Twitter

FC2カウンター

カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

カテゴリ

最新記事

最新コメント

リンク

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:


検索フォーム

アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
359位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
二次小説
196位
アクセスランキングを見る>>

屈折領域・裏鏡


一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

TOP > スポンサー広告 > 夢破れし英雄  第26話TOP > 夢破れし英雄 > 夢破れし英雄  第26話

スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

夢破れし英雄  第26話


「その感情の行先は」



 清水寺。
 麻帆良学園女子中等部、修学旅行における最初の目的地だ。
 駅からバスに乗り換え、ここに到着するまでをずっと追跡していた士郎はストーカーと間違われても仕方がないが、基本的にその姿を認識できる一般人は存在しない。
 認識阻害の札である。
 関西における伝統的な魔術系統、陰陽道そのものは、こちらの世界の精霊との契約が必要になる為、魔術回路を持つ士郎やタカミチは根本的に使用する事ができない。
 が、転移魔法符のような簡易の圧縮術式に関して言えば、使用は可能だった。
 最近ようやくこちらの世界の術式も解析できるようになってきた士郎としては、しばらく関西で勉強をしたいぐらいなのだが、麻帆良に所属しているという立場と、今回の任務によりそんな余裕はない。
 詠春の口利きにより多数の簡易符を借用しているが、これが中々便利だ。
 現在士郎が使用している認識阻害のお札は、士郎が時折使用するイリヤ直伝の視線誘導のようなものではなく、認識変換とでも言うべきものだ。
 視界に入った衛宮士郎という個を意識させない。正確には、特徴のない背景のような扱いへと認識を変えてしまう。
 魔力を持つ者、“こちら側”を体感的に知っている者ならば無意識にレジストしてしまうような、対一般人専用のものではあるが、下手な揉め事を起こさない為に必須の技能・礼装でもある。
 故に、現在士郎に声をかける事ができるのは暗黙の内に“こちら側”だと判断する事ができるわけだが。
「やあ、士郎さん。景気はどうだい?」
「龍宮か」
「あまり機嫌は良くなさそうだね」
 清水寺までの坂道、木乃香と、それを見守る刹那の二人が視界に入る状況を保ちながら歩く士郎に並ぶのは龍宮真名。
 士郎が経営する喫茶「アルトリア」の常連客であり、今回士郎が『近衛木乃香の護衛任務』を遂行するに当たって雇った保険でもある。
「まあ、取りあえずは仕事の話だ。刹那からは報告を受けたかい?」
「ああ。今の所は悪戯程度のようだな」
「……刹那は楽観しているようだが、私は嫌な予感がする。もしもの時は勝手に動くが構わないかな?」
「いいだろう。だが、君の仕事はあくまで3-A、ひいては一般人の警護としての予備戦力だ。私か刹那が救援を要請しない限り、近衛には干渉しないように」
「それがいいだろう。流石は士郎さん、戦場というものを知っている」
 どこか嬉しそうに、真名は歩調を速める。
「基本的に念話も使わないようにするよ。盗聴される恐れがあるからね。携帯は私が知っている番号でいいのかい?」
「いや、仕事の件ならそちらは使わないでくれ。確実に繋がる物は刹那が番号を知っている」
「了解した。では、武運が必要ない事を祈るよ」
 告げる事だけ告げると、真名は自然な動作で班員たちの所へ戻って行った。
 あの歳であれだけ自然に仕事をこなし、その戦術眼も一線級。
 それだけの能力を積み上げてしまった彼女の十数年間を不憫に思いながらも、士郎は思考を白く染める。
 今必要なのは思考ではない。
 考えるべき事は、既に思考し尽くしている。
 ただ今は、あるかもしれない殺気を、監視の目を捉える事。
 士郎は、やがて術符など必要とせず、魔法関係者からでさえも背景と化した。










 と、言うのに。
 ネギも明日菜も、そして刹那でさえ気づかなかった士郎に、大河内アキラは声をかけた。
「こんにちは、士郎さん」
「ああ。楽しんでいるか?」
 内心の動揺を悟られないように、士郎は努めて平坦な声で返す。
 士郎は『大河内アキラの能力』について大凡の見当を付けていたものの、こうして自然に目のあたりにすると流石に驚いてしまう。
「はい。士郎さんは、仕事なんですよね」
「そうだ。それと、今私の姿は一般人に認識されないはずだから、あまり話しかけない方がいいぞ」
 客観的に見れば、アキラは独り言を紡いでいるようにしか見えないはずだ。
 それに、正直士郎にはアキラの相手をしている余裕はない。
 もしも士郎が近衛木乃香の魔力を狙い、拉致・誘拐を敢行するのなら、護衛に一切の考える隙を与えない電撃作戦か、簡単な悪戯や捨て駒を使い油断を誘った上での強行作戦を執る。
 だが、今回においては護衛側が襲撃を“あるかもしれない”と勘ぐっているのだ。警戒状態を相手に悟られたのなら、同様に襲撃側も警戒してしまう。
 襲撃者がそこまで考えているかは定かではない。そもそも、襲撃者が存在するかも定かではないが、士郎は常に最悪を想定して行動する。
 故に、今の士郎にはアキラの相手をしている余裕はないし、あまり近くに居ると困る。
 今回の最優先は木乃香の守護であり、アキラたち一般人の守護ではないのだから。
 アキラは真名と同じ班なので、比較的安全だろう。士郎が渡した簡易礼装もある。
 この修学旅行においてはおそらく最も安全で、何かあるとするならばそれは交通事故と同レベルの確率だ。
 だからこその忠告、というか暗に離れろと言ったのだが。
「あの、亜子たち先に行っちゃって。もう少し、この辺に居てもいいですか?」
 と、言われれば流石にダメだとは言えない。
 今の所危険は皆無だし、士郎も自身の警戒が過度なものではあると認識していた。
 昼間から事を起こそうとすれば大きな根回しが必要になる。だが、それは行動が筒抜けになる諸刃の剣。
 襲撃があるとするなら夜であり、昼間は悪戯程度、というのが士郎の予測ではある。
 関西の本陣において探査に引っかからないのだから、襲撃者が存在するとしたら関西内部の者であり、少数であるというのは揺るぎない。
 で、あるとするならば、ネギの試練として丁度いいのかもしれない。
 これが本当にただの嫌がらせであるという可能性もある。
 同時に、衛宮士郎が京都に来ている事ぐらい襲撃者も知っているはず。
 士郎の存在が抑止力になる可能性もあるし、相手の情報が圧倒的に足りない現状採れる選択肢も少ない。
 ならば、アキラぐらいの予測外は許容できるだろう。
 アキラと接する様子を監視してくれているのなら、襲撃者を油断させるような演技も不可能ではない。
 どちらにせよ、確率が等しく選択肢に分配されているのなら、どれを選んだとしてもそれは運によるものだろう。士郎にはどうしようもない事だ。
「分かった。だが、どうせなら和泉たちを追う事にしよう」
 そう言って、士郎はアキラを待たずに動き出す。木乃香たちが動いたからだ。
 ついで、アキラに対する配慮として認識阻害の札は外した。
 女子学生の中に紛れるのは正直勘弁したいところだが、仕事なのだし諦める他あるまい。少し離れて歩けば問題ないだろう。
 いっそ、衛宮士郎恐るるに足らず、とでも判断して貰えるように、悪戯に嵌まるのも手だろう。あまり率先してやりたいことではないが。
「あの、士郎さんは京都に来たことあるんですか?」
「ん? 何でだ?」
「いえ、慣れてるような感じがしたから……」
「そうだな。最近も仕事で何回か訪れているが……清水寺には来てないな」
「修学旅行はどこだったんですか?」
「さて、な。もう覚えてない。もしかしたら、ここに来たこともあるのかもしれないが」
 実際、学生時代の事はその大半が摩耗している。
 アルビレオ・イマが作成した半生録から衛宮士郎の物語を読み取り、ある程度の記憶は回復したが、それとて大まかな、主要な出来事に過ぎない。
 細かな日常など、もうイメージでしか描く事の出来ないものだ。ただ、大切で、温かで、かけがえのないものがそこにはあったのだ、という認識があるだけで。
 アキラは士郎の言葉の意味を正確に理解することはできなかったが、続きを追及する事はなかった。
「京都って、何だか落ち着きますよね!」
「ああ、そうだな。古都というだけあって、積み重ねた年月を感じる。アキラも心地よく感じるのか?」
「はい。なんとなくですけど」
 士郎は考える。
 大河内アキラの特性、エミヤの工房に眠る剣たちの威圧感にあてられて目覚めつつある性能は、果たして“魔術師”に近いものなのか、“魔法使い”に近いものなのか、と。
 アキラに魔術回路は存在しない。
 タカミチの時以上に精密に、全力を以って解析した結果だから、ただ眠っているだけという事もないだろう。
 ただ、無意識領域下において年月という概念を理解しているのであれば、あるいは……。
 魔術回路のみが人間にとって在らざるモノを呼び込む器官ではない。超能力と大別できるのならば、アキラの性能は魔術師、士郎の世界の理に近いモノである可能性はある。
 まあ、京都の雰囲気を好むからという点で判断できるようなものではないが、士郎にとっては思考の一因となるものではあった。
「アキラ。もしも非常事態に陥って、助けが必要な時は龍宮を通じて連絡してくれ」
「龍宮さん、ですか?」
 驚いたような、納得しているような顔でアキラは聞き返す。
「ああ。京都で使っている仕事用の番号を知ってる。それに、大抵の事なら龍宮がいれば十分だ。私の出番はないだろうな」
「仲、いいんですか? 龍宮さんとは」
「そうだな。一応ウチの店の常連なんだ。後は、仕事仲間だな」
 一緒に仕事をした事はないが、やっている事に大差はない。
「龍宮さんが? この前の、あの夜みたいな、危険な事をしているんですか?」
 その声に、士郎は非難の色を感じた。
 そもそもアキラが境界線で“こちら側”を見守ると決意したのは、全てを忘れ去り安穏と生きる事を放棄したのは、友達を守るためだった。
 士郎はアキラと真名の交友関係がどの程度のものなのか知らなかったから、勝手にアキラの“守るべき友達”という範囲の中にあるのだろう、と判断した。
 アキラ自身は、真名に対してそこまでの強い想いがあるわけではない。
 単純な興味が6割で、心配が3割で、残りの1割は秘密。
 アキラは歩調を合わせてくれていた士郎より一歩先に出て、はにかんだ笑みで告げる。
「危ない事があったら頼ります。だから、私に出来る事があれば何でも言って下さいね」
「ああ、その時はよろしく頼む」
 その返事に安心したように微笑んで、アキラは小走りで友達の輪の中に戻った。
 士郎には、その微笑が痛かったのだけれど。表情に出す事はできずに、仕事に戻る。











 士郎は、どこか刹那の様子がおかしい事には気づいていたが、話しかけることはできなかった。
 刹那にしては珍しく、生徒たちの輪の中にいたからだ。
 特に誰と話すわけでもなく俯いているだけなのに、集団の中心付近にいるのは、傍から見ていると異様に映る。
 だが、周りの生徒は特に刹那の異常には気づいていないらしい。
 元より楽しそうな表情を見せない刹那だから、それも仕方のない事だったのかもしれないが。
 音羽の滝にて悪戯で紛れ込まれた酒こそ飲まなかったものの、周りのテンションに気づいていないのか三歩離れて木乃香の後姿を眺めているだけ。
 おかしいとは思ったものの、前方より近づいてくる教師たちを見つけ、仕方なしに足止めに向かう。
「ああ、衛宮さんじゃないですか」
 と、こちらから話しかけるでもなく、向こうが気づいてくれた。
「ご苦労さまです、瀬流彦先生。それと……」
「新田です。確か、衛宮先生でしたな」
「いえ、教師はもうクビになっていまして。今はしがない喫茶店の店主です」
「これは失礼。では、私は見回りがありますので」
「あ、新田先生。少し衛宮さんと話がありますので、ここから先をお任せしてよろしいですか?」
「ええ、構いません。しかし、早めに追いついて下さい」
 ここで引きとめるのも不自然かと思って行かせたが、何とかネギたちが誤魔化したようだ。
「首尾はどうですか、衛宮さん」
「まだ尻尾は掴めていない。まあ、頭があるかも怪しいがな」
「すみません。本当は生徒の警護は僕らの仕事なのに……」
「気にしないでくれ。好きでやっている事だ。それに、近衛以外は君たちに任せる事になる。一応、集団行動している内は私も力になれるが、個別行動になれば私は近衛についていく事になるからな」
「ええ、分かっています。しかし、頼れないと分かっていても、貴方が居てくれるのは心強いですよ」
「私としても、君たちの協力には感謝している。今回は、個人的な事情だからな」
「いえ、目的が同じであれば助け合うのは当然の事です。学園長からのお墨付きもありますしね。僕らとしては、拒否する理由がありません」
「そう言ってくれると助かる。彼女たちは先に旅館に帰るようだから、私もこれで失礼するよ」
 士郎は瀬流彦と別れて、3-Aのバスを追うべく隠したバイクを取りに行った。




















 

 私は、任務に集中できていると言えるような状況ではなかった。
 ネギ先生がどの程度使えるのか、その見極めもできずにただ呆っとお嬢様を眺めているだけ。
 先のお嬢様の一言が、脳内で何度もリピートされていた。
 任務を思い出し、お嬢様を見ればまた先ほどの言葉を思い出し、とキリがない。
 私は、何故これほどまでに自分が混乱しているのか、理解できなかった。いや、理解したくなかった。
 お嬢様に想い人ができた。
 それは、喜ばしい事。しかも、その相手が尊敬する士郎さんだと言うのなら、何の問題もない。そう、何も。
 ……でも。でもやはり、どうにも突然過ぎるように思える。
 そんな兆候なんてまるでなかったから、突然だったから驚いているだけ。
 と、決めつけるには今の自分は情けなさすぎた。
 剣を持ち、お嬢様を守るべく影ながら見守っている時、私の集中がこれほど乱された事はない。
 原因は、分かり易い。だが、あまり認めたくはない。
 私は、お嬢様に想い人がいる、という事にショックを受けているのだろう。
 いや、もっと正確に述べるなら、その相手が士郎さんであった事に。
 今まで、お嬢様を守ってきたのは自分だ、という自負がある。
 その為に人生を費やし、命を投げ出す覚悟がある。
 もしも、お嬢様の思い人が士郎さんでなかったのなら。
 いや、私より強い人間でなかったのなら・・・・・・・・・・・・・・・、きっと私はショックなんて受けなかった。
 多分、私は恐れている。
 用済みになってしまう事が。近衛木乃香を守るのに、最適な人間でなくなる事が。
 私の代わりに、衛宮士郎が、一番近くで、その心までも通い合わせて守るというのなら。

 桜咲刹那なんて、要らなくなる。

 長からも。学園長からも。そして、このちゃんからも必要とされなくなるのなら。
 私は、生きていけない。
 それが、怖い。たまらなく。
 士郎さんは、きっと私の立場を尊重してくれるだろう。
 もしもの時は助っ人として参戦してくれるとも言ってくれた。今回の件は自分から依頼した事だが、それもあの人が頼りになると考えての事。
 でも、頼りになり過ぎたら?
 士郎さんさえいたら、もう十分だと判断されたら。
 いや、それよりも、私自身が士郎さんだけで十分だと認めてしまったら。
 私は、立ち直れない。

 ああ、こんな事なら士郎さんとの手合せなど望まなければ良かった。
 その力など、知らなければ良かった。
 知らないのなら、その壁の高さも知らず乗り越える事を夢見れたのに。
 いつか、士郎さんよりも強くなれば再びお嬢様を守れるのだと、そう夢見て修行を続けられたのに。
 それか、士郎さんがもっと弱ければよかった。
 単独で麻帆良を制圧できるような、想像もできないような強さじゃなくて。
 もっと身近な、目標にできるような強さであったのならば、まだ救いはあった。
 でも現実として、士郎さんの力は破格と評され尚その底は見えず、私は神鳴流の中でも見習いでしかない。
 どれだけの差があるのかさえ、私には分からない遥か彼方の頂きの上。
 どうする事も、できない。
 私にはお嬢様の不幸を願うことなんてできないし、同様に士郎さんにも幸せであって欲しいと思う。
 だから、私が願えるとしたら、それは。





 士郎さんが、戦えなくなる事、ぐらいだった。







瀬流彦「僕のモデルだっていうセルピコは原作であんなに活躍してるのに、僕は……いや、僕だってきっとここでなら!」
関連記事

管理者にだけ表示を許可する
« | ホーム |  »
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。