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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第17話


「学年トップ記念パーティーの顛末」



 学年トップを記念してパーティーをする。
 そのパーティーの会場は、喫茶「アルトリア」だった。
 元々開ける予定のなかった日中、完全貸切にして会場と料理を、先生としての最後の仕事として提供してやったのだが。
 ウチの店は、元々ログハウスを改造して作ったものだから、狭い。
 どれ位狭いかと言うと、ウチにあるイスをどんなに動員しても20人くらいしか座れないし、入れない位だ。
 だから最初こそ外に俺の料理を持っていくという話になっていたのだが、気がつけばウチの店にオープンテラスが設置されていた。
 流石は麻帆大工学部建築科。というより超鈴音。
 この恩は、いつか返さなければならないなぁと思いつつも、考えてみればオープンテラスなどあった所でそこまで規模を大きくする事はどう頑張っても現状不可能。
 だって、人手は俺だけであり、ウエイトレスでも雇えれば何とでもなるのだが、雇う当てもない。
 給料を出す余裕くらいはあるから、これを機にバイトを雇ってもいいのかもしれないが。
「おー、結構いい感じじゃん!欧風アンティークってヤツ?」
「ホント、ケーキもお茶も美味しいし、衛宮先生最高だよ~」
 だがまあ、今はそんな感想に耳を傾けながら、ひたすら手を動かすべき時だった。
 ここは戦場。一度に20人以上の胃袋と戦わねばならぬのだから。
「あの、お手伝いしますね」
「ああ、助かる。超包子のさっちゃんが加勢してくれるのなら心強い」
「そんな、一人でお店を回している衛宮先生には敵いません」
「謙遜はいいさ。ああ、材料は好きなもの使って構わないから、四葉の使いやすいように動いてくれて構わないぞ」
「では、遠慮なく」
 料理人同士、会話しながらもその手が止まる事はない。
 四葉五月。中学生ながらも、料理の腕前・人格ともに士郎も認めるところである。
 実はお互いに、士郎が先生になる前からその存在は知っていたのだが、こうして会話するのは初めての事だった。
「あっ、朝倉。その席には座らないでくれないか」
「えっ、何で?」
「そこは、ちょっとした指定席になっていてな。他の人間が座ると機嫌が悪くなるんだ」
「ふ~ん」
 誰が、とは言わない。このクラスはネギも含めて気づいていないようだが、3-Aは30人ではなく31人なのである。
『あの、ありがとうございます』
 と、言われても、ここで返したらただの変な人だ。
 俺は、幽霊・さよにだけ見える角度で手を挙げる。
 俺の行動に気づいて、何やらまた感動しているらしいこの幽霊、相坂さよを発見したのは教職についてすぐだった。
 いや、俺も最初の頃はあまりに自然に溶け込んでいるその姿に、視界に入っていても風景のように感じていたのだが、決定的だったのは彼女の泣き声を聞いた時だ。
 放課後の教室、孤独に泣いているのにハイテンションなさよを見つけ、というか俺が見えている事に気づかれ、以降は半ばとり憑かれたかのようにこの店、カウンター席の一番端に住みついてしまった。
 とは言え、彼女が入れるのは喫茶店内部のこのカウンターまでがギリギリ限界で、それより中、俺の工房までは、結界に阻まれて入る事は出来ない。
 多分、肉体に支えられていない無色の霊体があの結界を無理やり破ったらそのまま成仏してしまう。
 そうした方がいいような気もするのだが、既に死んでいるのにもう一度死の恐怖を無理に味わう必要もないだろうと放置している。
 全くの無害だし、彼女がこの席に座るのは放課後から店に人がいるまでだ。
 深夜になるとコンビニとかで時間を潰しているようだが。
 閑話休題。
「ところで、わざわざカウンターに来たという事は、何か用か?」
「んー、まね。何か、先生辞めるとか聞いたから」
 端の席を避けて、その隣に座った朝倉が言う。というか、コイツは一体どこからそんな情報を仕入れてくるのだろうか。
「辞めるんじゃなくて喫茶店こっちに専念するだけだ。ネギも本採用になった事だしな」
「同じ事じゃん。教師を続ける気はないの?」
「元々教師をする気なんてなかったんだが。まあ、俺にも色々事情があってな。ある程度自由に休みを取れる状況が必要なんだ」
「それって去年の暮の時みたいな?」
「まあ、それに近い状況にはなるだろうな。だから、復帰と言っても場合によっては今より開いてる日は少なくなるかもしれない」
「ふーん。その理由って聞いちゃダメなんだよね」
「そうだな。少し物騒な理由だから、あまり吹聴したくはない」
 実際的には裏の世界の趨勢に関わる可能性も出てくる。
 朝倉という子は、聞いてはいけない境界は弁えているから、こうした言い方をすれば引いてくれるはずだ。
「それと、俺が教師を辞めるという事も、あまり話して回るなよ。いらぬ恨みは買いたくない」
「恨みって何よ」
「まあ、俺の立ち位置は学園内では微妙なものでな。マジメな一部教師陣には受け入れられてないんだ。俺が教師になると決定した時も、明石教授がわざわざウチを訪ねてきたぐらいだし」
「明石教授って、ゆーなのお父さんだっけ」
「そうだ。彼とは何とか和解できたが、中々な。過去の遺恨を払うには時間が足りないという所だ」
「遺恨って。何したのさ、えみやん」
「それは聞くな」
 ピシャリと言い放つ。言えるような事でもなければ、思い出したい事でもない。
「まあ、ある意味伝説だな。だよな、士郎さん?」
 朝倉の隣に座っていた龍宮が会話に参加する。というか、伝説とは何だ、伝説とは。
「違う。断じて違うぞ龍宮」
 確かにあの時は俺も浅慮だったと思うが、伝説として語り継ぐような内容でもないし、そんな者もいないだろう。
「まあ、私はあの場に居たわけではないからね。でも事実として、今学園には貴方を容認するか否かで二つの派閥が形成されつつある。その中心人物なんだから、伝説という表現も中々言い得て妙だと思うのだけど」
 その話は、士郎もタカミチから聞いた事がある。
 本人に関わりのない所で話を進められても困るというものだが、これもある意味士郎の平和的活動の結果だ。
 しかしそれが学園を二分してしまっているというのは心が痛む事実だが。
「え?なになに?何か今とても面白そうな話を聞いた気がするんだけど」
 俺は必死に龍宮に向けて言うなとアイコンタクト。しかし努力虚しく、
「ああ。この人が学園最強だって話だよ。楓や古程度では手も足も出ないような、な」
「え、えむぐっ」
 大声で叫びだしそうな朝倉の口を、ケーキで塞いだ。
 何やらごちゃごちゃ文句を垂れているが、聞く耳は持たない。ついでに龍宮には殺気に近い視線をプレゼントだ。
「そう怖い顔をしないで欲しいね。私は事実を言ったまでだし、その反応は認めているようなものだ」
「むぐもぐ…ぷはっ、てかマジなのえみやん?この間は刹那さんに負けたとかって言ってた癖に」
「嘘は良くないぞ、士郎さん」
「嘘じゃないさ。桜咲には一度負けてる。実際、桜咲に限らず、龍宮にしろ長瀬にしろ、私を倒しきるだけの能力は持ってるさ。今は少しばかり経験が足りていないが」
「はぁ~。というと、やっぱりマジなんだ。こりゃ凄いスクープだね」
「言っておくが、今の話を記事にするのは許可しないからな」
「えー」
「えーじゃない。こちらにもいろいろ事情があるんだ。人を不幸にする記事に、意味なんてないと思うがな?」
「う、それは確かに。でもなー。いいネタだと思ったんだけどなー。っていうか何でそんなに秘密主義なのさ?」
 謎が多すぎるんだけど、と朝倉。それに龍宮も同意する。
「先日の京都にしてもそうだが、裏で何をやっているんだ?」
「いやいや、ちょっと待て。何故その話をお前が知っている?」
「言わなかったかな。私と刹那はルームメイトなんだ」
 ああ、確かにいつだったか聞いた気がする。
 しかし、桜咲には口外しないようにと言っておいた筈なんだが…無理やり聞き出したか、顔に出たか。
 どちらにせよ、朝倉が、というかクラスの殆どがいる場で話せる事ではない。
「…京都の件は、家庭訪問だ」
「家庭訪問?」
「そうだ。近衛の父親に会ってきた」
「え?おとーさまに会ってきたん?」
 何たる迂闊。近衛が会話に参加してきた。
 流石にこれは龍宮もマズイと感じたのか、そそくさと別の席に退避する。
 代わりに、朝倉の方はまたもや好奇心を刺激されたようだ。メモ帳を取りだす。
「あー、近衛。どこから聞いていた?」
「なんや、家庭訪問やっていう所からやよ」
 よし、それならばまだ誤魔化しが利く。
「本当は別件で近衛の実家に用があったんだが、それらしい事もしてきた。詠春…君のお父さんには元気だと伝えておいたが、構わなかったか?」
「それはええよー。お父様は元気やった?」
「ああ。昔に比べれば体力が落ちたと言っていたが、あれだけ動ければ十分元気だろう」
 一度、全盛期の詠春とも戦ってみたいものだが。
 その場合、流石に剣だけでは無理か。せめて、ソードバレルくらいはないと詰められそうにもない。
「そう言えば、ウチの実家に用があったって、何やったん?」
「それは秘密だ。どうしても知りたいのなら、桜咲に聞いてみるんだな」
「せっ、ちゃん?」
 今日、桜咲はこのパーティーに来ていない。
 桜咲の事情や、近衛との確執は詠春に聞いて知っている。
 だからこそ、少しでも接点を増やしてやるべきだと思う。
 まだ幼い桜咲が、張りつめたまま生きていくのを見るのは忍びない。
 近衛と桜咲、互いに手を取り合って先に進めるのなら、絶対にそうした方が幸せだ。
 桜咲はそれを拒むだろうが、無理やりにでも事を進める価値はある。そう、手遅れになってしまう前に。
「ああ、そうだ。君の幼馴染の、桜咲刹那にね」
「………何で、知ってるん?」
 普段の近衛からは、想像もできないくらい暗い声だった。
 その雰囲気に危険なモノを感じたのか、先ほどまでメモ帳片手に聞き耳を立てていた朝倉も消えている。
「詠春から聞いた。触れてはならない事なら謝ろう。だが、できるなら、近衛の方から桜咲には話しかけてやってくれ」
「でも、せっちゃん、私が話しかけると逃げてまうんよ」
「一度拗れた友情は、そう簡単に元通りになるものではない。だが、諦めない事は、どんな場面でも重要だ。今は辛いかもしれないが、もう少し粘ってみてくれないか?」
「……うん、そやな。もう少し、頑張ってみる」
 近衛は力強く頷き、意思を固めるようにガッツポーズ。
 その微笑ましい姿に、もう一声かけようと口を開いたら、唐突に別の声が遮った。
「すいません。化粧室ってどこですか?」
「ん、ああ、そこのドアから入って、突き当たりを右だ。元々ログハウスを改装して作った店だからな。表に設置できなかったんだ」
「いえ。ではお借りします」
 少し恥ずかしそうに、大河内は指示された通りにドアを潜った。
 飲食店として、ウチのトイレの現状は確かにマズイと分かってはいるのだが、解決はなかなか難しい。
 元々あったログハウスを改築しただけだから、間取りの問題で表側にトイレを設置しようとするとほぼ建て直しになる。
 となると、地下の工房も弄らなくてはならないわけで、あれだけの剣を消してしまうのも忍びないし、かといって移せる場所が他にあるはずもない。
 まあ、元々はこんなに繁盛するなんて欠片も考えていなかったから、見通しが甘かったというのが最大の理由なのだが。
「なあなあ。ところで、衛宮先生は高畑先生と仲いいん?」
「ん、何でだ?」
「んー、理由は聞かんといて」
 近衛は頬を掻きながら苦笑した。まあ、聞かれて困る事でもないから正直に答える。
「そうだな。タカミチとはそれなりに仲がいい方だと思う。私にとって、麻帆良で最初に出来た友達なんだ」
 自然と、俺の口端も綻んでいたようだ。近衛の笑顔が、何とも優しいものになる。
「そかそか。ウチとアスナみたいな感じなんやな」
「まあ、男の友情ではそこまで仲は良くないさ」
 ルームメイトの親友と同じなんて言われたら暑苦しくて敵わない。
 しかし、そういう言葉が心地よいものである事も確かだ。
 何とも平和ボケしたものだと理解しつつも、この場所では、それが悪いことだとは思えなかった。


 それからは、近衛も厨房に入って四葉と三人でそれぞれの得意分野を担当していた。
 近衛にいくつかレシピを教えて、四葉からは逆にいくつかレシピを貰った。
 遠坂の作る本格中華とは違った、日本人好みの中華は、それはそれで興味深く、個人的にはこちらの方が好みだった。
 というか、やはり遠坂はあの兄弟子のせいで辛さに対する許容量がありすぎたに違いない。
 そんな事を考えながらのんびりと料理を出来る、幸せな午後だった。












 喫茶「アルトリア」の地下、「エミヤ」の工房には、三種類の結界がある。
 その一つは、魔力を保有する者に対する感知結界。
 その境界を、魔力を持つ魔法使いなどが通った場合、主である士郎は感知することができる。
 二つ目は、魔力を持たない一般人に対する威圧結界だ。
 それは、単純に剣の圧力に耐えきれない人間の本能が、ソレに近寄る事を本能的に避けるように仕向けるものであり、本来ならば熟練の魔法使いでも、その空間に居るだけで体力が削られる程に強力なものになっている。
 よって、単なる、何も知らない一般人がその部屋に踏み込んでしまったのならば、良くて気絶、そもそも部屋までたどり着いた時点で類稀な才能の持ち主と言えるのだ。
 そして、大河内アキラ14歳。少しばかり好奇心に従ったが為に、今人生最大の窮地に立たされていた。
 いや、実際には既に倒れこみ金縛り状態なのだが、それでも意識があるだけ異常であると言える。
 視界の端に移るのは、ぐにゃりと捻れ曲がっている無数の剣。
 打ち捨てられた廃棄場のように、忘れられた戦場のように。
 無数の剣による力場干渉は、空間さえ揺るがせ直立している剣を真っ直ぐに見せることさえない。
 そこでは、意識を保とうとする行為だけで気絶出来る程の頭痛を味わえる。
 何故自分は、意識を失わないように努力しているのか。何故私は、こんな所に来てしまったのか。
 既に時間の感覚が亡くなり、その精神に罅が入ろうとした時。
 遠く響く足音と、薄い輝きを放つ銀色の剣を最後の記憶に、アキラの精神はシャットダウンした。









「あ、あれ?」
 目が覚めたら、ベッドの上だった。それも、全く知らない部屋、知らない天井。
 混乱して飛び起きるも、それで分かるのはもう窓の外は暗いという事と、この部屋はあんまり使われてないっていう事ぐらい。
「痛っ」
 頭痛が、緩急のある波のようにアキラを襲った。
「あまり無理をしない方がいい」
 いつのまにか部屋の中にいた士郎の声がかかる。その表情は、アキラからは暗がりにあって窺がえない。
「あの、私はどうして…」
「覚えていないのか…?」
 頭痛を抑えて尋ねるアキラに、士郎は訝しげな声を返した。
「え……あっ」
 一際強い頭痛とともに、地下室での記憶がフラッシュバックした。
 そう、アキラは用を済ませ帰ろうとした時に、導かれるように地下室への扉を見つけた。
 悪いことだとは思っていたけれど、その時の自分はまるで自分ではないかのように好奇心に勝てなかった。
 進む毎に重くなる体を引き摺るようにして、頭痛に耐えながら辿り着いたその先には、無数の剣の中でも一際輝く一振りの西洋剣があった。
 女性でも振れる程細く、薄い刃に、シンプルな装飾。
 何故かアキラは、その美しい剣に触れたいと思い手を伸ばそうとするも、体は金縛りにあったように動かなくて、しかし諦める事も出来ず足掻いていて…。
 そして、いつの間にかこのベッドの上だった。
「あの、すみません。勝手に部屋に入ってしまって」
「いや、謝らなければならないとはどちらかと言うと私の方だよ。少し、そのまま寝ていてくれ。まだ頭痛がするのだろう?」
「はい…あの、何で私が倒れたか聞かないんですか?」
「あの部屋に入ったのならば当然の事だ。詳しい話は後で聞くから、少し待っていてくれ」
 そう言って士郎は部屋を出ていった。と、途端にアキラは心細いものを感じる。
 気絶した原因の体験が、アキラの心を大きく疲弊させていた。
 加えて、その時の自分が分からない、という現状も、理解不能な体験による恐怖感も、少し芯が強いくらいの女子中学生に耐えられるものではない。
 士郎が飲み物を持って帰ってくる頃には、アキラは震えていた。
「ハーブティーだ。飲むと落ち着くぞ」
 差し出されたカップに口をつけ、しばらくアキラは無言だった。
 近くに人がいる安心感と、ハーブティーの温かさで少しだけ元気も戻り、震えも止まる。
「あの、地下室は…一体何なんですか?」
「君には、3つの選択肢がある」
「え?」
「一、このまま何も知らずに帰るという選択肢。二、あの部屋の真相を知って、二度と近付かないという選択肢。三、今日の事を忘れるという選択肢だ」
「あの、」
「あの部屋…ひいては、私が何者か、という答えを知る事は、少なからず危険が付きまとう。今ならまだ、知らずに引き返せる領域だ。君は、どうする?」
 そんな事をいきなり言われても、判断なんて、いや理解さえも追いつかない。
 危険?衛宮先生の正体?引き返せる領域?
 分からない。何も分からないけれど、その選択を望まれているのなら、分からないなりに答えを出さないと―――
 という思考は、あっさりと士郎の声に否定される。
「別に、急いで答えを出す必要はない。ただ、話を聞かずに帰るというのなら、今日見た事、聞いた事は、絶対誰にも話さないと約束してくれ」
「何故、ですか?」
「なら君は、今日の事を何と話す?」
「それは…」
「君の友達に、相談されて適確な答えを返せる人なんて存在しないし、私も銃刀法違反なんて揉み消したくない。ゆっくりでいいから、自分で考える事だ。秘密を持つ事が嫌なのなら、早めに私の所に来ればいい」
「分かり、ました」
 そう返す以外に選択肢なんてなかった。
 分からない事だらけで、考えたところで、時間があったところで、結局結論は変わらないのだろうけれど。
 でも、私の為を思って猶予を与えてくれるのなら、それに甘えたいと思った。
 この人は、少し怖くて厳しいかもしれないけれど、優しい人なんだって。信じる事ができるから。
「では、送って行こう。立てるか?」
「今、何時なんですか?」
「10時頃だな。勿論夜の。パーティーは夕方には終わっていた。君が倒れた事は皆知っているから、友達には上手く説明しておいてくれ」
 貧血という事にするのが一番簡単だろうが、と言いながら、士郎はまだ力が抜けているアキラを背負った。
「あ、あの、衛宮先生!?」
「力が入らないのならこうするしかないだろう?まさか、私の家に泊めるわけにもいかないしな。あまり遅くなってもマズイから背負っていこうと思ったのだが…嫌ならば言ってくれ」
「いえ、その、突然だったから驚いただけで…」
「ふむ。ならば行こう」
 士郎はアキラの体重を感じさせない軽々しさで歩く。
「あの、重くないですか?私、背が高い方だし…」
「これぐらいで重いなどと言ったら、そいつは男じゃないな」
 その言葉に、少しだけ安心して、その広い背中に体を預けた。
 アキラにとって士郎の背中は安心出来過ぎて、自分が幼くなったかのような錯覚をしてしまう。
「先生。一つだけ、聞いてもいいですか?」
「何だ?」
 アキラは、士郎の肩に頭を置いて、耳元で尋ねた。それはまるで恋人同士がするような、幼い子供が父親に甘えるような仕草だったけれど、彼女は気づかない。
「先生は、一体何者なんですか?」
 その質問に、士郎は何故かくくっと笑って、一言だけ答える。
「ああ、俺は――」
 魔法使いなんだ、と。















ちょびっと次回予告。

木乃香「アスナー。やっぱり高畑先生と衛宮先生は仲いいんやって。よくお店にも来るらしいし」
明日菜「そっか。なら思い切ってやってみようかな…」
木乃香「でもアスナ、料理できひんやろ?」
明日菜「うっ、何とかなるわよ!…多分」
木乃香「ほな、頑張ってな。私は応援しとるえ」

(拍手)
 
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