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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第13話


「明石教授の訪問」



『それでさあ、ネギ君は可愛いけど、やっぱり先生としてはちょっち心配かなぁって』
「はは、まだ10歳だからね。仕方ないよ」
 久しぶりの娘からの電話。再来週の休日にはこっちに泊まると言っていたが、早速今日のニュースを報告したくなったらしい。
 もっとも、大学と中学の差はあっても、ネギ君がこの学園にやってくる事は1週間ほど前から知っていた。
 何しろ大戦の英雄・サウザンドマスターの息子だ。有名人どころの話ではない。
 誰しも、彼の成長を望み、影ながら支える覚悟をしているだろう。
 教師の試練というのは驚いたけど、ならば娘の担任になるのでは、という予感もあった。
 学園長の性格を考えれば、あのクラス程こちら側の人間が在籍しているクラスもない事だし、英雄の息子の試練としては適当だと考えるのはある意味自明の理でもある。
『ああ、それと、新しく副担任の先生も来たんだけど、その人が気前よくてさ。今度自分の店でクラスの宴会開いてもいいって言ってくれたんだ』
「お店を持っているのか?」
 そんな教師がいたのかと、記憶を探してみるが判然としない。
 あのクラスの、しかもネギ君のサポートという役職につくのなら、まず確実にこちら側の人間だと思う。
 タカミチ君以外にあのクラスを纏められる人材なんてそうそう思いつかないけど…。
『うん、アルトリアって喫茶店』
「っ!!」
 その名前は、麻帆良の魔法関係者ならば誰しも知っている。
 突然現れ、一夜にして我々を圧倒した魔法剣士の店。
 経歴は不明、その真の実力も不明。学園長は取り込むという選択をとったが、実の所それ以外の選択肢がなかったのだろう。
 それを理解はできるし、タカミチ君に聞く限りではそう悪い人間というわけではないそうだ。
 だが、感情のしこりは残る。
 彼は、衛宮士郎はその後特に我々にアプローチをしてこなかった。
 個人的な謝罪はあったというが、魔法先生全体への謝罪はない。
 ガンドルフィーニ君などは特に憤り、彼を危険視していると聞く。
 学園最高の要注意人物が娘の副担任。いくら学園長の采配とは言え、不安は尽きない。
『どうしたの?』
「いや、知った店だったからさ。結構有名なんだよ。隠れた名店だってね」
 それは事実でもあった。新聞部の広告が効いたのだろうけど、一般人の客入りも悪くないと言うし、何より刀子先生が『なかなか美味しい』なんて言うのだから実際味は悪くないのだろう。
『へー、おとーさんも行った事あるの?』
「いや、中々忙しくてね。行ってみたいとは思ってるんだけど」
 しかし、もう行ってみたいでは済まないな。
 愛する娘に害がないか、この目で見極めないといけない。
 親馬鹿だと笑われるかもしれないけれど、それが父親の務めであり、母親がいない祐奈の為にできる事なのだから。





















 結果的に、ネギがウチに泊まるなんて事にはならなかった。
 いろいろと騒動はあったようだが、とりあえず神楽坂と近衛の部屋に泊めてもらえる事にはなったのだ。
 まあ、10歳とはいえ問題がないとは言えないだろうが、正直ウチに泊めるわけにもいかなかったから助かった。
 初日に起こった問題は、ひとまず顕在化しない程度には治まっているし、何より俺はタカミチとの約束がある為神楽坂に関与する事はできない。
 もしも関わるとしたら、命や精神に関わる程の大事か、神楽坂が自分から飛び込んできた場合のみ。
 となると、そう簡単にはネギと神楽坂が起す騒動に手は出せなかったのだが、流石にコレは堪忍袋の緒が切れた。
「ネギ。お前は自分がした事を分かっているか?」
「ハイ、すいません…」
 ホレ薬。人の心、特に異性の感情のベクトルを強制的に使用者への好意に変えてしまう魔性の薬は、魔法界でも製造は禁止されているし、その販売も罪となる。
「神楽坂もだ。そんなモノを不用意に人に飲ませるな」
「でもアレはネギが…」
「確かに、罪の所在はネギにある。本来ならば、魔法界の法に則り、ネギはオコジョ刑3年というところなのだが…」
「さ、3年っ!?」
「何だ、そんな事も知らずにホレ薬なんてモノを作ったのか?」
「うぅぅ」
 全く、軽率にも程がある。やはりまだまだ子供か。これならば、魔法バレの方が余程いいというものだ。
「あ、あの、流石にそれは酷いんじゃないでしょうか。ほら、私も悪かったことですし」
「この話は私で揉み消す。上には報告しないからネギが実刑に問われることはない。幸い、効果は数時間程度のものだったしな」
「あ、ありがとうござ―」
「勘違いしないでもらいたいのは、それでネギの罪が消えるわけではないという事だ。今回はまだ大目に見るが、もしも次何か起こったら…」
「は、ハイッ!もうしません!」
「ならばいい」
 ちなみにココは屋上だ。施錠の上に防音結界が張ってあるのでどんなに大声で説教してもOK。
 こういう事は早いうちに叱り付けておかないと後々に響く。放課後という事も幸いして、現行犯逮捕してそのまま連れてきたというわけだ。

「あの、そう言えば衛宮先生も魔法使いなんですか?」
 神楽坂が躊躇いがちに尋ねてきた。まあ、魔法界とかホレ薬を知っていたりとか、バレない方がおかしいというものだが。
「俺は、厳密には魔法使いではない。こちら側の人間ではあるがな」
「??どういう事ですか?」
 見事にハテナマークが浮かんだ顔をしてくれる。これは一種の才能ではないだろうか。
「事情は知っているが、魔法は使えないという事だ」
「あ、そんな人もいるんだ」
「一応言っておくが、ネギの正体その他、魔法に関することは全て誰にも喋るんじゃないぞ。広がれば、しかるべき処置をしなくてはならなくなる」
「しかるべき処置、ですか…?」
「まあ、神楽坂が喋らなければ問題はない。それがネギと、何より神楽坂の為だ」
 言外の圧力を感じたのか、神楽坂が縮こまる。
 どうにも最初の授業以来、神楽坂には苦手にされつつあるようだが、タカミチとの約束を考えるとそちらの方が好都合でもある。
「では解散としよう。壊れた図書室の扉は私の方で直しておくから、二人はもう帰るといい」
「あ、僕も手伝います」
 ネギはそう言ってくれるが、あまり俺の魔術を見せたくもない。
「いや、ネギは明日の授業の準備もあるだろう?話も長引いてしまったし、早めに帰るといい。自分の用事で、仕事を遅らせることはないようにな」
「そうですね。では、お願いします、衛宮さん」
 ペコリと礼をして、二人は早足で帰って行く。
 やれやれと思いながらも、扉の修理をするべく俺も階段を降りて行った。













 今夜お邪魔してもいいか。そんな旨の連絡が、タカミチ経由で入ってきた。
 相手は麻帆大教授の明石先生。最初の戦闘で剣檻に閉じ込めた相手の一人だ。
 正直気が重かったが、だからと言って無碍に断るわけにもいかない相手だ。
 結局了承して、神楽坂が壊したドアは応急処置だけを施し帰宅することになった。

 俺の店「アルトリア」に、明石教授は時間通りにやってくる。
「こんばんは、衛宮君。いや、今はもう衛宮先生か」
「いや、普通でいいぞ明石教授。私にもまだ、教師になったなんて感覚はないからな」
 俺としては、相手がどんな思惑を持っているにしろ、いい加減友好的な関係を築きたい。
 ガンドルフィーニのように常に眼光鋭く気張られると、ついついこちらも返してしまうが、明石教授は表面上敵意を見せているわけでもない。自然とこちらの対応も柔らかくなる。
「それで、今日はどういった用件だろうか?」
「特に大した用じゃないんだ。ほら、娘が君の担当するクラスに居るだろう?挨拶をしておきたくてね」
 あくまでにこやかに、友好的な態度でありつつも、そこには何らかの激情を感じた。
 一番はっきりと強い意志を表しているのはその目だ。
 何かを守る決意と、その為の犠牲を決意した者にやどる意思の炎。
 俺は、何度もそんな瞳をしたヤツと殺しあったことがあるから、分かる。分かってしまった。
「それはどうもご丁寧に。いや、本来なら私から伺うべきだったな」
「いやいや、これは僕の勝手でやっている事だから、君が気にする必要はない」
 頭を下げた俺に対して、明石教授は割りと慌てて取り繕った。
「それよりどうかな、娘の様子は」
「まだ二日。それ程会話した事があるわけではないし、第一印象になるが、元気ないい子だと思う」
「そうか。うん、僕にとっても、裕奈は自慢の娘でね」
 途端に親の顔になる。そこで、俺はさっき感じた意志が何かを理解した。
 俺には縁遠い親の愛。子を持たない俺が、それを理解できることなど生涯ないだろうが、それでもその深さだけは知っている。
「そうだ、いい茶葉が入ったんだ。飲んでみないか?」
「いいのかな?」
「ああ。友好の印に」
 テーブルから離れ、カウンターに紅茶を淹れに行く。
 昨日今日と使っていなかった調理器具たちだが、手入れはかかしていない。
 二人分の紅茶を淹れて、明石教授の待つテーブル席に戻った。
「いい、香りだね」
「この店でも自慢の茶葉なんだ」
 もっとも、メニューには存在しない。特別な客のみに振舞う隠れメニューといったところだ。
 タカミチは紅茶党じゃなくてコーヒー党だから、こういった茶葉を振舞う機会はない。
 味が分かる人ならいいのだが。
「うん、美味しいね」
「それは良かった」
 そう言ってもらえなければ、封を切った甲斐がないというものだ。
「一つ、聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
「構わない」
「では。君には、この学園に来た『本当の目的』があるのかな?」
 その質問に、俺は明石教授を解析した。
 あまりにもあからさまな質問であり、そんなものは嘘をつけば終わりだ。
 だが、それでも明石教授が俺に質問をしたというのは、何らかの理由があるはず。
 案の定、彼のスーツの右ポケットに魔道具があった。
 こちらのアイテムは、解析しても俺には理解できない。だが、かすかに読み取れる構成情報と、現状を重ね合わせるに、あれは恐らく嘘発見器のようなものだろう。
 この推論が当たっているのなら、正直に答えるのが吉だ。労せずして信用を得ることができる。
「いいや。目的があるのはこの学園ではないからな」
 そう、目的があるとすれば、それは元の世界に戻る事だ。
 ここは居心地が良すぎて、安心できてしまう。それが、俺には苦痛でしかない。
「なら、どこに目的があるのかな?」
「さて、どこにあるのだか。もしかしたら、存在しないのかもしれない」
 俺の魔術特性では、宝石剣を作れても、魔法が使えるわけではない。
 宝石剣にしても、剣を使っているはずなのに、何故かできる事は空間転移だ。
 仮にこの体が宝石剣の本当の性能を引き出すことができたとしても、宝石剣単体では元の世界に帰ることなどできやしない。
 時々、唐突に不安に襲われることがある。
 このまま、こちらの世界で自分の意義を見つけてしまうのではないかと。
 元の世界を捨てて、暖か過ぎるこの世界で、一人幸せを見つけてしまうのではないかと。
 だから。
「強いて言葉にするのなら、目的を持たない事が目的なのかもしれない」
 いずれ、この学園への恩を返し終わったのなら、俺はこの楽園を去るだろう。
 だが、その時に躊躇ってしまう事がないように、この学園に目的は残さない。
「その割には、君は中々自発的に動いているように見える」
 確かに、そうだ。店を開いて、友人を作り、今では教師になっている。
「矛盾しているんだが…どちらも本心なんだ。この学園には恩がある。その恩は最低限返したいが、あまり大きく関わりたくはない」
「なら何故教師に?」
「それは、学園長の陰謀だよ。誰か代わりが居るのなら、すぐにでも変わって欲しいくらいだ」
 明石教授が渋い顔をした。
「衛宮君。それではダメだ。教師は生徒を導かなくてはならない。そもそもその意思がない者に、何かを教えることが出来るはずがないだろう」
 虎柄の姉を思い出す。
 あの人は確かに滅茶苦茶だったけど、それでもやっぱり教師であり、生徒に好かれる先生だったんだ。
 あの人と一緒に馬鹿をやりながら育った俺が、こんな事ではいけない。
 本意に沿わない仕事だとしても、手を抜くのは信条に反する。
「すまない、私が全面的に悪かった。確かにこんな事では、子供を導く事なんてできない」
「いや、分かってくれればいいんだよ」
「だが」
 だからと言って、態度が変わるかと問われると、そういうわけでもない。
「やはり、私には教師たる資格がないように思う。おそらく、近いうちに辞任する事になるだろう」
 明石教授は、しばらく反芻するように沈黙した後、その理由を尋ねた。
「理由を、聞いてもいいかな?」
「私の手は血に濡れ過ぎているし、何より…いや、貴方がわざわざ私を訪ねてきたのが理由だよ」
「いや、そんな事は、ない」
 あからさまな動揺だった。明石自身も、理解した上での来訪だったのだろう。
 つまる所、衛宮士郎は信用できない。
 それが学園にある根底の考え方であり、トップや一部の親しい者を除けば総意とも言える。
 だからこそ、その真実を明石自身確かめようとしたのだ。
 だが、俺自身疑念を晴らし、信用されるような行動・態度を取らなかった。
 そこにいかなる理由があろうとも、そもそも行動に移せないのならば結果は変わらない。
「それに、やはり私にはしがない喫茶店のマスターぐらいが性に合っているようだ」
 そう言って、少しだけ笑った。場を和ませようと思ったわけじゃない。ただ、自然に笑えてきてしまったのだ。
 喫茶店のマスターなんて、隠居した戦士にとって、何ともお誂え向きな仕事じゃないか、と。
「君が本心からそう思っているなら、僕も特に言及しない。だが一つだけ忠告させて貰うと、今すぐ教師を辞めるなんて軽率な真似はよした方がいい」
「そうだな。一応、ネギの実習期間が終わるまでは私もサポートに徹するつもりだよ」
 確かに、今仕事を辞めるという事は、与えられている責任をも投げ出すことに繋がる。
 それではイギリスから自分を頼ってきたネカネにも申し訳が立たないし、学園に恩を返すという意味合いでは真逆の行動だ。
 流石にそれは、俺としても望むところではない。
「まあ、でも…こうして会ってみて、やっぱり安心したよ」
「思っていたより御しやすい、か?」
「いや、むしろ逆だね。でもだからこそ、信用できる」
「後学の為に、理由を聞いても?」
「自分の中に芯がある人間っていうのは、周りの意思なんて撥ね退けてしまう。でも、その志が同じところにあるのなら、協力する必要すらなく、同じ未来を目指せるだろう?」
「私が君たちと、同じ志を持っていると思っているのかね?」
「厳密には違うのだろうけど、少なくとも君はこの学園を守るのだろう?」
 ならば同じ事だと断言してしまえる明石が、正直羨ましい。
 それは、絶対的な裏切りも、死すら生温い地獄も知らずに大人になれた者に対する嫉妬だ。
 もしも、なんて仮定に意味はない。だが、やりきれないものはある。
「まったく、この街は、ほとほと善人の集まりだな」
「一応、伝説の悪人とかも居るはずだけど?」
「エヴァンジェリンなど私からしてみれば可愛いものだ。彼女は自分に誇りを持っている。自分がしてきた事を、自分以上の強者が裁くというのなら、甘んじて受け入れる覚悟もな」
 それは、『可愛い』なんて表現に結びつく理由ではない。
 敵対する時、一番厄介なのはエヴァンジェリンのようなタイプだ。誇りも覚悟も間違えず、ただ己の為だけに動くモンスター。
 俺とは真逆の方向性であるが故に、その決着を付けるのは単純に能力のみになるのだ。
 だが、少なくない別荘での時間を過ごす中で、エヴァンジェリンの根底にあるものも見えてきている。
 かつて人間であったというのなら、彼女の屈折した優しさもまた不自然には思えなかったのだ。
「僕は、彼女と親しいわけでもないから何とも言えないけど…意外だな」
「何が?」
「君がそんなにも彼女の事を理解している事がだよ。今まで聞いた話のイメージを考えると、あまり彼女とは仲が良さそうには思えなくてね」
「別に、仲がいいというわけでもない。ただ、人外というものは皆屈折しているものだからな。人間から外れているという意味では、私にも相応の理解があるだけだ」
「それは、君も人間ではない、ということでいいのかな」
「ああ」
 タカミチはとうに知っていることだが、俺はそう簡単には死なないし、老いることもない。
 かつて、アーサー王が何十年もの時を変わらず治めたように、おそらく自分の肉体にも変化はないはずだ。
 その効果が正統所有者、オリジナルの一割程度に過ぎなくても、不老不死には変わらない。
 語弊はあるが、オリジナルよりは死に易い。それだけの違いだ。
「驚かないんだな?」
「驚いているよ。でも、同時に納得もしている。君の強さと、君の意識が戻る前の回復力に説明がつくからね」
「まあ、私も元々は人間だったのだが」
 苦笑してしまう。
 俺の強さはあくまで人間の延長線上にあるもので、人外だから強いわけではない。
 強くなったから人外になったのであって、そこには超回復力は関係ないのだ。
「すまない。少し不躾な質問だったかな」
「いや、今更そんな事は気にしていないから構わないさ」
 明石が冷たくなった紅茶を口に含む。やはり、この街には善人が多い。
「さて、淹れなおしてこよう」
「いや、いいよ。そろそろお暇する。邪魔して悪かったね」
「そう思うのなら、今度は客として来てくれ。土日は開けている」
「わかった。覚えておくよ」
 明石はそそくさと帰って行った。その後姿にはもう、最初の情念は宿っていない。



















 正直な感想としては、生きている心地がしなかった。
 化かし合いにも似た会合の本質を、彼はちゃんと理解していたのだろう。
 自分が、その為に利用されているという事もまた理解できた。
 確かに、行動も態度も、そう悪い人間ではないということは分かる。
 だがその能力は別だ。
 はっきりと分かるような反応はなかったが…おそらく、会話の流れからすると彼はポケットに忍び込ませていた偽証探知の魔道具の存在に気付いていたのだろう。
 どんな方法で感知したのかという疑問はあるが、その情報を使ってこちらを逆に利用しようとする強かさの方が恐ろしい。
 そして何より、彼が発する圧力が、彼を並ではないと決定づけている。
 僕は、衛宮君の強さに気付いてしまったからこそ、彼が数か月で教師を辞めると聞いて安心した。
 確かに、強い彼ならば娘を守ってくれるだろう。
 だが、強い力はより強い力を、争いを呼び込むものだ。
 彼がいくら強くても、争うことそのものから逃れる術はない。
 そして、それに生徒が巻き込まれる可能性がないとは言えないのだ。
 また、彼が生徒を守るというのなら、何も近くで守る必要はない。
 彼も喫茶店の店主を気に入っているようだし、有事の際の助っ人だけになればいいのだ。
 何とも虫のいい話だが、おそらくそれが一番効率良く双方が納得できる関係だろう。
 今回、偽証探知の結果が全て白だった事を考えると、先ほどの会話は少なくとも彼の本心の一部ではある。
 彼が学園に恩を返したいというのが本当ならば、協力してもらう方が心強い。
 何せ、個人で一協会に匹敵する戦闘能力だ。敵であれば恐ろしいが、味方であればこれほど安心できる存在も少ないだろう。

 なんて、考察したところで大した価値はなかった。
 大切なのは、彼が信用に値して、自分がそれを裏切るような方法で確認したという事。
 ポケットの重みに後悔しながら、僕は家路についた。



明石「あ、娘に手を出したらコロスから」
士郎「は?」
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