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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第78話


「麻帆良最強・真」



 麻帆良学園女子中等部、その学園長室。
 いつも近右衛門が常在しているその部屋に、木乃香は訪れていた。刹那を伴って。

「……ふむ。では、超君は既に衛宮君に敗れ、今は衛宮君が計画を主導していると。そういう事じゃな?」
「うん」
「むぅ」

 近右衛門は頭を巡らせる。
 厄介な事になったな、と。素直な感想を抱いた。
 超に関して、近右衛門は詳しくない。
 要注意生徒として、普通の生徒よりは遥かに熟知していると言っても、それまで。
 その真意も目的も、やり方から性格に至るまで、分かっている事は少ない。

 それに対して士郎には、近右衛門はある程度の理解がある。
 それはタカミチには遠く及ばないものではあるだろうけれど、しかしただ見ているだけでは理解できない領域まで踏み込んで、近右衛門は士郎を見ていた。
 覗き見していたのだ。遠く、その深淵を垣間見る程に。

 故に。その場、木乃香の傍らで話を聞いていた刹那としては、何故そんなに困った顔をしているのか察する事はできなかった。
 単純に考えるのなら、超と士郎が協力して向かってくるよりは遥かに容易くなるはずなのに、と。

「困ったのぅ。これは困った。まぁ、彼の思惑も分かるが……しかしのぅ」

 近右衛門が察する士郎の思惑というのは、つまり超の酌量を求めるものだろう。
 超は既に主犯ではなく、戦力その他、持つ全てを奪われたというのなら、その以後彼女の戦力が犯す罪の全ては奪った者のものとなる。
 士郎が主犯で、超は被害者となる。
 それでもタカミチへの拉致監禁など罪がないでもないが、タカミチならば揉み消すだろう。
 超に反省の意があるならば。ないならないで、反省するまでタカミチは説教するのだろうし。
 そういう信頼と、それ以外ないであろう未来への予測から、士郎は超を裏切った。

 勿論士郎本人の思惑としてはそれだけではないし、どちらかと言うともう一つの理由があまりにも大き過ぎたのだが、この時点で超を裏切る事は予定された計画だった。
 その真意がどんなものであろうとも。その罪は、自分一人で背負うつもりだった。

 その程度は近右衛門も読めていて、そしてだからこそ戦慄する。
 罪を被る、というのなら。それは、その戦力が元々超のものだった、なんて事が霞む程でなければならない。
 そうでなければ意味がない。
 で、あるならば、その苛烈さは如何ほどのものか。
 近右衛門が予測していた戦闘よりは遥かに容赦のない戦い、否、戦争が今夜勃発するだろう。
 衛宮士郎という個人と、関東魔法協会という組織の間で交わされる戦争が。

 そして戦争ならば、人死にが出るのも当然で。その選択が、とても楽なのも事実。
 彼が真実この戦い、計画にその身を、人生を捧げているのならば、今夜確実に誰かが死ぬ。
 そして、その死が避けられないものであるのなら。
 その犠牲は、近衛近右衛門一人でなければならない。

 本来ならば、衛宮士郎のようなある種、悪よりも余程性質の悪い相手との経験を積ませる為、一旦魔法先生たちに戦わせるつもりだった。
 剣を交えれば、自ずと相手を理解できる瞬間もある。
 士郎の理解者が増えれば、という思惑もあったし、それは高望みが過ぎると現実的な判断を下した上で、けれどその対戦経験は貴重だろうと思っていた。
 万が一が起こる前に、割って入る事が前提で。

 だが、そんな前提はもう成り立たない。
 割って入れば、そこが近右衛門の死地になるかもしれない。
 ならば。最悪の犠牲が出る前に、決着を付けねばなるまい。

「二人は、どうするつもりなんじゃ?」

 その覚悟を固め、具体的な方針を思考しつつ、そして士郎の現在位置を探るための術式を起動させて、近右衛門は問う。
 何食わぬ顔で、その思惑を孫娘にも悟らせる事なく。

「ウチは中立。おじいちゃんの味方でもあらへんし、士郎さんの味方でもあらへん。でも、怪我しとる人がおったら助けるえ」
「私は、お嬢様のお側に。翼となって翔けるつもりです」

 それは、この学園祭で予想される動乱において、二人が決めた立ち位置。
 ネギたちがどのような選択に出て、その選択の結果味方になって欲しいと頼まれても、二人は中立を保つ。
 そう決めて、そして実行している。
 士郎に撃たれた超を助けたのも、別に超の仲間になったわけではなく、単なる人命救助のためだ。
 それを士郎主導となる前には超に認めてもらっていたし、今現在士郎も認めている。
 死にかねない傷だったとしても、木乃香のアーティファクトなら条件付きで完治できる。

 そしてその条件を満たす為に、刹那の翼があるのだ。
 刹那の最速でも、麻帆良の全域を5分の世界に縮める事は難しいが、しかしやり遂げるつもりでいた。
 主のために。それは士郎に示した生き方でもあったし、何よりその目的は尊敬できたから。
 その為にこの忌み嫌われた翼を使えるのなら、本望だと考えていた。

「刹那君。このお転婆娘をよろしく頼むぞい」
「ハッ。この生命に代えて」
「いやいや、命なんぞかけんでよろしい。誰かを救おうとする者が真っ先に死んでしもうては、本末転倒じゃからのぅ」

 そう言って、言い残して。
 或いはそれが遺言になるかもしれないと、そんな事を思っていたのかもしれないが。
 いつもと変わらぬ緩やかな笑顔を浮かべながら、近右衛門は二人を置いて先に部屋を出る。
 その顔には、もう笑顔は張り付いていなかった。





◇ ◆ ◇ ◆






 士郎は超を軟禁した上で、超の勢力全てを手中に収めていた。
 否、むしろ向こうから協力を申し出て貰った、という方が正しい。
 真名はもとより契約主が誰であろうと構わなかったし、超の悲愴過ぎる覚悟を憂いていた聡美も同意した。
 ただ、茶々丸だけはエヴァンジェリンの承諾が必要だった。
 エヴァンジェリンと超の間で、あくまで超に対して貸与されている形であり、超が茶々丸の創造者でもあったため、という理由が大きい。
 そのまま士郎に従うには問題がある。
 そこにどんな思惑があろうとも、士郎とエヴァンジェリンは敵対関係を続いているのだから。

 だが、そのまま茶々丸の離脱を認めるわけにもいかない。
 茶々丸は計画の要だった。学園結界を落とさなければ鬼神は使えない。
 それはイコール、計画の頓挫を意味する。

「そうか、予想はしていたが……」

 そこで士郎はエヴァンジェリンと取引しようとしていたが、エヴァンジェリンは別荘に引きこもり連絡が取れなかった。
 故に、茶々丸本人を一旦返し、協力要請の手紙を渡して貰う事になっていた。
 その結果、茶々丸が協力できないのなら、すぐに連絡だけはしてもらうという約束をして。

『申し訳ありません。既にマスターは高畑先生に協力すると決めておられました』
「タカミチが、か。アイツにしては動きが早い……本気、という事か」

 正直、タカミチのこの動きの速さは誤算だった。
 士郎とエヴァンジェリンの関係が敵対的であるとは言え、あの武道会での試合を経た今多少心配なところはあったけれど、しかし取引相手としては信用出来ると思っていたのだ。
 どこまでも対等な関係として、ある種ライバルのような……そんな感情を士郎も抱いていた。
 だから、何かしら条件を差し出せば茶々丸を一日借り受ける事ぐらいは可能だと考えていたのだ。
 差し出すモノは痛手だが、それでも失敗するとは思っていなかった。

 が、こうなってしまえば仕方がない。
 エヴァンジェリンが積極的に邪魔してくる事も想定して策を練らなければ。

「分かった。次会う事があるならばお互い敵だろうが、今までの協力に感謝する」
『いえ。士郎さんも無事を祈っています』

 敵になっても隔意はない。それなりに仲がいい間柄として、当たり前のように互いを気遣った。
 そして通信を切ると、士郎は聡美と真名の二人に向き直る。

「さて、作戦を変更せねばならないな」
「実際、茶々丸と超さん抜きで学園のシステムを掌握する事は不可能です。どうしますか?」
「どうしますか、と言われてもな。正面突破が不可能なら、奇襲しかあるまい」
「奇襲、ですか?」
「ああ。私はハッキングなど門外漢だから的外れな考えなのかもしれないが、要は物理的に制圧する事でもシステムの掌握は可能なのだろう?」
「それは、そうですが。しかし学園も当然戦力を充実させているでしょう?」
「いや、学祭最終日には告白阻止にも戦力を割かねばならないからな。戦力を集中させるわけにはいかないはずだ。
 一度私が見つかればそこに戦力が集中するのは当然だろうが、それまではどこに私が現れても対応できるようにしているハズ」

 或いは、世界樹の魔力を外に漏らさない為の結界を学園側……いいや、近右衛門が用意する可能性もある。
 そんな事が可能かどうかはともかくとして、最悪世界樹の魔力を利用する形で策を練ってきてもおかしくはない。
 士郎は、近右衛門が偶発的要素を利用する事に長けている事を知っている。
 彼が本気で動いたのなら、まずはその身に纏う余裕を剥ぎ取らなければ勝機はない。
 出てくるならば、タカミチよりも封印されているエヴァンジェリンよりも遥かに厄介な相手。
 少なくとも弱いなんてことはなく、見た目から分かる通り経験も深い。
 厄介なのも当然だった。

「戦力が拡散している状態で各個撃破、かい? それなら、貴方が囮で私が狙撃というのが理想的かな」
「そうだな。龍宮の技量がどれ程のものかは把握していないが……」

 士郎が値踏みするように真名と視線を合わせる。
 スナイパーとして、士郎よりも上であるか……というのは、何となく分かる。
 目を見れば。その空気に触れれば、通じて理解する。
 その理解を信じるに、真名は確実に士郎よりも力量が劣る。
 実力を隠している風でもあるが、少なくとも射撃という技能において、大きな差があるだろう。
 まぁ、簡単に追い抜かれてしまっては士郎も立つ瀬がないが。
 弓は、衛宮士郎が唯一人に誇れる才能を有していた技能なのだから。

「タカミチと、出てくるのならば学園長以外なら大丈夫だろう」
「私は高畑先生よりは弱い……と? 時間跳躍弾を以てしても?」
「ああ。当たらぬ銃弾に価値はない」

 真名が珍しくムッとした態度を見せるが、士郎は無視して話を進める。

「可能ならば二人が現れる前に明石と制御室を落とすべきだな。一旦葉加瀬に正面から攻撃してもらった上で」

 この場合の攻撃とは勿論サイバー攻撃、ハッキングだ。
 正面から攻撃しているからこそ、奇襲に意味がある。

「二重奇襲と言ったところかな。正面から士郎さんが進攻してきたと思わせて私の狙撃、それは実を取る選択ではあるが、それさえも囮で本丸は学園結界の掌握」
「そうだ。その時点で大半の魔法先生はリタイアしているだろう。力押しならこちらに数の利がある。
 問題は、学園長、タカミチ、そしてエヴァンジェリンだ」
「学園長先生の戦力は未知数、高畑先生はデータから判断しても相当の実力者、エヴァンジェリンさんは封印されているからこそ参戦してくるのなら行動が読めないですね」
「エヴァンジェリンは学園結界を解除する前に排除しておきたいところだが、奴も自分の弱点は分かっているだろう。
 探すだけ労力の無駄だ。一応茶々丸タイプを使って捜索する事にするが、見つからない事を前提に作戦を進める」
「ではどうするんだ、士郎さん。学園結界がなければエヴァンジェリンも全盛期ではないにしろ力を取り戻す。
 魔法先生なんかより余程強敵だし、ロボたちじゃ何体集まったって敵わない」
「私が対処する。この作戦における我々の勝利条件は、儀式の発動如何にかかっているが、その障害は三人だけだと見ていい。
 理想はタカミチ以外の二人が参戦してくる前に儀式を完遂する事だ。
 その為には葉加瀬の負担が増える事になるが……」

 葉加瀬は一瞬思案顔を見せ、士郎が求める役割を試算する。
 その要望に応えるだけの能力が自分に備わっているのか。可能なのかどうか。

「ハッキングは、茶々丸タイプを使用する事になるでしょうから不可能ではないでしょう。
 ただし、茶々丸本人が電子戦に参加してきたら無理ですけど」
「その点は大丈夫だろう。わざわざ主の力を制限する為に戦うとは思えない。
 仮に茶々丸がそういう行動に出るとしても、元々制御室の制圧は作戦目標だからな」

 茶々丸がエヴァンジェリンと別行動するのなら、それはエヴァンジェリンの命令以外に有りえない。
 そしてそんな命令を出してくれるのなら、むしろ士郎としては有り難かった。
 何故なら、エヴァンジェリンの恐ろしさはその力よりも、何をしでかすか分からないところにある。
 それは学園側から見た士郎に対しても言える事だが、エヴァンジェリンは正確には協会の人間ではない為、別に学園を守る必要はない。
 行動の制約が、著しく少ないのだ。力の制限はあっても。

「結局最後は力技かい?」
「戦力で圧倒しているのなら、下手な策など必要ないさ。問題は時間制限だ」
「麻帆良最強でも、あの三人相手は難しいという事ですか?」
「麻帆良最強などではないさ。実力的には私はタカミチと同等、他二人は私より上だからな。
 ただ、今回は相手を倒す必要はない。勝つ必要もない。無効化すればいいだけだ」
「まぁ、超さんの計画でもあの人達は最優先目標ですが。エヴァンジェリンさんはともかくとして」
「超はどうするつもりだったんだ?」
「同じですよ。士郎さんによる直接殲滅。それが失敗した場合には、超さんがカシオペアを使った戦法で跳躍弾を使用する予定でした」

 時間跳躍弾はともかくとして、カシオペアによる多重時間転移戦闘は、確かに同じ技能を持つ者しか対抗できない。
 フラガを持つ士郎ならば一応反撃は可能だが、しかしそれも“知っている”事が前提だ。
 事前情報がなければ達人であっても何が起きたのか理解する前に敗北しているだろう。
 あれは、前提を崩す攻撃になる。

「今からでも遅くはありません。超さんにも協力して貰いませんか?
 衛宮さんが主犯である事に異論はありませんが、これでは確実性を欠きます」

 確かに。物事に絶対などはないが、使用可能な戦力をあえて使わないのならそれはベストではない。
 そんな事は愚の骨頂だし、何よりそれが元で失敗してしまっては元も子もないのだ。
 
 だが、認められない。それだけは。ちっぽけな意地なのかもしれなかった。
 けれど、全てが手遅れなのかもしれなくても、知ってしまった以上は超に計画を実行させるわけにはいかない。
 それを認めるくらいなら、計画なんて失敗してもいいと士郎は本気で思っていた。

「超は使わない。絶対にだ」
「諦めた方が良さそうだぞ、葉加瀬。どうもこの人は超以上に頑固みたいだ」
「放っておけ」

 不貞腐れたように言い捨てると、士郎は立ち上がる。

「どこへ行くんです?」
「作戦はおおまかにこれでいいだろう。基本は超の作戦通りだしな。私は保険をかけに行く」
「保険?」
「ああ。2時間程で戻る」

 一切説明する事なく部屋を出ようとする士郎を、今度は誰も引き止めなかった。





◇ ◆ ◇ ◆






 会敵は図書館島地下、ホールのように切り抜かれた広大な空間で。
 待ち構えるようにして立つ近右衛門に、士郎は思わず眉を寄せる。

「まさか……こんなにも早く貴方が出てくるとはな」
「仕方あるまい。仕方あるまいよ、衛宮君。君が本気である程に、儂にも余裕はなくなるのじゃから」

 既に保険……外部からの魔力供給は得ていた。肉体・精神的に万全とは言えずとも、多少の無茶はなし得る程度に。
 故に、士郎にとって近右衛門は決して勝てない相手ではない。
 仮に彼が封印されていないエヴァンジェリンと完全に同格の実力者であっても、だ。
 殺る気で戦えば、必死の宝具を用いれば、それは可能。
 だが。

「何故私の居場所が分かった?」
「ふむ。分かっていて隠れているものとばかり思っておったのだがのう。買い被りか」

 髭をなでつけ、のんびりと歩いて来る。

「この学園は儂の庭じゃ。この学園の学園長は、都市の管理権限を持つ。否、支配権限とでも言うべきかのう。
 エヴァンジェリンが契約により侵入者を感知できるように、儂もまた契約により学園のあらゆる事象を感知し得る。
 尤も、衛宮君が出現した際は感知ができんかったから完全ではないのじゃが」

 この能力があったから、近右衛門はネギも、エヴァンジェリンも、木乃香に関しても、放任主義でいられるのだ。
 もしもの事があったなら、すぐさま介入できるように。
 この学園の中にある限り、それは近右衛門の腹の中に居るようなもの。
 制限があるとは言え様々な事象に遠隔で干渉する事ができるそれは、学園都市の管理・防衛においては絶大な力を発揮する。

 そう、士郎の居場所を探る事など造作もないし、超たちの動向を探る事も、また。
 ただし、万能の力であるわけもない。
 近右衛門本人の力量により、むしろ歴代学園長よりはその秀でた魔力量により扱えるスキルは多いと言っても。
 戦闘に役立つような事は、ほとんど出来なかった。
 その技能は基本的に防衛特化であり、結界技能・封印技能はともかくとして攻撃魔法などは役に立たない。
 遠隔管理と言って限度はある。
 だからこそ、こうして直接出向く以外に近右衛門には方法がなかった。
 そして直接戦うのであれば、遠隔管理技能などあったところで意味はなくなる。

「この麻帆良の、防人というわけか。成程、だから貴方が、近衛がこの街を治めているわけだな」

 日本、否極東有数の魔力を誇る近衛家の。
 その魔力があるからこそ、この麻帆良は維持できている。

「そういう事じゃの。木乃香に継がせるつもりはないがのう」

 近右衛門はニカっと笑った。まるで、世間話でもしているかのように緊張感がない。

「さて、衛宮君。一応聞いておくぞい。手を引く気はあるかね?」
「ない」
「じゃろうなぁ。なら、絶対に誰も殺さない、そう誓えるかの? 絶対遵守の誓約を」

 悪魔の契約だ、それは。
 反すれば命、或いは自由意志など、条件を必ず守らせるシロモノ。
 自己強制証文のように、この世界にも悪魔が好む絶対の契約は存在する。
 契約術として、一つの術の体系を持つ程だ。
 エヴァンジェリンがかけられた呪いも大別すれば同じようなものだし、大魔力を前提にしている為使い手は少ないが、近右衛門ならば可能だろう。

「出来ないな。この学園祭期間中だけならばともかく、貴方の条件は一生だろう?」
「君とて、殺したくはないのじゃろう」
「だとしても。殺さなければ救えないものもある」
 
 それに。それが必要な時に、その責務を、誰かに委ねるなど耐えられない。
 衛宮士郎はそういう男だったし、その答えを、近右衛門も半ば予想していた。

「ならば仕方ないのう。実力で、契約は結んでもらうぞい」

 それは、一瞬の出来事だった。
 士郎の、強化を施さずとも超人的と言える主観でさえ、認識できない程に。

「ガッ」

 気がつけば、士郎は壁にめり込んでいた。
 全身から発せられる痛覚……骨は、三本は折れているだろう。
 これではまるで、バーサーカーを相手にしているようだ。そんな事を思った。

「衛宮君。魔法使いが行き着く先が分かるかの?」

 士郎は答えられない。干将・莫耶を投影し、油断なく構える。

「魔法使いの強さとは、能力値に依存する。どれだけ技術を高めても、100%を超える事は出来んのじゃ。
 故に、全ては才能で決まる。努力を重ねれば、己の限界には至れるじゃろう。
 そして大抵、それで万事上手くいく。苛烈な運命は、才能を持つ者にしか与えられん。
 血と、魔力と、精霊との交感度。その数字に、魔法使いは決して抗えんのじゃ」

 だから。結局は。
 その才能の行き着く先は。

「どのような過程を辿ろうとも、魔法使いが強さを望むなら出力に行き着く。
 一度にどれだけの力を扱えるか。それだけが肝要じゃ。その意味、君なら分かるじゃろうて」

 パワー、スピード、魔力量。
 そういった単純なスペックが、すなわち魔法使いの強さとなる。
 上位呪文を唱えられたからと言って、あまりに膨大な器を持つ者には勝てない。
 確かに多種の呪文を扱える事は強みになるだろう。一定の才能がなければ上位呪文は扱えない。
 けれども、たった一発の魔法の矢を、上位呪文に匹敵する程の威力に高められる術者もまた、存在する。
 そういう、努力を蹴散らすような才能が。歴然と存在するのだ。

 それが魔法使いの社会だ。子供には決して教えない現実。
 いつか、自分自身で勝手に気づいてしまう切ない定理。
 本当の天才は、そんな事にも気づかないのかもしれないけれど。
 近衛近右衛門は、当然のように熟知している。己の限界を正確に把握した上で、最良の方法を導きだす。


「俺が貴方に勝てないと、そう言いたいわけか」
「然り。勝てるとしても、無事では済むまい?」

 実際、既にこのダメージは計算外だ。鞘により既に修復は始まっているが、戦闘中にはそちらに魔力を回せない。
 まず木乃香も間に合わないから、この傷の治療に多大な魔力を消費する事になる。
 作戦開始時点までに間に合うかも分からない。

 多少の傷なら作戦遂行も可能――――否、不可能だ。
 タカミチはともかく、学園結界から解き放たれたエヴァンジェリンは抑えられない。
 詰み。こんなにもあっさりと、たった一人の力で、作戦は瓦解する。

 そして、それを後押しするように。

「魔法の矢・千矢統一」

 近右衛門の背後に、太陽のように輝く魔力球が出現する。
 まるでキャスターだ、と士郎は思った。いや、それ以上か。
 単純な、攻撃呪文としては初歩の初歩、最も簡易なそれでさえ、突き詰めれば絶大な破壊力を持つ。
 否、むしろ単純過ぎる程にシンプルな術であるからこそ、スペックの高さを活かせるのだ。

「くっ……!」

 打ち破る手段はあった。赤原猟犬。偽・螺旋剣でもいい。射出系宝具なら打ち破れる。
 アイアスで防ぐ事も可能だろう。しかし、今ここで倒せても結果作戦が失敗するのなら意味はない。
 それは、敗北だ。敗走だ。
 現時点で、士郎が取りうる最も作戦成功率を上げる選択肢は、この場の勝利などではない。
 この場は負けても、目的を達成する事。それこそが、衛宮士郎の戦い方なのだから。

「……条件は、殺さないというだけか?」
「うむ。儂はお主に呪いをかける。そしてその呪いがある限り、儂のお主への手出しは禁じられる」

 それならば、士郎には切り札がある。
 破壊すべき全ての符。個人が行使できる呪い程度、この宝具にかかれば問題なく解除できるハズだ。
 故に、この取引は士郎にとっては都合がいい。
 莫大な魔力を消費し、更に傷を負って麻帆良の最強を打ち破るよりも、互いに枷をかけあい無力化させる方が余程利がある。

 ……それに。正直なところ。
 この麻帆良の住人を、殺したくなどなかった。

「分かった。それでいい。しかし貴方こそそれでいいのか? 責任は、」
「儂の首一つでお主が改心できる機会が与えられるなら願ったりじゃよ。それに、儂の部下は優秀じゃ」
「改心などするつもりはないが、その信念は認めざるをえないな」

 そして、近右衛門は呪いをかける。
 その呪いの内容が、果たして彼が言った通りのものだったのかは……近右衛門しか知らなかった。










木乃香「せっちゃんがウチの翼や!」
刹那「あの、このちゃん恥ずかしい……」

(拍手)
 
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あとがき

予定プロットから順番入れ替えたので刀子さんの活躍とかは後回し。
本当なら学園長とはガチバトルの予定だったんだけど……伏線を優先しました。
最近伏線張りすぎて覚えきれないくらいだけど、まぁその内回収するはずなので。
のんびり待っていて下さい。

2011.03.03 | URL | 作者 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

学園長かっけー
シンプル・イズ・ベストっていいよね
バルトメロイ・ローレライとかに近い?

2011.03.03 | URL | とろみ #- [ 編集 ]

Re: とろみさん

そだね。学園長は戦闘特化スキルを全く持ってない癖に単純スペックのみで強いっていうデタラメ。
しかも技はなくても経験はあるから同スペック対決で技量負けててもそこそこ戦える。
例えば木乃香なんかも戦闘向けスキルは今後習得する事もないだろうけど、その膨大な魔力があるから似たような事は出来るようになる、という設定。
私なりのネギま解釈が如実に表れてます。
魔法使いが魔法使いらしく成長していっても、結局魔法戦士と似たような形に収束するのと同じように、専門職でも長ずれば万能系として収まる。
魔術が多様性なら魔法は万能性こそ唯一で、相性が影響し難い土壌がある、という話。

2011.03.03 | URL | 作者 #- [ 編集 ]

学園長って、原作だとまだ語られてないところばっかなんですよね。なにやら特殊な能力の使い手らしいと28巻の「なぜなに」にあるくらいで、あとは強いとか抽象的だし。
とりあえず、ダンブルドアら辺のポジだと想定して置けばおkと思ってたんですが、78話を読んだらこっちの方が熟練の魔法使いらしくてカッコいいと思いました。

2011.03.04 | URL | アホターレ #aIcUnOeo [ 編集 ]

Re: アホターレさん

う、28巻の巻末は知らなかった。最近買ってないからな……。
ので、学園長に関してはオリ設定です。学園というか“聖地”のシステムとの契約により麻帆良の中ではほぼ無敵。勝てなくても負けはない。士郎が宝具使ってたら学園長も本気出してた。
ただ、麻帆良を離れた学園長個人の能力としては、超遠隔技能というか、あのゴーレムを操作していたような、操作を主眼においた魔法、という事にしています。
後々原作とは破綻してしまうかもしれませんが、人死にが出そうな状況で学園長が静観するとはとても思えなかったんですよね……。

2011.03.04 | URL | 作者 #- [ 編集 ]

オリ設定で全然おっけーだと思います。
ただ、ここ最近は巻末コーナーが活発化してるんで機会があったら目を通しといた方がいいかもしれないですよ。
予想はしてましたが、17巻の超の体の模様とネギのマギア・エレベアが似たものであるとか出てますし。
ちなみに30巻の「なぜなに」によると学園長とメルディアナ魔法学校長はほぼ互角らしいですよ。
ついでにメルディアナ魔法学校長のパートナーはドネット・マクギネスともありました。

2011.03.04 | URL | アホターレ #aIcUnOeo [ 編集 ]

Re: アホターレさん

うん、なんとか目を通すだけ通してみます。
ただ、超の体のアレは独自設定入るかもなー。闇の魔法と似たようなもの、というのが私の解釈と同じならば問題はありませんが。

2011.03.04 | URL | 作者 #- [ 編集 ]

学園祭終わった辺りからネギま!見てなかったから学園長にそんな設定があるのかと思ってしまったw
まあ、士郎(アーチャー)って基本パラメーターだけだとキャスター位にしか勝てないって言う話しだし、こんなものか。
それにしてもじじいカッケェー。

2011.03.05 | URL | saitou #pvNGy96Y [ 編集 ]

Re: saitouさん

まぁそんな設定は明かされてないわけですがw
学園長がそこそこ強くて特殊な能力を持つらしいから、いろいろと妄想した結果こんな感じに。
あっさり負けたのは確かに実力の差。今まで、どんなに圧倒的に見えても負ける時は負けてるし、自分から挑む時には勝てる条件を満たしてから挑んでいますから。
士郎が先手を取っていたらこんな結果にはならなかったでしょうね。まぁこの設定において学園長から先手を取るなんてまほらの中では不可能なのですが。

2011.03.06 | URL | 夢前黒人 #- [ 編集 ]

は、はやく更新してくれェ

2011.03.16 | URL | ただのファン #- [ 編集 ]

Re: ただのファンさん

ちょ、ちょっと待って。荷造りが終わらないのともうすぐネットの解約が……。
あと高音さんが頑張り過ぎてるんでそこカットしていいならもう出せるけどね……。

2011.03.16 | URL | 作者 #- [ 編集 ]


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