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屈折領域・裏鏡


一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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英雄は彼方へ消える プロローグ


「彼女の手記」
 この日記も、随分と長いものになった。
 いや、日記というより覚書、記録書のようなものかもしれない。

 あれから長い月日が経過している。
 あの頃の事を忘れたくなかった私は、覚えている限りの事をこの本に書き記した。
 そう、本。これは本として出版される事になった。
 魔法世界には記録書として。こちらの世界では架空の物語として。

 いや、魔法世界においても架空の物語としてしか捉えられないかもしれない。
 それぐらいに荒唐無稽で、そしてその事実を証明する事なんて誰にも出来ないから。
 逆に、私の経験と私の記憶が、ただの妄想の産物だと断定出来る要素の方が多いのかもしれない。

 彼との出会いも。消えた歴史も。あの冒険の日々も。
 私が抱いた願いも希望も想いも、何もかも。
 幻となり、世界の狭間に落ち込んでしまったのは事実。

 それでも私は、これが真実だと胸を張ろう。
 この世界の誰もが忘れてしまっているのだとしても。この世界の誰もが否定しても。
 少なくとも私が覚えている限り、彼の存在は消えない。
 妄想なんかじゃないし、幻になったのだとしても、確かな輪郭を保ち続ける。

 でも、いずれ私も忘れてしまうだろう。
 彼の顔も声も仕草も、もう随分と薄れてしまった。この日記を読み返して、ようやく思い出す事も多い。
 今こうして私が記憶している事さえ奇跡のような幸運だし、そして私の記憶が事実、真実の全てを網羅しているとも思えない。
 或いは、こうして書き記した物理的なものでさえも、修正されていくのかもしれない。

 だから、少しでも矛盾を大きくするために、私は書いて、そしてこれを公表する事にした。
 これから綴るのは、消えてしまった歴史と、去っていった英雄の話。
 世界を救った英雄・スプリングフィールドの影で、裏で、世界を守り続けた一人の男の話を語ろう。

 そう、まずは。
 私と彼の出会いから。






◇ ◆ ◇ ◆



 …………………………。


◇ ◆ ◇ ◆






 そうして、私は死んだ。
 死んだというのは正しい表現ではないかもしれない。
 時間転移の影響で修正され、上書きされる前の世界で、私という存在が消えてしまったというだけ。

 それがどういう理論で、どういう理屈の上に成り立っているのか、残念ながら私の貧相な頭脳では伝えられない。
 理解なんて出来ないし、したところで何の解決にもならないんだろう。
 この記憶が事実であり、真実であるという証明は、その実彼女から説明された私の能力のみに起因するものだ。
 未だに実感がない私の能力なんてものはアテにならないし、つまりはこの記憶も不確かなものではある。
 魔法という確かな超常に出会い、そして幾度か巻き込まれ、自分なりにその付き合い方を固めたあの頃の私だったからこそ、素直に受け入れられたのだろうし。
 普通なら、彼と魔法に出会う前の私なら、不思議な夢だった、で片付けてしまうところだったろう。

 つまりは、私が死んだ記憶。私という存在が消去されたらしい記憶が、私にはある。
 加えて言うのなら、そうして消えてしまう私がそれまで生きてきた記憶と、今こうして連続している“私”の記憶。
 その二つが、私には同時に存在するようになった。
 産まれてから消えるまで。一生の記憶が全て、二重化される。
 正直気分のいいものじゃなかったし、かなり混乱した。意識すればするほどに記憶は明確になって、とても夢には思えなくなる。
 どちらの記憶が、どちらの世界のものなのか、その折り合いを付けるのにも苦労していた。

 具体的に、“いつ”からその記憶が私に存在したのか、それはもう定かじゃない。
 もしかしたら毎夜毎夜夢で見て、けれどそれが習慣化して……あの運命の日まで、ずっとデジャヴとして忘れていただけかもしれない。
 少なくとも、私がその記憶を確かなものだと確信し、把握したのは学園祭最終日だった。
 正確には、消された“私”が“私”自身だという感覚になった、というべきだったかもしれない。
 多分、その瞬間には世界が書き換わる要因があったはずなのだけれど、それが何かという事は、結局今でも分からない。

 とは言え重要なのは、大きな違いがあった最終日の記憶だけだ。そしてたった一日分だけだったというのは幸運だったと思う。
 半日後には、状況を理解していないなりに、私は行動を取る事ができた。
 つまり。私が消えず、そして超に彼が消されない未来を掴むために。










「と、言うわけなんだけど」

 混乱している頭で、自分自身何を言っているのか分からなくなりつつありながらも、私は告げた。
 この場にいるのは私、刹那さん、木乃香、そして高畑先生。

「士郎が麻帆良を制圧し、魔法認識の儀式が成功した後に、超君が士郎を消す――有り得ない話じゃないのが怖いところだね」
「でも、士郎さんが何の対策も取らないなんてあり得ません」
「どうかな。この話が本当だとしたら、士郎は一度超君を裏切っているはずだよ。士郎が時間改変を許容できるはずがない。
 そして最初に裏切ったという負い目があるのなら、分からない話じゃない。過去にもあったことだしね」
「過去にも……?」
「そう。もしも士郎がそうして消される事でしか超君が救われないのなら、士郎はまた自ら消えようとするかもしれない」

 士郎さんの過去を知っている風の高畑先生に、私と刹那さんが抱いた感情は同じものだったように思う。
 ただ、木乃香は何を考えているのかよく分からなかった。

「せっちゃん、今重要なのはそこじゃないえ。今は、どうやって士郎さんを捕まえるか、やろ?」
「う、でもお嬢様……あんな別れ方をしてすぐ捕まえるというのはどうかと……」
「あんな、別れ方?」

 あんな別れ方というのなら絶対刹那さんに負けない自信はある。
 告白してキスして逃げ出してとか、目も当てられない。というか死にたい。
 どうせ無かった事になるんならそこから……いやいやでもやっぱりその、貴重な経験でもあるわけで……とか悶々としつつ、疑問だけは口から出る。

「あああの、それは今は関係なくてですね、」
「そうだね。士郎を捕まえる、と言っても、アキラ君の記憶だと僕も負けてるんだろ? その分じゃ学園長も倒されるんだろうし、厳しいね」

 高畑先生の言うところでは、現時点において学園長先生の行方が掴めなくなっているらしい。
 ふっといなくなる事は多い学園長先生らしいけど、この非常時で全く連絡が取れず、指示もないのは流石におかしい。
 何故か赤くなっている刹那さんは取り敢えず置いておいて、私たちは具体策を話し合う事になった。

「でも、本当に信じてくれるんですか?」
「ん、何がだい?」
「私の記憶の事です。荒唐無稽な話だし、時間移動だって……」
「確かに、魔法使いから見ても不思議な話ではあるけどね。それ以上の不思議を、この目で確認しているから。
 士郎が辿ってきた人生を考えれば、こんな展開も有り得ない話ではないかな、とは感じているよ」

 そんな事を言われては、余計に士郎さんの過去というのが気になって仕方がない。
 それはやはり刹那さんも同じであるようで、そわそわと落ち着かなかった。
 ……微妙に、木乃香は何か知っているような気もしたけれど、相変わらず顔には出ない。

「現実的には、士郎さんと戦える戦闘力は高畑先生だけです。直接の捕縛は先生に任せるしかないと思いますが」
「とは言え、何の策もなしに戦ったって意味はないだろう? それに、士郎を捕まえるっていうなら、理由が必要だ」
「理由、ですか?」
「うん。士郎の意志に反してこの街に留めて置くというのなら、理由が必要だろう?」

 そこには、暗に君たちの個人的な理由じゃダメだ、という意味が込められている気がした。
 刹那さんと木乃香も引き止めたし、私も知らず引き止めるような行動をしてしまっていたのだろう。
 けれど、私とのキスも、仮契約も、士郎さんがここに留まりたいと思うには弱くて、足りなくて。

 力で解決できないのなら、心に訴えるしかない。
 それはとっくに失敗しているのに、けれどもうそれに縋るしかなかった。

 ただ。もしかしたら高畑先生は、対外的な問題を指摘しただけだったのかもしれない。
 士郎さんが望んだとしても、周りが許さなければ結局は同じ事になる。
 逆に、もっと困った結果に落ち着く可能性だってあるのだから。

「取り敢えず、士郎さんの説得は後回しにして超りんを止めた方がええんとちゃう?」

 木乃香の案は現実的だった。
 このままじゃ超を捕縛したところで士郎さんは逃げてしまうかもしれないけど、死ぬわけじゃないならいつか会える。
 その可能性は残る。なら、少なくとも最悪の事態を回避するために行動するのが現実的だ。
 最高の結果よりも、最悪の回避を。
 私も消えずに済むし、士郎さんだって生き残る。諸手を上げて賛成できる方針だ。その、はずなのに。

「……納得いかん?」
「え?」
「そんな顔、しとるよ」
「………………ううん。それでいいと思う。二人も、それでいいですか?」

 納得がいかないというか。何か、見落としている気がしていた。
 それが何かは分からなかったけれど。

「いいと思うよ。他に手もない」
「元より私は剣を示せれば構いませんから」

 消極的肯定という感じだったけど、これで方針は固まった。
 ひとまず超を探す、という事でそれぞれ動き出す。
 それが、もう取り返しがつかない程に遅すぎたのだと知らずに。





◇ ◆ ◇ ◆






 どちらにせよ、超を捕まえようとするのなら士郎さんが邪魔をしてくるはずだった。
 だからこそ、学園の魔法先生たちと士郎さんが戦っている隙に、その後士郎さんを消そうとするであろう超を捕まえる。 
 そういう作戦で、だからこそ私たちは誰にも知られぬよう、影に潜む必要があった。
 士郎さんに気付かれず、そして超にも気付かれず、当然学園側に見つかるわけにはいかない。
 難しい事ではあったけれど、高畑先生はそういう難易度にも慣れているらしく、特に動じた様子はなかった。
 刹那さんも落ち着いていて、さすがはプロだな、とか勝手な事を考えたりもする。

「おかしいな」
「何がですか?」
「超君の戦力が侵攻を開始して、その上学園側も迎撃に出てるのに士郎が出てこないっていう現状がね」
「それは……生徒たちもいっぱい参加しているからなんじゃないですか? 士郎さんも影で戦ってるとか」
「その可能性がないとは言えないけど……総力戦の様相を見せた戦場で、主戦力を隠す必要なんてないさ。
 士郎なら狙撃だけで魔法使いを全員落とせる。葛葉先生あたりは厳しいかもしれないが……それでも問題はない。
 姿を現す事を避ける段階じゃないはずだ。となれば……」

 嫌な予感がする、と言った高畑先生は、私に刹那さんたちと連絡を取るように言った。

「計画変更だよ。もしかしたら士郎は既に、」

 と、言い終わる前に、状況が変わった。
 空に浮かび上がるホログラム。何をどうやっているのかは分からないけど、超が姿を現した。

「苦戦しているようネ、魔法使いの諸君!」

 特殊弾に当たると即失格。
 雪広グループ主催、という名目のイベントにおけるルール変更のお知らせ……としか私は考えなかったけれど、高畑先生によれば違うらしい。

「おそらく、学園側の主戦力はもう残っていないんだろう。あの銃弾に当たったか……ともあれ、超君自身が表に出てきてもよくなったという事だ。
 儀式完遂も近いはず。僕が見当たらないから諦めたか、士郎が僕を倒そうと探している可能性もある。
 アキラ君、ひとまず刹那君たちを合流するんだ」

 危険だから、という高畑先生の表情に、私はまた違和感を感じる。
 士郎さんを捕まえる前に超を捕まえようと言われたときと同じ感覚。何故か、胸騒ぎがおさまらない。

「それだけですか?」
「……どういう意味だい?」
「さっき。超さんが出てくる前に、何か言いかけましたよね。何を言おうとしたんですか?」
「アキラ君、今はそれどころじゃ、」
「答えて下さい。士郎さんは……もう、いないんですか?」

 高畑先生が心底驚いたような顔をした。初めてみる表情でもある。

「何故、そう思うんだい?」
「私は、士郎さんのパートナーですから」

 取り出したカード。
 使い方を教わって、アーティファクトを使ってみて。別荘を出てから、一度だけ試してみたのだ。テレパティア、と。

「そう、か」
「本当、なんですね? 念話が通じないのは、効果範囲外だから……既に、士郎さんはこの街にいない」
「……………………僕だって、分からないよ。そうかもしれない。そう考えるだけで」

 本当に分からないのだと思った。多分、本当につい先ほどその可能性について考えたんだって。
 でも、なら、だからこそそれは有り得ない可能性だったはずなのだ。
 士郎さんは、この戦いのためにいろいろなものを犠牲にしたはずだ。
 成功したにしろ失敗したにしろ、もう麻帆良に残る事は難しくなるくらいに。

 それだけのものを懸けて、なのに何事もなく消えてしまうのは、あまりにらしくない。
 なら、或いは既に超の使命が完遂されたという事なのかもしれなかった。
 だからこそ、ああして大々的に表に出てきたんじゃないか。もう超自身が捕まったとしても儀式は止まれないところまで来ているなら。
 勝利を確信し、果たすべき使命を果たし終えたからこそ。

「なら……! もし士郎さんがもういないなら、どうすれば」
「どちらにせよやることは変わらないよ。何か知っているとしたら超君だからね。士郎の行方を探すにも、儀式を止めるにも」

 確かに、それしかない。
 でも私は不安だった。結局、私の記憶が妄想以下の電波で、何か重大な間違いを犯してしまったんじゃないかって。
 自分の記憶に確信はあっても、自信なんてない。
 良かれと思った行動が裏目に出るかもしれない恐怖は、いつでもある。
 普段は意識もしない他愛のない事だけど。それが自分の、周りの運命さえ決定づけると理解したから。
 ただとにかく、怖かった。

 だから。

「アキラ君。君はもう下がっていなさい。想いだけでは意志を通す事なんて出来ない……今の君では、足手まといだ」
「分かり……ました」

 その最後通告に、ほっとした自分が、きっと存在したんだと思う。
 もう頑張らなくていい……自分で決めなくてもいいんだって。
 気づかなければ何てことのない行動でも、一度気づいてしまえば意味は一変してしまう。
 それが、責任の押し付けでしかなくて、ただの逃げだということに私は気づいていなかった。

 ただ、気づいていたところでどうしようもなかったのは事実だ。
 私が無力なのは事実で、それがどんな種類のものであれ、力がなくちゃ意志を通せない場面なんていくらでもある。
 私はこれまで、そこまで強い意志を持っていなかったから、漠然と日々を過ごすだけでよかった。
 自分の力で届く範囲でしか願いを持たなかった。

 でも、これからは。自分の分を超えた願いを持ってしまった今からは。
 願いを叶えられるだけの力を、手に入れなきゃならないのだと。それだけはきっと、漠然と気づいていた。




◇ ◆ ◇ ◆






 そうして。結局超を追い詰めたのはネギ先生だった。
 時間という要素を自在に操る相手と同じ次元に到達する為には、同じ力を持つ以外にない。
 高畑先生も超と戦ったようだけれど、結果的には敗けた。私はそれだけしか知らない。
 刹那さんも同じく。そして木乃香は私と同じで戦う力は持っていない。

 残ったのがネギ先生だけだった、とは言わない。確かに彼は頑張って、その上で結果を出した。
 とても羨ましい力で。私にその力があれば、と思わずにはいられない力で。
 魔法を世界に公開するという儀式は、今日一日だけ世界が平和でありますように、という願いへと変わり。
 超は捕縛されている風でもなく、家系図なんてものを持ち出して楽しそうに笑っている。
 一応は敵対関係がまだ続いているようなのに、じゃれあうように騒ぐクラスメイトたちが、私には信じられなかった。

「超」

 それを、許せるわけがない。思わず呼び捨てにしてしまうくらいには、私は怒っていた。
 キレる、というのはこういう状態を指すのかもしれない。
 自分で自分を抑えられなかった。

「……何だい、大河内サン」

 私の行動が、空気の読めてない、私の一番嫌いな類の行動だということは分かっていた。
 周りの皆が何事かと凝視しているのが分かる。でも止められないし、止めたくもなかった。

「何で、アナタは笑ってられるの? あれだけの事をして……!」

 超は悪だ。私はそう思う。
 そこにどんな大義名分があったって、許される事じゃない。

「……嬉しいからに、決まっているヨ」
「……! 超っ!」

 何故だか、救われたような透きとった笑みを超は見せる。
 けれどそんなもの、私にとっては苛立ちの理由にしかならなくて。思わず掴みかかろうとした。

「ちょ、ちょっと何やってるんですか!」

 近くにいたネギ先生に止められる。それで少しだけ、私は冷静になれた。

「――っ。士郎さんは、どこ?」
「……キミの言いたい事は全て分かっているつもりヨ。私が犯人で間違いナイ」

 士郎さんがこの場に、この街にいない理由が、原因が超にあるのだと。
 認めた。その事実に、ネギ先生に止められて冷静になった部分が熱くなる。

「でもワタシは、この行動になんら恥じる事はナイ。これはワタシの願いでもあるし、彼の願いでもある。そしてあの人も……。
 キミはワタシが悪だと責めるのだろうが、ワタシにこの行動を決意させたのは他ならぬキミ自身ヨ」
「私、自身……?」

 超が何を言っているのか、さっぱり分からない。
 私が士郎さんの消滅を、この街からの追放なんて願うわけがないのに。
 それとも、私の行動の何かが、間接的にでも超と関わりがあったんだろうか。

「この目で見ても信じられぬ奇跡だが、今は幸運に感謝しなければネ。今のキミは何も理解していないけれど、安心するとイイヨ。
 いずれ理解る時が来る。願わくば。“その時”に、後悔だけはしないように、ネ」

 ふわり、超が飛び上がる。

「待って下さい超さん!」

 ネギ先生が超を制止するのを見て、ようやく超がこの場を去ろうと……逃げようとしているのだと気づく。

「いや、待たないよネギ坊主。これ以上ここに居ては大河内サンと……木乃香に捕まりそうだからネ」

 気づけば、木乃香がじりじりと超に近づこうとしていた。
 気づかれた、という顔をして慌てて何かを後ろに隠す。

「私の望みは達せられた。もうここに留まる利はない……私は彼の言うとおり、私の戦場に戻るとするヨ」
 
 超が宙に浮かび、世界樹が呼応して輝き始めた。
 もう止められないのだと何となく悟り……せめて、何か超に残したいと、漠然と考える。

 このまま消えるなんてあまりにズルイ。
 自分のやりたい事だけやって、他人の願いなんて考えてない。
 だから、産まれて初めて意地悪がしたくなったのかもしれない。
 私はこんなに苦しいのに。晴れやかに、涙さえ浮かべて希望に満ちた目をした超が、あまりに羨ましかったから。

 ネギ先生に、四葉さんに、葉加瀬に、茶々丸さんに、エヴァンジェリンさんに、古に、それぞれの言葉で別れを告げる超へ。
 本当にどうかしていたけれど。一言、傷を残してやろうと思って呼び止めた。

「超っ!」

 なのに。きっと、怒りに染まった醜い顔をしていたであろう私に、超は優しげに微笑んで。

『ありがとう』

 声なき声で、そう呟いた。
 カッと光が溢れる。後には何も残っていなかった。
 風が吹き、私は肌寒さに気づく。既に夜も終わり、朝日が昇ろうとしていた。
 その寒さが、まだうっすらと世界樹の光が残る幻想的な光景から、私を現実に引き戻した。

 そう、とても……その朝日は綺麗で。
 私は直前まで自分を突き動かしていた醜い感情に気づいて一人沈んだ。
 同時に、超が分からなくなる。
 最後に見えたあの表情は、とても悪だとは思えなかった。
 彼女は彼女なりの正義のために、誰かのために戦ったんだって、素直に信じられるような。

 我ながら信じやすくて、騙されやすそうだって思ったけど、一度感じてしまったものはどうしようもなかった。
 私はもう、超だけをただ恨む事はできない。
 自分でも何が何だか分からないまま、唐突に書き換えられたように超に対する印象が変わってしまった。
 士郎さんに何をしたのか、それは気になるし許せないけれど、それでも。

「アキラ」

 木乃香が、気がつけば隣にいた。
 鎮痛な面持ちで、沈んだ声をかけてくる。

「ウチ、せっちゃんに状況説明してくる。アキラは高畑先生に頼んでええ?」
「うん……」
「あんま気を落とさんといてね。士郎さんならきっと大丈夫や」
「うん……そうだね」

 不思議と、落ち込んでいたのは士郎さんがこの街にいない事じゃなくて、先ほどへの自分に対する自己嫌悪だけだった。
 私は、心のどこかで士郎さんを心配していない。
 きっと、木乃香が思うよりずっと。私は、士郎さんの強さを信じている。
 彼が戦っているところなんて数える程、僅かな瞬間しか見ていないはずなのに。理由もなく、勝手に信じきっている。
 今、超を認めてしまったように。それが当然で、当たり前の真実なのだと、その時の私は感じていた。




◇ ◆ ◇ ◆





 木乃香と別れて高畑先生を探す。
 先ほどから続々と未来へ送られていた人たちが帰って来た……というのもおかしいけれど、転移してきている。
 近くを探せば見つかるはずだ、と探し始めたのに中々見つからない。

 祭りの後の賑やかさで、人の声なんて判別できない。
 そんな中、ドンッという音が響き、地震のように地面が揺れた。
 震源地を探すと、高畑先生が拳を地面に打ち付けた状態で打ちひしがれている。
 一瞬泣いているのかと思ってしまうぐらいに、暗い。地面に残るクレーターが、先ほどの音の原因を教えてくれていた。

 声をかけるのは躊躇われた。
 だって、男の人があんなに沈んでいるのを初めて見たし、どういう言葉を選べばいいのかなんて分からなかったから。
 状況の報告は、後回しでも大丈夫だろう。何一つ分かった事はないのだし、沈んでいる相手に更に徒労感を与えても仕方ない。

 そう考えて、静かにその場を離れようとしたのだけれど。

「くそっ、そういう事か……ッ。アーチャー……!」

 吐き捨てるような言葉に、私は足を止めた。
 何故か、その、“アーチャー”という単語がとても気になって。

「アーチャーって、誰ですか?」

 私は、気遣いもなく声に出してしまっていた。

















 そうして、長い夜が明けて、各々が疲れた体を休め、目が覚めた頃に。
 人知れず、郵便受けに手紙が届く。
 宛名は桜咲刹那様。
 そして差出人は…………衛宮士郎、とあった。
(拍手)
 
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初めまして。ぐりこです。
だいぶ前から読ませていただいていますが、初めてコメントさせていただきます。

ストーリーがとても斬新だと読んでいて思います。
よくある最強ものでありながら、一部の人からしか信頼を得ていない部分などが最強ものにありがちな稚拙さを感じさせなくて、とても面白いと感じました。

2011.05.29 | URL | ぐりこ #- [ 編集 ]

盛り上がってきた。実に良い

アキラルートに1票

2011.05.29 | URL | こしを #F4mscU5. [ 編集 ]

アキラルートに1票
拍手し忘れました、やります、しかし、第一部のエピローグがブレイブルーのコンティニュアルシフトの似てるよう気がする。。。。

2011.05.29 | URL | 毒ダム氏 #plZgxxko [ 編集 ]

投票は

拍手のみ受け付けてます。

2011.05.29 | URL | 作者 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

今回から新シリーズとなり、胸があつくなったのは私だけではないはず!!
士郎・・・お前は一体何処に行ったんだ?
お前を心配してくれている人がいるんだぞ、そう読者・・・じゃなくてアキラとかw
次回が楽しみでたまりません、これからも頑張ってくださいね!!


PS
質問なのですが、夢破れし英雄のプロローグ 「とある英雄の最後と新たなる旅立ち」の凍結は解除されるのでしょうか?
第1話からバックすれば見れたので、読むのには問題なかったのですが、凍結してたので気になってしまい・・・
あ、別に作者様の考えがあるのでしたら問題はありませんので、この意見も差しさわりがあるようでしたら消してくださっても構いません。
何か長々と失礼しました。

2011.05.30 | URL | りゅーしん #wgQcaDnY [ 編集 ]

つづき楽しみに待ってます!

2014.06.08 | URL | さくら #- [ 編集 ]


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