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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第76話


「歴史分岐点」


 別荘は確かに快適で、呆っと時間を過ごすには最適だった。
 明日菜とアキラ。お互い何があったのか、親しみもあって赤裸々に語り、泣き、疲れて夜も明けて、二日目の朝。

「あ……」

 それまで出会わなかったのは向こうが避けていてくれたのか、それとも偶然か。
 アキラはエヴァンジェリンに遭遇した。
 震えが走る。今のエヴァンジェリンは、あの夜出会ったそれとは比べ物にならないくらいに弱々しく感じられるけれど、しかし教室で顔を会わせるのとはワケが違う。
 今アキラがいるこの別荘は魔法の産物であり、つまりは裏側に属する世界。
 けれど、この場にアキラの守護者であり保護者である士郎はいない。
 それが、震えるほどに怖かった。

「そう怯えるな。取って食いやせん」
「…………」
「信じられんのも無理はないがな。少なくとも衛宮士郎がこの街に居る限り、私とて貴様に手は出せん。
 私も滅ぼされたくはないからな」

 疑問符を浮かべたのは明日菜だ。
 アキラとエヴァンジェリンの関係が分からない以上に、エヴァンジェリンの発言の意味が分からない。

「……どういう事?」
「貴様らと戦った吸血鬼事件があっただろう。大河内アキラは、あの事件の最大の被害者だと言うことだ」

 明日菜がアキラに視線を向ける。
 うん、とアキラは頷いた。

 事情の説明に、そう時間は掛からない。
 アキラが知る事はそう多くないし、戦いの当事者である明日菜は元より大体の事情を把握しているからだ。
 エヴァンジェリンもアキラが知らない士郎との戦いを少しばかり補足する。
 意外にも協力的なエヴァンジェリンに気味の悪さを覚えつつも、アキラは説明を終えた。

「そっか……あの時って士郎さんが助けてくれてたんだ」
「でなければ貴様らなんぞに負けはせん」
「じゃあやっぱり、士郎さんてエヴァちゃんより強いんだ」
「いいや。奴自身はそう強くない」

 その発言に、アキラは納得できない。
 彼女にとって士郎は唯一のヒーローであって、士郎が負けるところなんて想像も出来なかったからだ。
 試合での負けも、それはルールの上での事であって、誰かを守る為に戦っている時……つまり、後ろにアキラがいる限りにおいて、負ける事なんてないのだと。
 そんな、神聖視にも似た信頼を、アキラは抱いていた。

「強いのは衛宮士郎ではなく、奴の剣の方だ。吸血鬼だろうが竜だろうが殺せてしまう、絶大な威力を持つ剣こそが、奴の強さだよ。
 尤も、それを扱えるという事が即ち奴の強さではあるのは事実だがな」
「んー、つまりエヴァちゃんは士郎さんが怖いから、アキラには手を出せないって事なんでしょ?」
「……まぁ、封印されている現状ではな。尤も、もはや大河内アキラなんぞに手を出す意味はない」

 それはそうだろう。大河内アキラはただの、普通の、平穏を謳歌する一般人に過ぎない。
 少なくとも、つい先ほど、アキラの感覚で言えば昨日までは。

「ふーん。じゃあさ、アキラもこれからここで修行しない?
 士郎さんのパートナーになるんだったら、やっぱり強くないと!」

 明日菜は邪気のない笑顔で言った。
 だが、それを受け取る方はそうもいかない。
 基本的に、仮契約=キスだというのは明日菜から説明されているアキラだ。
 徐々に赤くなってしどろもどろになる辺りは、まだまだ慣れない。
 そして対照的に、エヴァンジェリンは表情を歪める。

「パートナー、だと?」
「そ。昨日……じゃなくて、まだ今日か。士郎さんと仮契約したんだって」
「ヤツが……? 何故だ」
「何故って言われても……」

 明日菜とエヴァンジェリンの視線がアキラに向く。
 説明なんてしたくはないアキラだったが、エヴァンジェリンの視線は鋭すぎた。
 思わず、と言った感じに喋ってしまう。

「チッ……おそらく、その時のヤツは正気じゃなかった」
「え?」
「世界樹の魔力だな。貴様の願い通りに奴はお前をパートナーにした。それだけだ。
 告白は断っているのだし、そもそも奴は学祭が終了すれば麻帆良を去る」

 正直なところ。
 アキラも、そんなところじゃないかと思っていた。
 確かにアキラの気持ちに士郎が応えてくれれば嬉しいけれど、それは有り得ないとも思うのだ。
 アキラが好きになった衛宮士郎は。きっと、告白したぐらいじゃ動かない。

 だから、あのキスが士郎の意思でなかったという事には、それ程動揺しなかった。
 ショックだし、泣きたくなるくらいに悲しいけれど、それよりは。
 士郎が麻帆良を去るという事の方が、余程アキラの動揺を誘う。

「士郎さんが、いなくなる?」
「聞いてないか。まぁ仕方のないことではあるだろうな。奴に自由はない。力を持つ者というのは大抵そうだ。
 自由に、思うがまま力を振るう事も罪だと決め付けられる。故に、自由を得たいならば強行突破しか有り得ない」

 あれだけの力を持つ者が、どこで何をしているか把握できないのは不安だと、それだけの理由で。
 自分たちの正義の名の元に縛り付ける。
 それが誰の目からも正義であるのなら、間違いではないのだろう。
 危険を未然に防ぐためには、ある程度の犠牲は仕方ない。
 それが強者の責務。どれだけ強くとも、世界全てを相手にして勝てるわけではないのだから。

 だから、周りを振り切り逃げ出そうというのなら、誰かに告げるなんてマヌケは犯さない。
 自分が逃げ難くなるという理由もそうだが。
 巻き込んでしまう、という理由にも。今ならアキラも思い至る。

「じゃあ、今まで士郎さんは、居たくもないこの街に捕まってたって事?」
「さぁな。少なくとも、この街……学園長が奴の恩人であるのは事実だ。
 その恩返し程度に考えていたんだろうさ。だが、それも永遠に続けられるはずがない。
 私と同じように、この麻帆良から出て行く為に事件を起こしても不思議ではないだろう」
「え? じゃあ高畑先生捕まえたりいろいろ悪いことしてたのって、士郎さんだったの?」
「ん、いや……それは超の仕業だろうな。奴に期待されているのは現時点における最大戦力だ。
 どうあれ、衛宮士郎と超鈴音はそれぞれの目的の為に手を組んだ。ならば奴もそれを黙認しているという事だ。
 ぼうやがどう判断するかは知らんが、もしも奴らと戦うなら心しておけよ。
 超はともかく、衛宮士郎はホンモノだ。お前たちの飯事遊びが通じない世界がそこにある」

 明日菜にとっても士郎は親しい相手だ。
 修学旅行の一件で、強いという事は知っている。
 そして普段の日常では、無愛想だが優しい喫茶店のマスターでもある。

 そんな相手と戦う、というのは。なんとも実感が湧かない話だった。
 修学旅行の時にしたって、守ってもらうばかりで。
 味方だった人が敵になるというのは、何か遠い世界の話のように感じる。

 一方、アキラは未だ呆然と、士郎が消えるという事実を噛み締めていた。
 だから告白も断られたのだ、と考えると、少しだけ救われる気にはなる。
 少なくとも、嫌われてはいないという事だから。邪魔だと思われていないなら、まだ。

「まぁ、そのカードがある限り、奴の存命は分かるわけだ。
 どうしても諦めきれないのならば探しに行けばよかろう。お前は私と違って、自由なのだからな」

 余程アキラが死にそうな表情でもしていたのか。
 それとも、男に置いて行かれるというその境遇に、思うところでもあったのか。
 エヴァンジェリンはアキラに、普段なら有り得ないだろう気休めを吐いた。

「思ったより優しいんだな、エヴァンジェリンさんは」
「フン。これは哀れみだよ、大河内アキラ。精精足掻けばいいだろう。惚れた男のためならば、な」

 そう言って、エヴァンジェリンは背を向けアキラたちから遠ざかっていった。
 その背を見てアキラは思う。
 確かに怖い人ではあるけれど……前ほど苦手ではなくなったな、と。




◇ ◆ ◇ ◆





 炎と言っても、全身が包まれる程大規模なものではなかった。
 工房『エミヤ』の最初の客、ガンドルフィーニの注文に対して士郎が用意したのは、魔力を起爆剤として炎を発する事が出来るナイフである。
 シングルアクションで炎の矢一発分ぐらいの炎を生み出せると考えればいい。
 然程威力は高くないし、一般的な魔法使いでもその程度ならレジストできる。

 問題は。その切れ味にあった。
 宝具にはまるで届かない、単なる魔術礼装であるソレであっても、衛宮士郎の身体を斬れる程度の威力はあった。
 銃弾も、並の刃物も通さない身体だろうが、お構いなしに。
 普通の魔法使いに対してでも、障壁貫通能力まで付加されているのだから、実際のところ本国で封印処置されてもおかしくないクラスの一品ではある。
 そして貫通した状態から、肉体内部から直接攻撃されればどうなるか。

 タカミチが魔術を用いて戦う時の戦法と同じ。それは、必殺と呼ぶに相応しい一撃だ。
 それがただの部分破壊、即死に至るような攻撃でなかったとしても。少なくとも、動く事は出来ないはずだ。
 そして短くない時間身動きが取れないのなら、捕縛も容易い。
 ガンドルフィーニ自身は既にやられてしまっているが、この状況を明石は確認しているハズ。
 ならば援軍も期待できるし、第一軍の三人には戦闘力で劣るとしても、動けないのならば関係ない。
 衛宮士郎という、最大かつ最悪の戦力さえ無力化してしまえば、残る問題はそう多く無い。
 なればこそ、捨て身の攻撃にも意味が出る。

 ……はずだった。現実はそう上手くいかない。衛宮士郎は、その程度で動きを止めない。
 誤算があるとすれば、それは魔法使いの常識で考えていた事だ。
 如何に身体を鍛えていようとも。魔法による効率的な肉体鍛錬を施し超人的な身体能力を得ていても。
 その内部まで、人外の域に至る事は出来ない。
 心臓を破壊されれば死ぬし、筋を斬られれば動けない。

 だが。衛宮士郎は違う。
 むしろ逆だ。外側を鍛える事で超人的な能力を得ているのではなく。
 内部が変質する程の鍛錬の末に、超人になっている。身体能力など付録に過ぎない。
 加えて、士郎は欠損を補填する事が出来る。
 とても人間とは言えないやり方で、半ば無意識に。その身は、剣で出来ているから。

「ひっ」

 だから。その傷口を直視してしまった木乃香がそんな悲鳴をあげるのも、もう慣れた反応ではある。
 それは確かにおぞましい。目の前の男を人間ではなく化物だと、そう認識してしまってもおかしくはない。
 その反応に対し、士郎は悲しくなるよりも申し訳なく思った。
 それは少なからず少女のトラウマとなるだろうから。
 口ではどんな事に厳しいことを言ったとしても。木乃香に幸せであって欲しいというのは変わらないのだから。

「私が怖いか、木乃香」

 そんな問いに、木乃香が正直に答えられるはずがなかった。
 いや、怖いか否かで言えば、木乃香はいつも士郎の事を怖いと思っている。
 ただそれは、あまりに自分を重視しない、ある種捨て鉢な行動基準が故。
 その危うさが、重さが怖いと感じていただけだ。
 それは優しさに、善性に基盤を置く感情。有り体に言えば、心配していたに過ぎない。

 だがこれは違う。本能的に、自分と違うモノを恐れてしまう感情だ。
 刹那の翼は、異形であっても美しい。人間社会の文化で許容されている観念だ。翼というものは。
 だが剣で出来た肉体などお伽話に出てこない。なまじそれに血が通っているのが更にグロテスクに感じさせる。
 まるきり違うのならまだ納得出来ただろうに、けれどそれが人間である、という事が。何より気味が悪い。

 その感性は当然のモノだ。その異形が、刹那の翼と何ら変わらぬ意味を持つと、そう頭で理解していても。
 だからと言って、感じてしまった事、思ってしまった事までは覆せない。

「ウチは……」

 唇を噛んで、木乃香は迷う。
 ここが正念場、士郎を繋ぎ止める最後のチャンスだと感じ取ったのだろう。

 正直に怖かったと言えば、士郎は消えるだろう。身を退く、探しても見つからないような場所へ。
 嘘をついてもバレるだろう。そんな分かりやすい嘘にひっかる程愚鈍ではないと知っている。
 それになにより、即答出来ないのが既に答えだ。
 その上で、どうすれば士郎を留められるか。改心させる事が出来るのか。

 しかしそんなもの、迷い考えたところで答えの出るものではない。
 行動を起こし、その結果でしか分からないものだ。人の心の奥など、本来見えるものではないのだから。
 木乃香が答えを出せなくても、それは何ら恥じる事ではない。
 ただ、木乃香と士郎の違いを、あまりにも痛烈に浮き彫りにしたという、それだけの話。

「いたぞ! 衛宮士郎だ!」
「チッ」

 予想された援軍は、思いの外早く到着する。
 いや、むしろ遅いぐらいだったのかもしれない。
 刀子が敗れ、刹那と戦っていた時間もそれなりだった。
 むしろ今まで放置されていた事こそが、学園側の人手不足を露呈していると考えられるだろう。

「一緒に来て貰うぞ、木乃香」
「ま、待って下さい!」

 答えられず、抵抗する気力もなく、成すが儘に抱えられた木乃香の代わりに刹那が叫ぶ。
 だが、その叫びは聞こえなかったのか、構う余裕もなかったのか。
 士郎は何ら反応を示す事なく木乃香を抱えたまま消えた。
 転移魔法符。大盤振る舞いだと感心するのも一瞬、士郎が消えた地点には一本の短剣が残されていた。

 その剣を認識した瞬間、刹那は嫌な予感にとらわれる。
 刀子の時には、剣が突如として消えた。
 それは、士郎の剣が消えるところは幾度と無く見ているから、考えて見ればそう不思議でもない。
 しかし、刹那が思い出していたのは修学旅行、京都での戦いだ。
 月詠の刀は、消えるのではなく爆発した。腕を吹き飛ばす程の威力で。
 関係があるかなど、考えている余裕なんてなかった。
 ただ直感的に、これは危険だと、そう理解する。

「逃げてっ!」

 叫ぶも、援軍として到着した魔法使いは呆けたように状況を理解していない。
 理解できるはずもないが、刹那は悪態をついてアーティファクトを起動させる。
 近くに倒れている刀子とガンドルフィーニを抱えて遠くに逃げる時間はないだろうし、あったとしても刹那の身体ももう動かなかった。
 しかし気が底をついたわけではない。アーティファクトを補助具として簡易結界を形成する。
 斬撃などには弱いそれでも、小規模の爆風程度なら何とかなるはずだった。

 そして。

「……え?」

 ボスン、と。爆発は、した。一応は。
 ただしそれは、刹那が予感し恐れた規模ではなく、ちょっとした強風を生み出す程度のもの。
 この場で全員を戦闘不能にするつもりだったのではないのかと、刹那は不思議に思う。
 こんな中途半端は、士郎らしくない。けれど、その意味はすぐに知れる事になる。

「転移先は……くそ、さっきの爆発で場が乱れてる。追跡が出来ないぞ!」

 つまり、あの爆発は単なる足止め、追跡封じだった。
 とりあえずは安心する。が、すぐに安心している場合ではない事に気がついた。

 木乃香が攫われてしまった。
 最悪の事態は、相手が士郎だからまだ安心は出来る。
 しかし、その信頼があったとしても、救出を放棄するわけにはいかない。
 刹那は木乃香を守る剣なのだから。その役割を、例え士郎が相手だとしても放棄してはならないのだ。
 それがあの選択の意義。例え士郎と敵対してでも、木乃香だけは守らないと。

 そうして、負傷者を援軍に任せた刹那は、一人木乃香を救出する為に動き出した。




◇ ◆ ◇ ◆





 一方、木乃香を連れ去った士郎はと言えば。
 壁に体重を預け、そのままずるずると腰を下ろす。
 壁には血痕が伸びていた。ギチギチと剣が犇めき合う脇腹から、漏れるように出血は続いている。
 ガンドルフィーニの一撃は、体組織を焼き散らした為に出血には関わっていない。
 出血は士郎の剣鱗によるものだった。火傷で一度は塞がった傷口から剣が生えているのである。出血ぐらいは当然だろう。

 その傷を、木乃香は頼まれるでもなくアーティファクトを使って癒した。
 その為に連れてこられた事は理解していた。つい先ほど刹那を痛めつけていた相手だというのも、覚えている。
 けれど、見ていられなかった。その傷さえ消してしまえば、その“違い”に目を向けなくてもいいと。
 そんな、淡い期待を抱いていたのかもしれない。

「助かった」

 未だ壁に体重を預け、呟くように士郎は言った。
 途端、木乃香は我慢していた涙を堪えきれなくなる。
 それは別に、感謝の言葉だったからではなく、きっと士郎がどんな言葉をかけても同じだったろう。

 木乃香自身コントロールできないし、そもそも何をこんなに悲しんでいるのか、何がこんなに苦しいのか、それさえ漠然としていて霞を掴むようだった。
 だから、木乃香がいきなり泣き出した理由を士郎が察せるわけもなく。

「……泣かないでくれ。泣かれると、弱い」

 困り切って、渋々そう言った。
 抱きしめてしまえば、それで解決したのかもしれない。
 その場凌ぎでも、本質的に何も解決しなくても、今この場は。
 けれど、そうするわけにもいかない。
 彼女を切り捨てて行こうという男が、何を今更。そんな優しい事なんて、きっと害にしかならない。
 いつか必ず、木乃香の為に戻ってくるというのならまだしも。
 その可能性は、きっと低い。

「なら、ウチ、ずっと泣いとる。泣いとるさかい……ここにおって」

 そう言って、泣き顔を見せないように俯きながら。
 ちょこんと、木乃香は士郎の聖骸布の裾を摘む。

 ああ、全く馬鹿だ。そうとしか言えない。
 つい先ほどまで、そんな無責任な事は出来ないなんて考えていたというのに。
 消え入りそうに呟かれただけで、あっさり士郎は意見を変えた。
 少なくとも、今だけは。木乃香を抱きしめてもいいだろう。
 何とも甘い事に、これ以上木乃香の泣き顔を見ている事に、士郎は耐えられなかった。

「微温くなった、か……確かにそうだよ、タカミチ」

 つい先ほど、友人から告げられた宣戦布告を思い出す。
 こんな事で立ち止まってしまうのなら、成程。遠くなく衛宮士郎は倒れるだろう。倒されてしまうだろう。
 けれど。

「雨は降っていない、な」

 まだ記憶も摩耗していない、忘れたくても忘れられないあの夜も、確か同じような事を言われたのだったと。
 木乃香の頭を撫で付けながら、窓の外を眺めて。
 そんな事を思い出してしまったから、今更突き放すことなんて出来やしなかった。






◇ ◆ ◇ ◆









 まんまと士郎にハメられた超は、それに対して怒るでもなくお別れ会を楽しんだ。
 まぁ、葉加瀬や真名までグルだったのだから仕方ない。
 会が終了し、ネギとの幾許かの会話の後、幾つかの偽装経路を通ってホームに帰る。

 ホームと言っても、麻帆良の各地に存在する超のセーフハウスといったところだ。
 予定時刻にはまだ早いが、もうしばらくすれば士郎他、仲間たちが集まってくるだろう。
 その後、ついに悲願を達成する為の最終作戦が始まる。

 だが、その最終作戦を決行する前に、一つだけ確認しなければならない事がある。
 この作戦が、上手くいくか否か。
 結果がどうあれ、実行するに当たって果たしてどれだけの障害があり、その難易度はどうか。
 という事。

 時間移動出来るという事はつまり、未来の情報を得る手段を持つに等しい。
 これから先の未来、超自身のスケジュールとして。
 例えば12時間後に、ネギたちの存在が確認できるかどうか。
 カシオペアに仕掛けた罠により、ネギたちを排除する事が出来たのかどうか。
 作戦決行の直前に、今現在この時間に戻り、その成否だけでも過去に報告する。

 そう、自身のスケジュールを決定しておけばいい。
 既に決めてある所定の位置に情報がなければ、不慮の事態により過去への情報伝達が不可能になったという事。
 そして情報がそこにあれば……。

「フム。どうやら未来の私はちゃんと仕事を果たしたようネ」

 その文書は、当然のように暗号化されている。
 魔法使いでは読めないように、デジタル式だ。これなら士郎でも読めない。
 読めるとしても、計画の全てを知る葉加瀬か茶々丸くらいのもの。
 ならば問題はなかった。真名にも、そして士郎には絶対に知らせるわけにはいかないが。

 果たして、そこに記されている内容は。




『ネギ・スプリングフィールド一派は現れず。衛宮士郎の消去は規定時間から変更なし』
→『ネギ・スプリングフィールド一派の存在を確認。衛宮士郎の消去を最優先目標とする』



 

刹那「もう何度目かわかりませんが、メインヒロインって私ですよね……?」
アキラ「あれ? 動乱編って私のターンじゃないの?」
木乃香「もうウチがメインヒロインでええんとちゃう?」
超「……次話はワタシがヒロインネ!」

(拍手)
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あとがき

後書き忘れてました。
予定通りにやるのは難しいね。これ、合間にいろいろカットした話はあるんだけど、果たしてお披露目する機会があるかどうか。
とりあえず、木乃香は飛ばします。最悪もう動乱編で出てこないかも。
説明不足だとはわかってるんだけど……あの説明はあっちの話を終わらせてからにしたい。構成拙くてごめん。
よっぽど要望があったら先出し考えるけど。まぁ木乃香は後出しの方が暗躍してるっぽくて良さそうな……いや、もともと木乃香はこんなキャラじゃないはずなんだけどね。

2011.01.28 | URL | 作者 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

遅ればせながら更新乙
ゼミの報告が終わってゆっくり読めた

2011.01.29 | URL | とろみ #- [ 編集 ]

Re: とろみさん

ども。今回はいろいろ説明不足になってるみたいなので、次を早めに書こうと思います。

2011.01.29 | URL | 作者 #- [ 編集 ]

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2011.02.02 | | # [ 編集 ]


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