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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第22話


「4月15日の結末(2)」


 私は、この日、このチャンスに、全ての決着を付けるつもりだった。
 この麻帆良で過ごした15年間という月日と。
 かつて執着し、まだ今も夢に見る、ナギ・スプリングフィールドという男に。
 どんな事をしてでもこの呪いを解き、微温湯のような生活を終わらせる。
 そう決意していたからこそ、衛宮士郎との契約はある意味都合が良かった。自分の行動の歯止めになってくれるのではないか、と。
 女子供を殺さない、というのは、つまり戦う力がない者を、覚悟がない者を殺さない、という事だ。
 その点について、私は例えこの身が滅びようとも破るつもりはない。
 だが、衛宮士郎の用意した契約は、子供を殺す事を……未だ戦場を知らぬ、覚悟なき者の殺害を、許容していた。
 しかも、それに対する報復が衛宮士郎本人の報復行動だけ。
 冷静に考えれば、この契約はどこまでも不可思議だ。
 衛宮士郎が余程の自信家なのか、それともそれさえブラフに過ぎず、何らかの策があるのか。
 何せ、裏の世界においてさえ、自分の全ての足跡を消してきた男だ。果たしてどんな事をしでかすか、私にさえ理解できぬ領域にある。
 奴の未知の能力よりも、そこまで自分というものを消してしまえる人間性が、怖い。
 己の損害を考えず、他人の為に動く奴が理解できない。
 アレは、私とは別の意味で怪物であると断言できる。
 ……だから、なのかもしれない。
 もしも衛宮士郎が私の前に現れなかったら。その戦場の雰囲気を、私に思い出させなかったら。
 私は、この学園で、甘いままにこれからの時間を過ごしていたのかもしれない。
 そんな風な、綺麗で救いがないユメを見る事は、ある。
 だが私は、悪だ。
 他人に迷惑をかける、というのは、報復の覚悟があるからこそ選択できる悪の道。
 この15年。いや、ナギと出会ったあの頃から、拠り所を求めて、甘い光の中で生きてきた。
 そして、光に根を下ろしかけた私に、衛宮士郎の存在が、奴が私に思い出させる凄惨な戦場が囁くのだ。
『オマエはどれだけ光の中で生きたとしても、最早光にはなれない。闇には闇の。悪には悪の。他に道は残されていないのだから』
 ああ、確かにその通りだ。
 今更、理解を、幸せを求めた私が馬鹿だったのだろう。
 だが。その法があるのなら、衛宮士郎もまた悪になる。
 奴が麻帆良に来るまでの過去はいくら探そうとも見つからない。しかし、それ以降の記録は確かに残っている。
 力で麻帆良を屈服させ、以後もその能力を用いて己の目的を達成し続けている。
 その目的が、正義などという傍迷惑なものであるのなら。力で押さえつけている時点で、奴は悪だ。
 悪を以って、悪を狩り、最後に自身もまた滅ぶ覚悟があるのなら。
 それは、私と何一つ変わらない。吐き気がするほどに、だ。
 ならば、遠慮などいらぬ。
 存分に、私は悪を往き。同属を滅ぼすだけだ。

















 しばし時を遡り、エヴァンジェリン達が戦いに赴いた後の大浴場。
 拘束され、意識を失った士郎に近づく影があった。
 影は、宵闇に眩い刀を抜くと、士郎に向けて一閃。
 魔法の拘束は外れ、士郎の大きな体が崩れ落ちる。
 その前に、影――刹那は、自分より遥かに大きい士郎の体を支えた。
 次いで、シャダ、と意識回復の術を唱える。
 やがて、術の効力により、士郎は目を覚ました。
「……桜咲、か?」
「はい。そうです、衛宮さん」
「おかしいな。俺は、タカミチに連絡したハズだったんだが」
 士郎は、エヴァを欺く最良の手段として、ひと先ず眠りを受け入れる事にした。
 これが完全に肉体の自由を奪う魔法だったのならば、士郎とて投影を使用してでも抵抗しただろう。
 が、眠りの魔法ならば、第三者に起こして貰うだけで事足りる。
 魔法をレジストする事もできたが、もしもエヴァンジェリンが意識を確認したら他に手がなくなり、強硬手段しか残されていない。
 その場合の勝率は、二対一の状況もさることながら、拘束されている時点でないに等しいだろう。
 よって、士郎は魔法世界で手に入れた指輪・念話妨害遮断機能付きのアイテムを使用した。
 今、その片方を持っているのはタカミチであった為、自動的にタカミチに救援を要請することになったのだが……。
 何故か、現れたのは刹那だった。
「私は、先ほどの戦闘から見ていましたから。エヴァンジェリンさんがこの場所を離れて、20分が経過しました。もう、ネギ先生との決闘が始まっているはずです」
「何故、もっと早く起こさなかった!?」
「トラップや感知結界の有無の確認と、大河内さんたちの保護を優先しました。それに、決闘が始まるまでは、エヴァンジェリンさんがこちらに気づいて転移してくる可能性も捨てきれません」
「確かに、な。悪い、桜咲。今必要なのは叱責ではなく感謝だった。ありがとう」
「い、いえ。私は、私がやりたいようにやっただけですから」
 若干頬を染める刹那に対して、士郎はぽんっと刹那の頭を撫でた。
 それも一瞬の事で、刹那が反応する前に、その手は離され、士郎が立ちあがる。
 その背中に、刹那は声をかける。
「往くのですか?」
「ああ。今この学園で、エヴァンジェリンに対抗できるのは俺だけだ」
 その横顔を見て、刹那は一緒に戦いたいという想いを、押さえるのが精一杯だった。
 もしも、刹那が戦いに参加し、その上で敗北してしまった場合。
 呪いを解いたエヴァンジェリンが、腹いせに木乃香を狙わないと誰が断言できるだろうか。
 そんな危険は、犯せない。自分のワガママで、木乃香を危険に晒すわけにはいかないのだ。
 だから、戦いに戻るという彼に、刹那は付いていく事ができない。
 それは、刹那にとっての一番ではないのだから。刹那は、守るべきもの、守りたいものを弁えている。
 だから、当たり障りのない言葉で、自分を偽る事しかできなかった。
「なら、私はここで高畑先生を待ちます」
「頼む。アキラや、他の三人もな」
「はい。ご武運を」
 駆けていくその背に、刹那はもう一度漏らす。
「ご武運、を」
 白結を胸に留め、刹那は見えなくなるまでその背を見送った。























 タカミチがその場に到着したのは、ほとんど士郎と入れ違いだった。
「どうやら、少し時間がかかり過ぎたようだね」
「……ええ」
 刹那は、心ここにあらず、といった風に答えた。
「でも、刹那君がいてくれて良かった。これでもうネギ君も、エヴァも安心だよ」
 完全な信頼。
 タカミチは、この戦闘が、結局衛宮士郎の手によって最良の結果を迎えると確信している。
 それ以外の選択肢など、この時点で消えてしまったのだと言わんばかりに。
「何故、ですか?どうしてそこまで、断言できるのです?」
 刹那は問う。貴方は私の知らない衛宮士郎を知っているのか、と。
 それに対して、タカミチは。
「I have created over a thousand blades」
「え?」
「幾たびの戦場を越えて不敗。それが、あの正義の味方を表す言葉の中にある。だから、彼はこれからも、決して敗れる事はないよ」
 そう、信じきった子供のような瞳で答えた。





















 ネギが所有するアンティーク、魔法銃の類は、呪文詠唱なしで使用できる点が最大の利点である。
 魔法銃による迎撃に、ネギの呪文。
 この二段構えによって、ネギはパートナーの不在を埋めようとした。
 だが。
魔法の射手サギタ・マギカ連弾・闇の67矢セリエス オブスクーリー!」
 エヴァンジェリンの手数は多すぎる。
 これでは、魔法銃による迎撃など何の役にも立たない。
 今できる事と言ったら、杖を操り矢を避ける事と、避けられない矢を最大出力の風障壁で防ぐ事ぐらいだ。
 そもそも、エヴァンジェリンはこれでさえ多大なる手加減をしている。
 エヴァンジェリンは、他の魔法先生たちが駆けつける事がないよう、あまりに派手な魔法は使用できない。
 今夜このまま麻帆良を発ち、もう帰ってくる事がないとしても、時間制限がある現状、余計な手出しは望む所ではない。
 その為に、衛宮士郎を考えうる限り最も確実な方法で打ち倒し、除外したのだ。
 それに、もし仮に他の魔法先生にこの戦いが漏れる事があれば、おそらくメンテナンスを中止して結界に電力供給を再開するだろう。
 と、なれば、満月には程遠い今夜、エヴァに勝ち目はない。
 慎重、かつ、大胆に。
 15年、この都市の警護を曲がりなりにも勤めてきた経験は伊達ではない。
 どこまでが許される領域なのか、外部はともかく、内部への監視の目が少ない事も承知している。
 故に、その攻撃は、軌道・弾数・地形要素・対象技能の全てを計算され尽くしたものだった。
 事、経験という面において、ネギとエヴァンジェリンの間には人間の寿命では決して追いつけない隔絶が存在する。
 いくらネギが天才であるとしても、能力、経験、数。どれにおいても不利であるのなら、ネギが勝利する為の絶対条件は、策。
 エヴァンジェリンの経験さえ凌駕する、策以外に手段はない。
「あと、少し……っ」
 演技ではなく、正真正銘、追い詰められながらも、ネギはギリギリの所で踏みとどまっていた。
 矢がかすり、既にいくつかの魔法具は失くしてしまっているし、所々の出血も目に留まる。
 だが、致命傷ではなく、どれも戦闘に支障はない程度のものだ。
 そもそも。ネギの策が成功したのならば、その時点でネギは勝利できる。
 ならば、そこがゴールだ。
 その“罠”にさえ辿り着いてしまえば、ネギの勝利は揺るがない。
 と、いう。幼稚な希望が、ネギの精神を守っていた。
「もういい。そろそろ墜ちろ!」
 エヴァが唱えるのは、氷爆。風と氷の精による、二属性連立呪文だ。
 それを、更にアレンジを加え、派手な効果が出ないよう、収束させる。
収束・氷爆!ニウィス・カースス
 たまらず、ネギは橋の中央にて杖ごと吹き飛ばされる。
 ローブに備えていた魔法具もいくつか失った。触媒も殆どが今の衝撃で割れている。
 あらゆる観点から見て、もうネギは絶対絶命だった。
「これで決着、か。やはり、障害は衛宮士郎だけだったな」
 一歩ずつ、解呪の儀式の為に、エヴァンジェリンはネギに近づいていく。
 そして、あと3歩、という所で。
 風精霊式の捕縛結界が作動した。
「や……、やったぁっ!これで僕の勝ちですよ、エヴァンジェリンさん!」
 安堵のため息をつき、杖を構えて勝利の声を上げるネギに、エヴァは感心したような笑みを見せる。
「これがお前の策、か。予め罠を作っておくあたり、やはり奴の息子という所だが……甘かったな」
「え?」
「結界解除プログラム始動。すみません、ネギ先生……」
 茶々丸の耳、アンテナ部分から幾つもの突起を出し、捕縛結界の術式を破壊していく。
 徐々に破壊されていく結界と同じように、ネギの顔色も青ざめていった。
「そ、そんっ――」
「喚くな。相手の戦力、能力など、全てを見通せるわけがない。常に思慮外の出来事を想定しておくべきだ。ぼうやの敗因は、策を一つしか練らなかったことさ」
 ネギの首を掴み、呪文詠唱の為の発声器官を抑えた上で、エヴァンジェリンは冷ややかに宣告する。
「だが、まあ、パートナーもいない身で良く頑張ったよ。その点は褒めてやろう。だが、これからはもう少し賢く生きるのだな」
 ネギが、既に抵抗する意思も、力もなくしている事を見極めた上で、エヴァンジェリンは優しくその首筋に指を這わせる。
 茶々丸が見守る中、エヴァの牙が段々とネギの首筋に近づいていき、やがて口付けるように覆い被さった。
 この時のエヴァの感情は、余人には計り知れないものだっただろう。
 無期刑期の中、脱獄のチャンスを得た囚人のようなものだろうか。
「コラーっ!ネギを離しなさーいっ!!」
 その、エヴァにとってもネギにとっても緊張の瞬間は、一人の少女の乱入によって中断された。
「やれやれ、神楽坂明日菜か。茶々丸」
 エヴァは、震えるネギを打ち捨てて、己が従者に迎撃を命じた。
 茶々丸は言われるまでもなく明日菜に向き直っていたが、カモの機転により明日菜は茶々丸を抜け、エヴァンジェリンへと迫った。
 その明日菜に対して、障壁を張り余裕で対処しようとした所で。
「っっ!!?」
 エヴァンジェリンは、己の命の危機、おぞましい、全身が硬直するような恐怖を感じた。
 その発生源は、光。
 遥か遠方より飛来する、鉛色の鈍い輝き。
 それが、エヴァンジェリンにとっては、闇よりも深い死の色に見えた。
「がっ!?」
 が、見えた、というその時には既に遅い。
 光は、エヴァンジェリンに避ける時間も、障壁を強化する時間も与えず、明日菜の飛び蹴りを追い抜きエヴァンジェリンの左手を射抜く。
 衝撃に吹き飛ばされ、左手ごと柱に縫いとめられて初めて、エヴァは己を射抜いたものが矢ではなく剣である事に気づいた。
「マスター!」
 茶々丸が、ネギや明日菜の相手を放棄し、エヴァに駆け寄りその細身の剣を抜いた。
「ご無事ですか、マスター?」
 茶々丸の問いにも、答える余力がエヴァにはなかった。
 刺し貫かれた左手が、焼けるように痛んでいたからだ。
 不死となり、幾度となく人間の致死ダメージに耐えてきた彼女が、悶絶するほどの痛み。
 だが、痛みだけならば、エヴァンジェリンには数百年の積み重ねによる耐性があるはずだった。
 にも、関わらず。痛みを顔に出す、などという惨めを晒すことになっているのは、この痛みが、不死にのみ作用する“吸血鬼殺しの毒”であるからだ。
「馬鹿なっ……!?」
 概念の毒は、エヴァンジェリンの肉体を復元させない。
 再生の魔法は、再構成以前に発動失敗すらしなかった。
 射抜かれた左手を庇い、エヴァンジェリンの顔は驚愕と苦悶に歪む。
 そう。エヴァンジェリンが、600年の時を生きた吸血鬼が恐れた最大の障害は。
 このような、“理解できぬ”切り札を持っている、はずだった。
「衛宮、士郎かぁっ!」
 息苦しさから、喘ぐように叫ぶ。
 そして、眠らせるなんていう児戯が、彼の男に対して何と甘いモノであったのかを思い知った。
 今日、この夜に、あらゆる障害を取り除き決闘に望むのならば。
 まず排除しなくてはならないのは、イレギュラーたる衛宮士郎である、と。
 そう判断したのは、彼女自身であったというのに。彼女は、最後の最後で詰めを誤った。
 こうして、ネギと明日菜が仮契約の準備を進める中、窮地に立たされているのは、先刻衛宮士郎の意識の確認さえしなかった自身の甘さから。
 ならば、もう完全に容赦など要らぬ。エヴァンジェリンと衛宮士郎の間にあるのは、食うか食われるかの関係だけだ。
 共存など最初から有り得ぬ同じ闇、しかも対極である悪と正義なのならば。
 両者の戦いは、尊く醜い、原寸大の生存戦争なのだから。





















 エヴァンジェリンとネギの決闘、その終着点からおよそ3キロ。
 停電の中、最新の機器を用いても一キロ先の映像など期待できぬ闇の中で、衛宮士郎は弓を構えている。
 その中で、微かたりとも動く事無く、彼は闇の中に声を放る。
「いつでも結界を復旧できるように、用意しておいてくれ」
「ああ。分かった。合図はそちらに任せるよ」
 士郎と念話しているのは、僅かながら個人的親交もある明石教授だ。
 刹那に見送られ飛び出した士郎は、明石に連絡をとりながらエヴァンジェリンたちの動向を目視で確認。予想される戦闘ポイント全てに対応できる狙撃点を探した。
 結果、こうして3キロ離れた屋上にて、見事士郎はエヴァンジェリンの左手を射抜く事に成功している。
 使用した矢、いや剣は、埋葬機関にて用いられる黒鍵を矢として使用する為に改造したもの。
 不死者に対する攻撃性能、毒としての性質さえランクダウンしているが、矢として使用した時の破壊力は埋葬機関の誇る体技・鉄甲作用にも劣っていないと自負できる性能だ。
 不死の吸血鬼であるエヴァンジェリンに対抗するのに、最も適した武器と言える。
「でもいいのかな?君にも学園長から連絡があっただろう?」
「構わないさ。客分としての地位などに興味はない。それに、現状私を手放す事ができるはずもないからな。今一番無茶ができるのが、私であるのは確かだ」
 今回のエヴァンジェリンが起こした事件に対する不干渉。それは学園長から上級職員に指示された正式な指令だ。
 それを反故にし、能動的介入を行うというのなら、また士郎の学園内における立場が悪くなるのは必至だった。
「でも、君は、麻帆良に恩返しするんだろう?」
「別に、麻帆良の中にいなくても恩返しはできるさ」
 かつて、士郎と明石が初めて語らったあの夜、確かに士郎はその目的として拾われた命の恩返しを挙げていた。
 その目的を忘れたのか、と問う明石に、士郎は簡潔な決意を語る。
「君は、つくづく損な男だね」
 明石の評価も無理なからぬ事だ。実際に士郎の行動は、何一つ彼に返る所がない。
 それが、立派な魔法使いの本懐と言えど、ここまで無私を貫ける人間というのは、最早異常だ。
 と、明石がその評価から、年長としての苦言を呈しようとした時、士郎は構えていた弓に魔剣を番えて解き放った。
 ネギとエヴァンジェリン、明日菜と茶々丸の戦闘が始まったからだ。
 しかし、士郎はネギとエヴァンジェリンの戦況に留意しつつも、二人の戦闘に介入する事はない。
 これは、契約を破戒したと知らせない為。
 最悪の場合、士郎は躊躇いなくどちらかを射抜くだろう。だが、それはあくまで最後の手段。
 この段階で、穏便な結末を迎えられる可能性を、断ち切るわけにはいかないのだ。
 故に、いま士郎が援護しているのは、戦闘の素人である明日菜だ。
 明日菜に当てる事無く、茶々丸の動きだけを牽制し、縫いとめるその能力は、もはや人間の辿り着ける領域ではない。
 紛う事なき、英雄としての能力を保持する衛宮士郎だからこそ可能な神業だ。
「そろそろ、だな」
 士郎が予測した通り、ネギはエヴァンジェリンを押していた。
 不死であるエヴァンジェリンにとって、癒えない痛みというのは慣れているはずもなく、それによる集中力の低下は免れない。
 吸血鬼にとって血とは魔力の塊であり、止血できないというのは、膨大な魔力を垂れ流しているようなものなのだ。
 幾度か再生を試みたせいで魔力も減っているし、何より左手を使えないだけでも大きなハンデとなる。
 そして、二人の戦闘を観察する事で、士郎は一つの確信を抱いていた。
 エヴァンジェリンは、この戦闘において手加減をしている。または、全力を出す事ができない何らかの要因を抱えている、という事。
 士郎を、幾重もの策を用いて無力化しようとしたエヴァンジェリンには、ある意味もう後がない。
 にも関わらず、ネギに対して非情な行動を取れないのは、悪としてのプライドか、根底に根付く良心か。
 その判断を士郎が下すことはなかったが、確かなのはエヴァンジェリンが今のスタンスを貫く限り勝利はない、という事。
 窮鼠猫を噛む、と言うが、追い詰められた魔王は果たして何をするか。
 例え、いかなる行動を起こしても対応できるよう、その心眼を用いて先の展開を予測していた時。
 唐突に、明石の念話ではない声が、宵闇に響いた。
「ヨウ、悪イナ。今度ハ最後マデ付キ合ッテ貰ウゼ?」
 再戦の闘志を漲らせるチャチャゼロは、そうして再び士郎の前に立ちはだかった。









 





タカミチ「I have created over a thousand blades」
刹那「え?(そんな、イキナリ英語で言われても困ります!)」
タカミチ「幾たびの戦場を越えて不敗~」
刹那「(あれ?でもその訳何かおかしくないですか?)」
 
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