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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第73話


「刻々と進む状況変化」 「よくもまぁ、ここまで辿り着けたものネ」

 表彰式も終わり、士郎が色々と分かり易く動いた為にその共謀者であるところの超もまた、逃亡の算段をつけなければならなかった。
 というのに、突然の来訪者だ。
 それも予想された魔法先生たちではなく、ほとんど一般人に近い一人の少女。
 確かに日本最大の魔力を保持していても、彼女自身が今使える魔法など高が知れている。
 だと言うのに、魔法の力など一切使わず、少女……近衛木乃香は、学園祭の動乱の中心となる超鈴音に辿り着いていた。
 
「ややわぁ。ウチ、茶々丸さんに付いてきただけなんよ」

 それが真っ赤な嘘である事は当然の事だった。
 茶々丸は確かにあの会場で解説役をこなしていたが、しかしまだこちらには帰還していない。
 その予定もない。夜まで彼女は自由時間だ。
 彼女の関与が、極力悟られないように。現状士郎と超に向いている監視の目を、茶々丸にまで及ばせない為の敢えて。
 だからこそ、つまり木乃香はこの計画に茶々丸が関与していることを当然とした上で、己がどのような手段を使ってここまで到達したのか隠しているという事だ。
 
「それで、何の用カナ?」
「うん。超りんと士郎さんが、何を企んどるんやろうなって。訊いとこうかと思ったんよ」

 簡単に言ってくれる。思わず超は笑みを浮かべた。
 超も、士郎が裏切る可能性を考慮に入れて、むしろ魔法先生たちに対するよりも力を入れて士郎を監視している。
 あの病室での会話もだ。だから木乃香がどの程度の情報を掴んでいるのかは理解していた。
 その上で、あの短時間でここまで辿り着いたというのなら、それは確かに脅威だろう。

 それが、智謀によるものであったとしても、単なる偶然であったとしても。
 敵対する事になるのならば厄介な相手だ。それは武力で圧倒できない類の力だから。
 ここに来ての不確定要素の存在は、極力排除したい。
 ならば超が取り得る最上の選択肢とは何か。

 木乃香もこちら側に取り込む……否、それが可能だとは思えない。
 木乃香は学園長の孫であり、家族を裏切る事は出来ないだろう。
 それに何より、木乃香は士郎に執着している。刀子との会話を聞くに、超を恨んでいてもおかしくないぐらいだ。
 そろそろ魔法先生たちも集結する頃合いでもある。あまり悩んでいる時間はないのだが。

「それに、私が素直に答えるとでも思てるカ?」
「半々やなぁ。話してくれた方が色々楽やけど」

 ほんわかと笑みを崩さない木乃香に、超は流石に笑みが曇る。
 真意が見えないが、探っている時間もない。魔法先生たちをこの部屋で迎え撃つのは困る事情があった。

「そうダナ。なら、私の逃亡に手を貸してくれるなら、我々の目的を語るヨ」
「うん、ええよ」

 あっさり。木乃香は頷いた。そんな事でいいのかと、逆に超に問うように。

「何でそんなに驚いとるん? 超りんが言い出したんやろ?」
「君は……いや、いいネ。では脱出するとするヨ。君は何も喋らず、ただ黙っているだけでいいネ」
「ん、了解や」

 はいっと大きく手を挙げる様だけ見れば、何も考えていないように見える。
 見えるからこそ、怪しく思えた。早まったかとも危惧したが、しかし超は信じると決断する。
 木乃香の思惑でもなく、その脳天気な笑顔でもなく、己の人を見る目でもなく。
 これから先、計画には必要であろう己の天運を。
 こんなところで躓くようならそこまでだ。どんなに計算しても解が出ないイレギュラーが邪魔をするというのなら、“彼女”の言う通り、それが抑止力であるのだろう。
 ならば、それに対抗できるのは、せめて英雄と呼ばれる人間でなければならない。
 或いは。英霊に成り得る存在でしか。

『超さん、既に魔法先生が集結しています。士郎さんと合流した方が……』
「イヤ。今彼を呼び戻せば、我々の切り札を晒す事になるネ。高畑先生も地上に戻っているし、現時点で感づかれるのはマズイヨ」
『そうかもしれませんが……ここで捕まっても同じ事でしょう?』
「策はあるヨ。葉加瀬は予定通りホームで準備を進めておいて欲しいネ」

 了解との返事の後、プツリとホログラムが消失する。

「ほな、行こか?」
「…………アア、では、手はず通りにネ」








 人質を取る、という選択は、魔法先生たちに対するに当たって下策中の下策だろう。
 誰かを守る為に、という大義名分があれば彼らに遠慮はなくなる。
 まして、それが学園長の孫ともなれば、その反応が如何ほどになるかなど超に予想できないハズがない。
 それでもこの方法を採ったのは、別に木乃香を試す為だけではなかった。

 今、これだけの人員が超に向けられているという事は、逆に士郎の方は手薄になっている。
 これから後、逆に士郎の方に注目してもらう必要がある為、今は士郎に包囲網から逃れてもらわねばならない。
 交互にお互いが囮になる。
 今や、タカミチを通じて超の目的は学園側にも知れているはずだから、超を放っておく選択肢はない。
 超と士郎の結託が確信を抱けるものとしても、それが推論でしかない以上結果は変わらない。

 “もしも”は必ずついて回る。そして、もしも士郎と超が結託などしていなかったら。
 別々に別々の目的を持って動いていたら。
 どれだけ可能性が低かろうとも、そのもしもを考えて魔法先生たちは動かざるをえないだろう。

 超の目的、魔法を全世界にバラすというのは、学園長が全責任を負う程度で収拾が付けられる問題ではない。
 士郎の目的は知れず、けれども何かを企んでいるのなら無視などできない。
 その程度には、この麻帆良で有名になってしまった。
 彼なら何をしてもおかしくない――その認識が、正常な判断を曇らせる。
 どう考えても超と士郎は結託している。していても。その“もしも”が邪魔をする。

 まぁ、大した事はない、幼稚な掻き回しの一つだ。少しでも混乱してくれたら儲け物、という程度の。
 だがしかし、超の予想以上に、衛宮士郎という人間は恐れられているらしかった。

「どうも、私は舐められているようネ」

 ここに現れたのは、タカミチだけ。
 他の魔法先生たちが潜み捕縛の機会を伺っているわけでもない。そんな事をする必要もない。
 ならばつまり、それは。

「いや、そういうわけじゃないよ。君の目的は、まだ他の魔法先生たちには伝えてないからね」

 あっさりと、タカミチは告げた。
 ある意味、今の自分は協会の一員としてここにいるわけではないと宣言しているようなものである。
 知らせていないという事は、タカミチ個人にとってまだ知らせるわけにはいかなかったというのが妥当。
 で、あるならば、ここに現れた意味は。

「……それは、背信行為というヤツに思えるヨ?」
「そうだね。協会の人間として、あまり褒められた行為じゃないのは確かだ」

 またも、あっさり認めてタカミチは視線を超から木乃香へと移す。
 超との約束通り、木乃香は身動ぎもせず黙っていた。

「それでも僕が一人でここに来た理由の前に、何故木乃香君がここにいるのかを訊いてもいいかな?」
「別に、これといった理由はないヨ。彼女は私に質問があり、ついて来ているだけダ」
「質問、ね……」

 木乃香はタカミチから逃げるようにそっぽを向いた。
 タカミチもその行動に軽くショックを受けながら、木乃香に問う。

「木乃香君、もしかして君がここにいるのは……士郎関係かい?」

 その質問に、木乃香は超を仰ぎ見た。
 何も喋らないという約束がある。超に許可を求めているのだ。超も、この状況だからか頷いた。

「そやよ。士郎さん絡み。でも、高畑先生ウチらの事知っとったん?」
「いいや。詳しくは知らない。士郎から聞いた事もないよ。その事は安心してもいい。
 でも多分、僕がこの世界で一番士郎に近しいからね」
「先生が、一番……?」
「ああ。木乃香君も、もしかしたら士郎を理解したつもりになっているのかもしれないけれど……だとしたら認識を改めた方がいい。
 アレは理解できるような人間じゃないよ。理解していい相手でもない」

 冷たく静かに。授業で構文を教えるように、タカミチが言う。
 何故木乃香がここにいるのかも、何を目的としているのかも、全て見通しているかのように。
 それに、木乃香はあからさまに怒りを見せた。

「そんな事、あらへん。そんな事……」

 理由などない。でも信頼はしていた。分からないし、理解できたなんて傲慢もないけれど。でも。
 理解したいとは思うし、分かりたいとも思う。
 助けになって欲しいし、支えてあげたいとも思う。
 だから、「一番近しい」と言いつつ、そんな、否定的な言葉を連ねるタカミチが許せない。

「そうだね。そう思うのなら、学園祭が終わったらアル……クウネルさんを訪ねるといい。
 多分この世界で、僕と彼だけが士郎の過去を知っているからね」

 教えてくれるかは別として、と。
 どこまで知っているのか、タカミチは助言のように告げた。
 それに対して、木乃香は子供のようにムスッと黙りこむ。
 いいや、やはり子供ではあるのだ。
 大人びた決意も、覚悟も、それがどれ程本物であろうとも、子供であることに変わりはない。

「さて、そろそろいいカ?」
「ああ、超君。待たせてしまったかな」
「本来、私が待つ義理などないと思うのだけどネ」

 確かにそうだ。そうしなかったのは、木乃香に恨まれるのが少々恐ろしかったというのと、そんな事をして心証を悪くしてしまっては……タカミチから逃げるのも容易ではなくなる。
 手心など考えてはいないが、しかし超はタカミチがこの場で捕縛しようとしているとは思っていない。
 そのつもりであるならば、もっと戦力を揃えて来ただろう。
 そうして万難を排して士郎に対する方がずっと成功率が高い。
 超を過小評価し、士郎を過大評価しているのなら猶の事。そうであるべきなのだ。

 故に。タカミチもまた、聞きたい事があるだけなのだろう。
 他の魔法先生たちがいる前では聞けないような。組織に背くかもしれないような、そんな問いの為に。
 それはきっと、木乃香の質問とそう変わらない。

「超君、君は……」




 その質問に、超は正直に答える。
 そして、タカミチはこの時、超と木乃香を見逃したのだった。
 この件について、事件後もタカミチはこの判断を後悔する事はなかった。
 ただ、もしもタカミチがこの場で超を捕らえていたのなら……運命は、大きく様相を異にしていたかもしれない。
 

 




◇ ◆ ◇ ◆








 しばし時を遡り。
 戦い続けて小一時間。いい加減ネギと明日菜の魔力と体力が尽きかけて、撤退を考え始めた頃の事。
 ネギと明日菜は、そこに辿りついた。

「ここは……」
「こりゃ凄いわね」

 今まで戦っていたロボット軍団が、それこそ先が見えない程に埋め尽くされている。
 百体はゆうに越える数だ。これだけの数と戦おうと思えば、麻帆良の魔法先生たちの戦力で足りないのは明白だろう。
 少なくとも、一般人を守りながら戦う事など不可能だ。しかも、これが総数であるとも限らない。

「これって動いたりしないわよね?」
「今のところその気配はないですけど……一応様子を見ましょう。これだけの数は相手に出来ません」

 数とは単純な暴力だ。
 百の力を持つ強者でも、一の力を持つ百の集団には勝てない。
 少なくともこの疲弊した状態で、これだけの数を相手にすれば逃げる事さえ難しい。
 ネギと明日菜は遠巻きに停止したロボットたちを観察する。

「これってやっぱり……超さんの?」
「分かりません。けど……タカミチを攫った犯人と関係があるのは確かだと思います」

 タカミチを救出に来てみればこれだ。関係がないわけがない。
 確かに、茶々丸を造った超ならばこれぐらいは可能だろう。
 けれどネギとしては生徒の事を信じたい。一度、ガンドルフィーニ相手に啖呵を切ってしまった事もあるし。
 だが、もし本当に超が「悪いこと」を計画しているなら。何より先生として止めなければならない。
 そう、密かに決心する。誰かにそうしろと言われたからじゃない。
 自分自身がそうしたいから。超には、そう在って欲しいから。
 それは我儘なのかもしれなかったが、ネギは迷わない。ただ、考える事だけは止めないように。

「ねぇネギ、こっちこっちー!」
「何ですか、明日菜さ……!」

 明日菜の方に振り返り、思わず息を呑んだ。
 朽ちた巨人、とでも言うべきその像は、半ばまで埋まっているというのに圧倒的な存在感を保っている。
 光の具合が理由かもしれないが、とても神々しく感じられた。
 そう、これはまるで……。

「なんとかスクナ……だっけ? 京都で戦ったヤツ。あれに似てない?」
「僕もそう思いました。これも封印されている鬼神なのかもしれません」

 鬼神ともなれば、本格的に上位の魔法使いでなければ相手にならない。
 リョウメンスクナノカミにしろ、詠春とナギの二人で滅ぼす事が出来ず、結果封印を選択しているのだ。
 あの時、全力の一撃が全くダメージを与えていなかった事をネギは思い出す。
 目の前のこの鬼神が、スクナと同位だとは思わないが……しかし、脅威である事は事実だろう。

「あ、アスナさんはそれに近づかないようにして下さい。封印が解けてしまうかも」
「うっ、分かったわよ」

 触れようと手を伸ばしていた明日菜はおっかなびっくり手を引っ込める。
 或いは、封印を解くだけでなく送り還してしまうかもしれないが、試す気にはなれない。
 もしもスクナで成功していたのなら考える余地もあるけれど。

「で、これからどうすんの? 広すぎてよく分かんないけど、ここから先はなさそうよ」
「そうですね。もしかしたらタカミチも自力で脱出しているかもしれません。一度地上に戻ってみましょうか」
「でも、まだ捕まってたら……」
「どちらにしても、僕達も少しは休まないと。地上に戻ったら別荘で休んで、その後またこの時間までカシオペアで戻ってくれば大丈夫です」
「あ、そっか。でもそれなら、高畑先生が捕まる前に邪魔はできないの?」
「でも、そうするとカシオペアが皆にバレちゃいますから。この事件に超さんが関係ない場合、面倒な事になるかもしれません」

 この時ネギは、己の保身の事を考えていた。
 このカシオペアがバレてしまうと……怒られるかもしれない、と考えていたのだ。
 超から貰った技術。要注意生徒として記憶を消されるところだった超を、ネギは己の裁量で預かった。
 それに対して後悔はしてない。してないが、こうしてこんな便利な道具を貰うという事が、他の人からどんな目で見られるか、という事について。
 ネギは頭を回してしまった。今まで気にも留めなかった事に、だ。

 賄賂。そうでなくても、ネギを懐柔する為の贈り物である、と。そういう風に見られるかもしれない。
 そしてその場合、どんなに違うと叫んでも意味がない事にまで、ネギは思考を進めた。
 だってそうだ。第三者は過程なんて見る事は出来ない。分かるのは結果だけだ。
 実際、ネギはカシオペアを貰った事で浮かれていた。
 こんな便利な道具をくれる人が悪い事をするはずがない、とさえ思っていた。
 そんな風に思っていた事は、ネギが言い出さない限りバレることはない。
 だが、ネギに罪悪感を植え付けるのには十分だった。

 しかし、悪いと思っていても、それを誰かに知られたいとは思わない。
 隠せる事なら隠していたいし、何も言わなければバレないのだ。
 問題さえ起こらなければいい。もし起こるとしても、ネギ自身の手で解決すればいいのだ。

 勿論、ネギは保身の為だけにこんな事を考えているわけじゃない。
 保身がないとは言わないが、その理由の大きな部分は超の、生徒の為だ。
 問題が大きくなれば、どうしても記憶を消す、或いはもっと大きな罰が下される可能性がある。
 しかしネギ自身の手で内々に処理できたなら、他の魔法先生に知られる事もなく、当然罰もない。
 エヴァンジェリンの時のように、改心してくれればいい。
 そしてその結末を信じて疑わないから。失敗した事がないから、ネギはそんな選択を認めてしまう。

 色々と考えても、結局失敗のリスクについてまで思考は及ばなかった。
 自分の行動がどんな結果に至るのかを考えても、自分の行動がそもそも失敗する事など考えていない。
 ネギはまだ幼い。それも仕方のない事ではあるのだろう。
 失敗した経験がなければ、その発想は出てこない。
 問題は。ネギの力で失敗してしまった時に、挽回する方法が残されているのかどうか、だった。

「ネギっ!」

 と、明日菜との会話の途中だったというのに考え込んでしまったネギは、耳元で聞こえた明日菜の大声で我に返った。

「あ、アスナさんっ?」
「呆けてんじゃないわよ、ネギっ。あいつら動き出した!」
「あいつら……?!」

 いつの間にか、封印された鬼神らしきものを調べていたネギたちを取り囲むように、ロボット軍団が起動して包囲網を作っていた。
 まだスペースはあるが、じりじりと詰められている。
 これだけの数を相手にするには、ネギの魔力が足りない。
 もうネギの魔力はカシオペア一回分ぐらいしか残っていないのだ。

 残った魔力で上位呪文……雷の暴風でも唱えればある程度数は減らせるだろうが、そこから逃げるのが難しい。
 それに雷の暴風では直線しか攻撃できない。広範囲に対する攻撃手段を、ネギは持っていないのだ。
 肉体強化にしたってそれなりに魔力を使う。自分一人ならば飛んで逃げればいいのだが、明日菜が一緒となると難しい。
 明日菜の完全魔法無効化能力のせいか、明日菜を連れていると飛行速度が落ちる事がある。
 普通に飛べる事もあるから、必ずそうなるとは限らないが……そうでなくても、茶々丸と同じように相手も飛べた場合、逆に不利になる可能性もある。
 大空ならばともかく、天井が高いとは言え室内だ。速度も制限されるし、数で押されて捕まる可能性は高い。
 と、なれば。

「明日菜さん」
「なに?」
「一点突破です。僕を信じてついて来てくれますか?」
「っ……よ、よーしっ、任せなさいっ!」

 一瞬明日菜が停止した。後、赤くなって視線を逸らしたが取り敢えず問題はない。
 現時点で近接格闘技能が上であるネギが前に。
 明日菜がネギをフォローしながら、後ろは気にせず突っ走る。

 ロボットたちの動きは決して速いとは言えない。
 冷静に対処すれば簡単に倒せる。あくまで一対一ならば。
 しかしいくら遅いからと言って、倒して行く場合一体を相手にしている間に囲まれてしまう。
 故に、打撃で体勢を崩しスペースを作ってネギは進んでいく。
 後続の明日菜が動きやすいように、ルートを考えて。
 
 打撃音を響かせて、ネギは突き進む。
 相手は人間ではない。魔力や気による防御もなければ、破壊するのは簡単だ。
 問題はこのロボットたちの超人的と言えるバランス感覚と、人間ならば痛みで動けなくなる痛打でも平気で動ける機械特性。
 片足の関節を破壊しても、片足でそのまま攻撃してくる。光線の発射口が口にあるのも厄介だった。
 それが数で攻めて来るのだからたまったものではない。
 それに対して、駆け抜けながら攻撃できるのはせいぜい一箇所。動きを阻害する事は出来ても足止めにはならない。

 だが、ネギは一人ではなかった。優秀なパートナーが、後ろから援護してくれる。
 ネギが破壊しきれなかった片足を、明日菜が大剣で斬り裂いていく。
 これならば、むしろネギより明日菜が先頭に立った方がいいかもしれないと思わせる程、その動きは自然だった。
 当然のように戦い、破壊し、駆け抜ける。熟練の戦士のように。
 その姿は、あまりに素人という枠から逸脱していた。
 裏の世界、戦いに身を置く人間の誰もが、舞うように駆けるこの少女が数ヶ月前まで素人だった事実を信じられないだろう。
 それ程までに苛烈であり、容赦がない。

 回数を重ねる毎に、少しずつ。もしかしたら、誰も見ていないせいかもしれない。
 今はネギも前だけを向いていて、振り返る余裕もないから。
 それがさも当たり前であるかのように。残虐性が増している。
 と、いうよりは、かつての姿に戻りつつあるというべきか。
 明日菜自身無意識に、箍が外れかかっている。
 その原因は、刹那との試合前にアルが行った小細工のせいかもしれないし、士郎とエヴァンジェリンの戦いから受けたショックであるかもしれない。
 どちらが原因だとしても、この現状は誰にとっても好ましくないものだった。

 もしもネギが振り返っていれば、あの修学旅行の夜を思い出し危機感を持つだろう。
 もしもタカミチが見れば、対抗策に迷うかもしれない。アルだって、こんな状況は望んでいなかった。
 そしてもしも、士郎が見ていたら。タカミチと、決定的な決裂を迎えていたかもしれない。

 しかしそれらは全て仮定の話であり、この場では誰もがそんな現状を認識していなかった。
 そしてそれ以上に、差し迫った危機が訪れる。

「ネギっ!」

 数とは暴力だ。相手が魔法障壁ももっていない機械だからと言って、疲弊したネギではトップスピードを保つ事は出来なかった。
 順々に破壊していく事は可能でも、破壊して進む度に包囲網は狭められていく。
 数の密度は増していく。そして結局、ネギの許容値を越える事になった。
 後ろを振り返る事なく明日菜の破壊神ぶりを知らないネギは、極力明日菜の負担を減らそうと己の分を越える敵を相手にしていた。
 計り間違えたのは、敵の力か己の力か。どちらにせよ、ネギは間違えた。
 結果、

「ぐぅっ」

 一撃入ってしまう。障壁は貫通していないからダメージはないが、体勢は崩れた。
 だが、多数の軍勢を単身相手にしている状態では、僅かな隙でも致命になりうる。
 明日菜がフォローに入る事で事無きを得たが、足が止まり完全に包囲されてしまった。

「すみません、アスナさん……」
「何言ってんのよ。それよりこれからどうすんの? 逃がして貰えそうにないけど」
「これがもしも超さんの指示なら、酷い事にはならないと思いますけど」

 だからと言って、降るわけにもいかない。これが超の仕業だとするならば尚更に。
 先生として超を更生させようと思うのなら、ネギはここで負けるわけにはいかなかった。
 しかし根性でどうにかなるような状況でもない。
 魔力も体力も完全回復できるような素敵アイテムがあるのなら別だが、そんなものは……。

「あ……っ! アスナさん、カシオペアを使います!」
「過去へ戻るって事? いいけどアンタ、魔力残ってるの!?」

 ギリギリではあったが、たった10分でも戻れればいい。そこでは敵が動いていない事は分かっているのだから、問題はないはずだ。
 しかし問題はそこにはない。問題は、

「くっ、使う暇がない……!」

 ネギと明日菜は背中合わせに互いを守っているが、しかしこれでは防戦一方だ。
 カシオペアは時間座標の指定に極度の集中が必要になる。
 かなりの精密操作が必要なのだ。この乱戦状態で、一秒でも無防備な状態を晒せば共倒れになる。

 かと言って何も対策を討てなければジリ貧だ。
 何か何か何か。何か方法はないのか。そう思う程に焦りは動きを鈍らせる。
 敵の腕を弾き、光線を防御し、時には攻撃して相手を足止めして。
 それさえ、重くなっていく腕と足が拒否反応を示していく。

「ハァ、ハァ、フウッ!」
「ハァ、ちょっとネギ……大丈夫?」
「ハイ、まだ、やれます」

 とは言え、続ける程に疲労は蓄積していく。
 敵の数はむしろ増えていき、徐々に二人に諦めが宿ってきた。
 投降できるものならしてしまった方がいいのではないか。
 ロボットにそれが通じるかどうかは分からないが、裏にいるのが超ならば期待できる選択肢だ。

 けれどどちらも、それを言い出す事はない。
 何故か、諦めたくなかった。
 確かにタカミチの安全が掛かっているかもしれないが、しかしそれ程重大な危機というわけでもないというのに。
 諦めず、拳を、剣を振るい続けて、魔力残量がカシオペアでの脱出も難しくなった時。
 黒い影が疾走した。

「ネギ! 助けに来たで!」

 狗神。アルビレオには全く通じなかったそれが、ロボを呆気無く蹴散らしていく。

「小太郎くんっ?!」
「おう、なんやボロボロやな。こんな奴ら相手に苦戦なんかするんやないで」
「し、してないよ!」

 ネギは顔を赤くして反論するが、この状況を見れば一目瞭然だった。
 小太郎は明日菜も一瞥すると、すぐさま表情を切り替える。

「ほな、さっさと脱出しよか。なんや、タカミチさんはもう帰ってきてるらしいで。な?」
「ハイ。先ほど念話を受け取りました。私たちの任務は、高畑先生救出から伝令に変わってしまったんですけど……図らずもタイミングは良かったようですね」

 愛衣は箒から降りながら答える。
 敵対するロボたちは、新たな参入者に警戒しているのか攻撃を止めている。
 戦力分析でも行っているのか、それとも命令が更新されたのか。

「チャンスやな。明日菜姉ちゃんも動けるか?」
「私は大丈夫よ。ネギは?」
「大丈夫ですよ。急ぎましょう」

 そうして、ネギたちはあっさりとピンチから脱出した。





◇ ◆ ◇ ◆







 二時間後。世界樹広場にて。
 士郎は武道会の時と同じ聖骸布の外套を纏って立っていた。
 学園祭でなければ浮いてしまうような格好だし、何よりデートには沿わないものではあるが、彼にそんな意識がないので仕方ない。

 そんな士郎を監視する目が、いくつかある。
 一つ二つ三つ……少なくとも四人以上は配置についているだろう。
 それも当然、彼らは士郎の監視だけでなく、この世界樹広場での告白阻止も兼ねているのだ。
 あまりにもあからさまな監視だから、恐らくは生徒。
 監視と言っても、遠目に動きがあれば報告せよ、とその程度のものだろう。
 どちらかと言えば、生徒たちはいい迷惑だと感じているに違いない。
 なにせ、最重要監視対象がのこのこ最も関係者の多い場所にいるのだ。
 どうせ敵わないのは目に見えているから手は出せないし、しかし告白阻止と同様に注意もしていなければならない。

 全く迷惑な話だが、それこそ士郎の狙いだった。
 常に監視を付かせる。魔法関係者の注意を士郎に集中させるためだ。
 どんな理由にしろ、ただ遊んでいるように見えたとしても、事情を知る魔法先生たちは注目せざるを得ない。
 その為に、わざわざ刀子に麻帆良を去るなどと伝えたのだ。
 世界樹地下の空間は、魔法先生たちでも全容を把握していない。
 どこに繋がっているのか、出入口の詳細な記録はないのだ。
 麻帆良の外には繋がっていなくても、地下通路を使われれば容易に包囲網など突破される危険性がある事を承知している。

 だからこそ、士郎が地下を使って麻帆良脱出を目論んでいるのでは、と警戒しているのだ。
 世界樹広場付近には、大小含めて幾つも地下に通じる道がある。
 図書館島まで通じているものは少ないだろうが、あるのは確実だ。
 そこから脱出を考えている。そうでなくても、何らかの企みはあるのだろうと。
 そうでなければ、態々警戒されている只中に突っ込んでいく真似などすまい。

 という思考に誘導する為に、ここ一月程の時間を費やしていた。
 この時点で使う予定ではなかったが、それは些細な事だ。
 タカミチとの僅かな不和も、魔法先生たちへの非協力も、あえてらしからぬ動きを入れる事で疑心を抱かせるように。
 超に協力すると決めた時から、ずっと。些か上手く行き過ぎた感も否めないが、それは問題ない。

 後は、学園側がいつ痺れをきらせるか、だ。
 或いは、学園長が動くか否かにもかかっている。
 どちらにせよ、士郎は分の悪い賭けではないと思っていた。
 賭けに負けたら負けたでまだ策はある。
 多少のリスクはあるが、メリットも大きい。アキラとの約束も消化できるし、丁度いいと。

 ただ、士郎も麻帆良武道会のおかげでそれなりに有名人になっている。
 それでもこんな所で待っていられるのは、人払いの結界を張ってあるからだ。
 一応、遠くから監視している者たちに影響を与えないよう、極近い範囲にしか作用しない限定的なものではあるが。
 士郎が目的で近づいてきても、その範囲内に入れば目的を忘れる。
 おかげで士郎は直立不動、身動ぎもせず彫像のようにアキラを待つ事ができている。

 尤も、この世界樹広場を待ち合わせ場所に指定したのは、学園側に対する牽制だけが目的ではなかった。
 世界樹の魔力には士郎では抗えない強制力が存在するが、しかし逆に恩恵もあるのだ。
 告白成就など厄介ではあるが、世界樹の近くに居た方が魔力の回復が早い。
 魔力だけでなく、エヴァンジェリンとの戦いで疲弊した精神をも、ある程度負担を軽減してくれている。

 来る戦いを考えるのならば、少しでも回復しておくにこした事はない。
 アキラと連絡を取ってから一時間、士郎はずっとこの世界樹広場に佇んでいたおかげで、完全には程遠いなりに歩きまわる事に苦を感じ無い程度には回復している。
 本当なら世界樹の根に近い程回復効果は高いし、そうでなくても工房に篭った方がいいのは事実だ。
 それが出来ないのは前述の通りだが、他にもまだまだ理由はある。

 アキラの事。刹那の問題が、解決しないなりにある程度の妥協点を見つけられた以上、残る士郎の気がかりは明日菜とアキラの事だ。
 明日菜に関しては、士郎が出しゃばる必要も権利もない。タカミチに任せるつもりだった。
 だがアキラについては別だ。
 アキラが魔法を知ってしまったのは士郎の落ち度だし、その前途には責任がある。

 そして、それ以上に、時折アキラに見え隠れする特殊性。
 それが気がかりだった。
 優先順位として、超の計画よりも優先するつもりはないけれど、可能な限りこれからの数時間で突き止める。
 そんな決意を秘めて、士郎はこの場で待ち続けていた。

「すいません、士郎さん。待ちましたか?」

 アキラの声は、喧騒の中でもハッキリと聞こえた。振り返った先には、綺麗に着飾ったアキラの姿がある。
 その事実に、士郎は矢張りと表情を消した。 








木乃香「いやいや、前のは演技なんよ? 演技!」(拍手)
 
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後書き

デート回ならず。ごめん。
そして次回もまだデートにならないかもしれない可能性が……。
色々やりたい事があって困る。
そして木乃香は相変わらず暗躍してますが、その内ツケを払う事になるかもしれませんね。
動乱編の終盤で。

2010.12.18 | URL | 夢前 黒人 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

今回も乙
結構量があるはずなのに,すごく短く感じる
次回もがんばってくださいね.

2010.12.19 | URL | とろみ #- [ 編集 ]

お久しぶりです。
あー、にしても、やっぱり人払いが効いてないですね。
どうなることやら。
楽しみに待ってます。

2010.12.19 | URL | ぜろぜろわん #SFo5/nok [ 編集 ]

Re:とろみさん

いやぁ、実はそんなに量はないです。12000字強。24kb程度です。
長い時は30kbは超えますから、今回は平均的な長さになりました。
何とか来週更新できるよう頑張ります。

2010.12.19 | URL | 夢前 黒人 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

Re: ぜろぜろわんさん

ども。とりあえず、アキラのは魔法無効化とか、そんな便利な異能じゃない事だけは言っておく。
というか、こんなの異能でも何でもないんだけど……ある種、千雨に近いのかもしれない。

2010.12.19 | URL | 夢前 黒人 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

初めまして、木乃香がなんだかかわいいです。
近づきたくて背伸びして頑張ってるけなげな子に見える……。

2010.12.20 | URL | ななしさんα #twhBH4I2 [ 編集 ]

Re: ななしさんαさん

初めまして。これからもよろしくっす。
木乃香はそう感じて貰えると嬉しいっすね。背伸びしてる感が演技力に隠されすぎてるかもしれない。

2010.12.21 | URL | 夢前 黒人 #qiIB0A1Q [ 編集 ]


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