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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第32話


「時限爆弾断線済み」


「首尾はどうだい?」
「龍宮か」
 ノックを二回、こちらが答える前にドアを開けて部屋に入ってきた無法人は、そのまま士郎の対面に腰を下ろす。
「さて、難しいな。懸念が全て解消されていない以上、良いとは言い難いだろう」
「へぇ。貴方でも手こずるとは、相当な難題のようだね」
「常々思っていたんだが、君は私を過大評価している。私など取るに足らない刀鍛冶に過ぎない」
「ただの刀鍛冶は、日本の魔法勢力に影響を与えたりはしないよ。それより、少し訊きたい事があるんだが」
 真名は飄々とした態度から一転、仕事の目つきに変貌する。今彼女が士郎に情報を引き出しに来たという事は、この任務においてそれが必要であると判断したからだ。
 となれば、士郎も軽く扱う事はできない。それは士郎にとっても懸念となり、近衛木乃香防衛という任務にさえ支障を与える可能性があるからだ。
「大河内アキラは何者だ?」
「なに?」
 士郎は何故この場でアキラの名前が出てくるのか理解できない。構わず真名は話を続けた。
「私は今まで、大河内はただの一般人だと思っていた。なのに昨夜、大河内は事が起こっているのを察知していたようだ。今朝、起きてすぐに尋ねられた。貴方たちが無事なのか知っているか、とね」
「…………」
 士郎としても、判断が難しい。
 確かに、清水寺の会話から、昨夜起きた事についてある程度察する事はできるだろう。真名の名前も出したから、尋ねる相手も不思議ではない。
 だが、一体どうやって昨夜起きたという事を特定したのか。
 偶然が重なった結果。そう考えるのが妥当で最も自然だ。だがしかし、果たして本当にそうなのか。
 これは、大河内アキラの『能力』によるものではないと誰が言いきれる。
 士郎は、アキラの『能力』を『見えるはずがないモノを見抜く力』だと考えていた。
 喫茶『アルトリア』の地下にある工房、その入口は、魔術で隠されており基本的に発見する事はできない。
 魔術回路を持っていたタカミチでさえ教えて貰わなければ察知できない隠し扉を、どうしてアキラが発見し、なおかつ中に入ることが出来たのか。
 士郎はその説明をアキラが持っていると思われる能力に求めた。
 だが、それでは辻褄が合わない。
 その能力では、昨夜の出来事を察する事ができる理由にはならないのだ。
 勿論、アキラに能力など備わってはおらず、何らかの偶発的事態により工房への扉を発見し、認識阻害の札を使っている士郎を見つけ、昨夜の事件を感知した可能性はある。
 しかし、これだけ条件が揃ってしまえば疑わざるを得ないだろう。
 大河内アキラには、何か得体の知れない能力がある事を。
「何者、と問われれば、少しだけこちらの世界を垣間見た中学生としか言えない。だが、アキラに何らかの能力が備わっている可能性は高いだろう」
「能力、だって?」
「詳細は把握できないが、おそらくは感知系の能力だ。今まで幾つかそれを推察するような事柄はあったのだが……少なくとも害はないはずだ。何かあれば、私に連絡して欲しい」
「それは構わないが……このままでいいのか? 一応貴方の管理責任があるはずだが」
「その時はその時と考えるしかないな。罪に問われるようならば、麻帆良を捨てるしかないだろうが」
 真名は軽い笑みを見せる。士郎は部屋に備えつけてある緑茶に手を伸ばした。
「流石の貴方も、オコジョは辛いか」
「能力封印という意味では、画期的な刑罰だとは思うがね。そんな事になるぐらいなら、昔のように闇に潜んだ方がいくらかマシというものだ」
「そうならないように祈っているよ。貴方がいると退屈しないからね」
 真名はずずっと士郎が淹れたお茶を啜った。
「ああそうだ。もう少ししたら、大きな仕事が一つある。士郎さんも参加しないか?」
「珍しいな。仕事の勧誘とは」
「依頼主の意向でね。どうにも士郎さんに声をかけたいようなんだが、今は様子見らしい。少なくとも、貴方を敵には回したくないようだった」
「……麻帆良で事を起こすつもりなのか?」
 士郎が敵に回る事態というのは、一応は所属している事になっている麻帆良学園都市に関する何かでなくてはならない。
 今回は麻帆良に住む刹那からの依頼。魔法世界での事だって、基本的には近衛翁の紹介で成り立っている。
 その士郎が敵に回る可能性があるという事は、単純に考えれば麻帆良を敵に回すという事だ。
 もっとも、士郎の行動原理をプロファイリング出来ているというのなら話は別になるのだが。
「少し喋り過ぎたようだ。忘れてくれ」
 忘れろと言われて忘れられるのなら苦労はない。だが、真名はどうせ口を割らないだろうし、現状においては他に考えるべき事があり過ぎる。
 士郎は一旦その情報を心の棚に上げておく事にした。大きすぎる余分は、心の贅肉にしかならない。
 それに、今問い詰めたところでいい結果にはならない。動くのならば、もっと情報を集めて有利な状況を作り出す必要がある。
「もう一杯、お茶はいるか?」
「頂くよ」
 誤魔化すように、真名は湯呑を差し出した。







「龍宮……?」
 すっかりいつもの雰囲気で居座る体勢になった真名に続いて、こっそりと入ってきたのは刹那だった。
 その視線には、どこか責めるような色がある。
「ああ、刹那か」
「どうしてここにいるんだ?」
 ちらっと真名は士郎を流し目で確認して、特に反応を見せない事を残念に思いながら刹那に答える。
「依頼主への報告と、ちょっとした休憩、かな?」
「なぜそこで私を見る」
 今度はまじまじと士郎と視線を合わせた真名だったが、すぐに逸らして腰を上げた。
「別に。では私はそろそろ失礼するよ。邪魔しては悪いしね」
「っ……龍宮!」
「ハハハ、あまりムキになると意識しているのがバレバレだぞ、刹那。では士郎さん、お茶は美味しかった」
「備えつけの茶葉でいいのならいつでも淹れてやるさ」
 軽く笑みを見せて真名は部屋を出ていく。
「……龍宮に、何か依頼していたのですか?」
「ああ、少しな」
「内容を聞いても?」
「私事だよ。刹那には関係がない」
 そうでも言っておかないと、刹那は自分の責任を感じるだろう。ただでさえ今回の士郎同行にはノーギャラ、夕凪の件を引き合いに承諾しているのだから、更に士郎が自分の懐を痛めてまで真名を雇ってクラスの警護を考えているとなれば刹那にとって返せる恩ではなくなってしまう。
 だが、士郎の思いやりも伝わらなければ疎外感しか与えない。言い方がぶっきらぼうなものだから、余計に刹那はむっとしてしまった。
「…………夕凪について相談があるのですが」
 それでも、一応刹那は士郎の依頼主ではあるものの、頼んでいる立場だ。特に追及する事はなく、不満は自分の中に溜めこんだ。
「問題があるのか?」
 士郎は昨晩折れた投影夕凪の代わりに、もう一本夕凪を投影した。その事に関して刹那は驚いていたが、そもそも最初から異常だったので今更追及したりはしなかったのだが……。
「いえ。問題があるのは夕凪ではなく、敵の刀です」
「月詠、だったか」
 確かに、夕凪では士郎が手を加えた刀剣類には敵わない。夕凪も誇るべき業物ではあるが、存在を強化された神秘を纏う士郎の剣は掛け算だ。使い手の技量が拮抗しているのなら、その差はより顕著に現れる。
「はい。遺憾ですが、今の私では彼女の刀に対抗する事ができません。何かいい方法はないものかと」
「強化する事はできる。だが……」
 士郎は、基本的に剣の強化は行わない。投影で作りだす時には“初めから強い剣”を投影するし、士郎の強化は度が過ぎれば本来のカタチを失うことになる、一時的なドーピングのようなものだ。
 詠春から託された夕凪に拘っている刹那には、あまりお勧めできる方法ではなかった。
「何か問題があるのですか?」
「夕凪が壊れてしまう可能性と、常に魔力を帯びる事になるから気配を察知されやすくなる」
 実際は、護衛する側は自分の気配に気を使う必要はない。どうせ木乃香は隠行などできないのだから、派手に騒がなければ問題はない。むしろ市街地では人ごみに溶け込む努力が必要となる。
 確かに強すぎる魔力は簡単に感知されてしまうだろうから、魔力は抑えた方がいいのは事実なのだが。
「次戦う時は彼女の相手は私がした方が無難だな」
「しかし、それでは例の少年が……」
 士郎は、刹那たちに白髪の少年と決して戦わないようにと命令していた。刹那はともかく、ネギと明日菜の戦闘経験が少ない二人では対するだけで危険だと判断したからだ。
「盗まれた刀を破壊したら刹那に任せるから問題ないさ。結局は状況次第だ。臨機応変に対応するしかないだろう」
「判断は、士郎さんに任せます。私は対人戦闘の経験が乏しいので……」
 元より神鳴流は化け物相手が主となるから、見習いの刹那が経験不足になるのも無理はない。詠春のように対人対魔何でもござれ、となって初めて一人前なのだろうが。
「分かった。要件はそれだけか?」
「え? あ、はい。何か用事でも?」
「ああ。詠春に話がある」
「長に?」
 暗に話の内容を尋ねる刹那に、士郎は気づかないフリをした。
「一度本山まで行って来るから、ここに帰ってくるのは深夜になりそうだ」
「いいのですか? 士郎さんは昨夜も寝ていないのでしょう?」
「確かにそろそろ休息も必要か。なら刹那、明日は早めに起きてくれないか。君が起きたら数時間休む事にする」
「しかしそれではあまりに……」
「慣れているから心配するな。私の不在時に問題があるようならば携帯で連絡してくれればいい。緊急を要するのなら転移魔法符を使う」
 そこまで言われれば、木乃香の護衛という点では問題ない。だが刹那は士郎の体が心配だった。昨晩行った傷の肩代わりと言い、明らかに士郎は無理をしている。
 そんな人を、これ以上働かせてもいいのか、という逡巡。しかし、士郎なくして敵の撃退は難しい事も事実。
 結局刹那は士郎の判断に身を委ねるしか選択肢がない。
 心の中で、士郎への負い目を積み重ねながら。



















 士郎さんが本山へと向かった後、ネギ先生の魔法が朝倉さんにバレるという問題が発生した。でも、私は士郎さんに連絡なんてしなかった。
 そんな事で重要な話がある様子の士郎さんに戻ってもらうわけにはいかないし、魔法バレだけならネギ先生だけの問題でありお嬢様の護衛においては直接的な関係がない。我ながら酷い考えだとは思うが、どうせ私には考えられる対応などない不得手な分野だし、口を挟む事もなかった。
 最終的には朝倉さんがネギ先生に協力するという事に落ち着いたのだから、結果オーライだろう。
 解決した案件に悩む暇などない。それよりも昨夜破られた結界の強化と周囲の見回りが急務だ。
 神楽坂さんにも手伝ってもらい、それらは比較的簡単に済ませる事が出来た。
 ネギ先生との情報交換もスムーズに終わり、昨夜の襲撃を乗り越えた経験からか私たちは三人とも効率よく動けている気がする。
 もっともそれは、今の旅館内の空気に当てられているせいかもしれない。昨夜お酒で酔い潰れてしまっていた反動か、今日の3-Aは騒がしく修学旅行特有の熱気があった。
 私と神楽坂さんが教師たちの目を盗んで露天風呂で湯浴みしていても、それは感じ取る事ができる程のものだ。
「なんか、旅館内が騒がしいような気がするんだけど……」
「そうですね。悪意はないようですが」
 この状況は、あまり私にとっては喜ぶべきものではない。
 木を隠すなら森の中、と言うように、これだけ騒がしければ敵の気配も察知するのが難しくなる。式神による監視があるから万が一の時は急行できるが、昨夜のような事態もある。不安は尽きない。
 しかし、それは敵にとっても同じ事。認識阻害の術があると言っても、動き辛さで言えばこちらの比ではないだろう。その点だけは、安心する事が出来た。
「あのさ、刹那さん」
 神楽坂さんが唐突に、真剣な声色を出した。何かを思いつめているようなのに、笑っている。まるで、こんな事は思いつめるような事ではないと自分を鼓舞しているような笑みだと、私は思った。
「私たち、もう友達だよね?」
「え?」
 私は一瞬、その言葉を理解できない。
 友達。
 思えば、そんな言葉が該当する人付き合いを、私はしてこれただろうか。
 同年代で親しいと言えば、同室の龍宮と主に武道の面で話が合う楓や古くらいか。
 でも、私にとって彼女たちは友達なのだろうか。
 そう考えた時、初めて私は“友達”という言葉が分からなくなった。
「ダメ、かな……? 私は、もう刹那さんと友達のつもりだったんだけど」
 刹那、と。神楽坂さんが、そう呼んだ。
 少しだけ、士郎さんに刹那と呼んでもらった時の事を思い出す。
 そこにあったのは、喜び。
 士郎さんの時には、認めてもらえたような気がした。まるで、背中を任せると言ってもらえたかのような錯覚があった。
 でも、今。神楽坂さんに刹那と呼ばれ、私は。その時以上に、嬉しいと思っている。
 受け入れられたのだと。私なんかでも、隣に居ていいんだって。そう、思える事が出来たから。
 仕事上の関係ではなく。似通った部分を持つ共感でもなく。忠義を決めた敬愛でもない。
 打算や計算とは無縁の、きっと本当の意味での“友達”。
 もしかしたら、そんなものが得られるのではないか、と。もう思い出せないくらい昔に諦めた熱が甦った。
「いえ、その……私などが友達だなんて、神楽坂さんに迷惑では」
 それでも、やはり勇気なんて簡単に湧き出すものじゃなかった。結局、もごもごと言い訳じみた返事をしてしまう。
「ア・ス・ナ!」
「え?」
「あのさ、私の事はアスナでいいよ。私も刹那さんって呼ぶし。それにだいたい、友達に迷惑も何もないの! それも含めて、友達ってもんでしょ?」
 神楽坂さんの……いや、アスナさんの言葉が胸に染み入る。
 この人は、本当にいい人だ。私が今まで出会った中で、こんなに簡単に、こんなにも嬉しい事を言ってくれたのは初めてかもしれない。
 そんな人がお嬢様のご学友で、本当に良かったと思う。
 でも、私は……普通の人間じゃ、ない。私が“混じりもの”だと知ったら、アスナさんのこの好意も、今までの大勢と同じように敵意に変わるだろう。
 私は、その時にアスナさんを傷つけたくないし、何より自分が傷つきたくない。
 しかし、知られなければ。時間制限付きならば、甘い夢を見てもいいのではないか。
 その感情が、感傷だったのか、一種の自棄だったのかは分からない。でもきっと、わざわざ時限爆弾を抱えてまで優しさが欲しいと思ったのは、私の弱さなんだと思った。
「あり、がとう……ございます。アスナさん」
 言葉が見つからない。だから呼び方を変える事で、精一杯気持ちを伝えようとした。
「うん! これからもよろしくね」
 満面の笑顔を見せるアスナさんに、私は笑えていただろうか。
 それは分からないけど、笑えていたらいい。そう、本心から思えた。














 その夜、私は夢を見た。

 隣にはこのちゃん。前をアスナさんが歩いている。
 そのアスナさんの隣にはネギ先生がいて、顔は分からないけれど周りにたくさんの人の気配を感じた。
 私はそれを幸せだと感じている。安心できると感じている。

 その光景が、きっと涙が出るくらいに嬉しかったから。




 そこに、大切なもう一人の姿がないという事に、私は気づかなかった。









龍宮「ところで士郎さん。最近口調が堅くないか?」
士郎「……一応、戦場だからな」
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