那に向き直ろうとして、しかし侭ならずにバランスを崩して倒れこむ。
 刹那はそれを寸前で支え、そしてようやく気がついた。

 石化。衛宮士郎の両足が、石になっていた。

 石化は、目に見える速度で士郎の体を侵していく。どうしよう、などと刹那の思考が至る前に、士郎は至って平然と告げた。
「刹那。私の足を斬り落とせ」
「しかしそれではっ!」
「自分の手ではやり辛い。いいからやってくれ。今は一刻を争う」
 刹那の逡巡は、一瞬だった。盲目的とさせ言えるほどに、刹那は夕凪を抜き放つ。
 しかしいざ斬る前には、手が震えていた。無防備な体に斬りかかった経験などない刹那は、命令であっても味方を斬るのに心が痛んだ。
「刹那」
 その一声に魔力でもあったのか。刹那は震えを止めて、意を決して夕凪を振りおろした。
 血はさほど流れない。その事に安堵して、士郎の傷口を手当しようと屈みこむ。
「刹那、私の傷はいい。今は近衛の元に急げ」
「ですが、それでは足を落とした意味がありません!」
「後は自分で何とかできる。奴らの目的は近衛だ。詠春と合流して近衛を守れ。それがお前の役目だろう、桜咲刹那!」
 喝を入れるような大声に、刹那はもう迷いを見せない。いや、ここまでして、ここまで言ってもらえて、誰が情けない姿など見せられるものか。
「ご無事で!」
 駆ける刹那の後姿を見送って、士郎は一人残される。
 まるで足が切断された人間とは思えないような自然な動作で携帯をポケットから取り出すと、士郎は電話をかけた。
「龍宮、仕事だ」
 そうして、心強い助っ人が本山へと馳せ参じる。














刹那「またつまらぬものを斬ってしまった……」
士郎「オイ」
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