Twitter

FC2カウンター

カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

カテゴリ

最新記事

最新コメント

リンク

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:


検索フォーム

アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
388位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
二次小説
191位
アクセスランキングを見る>>

屈折領域・裏鏡


一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

TOP > スポンサー広告 > 夢破れし英雄  第37話TOP > 夢破れし英雄 > 夢破れし英雄  第37話

スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

夢破れし英雄  第37話


「嗚咽を零す」



 刹那が使った切り札は、ただの転移魔法符だ。ただし、補足対象を個別認識ではなく空間認識で行うものである。
 あの状況、刹那と木乃香が二人で離脱するにはこれしか手段がなかった。
 元々この仕事が始まる時に報酬代わり兼必要経費として士郎が詠春に渡された数々の術符の内の一枚だったが、これほど役に立てば詠春も本望だろう。おそらくは彼のポケットマネーだったのだろうし。
 だが、この転移符には問題がある。個別ではなく“その空間に居る者を”転移させる為に、もしも転移の瞬間、効果範囲に敵が入りこんでしまったら――。
「うふ、これで誰に邪魔される事も無く死合えますな~」
 能天気な声は、最悪の予想通りにすぐ近くから聞こえた。木乃香が身を強張らせる。
 刹那はあの一瞬、瞬動を使って接近する月詠が見えていたからまだ冷静だった。
 いや、これが一対一の状況ならば、この場に刹那と月詠しかいなかったのならば、或いは刹那も動揺したかもしれない。
 しかし、今の刹那は守る者だった。
 誰かを守ろうとするのなら、自信がなければならない。この人ならば大丈夫だと、不安を取り払えなくてはならない。
 不思議と刹那の心は落ち着いていた。今の自分では、月詠に敵わないと悟って尚。
 後に守るべき人が、心の底から護りたいと願える人がいるだけで、こんなにも勇気が溢れてくるなんて刹那は知らなかった。
「月詠、戦うのは構わない。だから、お嬢様に手を出すのは私を倒してからにしろ」
「せっちゃん……」
 不安そうに、木乃香は刹那の袖を掴む。
 それは別に、守護者として刹那が頼りないと感じたわけではない。単純に、友達としてその身を案じただけだった。
 でも刹那は、その不安を見て、自分の力不足を嘆いてしまう。そう、感じる。
 だがこの時に限り、この勘違いはプラスに働いた。上目づかいの木乃香の瞳が、刹那を鼓舞する。
「美しき友情……いえ、主従愛やろか? しかしこれも仕事やから……恨まんといて下さいね」
 言葉とは裏腹に、月詠は楽しくて仕方がないという風に笑う。
「お嬢様、少し離れていて下さい」
 木乃香が離れるのを確認して、2人の神鳴流剣士は向き直る。激突は、避けられなかった。
















 月詠の持つ衛宮印の短刀は、銘を『宵闇』というらしい。
 何ら特殊性を持たせる事無く、ただ単純に刀としての存在の底上げと切れ味を追及した、私の持つ『白結』の同型だ。
 単純に刀としての造り、丁寧さ、概念の比重を考えれば、圧倒的に白結の方が優れている。
 だが、夕凪と比べた時の差は歴然だ。鍔迫り合いも許されないのでは、そもそも勝負になどならない。木刀で真剣に挑むようなものだ。
 だと、言うのに。
「月詠、貴様……」
「一昨日はセンパイに一本折られてまいましたからな~。これは代わり……いえ、真打というところやろか」
 月詠が持っているからか。禍々しささえ感じる刀は、二本。
 今更確認せずとも分かる。それは、刀匠・衛宮による一振りだ。
 先日は、月詠が持っている衛宮印が一本だけだったから、まだ白結だけで対抗する事もできた。
 しかし、それが二本となればどうなるか。白結だけで二刀流の相手をするのは長さが足りないし、かと言って夕凪では前回の二の舞になりかねない。
 どうするか――――そんな思考を許すはずもなく、月詠は接近してくる。
 私は夕凪を抜いた。やはり一番使い慣れていることもあって、それがレプリカと言えども咄嗟に動くのはこちらだったのだ。
 だが、抜いたところで何ができる? 先日と同じように砕かれるだけならば意味がないし、あの時のように一瞬の隙をついて離脱できるわけではない。
 相対する事を選んでしまった以上、私たちがこの場を切り抜けるには月詠を倒す以外に選択肢はないのだから。
 その決意の下、私は“絶対に負ける”刀と刀の交差に挑んだ。
 火花が散る。なのに、夕凪は砕けない。
「面白い太刀筋やな~」
 二刀の連撃には更に速い連撃で。交錯するのは一瞬、柳に風と月詠の剣を受け流す。
 それは、士郎さんが得意とする戦い方だ。私は、何度となく彼と剣を合せてきた。だからこそ、トレースとまではいかずとも、『衛宮士郎ならどうするか』という思考を実行に移せる。
 もっとも、もちろんそれとて完璧とは程遠く、士郎さんのそれとは雲泥の差があるだろう。
 しかし、この場で月詠の刀を受け流すには十分だ。月詠の太刀筋は本来の神鳴流から離れ、衛宮の刀を用いた最大用法となっている。
 つまり、その強力無比な一撃による武器破壊。人を斬る為のものではなく、狙いはあくまで刀。そこに付け入る隙があると、私は睨んだ。
「うふふ、それでこそ私が見定めたお方。最高ですえ、センパイ」
「くっ……」
 月詠の速度が増す。必死に応じるが、やはり二刀と野太刀では手数が違い過ぎる。例え速さで私が上回ろうと、完全に凌ぐためには単純に考えて2倍の速度が必要だ。
 元々、神鳴流の剣は速く重い。それは、日本刀の切れ味を活かしたまま気による強化によって西洋剣なみの頑強さを手に入れた事に起因している。
 そして、今私が使っている剣技は化け物退治を専門とする神鳴流とは遠く離れ、日本刀の特質を活かした対人専用の剣術に近い。
 しかし、私のように大きな野太刀を振り回しているのならばともかく、月詠の剣は小回りの利く対人用のものだ。神鳴流でありながら対人戦闘に特化したその剣術は、隙が少ない。
「にとーれんげき、」
「っ! 斬空閃!」
 来る、と意識した時にはもう遅い。受けの技は基本的に先読みが必須となる。応酬のタイミングが崩されれば自然、追い詰められるのはこちらだ。
 辛くも放出系の技で距離を取る事ができたが、数歩も下がればお嬢様を巻き込んでしまう距離。それ程に追い詰められているのだという事実に、冷や汗をかく。
「うふふ。センパイ、逃げてばかりじゃ勝てまへんえ」
 確かにその通り。私は今の所一度たりとも攻勢に出ることができていない。現状は、ただ戦えているというだけに過ぎないのだ。
 装備による戦力差を考えれば、それでも十分驚嘆に値するのかもしれない。少なくとも、誰にでも真似できる事ではないだろう。
 しかし私は焦る。それも当然、もたもたしていたら他の仲間がやってくる可能性が高いのだから。私の勝利条件は月詠を倒す事ではなく、お嬢様を守る事にある。こんな所でもたついていられる状況ではない。
「しかしその腕……どうしたんやろか? ウチは確かに切り落としたハズですけど」
「答える必要はないな」
「あらら、つれないんやなー。これでも心配してましたんよ。もっとも、杞憂に終わったみたいやけど」
「時間稼ぎならさせんぞっ」
 ほとんど無策で突っ込んだ。しかし、二刀流の方が受けには適している。数合の斬り合いを、まるで先程までの自分がしていたように軽く受け流される。
 自分の優位は剣によるものだけではないのだ、と知らしめるように。
 実際私は危機感を感じた。剣技においても差があるとすれば、もう私に勝ち目はない。それならばいっそ、この場は逃亡もしくは時間稼ぎをして士郎さんを待つという選択肢だってある。
 士郎さんが既にこちらに向かっているのはちびせつなを通した最後の情報で知っていた。到着にどの程度時間がかかるか分からないが、敵の残り二人がこちらの転移を補足できていないのだとしたら、それが最も安全な策だ。
「うふふ。今度はセンパイが時間稼ぎみたいですね~。でも折角の機会なんやから、それはダメ。邪魔が入るまでもうそんなに時間がありませんし」
「分かった。決着を付けよう」
 月詠は、もうすぐ邪魔が入ると考えている。と言う事は、やはり、敵の増援はもう近付いてきていると考えた方がいいだろう。しかしそれは拙い。
 転移符は一枚だけだったし、仮に多数所持していたとしても同じ手が二度通じるとも思えない。もしも士郎さんの到着よりも敵の増援が早かったらその時点で終了だ。
 大きく深呼吸して、心を落ち着ける。焦ってもいい事は何一つない。後を見れば守るべき人がいる。ただそれだけを考えていればいい。
 そう、リスクなど考えるな。私がどんなに傷ついても、お嬢様さえ守れればそれでいいのだから。
 緊張が蔓延する。次の一瞬で終わりだと悟った月詠を気を張っている。
 私は夕凪を鞘に収め居合の構え。気づけば汗も引いていた。
 そこからどれだけの時間が流れたのか、私には良く分からない。数分向かい合っていたような気もするし、やはり一瞬の睨みあいであったような気もする。
 ただ、やはりその瞬間、私は私の限界を超えていた。
「ハァッ!」
 擬音さえ聞こえてきそうな笑みで迫る月詠に対し、気合一閃。抜刀術と言うほどでもない、ただ斬る事に専心した一太刀。
 しかしそれは当たり前のように、パリィンという音と共に砕け散る。
 夕凪が砕けるまでは計算通り。月詠は左手の短刀でそのまま攻撃を繰り出す。
 刀を軽々しく砕くような一撃だ。人間の腕など、いくら気で強化を施しても盾にはならない。だがそれでも、私は僅かな一瞬の為に右腕を差し出した。
 その伸ばされた手に、月詠の剣は少しだけ鈍る。別に、人を斬る事に抵抗感を覚えたわけではないだろう。
 ただ、右腕を斬ったのでは前回と変わらない。決定的な勝利の為に、それはただの障害物でしかなかったのだ。月詠は竹刀を払うように柄で私の右腕を弾き、もう一歩踏み込んだ上で体勢を崩した私に避けようのない一撃を――――

「アデアット」

 叩き込まれる前に、私の秘策が発動した。
 差し出した右手は注意を引かせる為のただの囮。本命は、アーティファクト『匕首・十六串呂』による包囲攻撃だ。
 タイミングは完璧。射出するまでもなく、そのまま踏み込めば勝手に刀の山に身を投げる事になる。
「――――!」
 月詠が私以上の腕を持っている、という事実は受け入れなければならないだろう。この時点で必勝の策であるつもりだったし、一六本の短刀をひと振りで砕く事はおろか慣性に従い前進する体を止めることすら不可能だと私は考えていた。
 なのに、月詠はあまりにも冷静に、私を攻撃するはずだった一撃で自分の急所に当たる短刀だけを悉く打ち砕く。
 結果、月詠は脇腹と右腕にダメージを負った。十六串呂では単体攻撃力が低すぎたのか、そのダメージを推し量る余裕はなかった。
 そのまま突っ込んできた月詠に対し、私は白結を抜く。ここに至り、既に私に時間の感覚はない。
 迫る小太刀を避ける努力を諦め、この交錯で全ての決着を付けるべく急所を狙う。月詠はそれを察知して回避行動をとった。自然、私を狙う剣も軌道を変えて、私はそれを追いかけるように踏み込んだ。
 結果、月詠の小太刀は私の左肩を貫き、私の白結は月詠の左手を縦に斬り裂く。
「くぅ、あっはッ」
 私は刀を引きぬかれる激痛に声を上げ、月詠は無言のままに顔を歪ませ宵闇を取り落とした。
 月詠はバックステップで距離を取る。私は肩を抑えながらも月詠の宵闇を踏みつけ、取り返せないように牽制した。
 睨み合うのは数秒。一瞬の交錯に比べれば、随分短く感じる時間だった。
「……負けたとは思いません。決着は次に」
 そんな捨て台詞を残して、月詠は離脱する。
 ああ、守れた。そんな実感が、私を埋め尽くす。
 月詠が何と言おうと、これが私の勝利だ。このちゃんを私が守ったのだから。私が、私の力で、今回こそは。
 さぁ、早くここを離脱しないと。敵の増援が来るかもしれない。
 早く動かないと、折角勝てた意味がない……んだか、ら。
 霞みつつあった視界に気づかない振りをして、無理やり立ち上がる。そして泣きじゃくるこのちゃんを視界に入れて、あれ? 何故泣いているんだろうと疑問に思い……プッツリと、私の体は崩れ落ちた。



















 その戦いは、正直木乃香の理解を超えていた。
 刹那の動きも、その相手の動きも、木乃香にはほとんど視認することができず、白昼堂々真剣を振り回すことからして常識外れ。
 だが、そんな事は木乃香にとって大きな問題ではない。
 人生でも一大事だと言える今の状況は、刹那が木乃香の為に戦っているという事が原因だ。
 刹那が自分の為に戦ってくれているという喜びと、その感情を喜びと感じてしまう自分に対する嫌悪感。
 本来ならば心配するべき状況で、木乃香は刹那を盲目的に信頼していた。
 刹那が守ると言ってくれたのならば、木乃香にとってそれは絶対だ。信じているというより、それ以外の思考を持っていなかった。
 そこには刹那が傷つくというイメージは含まれていない。
 だから、刹那が刺し貫かれた時、深々と突き立った刀の先から零れ落ちる紅い滴を見て、それが現実だなんて信じられなかった。
 声も出ない。体は心臓までもが凍りついたように停止し、冷たい感覚が木乃香を包む。
 動けるようになったのは、敵が去り、肩を押さえた刹那が振り向いて笑った時。あんなに血に濡れて、決して苦しくないはずはないのに、それでも浮かべた笑みの意味に気づいて、ようやく木乃香の時間が動きだした。
「せっちゃん、せっちゃぁんっ」
 慌てて駆け寄るけれど、崩れ落ちた刹那の体を抱きとめることは出来なかった。倒れ伏した刹那を抱き抱え、その頬に落ちた水滴を見て初めて、木乃香は自分が泣いていたのだと気付く。
「お嬢、様。血がついて、しまいます」
「こんな時になに言うとるん! いま、今誰か呼んでくるから待っ」
「大、丈夫です。今は、早くここを離れ――」
 木乃香を制止して立ち上がろうとした刹那は、しかし今度こそ力尽きて意識を失う。
 どんどん青くなる顔色。止まらない流血。けれど、木乃香のシャツを掴んで離さない右手。
 そのどれもが木乃香に死を予感させた。
「嫌や! 嫌や嫌や嫌や! せっちゃんが死ぬなんてアカン、ウチを守って死ぬなんて嫌や!」
 その時の事を、木乃香はよく覚えていない。ただ、必死だった。
 このままでは刹那が死んでしまう。このままではもう遊べなくなる。このままではもう、謝る事もできなくなる。
 そんなのは嫌で、嫌で、これでは自分が殺したみたいだと考えて。
 ただ必死に、刹那の回復を願った。強く強く、力の限り抱きしめて。視界がぼやけるほどの涙を流しながら。
 そして、光に包まれる。膨大と言える魔力の奔流は、純粋な願いで一つの方向に定まった。
 それは術と呼ぶにはあまりに稚拙で強引な、力任せの荒技だったけれど。これこそ魔法と呼ぶべき一つの奇跡。
「この、ちゃん?」
「あ……」
 目を覚ました刹那の視界一杯に広がる木乃香の泣き顔を眺めるのも一瞬、窒息しそうなくらいに強く抱き留められる。
「良かった、良かった。よかったよぅ」
 ただ、その声があまりに綺麗で、刹那の心を打つものだったから。刹那も体の力を抜いて、為すがまま。
 ようやく到着した士郎が見守る中、木乃香が落ち着くまでは、ずっとずっとそのままだった。


















士郎「ほら、これで服を買ってこい」
刹那「し、しかしその……この格好で店に入るわけにはいきませんし、お金を借りるのも申し訳ないです」
士郎「それなら姿隠しの札があるし、金は返さなくても構わんさ。女物の服を私が買いに行くよりは遥かに賢い選択だと思うがね」
刹那「ですが、」
木乃香「ええやんせっちゃん。ここは甘えとこ。お金はどうせ受け取ってくれへんやろうから、身体で返せばええし」
刹那「か、身体!?」
木乃香「うん、前にアスナの代わりにバイトした事あったんやけど、結構面白いんやえ」
刹那「あ、そ、そういう意味ですか……」
木乃香「……なに想像したん?」
刹那「何でもありません!」
関連記事

管理者にだけ表示を許可する
« | ホーム |  »
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。