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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第30話


「ネギ戦線に異常アリ」


 眠っている木乃香と気絶した明日菜を布団に押し込み、ようやく刹那とネギは休む事ができるようになる。
 刹那としては、今日一日の密度が濃すぎて思い返すのも苦しい。
 できれば、すぐにでも布団に潜り込みたいところだった。
 しかし、最低限シャワーぐらいは浴びなければ、血の匂いが落ちない。
 左腕はすぐに止血していたから目立たないが、焦げ痕や血痕で浴衣はダメにしてしまっていた。
 士郎から左腕の血行を良くする為にマッサージをした方がいいとも言われていたので、刹那としては疲れを取る意味でも、シャワーを浴びたいところだったのだが。
「これは、どうしたものかな……」
 5班のメンバーは皆ぐっすりと眠っている。しかし、この部屋のシャワーを使ってしまっては迷惑になるかもしれない。
 もう遅いから露天風呂の方も使えないだろう。使えたとしても、先生に見つからないようにする為には認識阻害の魔法ぐらいは必要になる。
 些細な事で迷う刹那に、自分の部屋に戻ろうとしていたネギが声をかけた。
「どうかしたんですか、刹那さん」
「あ、いえ。シャワーを浴びようと思ったのですが、この部屋では皆を起こしてしまうかもしれないと思いまして」
「なら、僕の部屋のを使いますか? ……少し話したい事もありますし」
 本当は着替えだけを持って、また士郎の部屋のシャワーを使わせてもらおうと思っていた刹那だったが、ネギの表情を見て考えを変える。
 まあ、相手は子供だし、士郎の部屋に行くよりは抵抗感が少ない。いくら本人が今屋根の上に居る、と分かっていても。
 何より、ネギはとても思い詰めた表情で、言外に相談がある事が見て取れる。
「分かりました。では、お願いします」
 この時、この選択を後悔することになるなんて、刹那は欠片も予想できなかった。









 携帯の呼び出し音が、虚しく耳朶を打つ。屋根の上で引き続き警戒を続けていた士郎は、動かない左腕を器用に支えながら通話を切った。
 タカミチは出ない。おそらくお決まりの出張だろう。彼の携帯は国際通話可能なタイプだから、それで尚電波が届かないのなら新世界に行っている可能性が高い。
 少なくとも、電波が届かないような場所ならば簡単に帰ってくることもできないという点に変わりはない。
 仕方無く、士郎は学園長に電話をかけ直した。夜も遅い。とは言え、士郎もこれぐらいの時間に連絡を受けた事があるから気にしない。やがて、学園長は電話口に出た。
「なんじゃい、こんな遅くに」
「良い話と悪い話。どちらの話を先にした方がいいかね?」
「ふむ、君が落ち着いて連絡できるという事は大事ではなかろうしの。悪い方から聞くとしよう」
「神楽坂明日菜が暴走した」
「どういう意味じゃ?」
「それを聞きたいのはこちらの方だ。私もその場にいたわけではないので伝聞なのだが、どうも刹那の負傷がトリガーとなったようだ。以降、絶大な魔力で敵味方問わず襲いかかったらしい」
「………………」
 学園長は押し黙る。その情報をまだ、彼でさえ扱いきれていないのかもしれない。
「彼女の過去を詮索はしない。だが、一つだけ訊かせてくれ。神楽坂明日菜と近衛木乃香。失うと危険なのはどちらだ?」
「……日本国内において言えば、おそらく木乃香じゃろう。東西の緊張という意味ではの。逆に明日菜ちゃんは保護するのにリスクが伴う類の子じゃ」
「成程。明日菜には両親がいない事になっている……そして本人は捨てられたのかどうかさえ、詳しい所は記憶が欠如している、か。消したのか、あの子の記憶を」
「必要措置だった、のじゃろう。ワシはタカミチ君から頼まれただけじゃからの。詳しい事は知っていても、話す権利はない」
 士郎は数瞬空を睨みつけ、覚悟を決めて告げる。
「分かった。神楽坂明日菜も護衛対象と認識しよう」
「報酬は出ないんじゃぞ?」
「私は金で動いているわけではない。ただ、動くのに金が必要だから、貰える時は貪欲なだけさ」
 ボランティアは嫌いじゃない。そう付け足して、士郎は笑った。











 ほんのり温まった体は、少しずつ冷えてくるにつれて疲労も相まって眠気を誘う。
 若干うとうとしながらも、刹那はネギが淹れてくれたお茶を飲みながら相談を受けていた。
「刹那さんが腕を斬られた時も、僕は全然動けなくて、明日菜さんだって士郎さんがいなかったら止められませんでした。僕は、足手まといでしかないんじゃないか、って」
「そんな事はありませんよ、ネギ先生。敵の炎を吹き消したのは先生ですし、先生がいなければ神楽坂さんも戦う事なんてできないのですから」
「でも、アスナさんがあんな事になったのだって、僕が未熟だったから……」
 それに関して、明日菜の特別性も西洋魔術についても知らない刹那は解答を示す事などできない。
 仮契約にしても、西の術者は前衛をパートナーと呼ばれる従者に任せるのだ、という程度の知識しかなく、麻帆良の魔法先生たちの多くは仮契約という形での連携を使用しないので、刹那にとっては今回が初見だった。
 そもそも、人生経験においてその生まれの特殊性はともかく、5年程度の差しかない刹那が相談に乗れる範囲を逸脱している。
 先生として、なんて言う問題は、実際に教師を務めた事がある者でなければ解決しないだろう。
 刹那にできる事は、ただ愚痴を聞いてやる程度のものだ。
「僕、刹那さんに謝らないといけません。先生なのに、生徒に戦わせてしまって、その上怪我させてしまうなんて……」
「ネギ先生、その事に関しての謝罪は必要ありません。私は私の意思で戦場に立ち、結果として負傷した。それは私の未熟に責任があり、謝罪は侮辱です。それに、士郎さんのお陰で傷はもうないのですから、ネギ先生が責任を感じる必要はないんですよ」
「でも、その傷だって士郎さんが肩代わりしただけで、無くなったわけじゃないです。僕は――」
「ネギ先生」
 うだうだと、自虐のように愚痴るネギを刹那は大きめな声で遮る。
「反省は必要ですが、過去を振り返るだけでは前に進めませんよ」
「そう、ですね。うん、そうでした」
 驚いたように目を開くと、ネギはうんうんと頷きながら微かに笑う。
「ありがとうございます、刹那さん。やっぱり刹那さんに相談して良かったです」
「そんな。私などより士郎さんに相談した方が余程ためになる話が聞けたはずですよ」
 すると、ネギはもじもじと、言い難そうに小さく口を開く。
「その、僕ちょっと士郎さんが苦手なんです。だから、つい……」
 ネギが士郎を苦手と感じるのも無理はない。
 最初こそ好印象だったものの、結局ネギは自分の事で士郎に頼った事もなかったし、出会い頭に怒られた事もあった。
 友達であるカモを脅していた、というのも大きなマイナスファクターだ。
 悪い人ではないと分かっていても、進んで関わりたいと思える相手ではない。それがネギの士郎に対する感想である。
「士郎さんは厳しいですが、このような状況において最も頼れる人です。強さで言えば、私など足元にも及びませんよ」
「……そうなんですか?」
 ネギは士郎が戦っているところを見た事がない。今日初めて戦闘状態にある士郎を見たぐらいだ。
 それも、あまり強そうではない少年の足止めで戦線を離脱してしまったから、ネギは士郎に対して強いという印象を持てなかった。
「ええ、そうです。何でも、西の長と一対一で決闘をして引き分けたとか」
 噂だ。しかし、当事者である詠春が口を濁していたから真実なのかも、と刹那は思っている。士郎の力がそこまで高いものであるとは、イマイチ刹那も信じられないのだが。
 と、自分の事でもないのに割と自慢げに話していた刹那は、反応がない事に気づく。
「眠いんですか?」
「あ、スミマセン。ほっとしたせいか、少しだけ」
「いいんですよ。ネギ先生はもう休んで下さい。私もそろそろ部屋に戻りますので」
「ふぁい、わかりました。おやすみなさい、刹那さん」
 ネギの寝息が聞こえてくるまでに時間はかからなかった。
 肉体的な疲労もさることながら、やはり精神的な重圧が大きかったのだろう。
 精神的な重圧という面では、刹那の方が重い一日だった。刹那も早く体と心を休めたくて、ネギに毛布を掛けてから部屋を出る。
 が、それは叶わずネギの部屋に舞い戻るハメになった。
 新田先生が見回りをしていたのだ。教員部屋の方まで見回りはされていないが、新田先生の巡回路は普段は騒がしい3-Aの部屋が中心になっている。
 このままでは見つからずに帰るのは骨だし、もう魔法を使う気力もなかったので、先生が別のフロアに回るまではネギの部屋で待機していようと考えたのだが。
 体力的に限界が近かった刹那は、壁にもたれたままうつらうつらと心地よい眠りに落ちた。


 しばらくして。ちびせつな経由で状況を知った士郎が、そっと刹那を布団に移し毛布を掛けた。
 その安らかな寝顔に、少しだけ嬉しそうな顔をして士郎は屋根の上に戻る。
「士郎さんは寝ないんですかー?」
「ああ。寝るより起きていた方が左腕の治癒が早い。しかし、ちびせつなは本体の意識がなくても動けるんだな」
「ハイ、そうです。私、スタンドアローンなので本体の術式変更がない限りはこのままです。だから一晩中でもお話し相手を務められますよ!」
「まあ、騒ぎ過ぎないようにな」
「えへへ、分かりました」
 少し照れながら動き回るちびせつなに、本体の刹那よりも愛嬌があるな、などと考えながら、士郎の夜は更けていった。










「刹那さん! 起きて下さい」
 朝、刹那は誰かに肩を揺すられて目を覚ます。
 神鳴流として、戦地にある者とは思えない熟睡だったが、休める内に休むのも必要事項だ。現在士郎が戦闘不可という状況である為、木乃香の護衛パーティーにおいての主戦力は刹那になる。
 士郎ならば、問題があればちびせつなを通して刹那を起こす事が出来たし、その選択は有意義なものではある。
 もっとも、それが選択された事柄ならばの話ではあるが。
「ネギ先生……?」
「そうです。朝ですよ、刹那さん」
 寝ぼけ眼の刹那は目を擦り、んーっと伸びをしてようやく状況を理解する。
 つまりは、どうやら自分はネギに寝顔を見られていたようだ、と。
「刹那さん、昨日は僕の部屋で寝たんですか?」
「え゛?」
 見まわしてみると、確かにそこは刹那たち5班の部屋ではない。
 そして思い出す。昨日、新田先生に見つかりそうになってこの部屋に逃げ帰ってきた事を。
 そこから先の記憶がないので、そのままここで眠ってしまった以外に可能性はない。
 しかし、それならば何故布団で寝ているのだろう? と刹那が疑問に思うのも束の間。
「おはようございます、ネギ先生。もう起き、て……」
 突然入ってきたあやかが、放心した状態で固まった。
 おそらく、あやかの思惑としてはネギを起こす、というかあわよくば寝顔でもゲットできればと、あくまで教師に怒られない範囲で行動を起こしたのだろうが。
 布団。二組あるからまだかろうじてセーフ。でもそれ以外は全部アウト。
 だってそれも仕方ない。刹那は起きたばかりで浴衣が着崩れしているし、そのまま退学になってもおかしくない状況に見えなくもない。
 やがてわなわな震えだしたあやかは、搾り落とすように声を出した。
「さ、ささささ桜咲さ、ん? な、なんて羨ま、いえ破廉恥な事を!」
「誤解です! 上手く説明できませんがとにかく全てが誤解です! 私は、そう! ネギ先生を起こしに……」
 今までほぼネギと関わりのなかった刹那が起こしに来るという事だけでも言い訳としてはマズイという事に、混乱している刹那は気づかない。
「あの、刹那さん。何が誤解なんですか?」
 内心、刹那は終わったと思った。純粋な、分からない事に対する疑問だったのだろうが、ネギの一言はこれからあるはずだった刹那の必死な説得工作を開始前から頓挫させる。
 これがまだ、いいんちょ以外の人間だったのなら、誤魔化しも効いたかもしれない。
 しかし、3-Aのクラス委員長は委員長になる為に生れて来たとしか思えない堅物だ。
 さようなら、私の学園生活……お嬢様、もっとお守りしたかったです……。
 などと、刹那が諦めに入った時、救世主が現れた。
「ネギー? まだいるー? 昨日の夜の事だけどさ、っていいんちょ、何してんのよ」
「あ、聞いて下さいアスナさん! 桜咲さんがネギ先生のお部屋で寝ていたようなんです!」
 チラ、と明日菜はネギの状況を理解してなさそうな顔を眺めた後、刹那とアイコンタクトを試みる。
 すると、アイコンタクトどころかもっと分かり易く首を痛めそうなスピード(涙目)で刹那は否定した。
 はあ、と明日菜の口から溜息が洩れる。状況はさっぱり理解できないが、少なくともあやかがいる場で昨夜の話はできない。刹那を信用するか否か以前に、明日菜が取れる行動は決まっていた。
「まあまあいいんちょ。刹那さんがネギ狙いとかそんな事ないわよ。どうせ事故だって、事故」
「じ、事故でどうやったらネギ先生と同室で就寝なんてマネができるんですかっ」
 明日菜も刹那も確かに、とは思う。でも何とか納得させないと色々マズイのだ。
 まだ朝食兼点呼には余裕があるが、昨夜の話をする時間を考えると少し苦しい。よって、明日菜は手っ取り早く帰って貰う為に最終兵器を投入する。
 あやかの耳に口を近づけ、刹那にも聞こえないように口元を隠しながら小さく呟いた。
「桜咲さんって、年上趣味だから」
「そ、それでは明日菜さんと……?」
 同じ趣味なのか、と問うあやかに明日菜は苦笑しながら答える。
「ああ、うん。ちょっと好みは分かれるけど」
「そういう事でしたら、確かに事故なんでしょうね……。ネギ先生、お騒がせして申し訳ありませんでしたわ。では」
 何だか神妙な顔つきで部屋を出ていくあやか。その表情に、刹那は激しく不安を抱いた。
「あの、神楽坂さん……? 一体何を言ったんですか?」
「まあ、それは後々説明するとして、昨日の事を聞きたいんだけど」
 あからさまな話題逸らしだったが、あまり時間的余裕もない。どうせ班行動で一緒になるのだし、と刹那は諦めた。
「アスナさん、昨日の事はどこまで覚えているんですか?」
「どこまでって、うーん。確かクマに捕まってて、抜け出そうとしてた所ぐらいまでかな。朝起きたらこのかは普通に寝てるし、昨日の事が夢なんじゃないかと思っちゃったけど……そういうわけじゃないのよね?」
 刹那とネギが顔を見合わせる。
 京都駅からの帰り道、三人で明日菜に対する対処は話し合っていた。
 と言っても、暴走状態の事を明日菜が覚えているか否かでどこまで説明するのかを士郎から指示されていただけ。
 明日菜が刹那や木乃香を攻撃しようとした事を覚えているようなら、すぐに士郎の所に連れていく事になっていたが、少なくとも現状明日菜に暴走時の記憶はないようだ。
 ならば、二人は極力自然に嘘を並べるだけだ。
「昨日はアスナさんが気を失った後に刹那さんがこのかさんを奪い返して、士郎さんが敵を撃退してくれました。その後気絶したアスナさんを僕が、このかさんを刹那さんが運んだんです」
「あ、そうなの? ゴメン、迷惑かけちゃったわね」
「いえ、むしろ巻き込んだのは僕の方ですから、これくらいは」
「今更何言ってんのよ。次はしっかりやるから安心しなさい」
 笑う明日菜は普段通りで、ネギも刹那も異常を発見する事はできない。
「神楽坂さん、昨日の戦闘で怪我などはありませんか? どこか痛いところがあるとか」
「へ? うーん、ちょっと筋肉痛気味だけど、特にないかな。私、丈夫さだけが取り柄だからさ」
 肉体の基本スペックが高い明日菜が筋肉痛を感じる時点で、実はその負荷はそれなりのものという事になる。
 刹那はその事に気づいていなかったが、ネギは気づいていた。
 そう、あれだけの魔力を暴走させて、筋肉痛程度で済んでいる、という事実に。
 ネギの経験から予想した場合、明日菜は筋肉痛ではなくハッキリとした痛みを感じておかしくないレベルだった。
 なのに、明日菜は平然としている。色々と素人な明日菜では、ネギの予想よりも大きなダメージがあっても不思議ではないのに、だ。
 そもそも、魔法使いではない明日菜が『魔力暴走』を起こせるのが不思議なので、ネギはまだ見落としているのだろうか、と昨夜の事を思い出す。
 しかし、結局現状の知識だけでは答えなんて出なかった。
「では、私は部屋に戻って着替えてきます」
「あ、ちょっと待って。士郎さんって今日どうするの?」
「それは、本人に聞けばいいと思いますよ。自分の部屋にいるはずですから」
「私、部屋知らないんだけど」
「それなら僕が知っています。昨日教えてもらいましたから」
「うーん、でも時間的に作戦会議は今からじゃ苦しいかな?」
「そうですね。では朝食の後という事にしましょう」
 結局、明日菜と刹那が連れ立ってネギの部屋を後にした。
 刹那的にはありがたい。一応は男性の部屋から一人で出てくるよりは、ネギの保護者扱いの明日菜と一緒の方が目撃の心配などがいらないから楽だ。
 それに何より。刹那はまだ、明日菜が何と言ってあやかを納得させたのかを聞いてない。
「さて、神楽坂さん。雪広さんには、何と言ったのですか?」
「え? あー、その、ね? 桜咲さんは私の同じで年上属性だから、ネギは眼中にないよって。そんな感じ」
「わ、私が年上属性ですか」
 ふと、一瞬だけ刹那の脳裏を特定の人物の影が過ったが、慌てて頭を振り払う。
 明日菜がその様子に、少しだけニマリと笑って、
「あれ、もしかして図星だったりする? となると相手は……」
「ち、違いますよ! 士郎さんの事は尊敬していますが、そういう対象ではなくその強さを――」
「私、士郎さんの事なんて何も言ってないけど」
 墓穴を掘った。言い逃れ出来ないレベルで。頭に血が上り赤くなる刹那に、明日菜がぽんっと肩を叩く。
「大丈夫。私口堅いし、応援するから。士郎さんいい人だしね」
「ち、ちがっ、それは誤解です! 私はお嬢様をお守りできればそれでいいのであって、恋愛などにかまけている暇はないんですっ」
「分かってるって。大丈夫大丈夫」
 絶対分かってない!
 そう思えども、気付けばちらほらクラスメイトの姿が見える。このまま口論を続けては刹那の自爆だ。もしも木乃香に聞かれたらと思うと、刹那は口を閉じるしかない。
 刹那自身の保身もさることながら、刹那は木乃香の心理的ダメージを考える。士郎を好いているのは刹那ではなく木乃香なのだから、誤解であろうと別の人間が士郎を好いているなどという話題は、嬉しいものではないだろうと。
 だが刹那は気づいていなかった。
 そのやり取りを木乃香はしっかりと目撃していて、嬉しそうに笑っていた事に。










 朝食の場で、木乃香はいつになく上機嫌だった。
「なんだか嬉しそうね。何かあったの?」
「んー? ちょっとなー」
 木乃香は、士郎の言いつけ通り、取りあえず刹那にこちらからアプローチを掛ける事は止めていた。
 朝起きてメールを確認、身だしなみを整えて、明日菜の後に部屋を出た木乃香が向った先は士郎の部屋だ。
 そこで木乃香は士郎と今日一日の作戦を練り、刹那とかつてのように仲良くなるべく意気込んで、朝食の時間も迫ってきた事からそのまま広間に行こうとしたところで“嬉しい事”があった。
 士郎からは刹那が逃げないようにする為の策があると言うし、作戦通りに事が進めば奈良を一緒に回る事が出来る。
 木乃香の機嫌が良くなるのも当然だった。士郎に『策』を使うまでは接触を控えろと言われているのが唯一の不満だったが、それも数時間の我慢なのだし。

 対して刹那は朝から女子中学生として真っ当な悩みが追加されて、正直精神的に元気とは言えない。
 久しぶりの京風の朝食も、どこか味気なく感じていた。むしろ胃が痛い。
 そして朝食も終わり、ネギがどの班と一緒に回るのかで騒いでいるクラスメイトを尻目に、先に士郎と今日の打ち合わせを済ませておこうと階段に足を向けた時。
「今日は僕宮崎さんの5班と回る事にします」
 それだけならば、刹那は聞き流して歩みを止める事なんてなかった。だいたい予測していた事だからだ。
 ただ、その後の、
「も、もしやっ、桜咲さんがいるからなのですか、ネギ先生!」
「ぶっ!?」
 あやかの発言に、刹那は勢い良く振り返る。
 というかそんな発想は全くの予想外。いや、確かに事実としてネギが5班との同行を決めたのは刹那、ひいては木乃香の存在がある為だが、どう考えても質問の意図はそこから外れている。
 そこで刹那はマズイ、と思った。ネギが今朝のように、正直に理由として刹那の名前を挙げたなら、それはもうクラスの周知となってしまう。
 そしてそのまま芋づる式に今朝の事が喋られたら……!
 かなり本気を出して刹那は駆けた。そのまま、ネギが余計な事を口にする前にネギの口を塞ぎそのまま連れ去る。
 残された面々は、明日菜も含めてぽかんと口を開けた。
 刹那も、今の行動がどう見えるか、明日菜たちの視界から抜けた辺りで気付く。
(こっ、これでは事実だと言っているようなものではないですかー!)
 事実、まき絵やあやかなどは口ぐちに今の刹那の行動について己の意見を述べていた。更に最悪な事に、今朝刹那がネギの部屋に居たという事実まで軽々と。
「あ、あの、刹那さん? どうしたんですか?」
「いえ…………士郎さんと打ち合わせをしに行きましょう」
 終わった、と。内心色々なものに絶望していた刹那は、それだけを口にするのが精一杯。



 修学旅行二日目。早くも刹那にとっては波乱の幕開けとなった。









刹那「こんな、こんなハズじゃ……!」
明日菜「だったらこっちの方が良かった?」

・ボツ
明日菜「桜咲さんって、男の人に興味ないのよ」
あやか「そ、それはどういう……?」
明日菜「つまり、そのぉ……友情が愛情に変わる人というか」
あやか「ど、同性愛者という事ですか!?」
明日菜「しっ! 声が大きいわよ。まあ、そんなワケだからネギと同衾ぐらい問題ないわ」
あやか「そ、そうだったんですか。何だか聞いてはいけない事を聞いてしまった気がしますわ。あと、同衾はしてませんでしたから」

 ネギが5班についていく事に。

あやか「ハッ! もしや桜咲さんは両刀使いー!?」
刹那「ち、違いますっ!!」



刹那「あ、いえ……というかどちらにしてもダメージ大きいですね……」

(拍手)
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