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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第72話


「アキラと千雨」 「ああもうっ、何体いるのよこいつらっ」
「明日菜さん、左前方!」
「って、うわぁっ。ありがとネギ!」

 二人は地下道を彷徨い歩き、ネギが目印を付けながら迷路のようなダンジョンを攻略していた。
 地下道と言っても下水道だから、薄暗い上にカビ臭い。丁度、RPGに出てくる洞窟なんかはこんなものなのかと明日菜が考えるくらいに、そこはダンジョンという単語がピッタリな空間だった。
 何せ、モンスター……敵ロボットまで出てきて襲ってくるのだから。
 後はお金と経験値が稼げれば、立派な体感型RPGである。

「ハァッ」
「雷の精霊11柱 集い来りて敵を射て」

 明日菜が前方で足止めして時間を稼ぎ、その間ネギが誘導性の高い呪文を詠唱。
 そしてネギの詠唱完了を見計らって、明日菜が下がる。

「魔法の射手 連弾・雷の11矢!」

 ネギは正確に関節を撃ち抜く。
 相手はロボットという事もあり、雷は天敵なのだろう。呆気無く機能停止し、その場に動くものはなくなった。

「はぁ……大丈夫ですか、明日菜さん」
「平気平気っ。アンタの方こそ大丈夫なの? 疲れてるんじゃない?」
「無理そうだったら言いますよ。今はタカミチが心配です、先を急ぎましょう」

 とは言うものの、実際ネギはそれなりに疲れている。
 魔力そのものはもう殆ど回復していたのだが、問題は神経……精神的なものだ。

 まず第一に、無詠唱魔法はそれなりに神経を使う。
 使用する魔力の量が変わらないとしても、無詠唱で魔法を行使するととても疲れるのだ。
 普段使っていない筋肉を使うような、呼吸しているのに息苦しさに喘ぐような、そんな感覚。

 そして第二に、つい先程見た光景が、尾を引いていた。
 虐殺。闘争ではなく戦争。惨たらしいなんて言葉の意味を、初めて理解してしまったかのような心持ち。
 かつて士郎に告げられた、予言のような忠告も頭を渦巻いている。

 選択の意味。自分が目指しているモノが、目指す先が意味するものは。
 自分が選んだ事によって何が変わるのか。何を変えてしまうのか。そして、何が変わらないのか。
 行動と、その結果に対する予想を。
 もっと大きなスケールで、ネギは考えるようになった。
 そして今も考え続けている。

 こうしてタカミチを救出することがどんな意味を持ってくるのか。
 考えつく限りの可能性を考慮に入れて、そして“自分がどうしたいのか”を考える。
 そうして考えれば考える程に、今までの自分がどれだけ考えなしだったのか分かってしまうのだ。
 教師として働いている今も。
 エヴァンジェリンの弟子として修行している今も。

 だが、考えれば考える程に分からなくなってしまう事もある。
 可能性が多すぎるからこそ、どれも魅力的だからこそ選べない、ある意味幸せな悩みだ。
 どの道を選んでもきっと後悔なんてしない。何となく、ネギはそんな確信があった。
 けれど、だからこそ自分がどんな道を歩むのか、決めかねてしまう。
 マギステル・マギになるという目標も、漠然とし過ぎていた。
 どうやってなるのか、マギステル・マギになった後に、何を成すのか。

 それが暗く重いものでも、新しい視点を得た事でネギの思考は活発になっていた。
 むしろ、今はまだ落ち着いていたいと思うくらいに。
 戦っている間は、自分でも分からない己の願望、心と向き合わずに済む。
 それが先を急ぐ原動力にもなっていた。
 そして今は、そんな先走るネギに明日菜が合わせている。支えている。
 そういう意味では、明日菜は既に優秀なパートナーだと言えるだろう。少なくとも戦闘面に限っては。
 
「そうね……先に行っちゃった美空ちゃんにも追いつかなきゃいけないし」

 そう、謎のシスターこと美空とココネの二人は、迫り来るロボ軍団を前にして敵前逃亡ならぬ敵前特攻して行った。
 いや、敵後逃亡だろうか。逃げたとは言え先に進めているわけだし、分断されてしまった事は自分の落ち度だとネギは考えている。
 明日菜としては面倒を押し付けて逃げていった美空に怒っているのだが。

「ええ、急ぎましょう」

 今はただただ戦っていたい。そんな感覚に身を委ね、ネギは突き進んだ。
 明日菜と共に、経験値だけは稼ぎながら。







◇ ◆ ◇ ◆







「こりゃあ……」
「先遣隊はネギ先生だそうですが」
「派手にやっとるみたいやな」

 足の踏み場もない程に散乱しているロボットたちの部品は、エヴァンジェリンと士郎の戦いを想起させるものではあったが、その現場を見ていない小太郎たちではそんな感想は抱けない。
 ただ派手にやっているな、と。ネギらしくない挙動を訝しむだけだ。

「急ぎましょう。魔力の残滓からして、それ程時間は経っていません」
「おう」

 特に障害もなく、小太郎と愛衣は進んでいく。小太郎が走り、それに追走する形で愛衣が飛んでいた。
 狭い地下水道とは言え、愛衣としてはこちらの方がまだ速い。
 連続瞬動など、基本的には一部の達人しか使えない高等スキルなのだ。
 典型的な魔法使いスタイルの愛衣では難しい。

「そう言えば」
「あん?」

 飛ぶように走る小太郎の後をついて行く愛衣は、思い出したように口を開く。

「あれから士郎さんを驚かせましたか?」
「んー……まぁ、なぁ」

 驚かせる、と言っても、それは成長だとか予想外の行動などであって、本当に不意打ちで驚かせても意味がない。
 意図しての事ならともかく、完全に偶然だった。
 士郎があっと驚くような事をしてやろう。その愛衣の提案には心躍るし、面白そうだとも思うのだが。
 流石に、あの事を喋るわけにもいかなかった。バレた時の士郎の反応が怖すぎる。

「中々上手くいかんわ。大体、驚かすゆーてもあんまやり過ぎると後が怖いし」
「ああ、確かに。普段怒らない人が怒ると怖いって言いますもんね」
「そういう事や。しかも俺の場合、一緒に住んどるから顔を合わせる機会も多いしな……」

 ないとは思うが、それで衣食住の待遇が変わったりすると困り者だ。
 胃袋を抑えられている人間は弱いのである。
 その時はあっさり千鶴のところに逃げこむだけだろうが。

「じゃ、諦めるんですか?」

 ニヤニヤと視線を向けてくる愛衣に、小太郎はこんな性格だったかと数時間前を思い出していた。
 少なくとも、一緒に修行していた間はこんなキャラじゃなかったのだが。
 正直ウザイ。だが、そういう相手にこそ反発してしまうのが小太郎だ。

「ふんっ、やると決めたら俺はやるで。絶対アンタより驚かせたる!」

 まぁ、やってる事はまるきり子供の遊びなのだが。
 健全ではあるのだろう。変に思いつめるよりは、ずっといい。
 もしかしたら、この話題も小太郎の精神状態を測る愛衣なりの心配なのかもしれない。
 表面上立ち直っているように見えても、男というのは平気で我慢しようとするから。
 カマぐらいかけないと、愛衣では見破る事ができないのだ。

「なら、私も次の手を考えます」
「へっ、負けへんで」

 二人は楽しそうに笑う。声も出さず、視線も合わせていないけれど、しかし連帯感はあった。
 こうして同じ方向に走っているという以上に。同じ事をして、競争しているという実感がある。
 相手がいなければ張り合いがなく、どれだけ強くなったとしても大した意味はない。
 互いに相手の底を分かっている二人だから、自分の成長を見せつけ認めさせる相手としては申し分なかった。

 ただ、小太郎にとって、愛衣相手にネギほど気安くはなれない。
 年上である上に異性であり、彼にしては珍しく共に成長するとか、倒すとか言った思考には結びつかなかった。
 尤も、ある意味ネギ以上に負けたくない、負けられない相手ではあるのだろうが。

 しかし愛衣にしたって、実力的には自分を上回っている小太郎でも、その精神的な未熟さが浮き彫りになるにつれ、弟のように感じている部分がある。
 どんなに強くても、まだ子供なのだ、という事を肌で感じてしまったから。
 それならば……年上として、守るのは当然の話だ。
 守れるくらいに強くなるのは、必要な事だ。
 まだ距離感が定まっていないところはあるけれど……一人っ子として高音を姉に見立てて憧れてきた愛衣としては、お姉ちゃんとしての自分、というのが激しくツボだったりする。

「止まれ!」

 唐突に、愛衣としては何の予兆も感じられない状態から、いきなり小太郎が叫んだ。
 しかもその注意喚起だけでなく、箒ごと愛衣を抱えてのバックステップ。
 確かに止まれと言われてすぐ急停止できるわけもないが、慣性を無視したような動きをされると正直痛い。
 お姫様抱っこだなんて現状を認識できないくらいに。

「なな、何なんですか……?」
「どうやら、お出迎えみたいや」

 赤い光が、無数に揺れ動いていた。
 この地下水道の薄暗さもあいまって、ここからではそれぐらいしか分からない。
 が、小太郎には見えている。魔法による強化を施さずとも、半獣である小太郎にはそれぐらいの身体能力がデフォルトで備えられていた。

「一応聞いとくけど、どれぐらい魔力残っとる?」
「中位呪文で換算して……二発、無理をすれば三発です」
「ならいつも通り、俺が前に出る。大技は使わず、防御と援護に専念してや」
「了解しました」

 そうして、ネギたちと同じく、小太郎たちも残骸の山を積み上げていった。






◇ ◆ ◇ ◆








 どういう事か説明してもらう――――。
 一度は質問を撤回した千雨も、それから続いた試合の内容と、あからさま過ぎるネット上での情報戦を見て考えを改めたようだった。
 そういう思考に行き着くのは当然の事だろうし、アキラも有耶無耶にするつもりはなかった。
 本来ならば、士郎に連絡した上で記憶消去の手順を踏むべきなのだろうとは思う。
 けれどそうしなかったのは、もしかしたら仲間が欲しかったのかもしれなかった。

 知っているのに、知っているだけで。
 それから逃げる事しかできない。そんな立場の仲間を。

 だから試合が終わった後、落ち着いた場所で話をする席を設けた。
 そろそろ昼時という事もあり、空いている店を探すのも一苦労ではあったが。
 注文を頼んで一休み。息をついて、混雑し賑やかな店内でも聞こえるように千雨が口を開く。

「お前、死ぬかもしれないとか何とか言ってたが……本当にそんな世界に片足突っ込んでるのかよ」
「ううん。そういうわけじゃない。片足突っ込んでるというより、遠くから眺めているだけだよ。
 何度か巻き込まれた事はあるけど」
「死にそうな目にあったってか?」
「どうだろう……彼女に殺すつもりがあったのかは分からないけど。でも、死んでてもおかしくはなかったのかもしれない」

 千雨がまず確認したかったのは、その危険度だ。
 死ぬかもしれないリスクなんて真っ平御免。
 心の奥底で、その非日常的な事象に惹かれているのだとしても……彼女は、全うな生物としての本能を備えている。
 誰が好き好んで殺されに行くものか。だから、どの程度の危険なのかを確認している。

 彼女自身も、その矛盾に気づいてはいないのだろう。
 どんなに目の前で繰り広げられたバトルが非現実的であったとしても、日々の生活の中に不可思議だと思うものが紛れていても。
 そんなものからは目を逸らしてしまえばいい。それで万事解決する。
 ただ、性根として性格として、彼女はそれが許せないというだけ。
 知的好奇心というよりは、そういう性分ではあるのだろう。
 普通でありたい、などと口にするものに限って、普通でない関わりが気になるのだ。
 この年頃ならば、特に。

「私の事より、まず訊いておかなきゃいけない事がある。長谷川、覚悟はある?」
「覚悟……か」

 死ぬかもしれない、なんて話の後に言われれば、受け取る側は否が応にもそういう風に受け取ってしまう。
 死ぬかもしれないという事を、許容する覚悟。
 それを知ってしまう事で起こりうるあらゆる出来事に関して他人の責任には出来なくなる。
 知らなければ良かった、なんて後悔も、甘んじて受け入れなければならない。
 それを認める覚悟があるか。それを問われた気がした。

「別に、深く考えなくてもいいよ。長谷川が望むなら、聞いた後で記憶を消す事は出来るから」
「……そんな事出来るのかよ」
「私が出来るわけじゃないけどね。バレてしまった人への対処法として、割とポピュラーなものらしいよ」

 知られたら殺す。そんな漫画のような価値観でなかった事にはひとまず安心だが、記憶を消されるなんていうのは怖いものだ。
 それが自分の制御下にある、信頼できる技術であるのならば抵抗感はないだろう。
 確実に自分の選んだ記憶だけを消去できるのならば。
 しかし、その技術を行使する人間が信用できるのか、そもそも間違って人格ごと消される可能性はないのか。
 未知の技術を信頼する事など出来るはずもない。その抵抗感は誰にでもあるものだ。

「でも、記憶を消すっていうのは一大事だ。だから、よく考えて欲しい。
 私は今から長谷川の質問に、私が知っている範囲で答えるけれど……どこまで許容できるか、考えながら質問しないと後悔する事になるよ。
 記憶を消すと言っても、そんなに精密に消す事なんて出来ないらしいから。ここ数日分は覚悟しなきゃいけない」

 千雨は黙考を始める。
 どこまでが許容できるのか。自分の中の線引きを明確にしなければならない。
 そう、例えば。
 身近な人間の、誰が関係者なのかなんて質問は、軽そうに見えて大きな問題を孕んでいる。
 関係者だと知ってしまえば、以降同じように接する事ができるのか。

 率直な感想として。
 自分の知っている人間が、化物じみた動きをしている事に関して、千雨は怖いとは思っていない。
 その力が自分に向けられた事がないからだ。
 少なくとも、それらの力は理由もなく千雨に対して振るわれるものではないという確信がある。
 今まで、疑い深い千雨が気づいていなかった、というだけで十分な根拠だ。
 彼らは己の能力を隠そうとするし、そしてその努力に千雨が付き合っている限りにおいて、やはり彼らの世界は対岸の出来事なのだ。
 
 だから問題は、相手の努力を知ってしまった千雨が、気づいていなかった頃と同じようにスルー出来るかという事になる。
 ツッコミ属性……なんていうとシリアスが台なしだが、基本的に千雨は浅はかな行動に対して思わずツッコミを入れてしまう事がある。
 そしていざ“そういうもの”があるのだと知っている状態で振り返ってみれば、何故今まで気付かなかったのか疑問に思う程にバレバレだ。
 常々おかしい連中だと言う事は気づいていたのだし、“どうしてオカシイのか”が分かっただけと言えばそうなのだが。
 知っている事がバレてはいけない状況で、そんなツッコミが原因でバレるなんて死にたくなる程恥ずかしい。

 まぁ。最初から、どこまで踏み込むのか、なんて考える事がそもそも間違っている。
 今千雨が分かっている事は、魔法のような何だか良く分からない力があって、それを当たり前としている世界があるという事。
 そしてその世界が、思っていたよりもずっと身近なものである事。
 それぐらいだ。そんな状態では何を訊いていいのかも定まらない。

「じゃあこうしようぜ。私が大河内に質問する。質問に答えたくないならそれでいい。
 質問の内容は自分で考えるわけだから自己責任だ。私が覚悟できる範囲で質問すればいいんだからな」

 好奇心が満たされて、けれど引き返せる境界線を探しながら。
 まずは、何を質問するのか考える為の情報を得る。

「長谷川がそれでいいならいいよ。私も楽だしね」
「じゃあ最初の質問だ。これはイエスかノーでいい」

 うんとアキラが頷く。アキラなりに、質問を予想しているのだろう。

「ネギ先生たちが使ってたのは……魔法か?」
「イエス」
「だろうな。じゃあ次だ。魔法ってのは誰でも使えるものなのか?」
「ノー、かな。私も詳しくは知らないけど、少なくとも魔法を全く使えない人はいるみたいだ」
「なら、その割合なんか知らないか」

 アキラも知らない事ではあるが、ここ麻帆良においては魔法を全く使えない人間というのは、その実少ない。
 世界樹の恩恵とでも言うべきか、特に麻帆良で生まれた者は高確率で魔法を使える。
 ただ、それを知る事なく一生を終えるだけだ。
 おそらくは、その才能のあるなしはともかくとして、千雨にもその資質はある。勿論アキラにも。
 しかし、今から勉強したところでモノになるようなものでもないのだ。意味のない質問ではある。
 少なくとも、覚悟がどうのと尻込みしている人間には。

「お前はどうなんだ? 少しでも魔法が使えたりするのか?」
「ううん。試した事もない」

 試してみたいという思いがなかったと言えば嘘になる。
 ただ、そのような直接的な関わりを士郎は許さなかった。
 アキラにとっては、士郎が許さないというのは十分過ぎる理由だ。そこが発端なのだから。

「そーゆーの、憧れたりしなかったのか?」
「うん、正直ね。憧れるというか、羨ましいとは思ってる」

 軽々と空を飛び越え。超常現象を起こし。人知れず戦っているヒーローのような。
 憧れないわけがない。忌諱する人もいるのだろうが、しかし彼女らは良識ある善人だった。
 その力が悪用される可能性について、思い至っていても想像力が欠如している。
 知らないならば。それは幸せな事で、そして当たり前の事だ。

「でも一度襲われてからは、あんまり羨ましいとは思わなくなったよ。
 羨ましさが消えたわけじゃない。ただ、それ以上に怖くなった」

 だが。その一部とは言え、アキラは知ってしまった。
 知ってしまうまでは、ダメだと言われつつも無邪気に憧れていた。
 けれどあの夜、吸血鬼が催した祝宴において。その力の悪用の仕方というものを見てしまったのだ。
 住んでいる世界が違うという事がどういう事なのか。それを朧気ながらも理解してしまう程に。

「そんな強い力が自分に向いてしまうのも。……そんな強い力で、自分が誰かを傷つけてしまうかもしれない事も」

 千雨が、うっと息を呑む。
 後者については、自意識過剰かも知れない。付け焼刃で魔法を覚えたところで、そう大きな事は出来ない。
 けれど力を持ってしまう事は、何かを決定的に変える。

「例えばさ。魔法の力を使えば、オリンピックに出るぐらいは簡単な事だと思う。
 多分、トップアスリートの中にはそれが魔法とか知らないまま使えてしまっている人もいるんだと思うよ。
 でも、魔法の力だって知ってて使うのは反則だ。普通の人はそんなモノ知らなくて、誰でも使えるわけじゃない。
 だから、魔法はズルで……表の世界で使っちゃいけない。それでも使えるなら、自制できるか分からない」

 ドーピングのようなものだ。いや、もっと性質が悪い。
 ドーピングは、一応その方法なども分かっている上で禁止されている。
 しかし魔法は、その存在さえ認知されていない。
 魔法をスポーツで使う事は、絶対にバレないドーピングを使うようなものだ。

 アスリートにとっては忌諱すべき事。でも本当に、絶対にバレないのならば。
 否、そもそも禁止されていないのならば……別にいいではないか。
 魔法の存在さえバレなければ、と。
 事実刹那や美空など、魔法に通じながらも運動部に所属している人間はいる。
 彼女らは裏が忙しいので試合などには出ていないようだが……一般人であるアキラは。

「だから、魔法は覚えなかったのか? 使ってしまいそうだから」
「というより、必要ないじゃないか。ネギ君が裏で何をやっているのかは知らないけど。
 彼らのように、“そういう世界”に生きてるわけじゃないなら、あんな力は必要ないよ。
 私は、あれば使ってしまいそうになる人間だから。その覚悟がないなら、手を出すべきじゃないんだ」

 自分に言い聞かせるように、アキラは言った。
 そう、アキラは言い聞かせている。自分自身に、理路整然と、そうであるべきなのだと。
 常日頃から魔法を習おうとしない理由を探していた。そしてこれが答えだ。
 ずっと考えて、自分なりにそうであるべきだと至った結論。
 そこには、大きすぎる穴がある事に、アキラは気づいていない。或いは、見て見ぬふりをしていた。

「ならよ。覚悟があったら、習えるのか?」
「…………!」

 覚悟があったら? 恩人である士郎に逆らってでも、魔法を求めるのなら。
 確かに方法はある。その方法には、アキラも気づいていた。
 心理的に忌諱していた事で、士郎から離反するのと同じくらいに勇気が必要な選択ではあるけれど。
 確かに。

 あの吸血鬼。彼女になら、魔法を習う事は出来るだろう。
 木乃香が彼女に教えを乞うている、という事実があるからこそ、交渉も可能だろう。
 やってやれない事はない。少なくとも、可能性はゼロじゃない。
 勿論他にも選択肢は幾らでもある。
 彼女の周りに居る魔法を使える人物たち。
 最初は木乃香に簡単な事から習ってもいい。ネギに頼み込むという手もあるだろう。
 手段なら幾らでもある。幾らでも作れる。でも……と。そこまで考えて、アキラは迷っている事に気がついた。

「あったら? 長谷川は習いたいのか」
「いや、まぁ……大河内の言う通り、私にゃ覚悟なんてないな。ちょっとした好奇心、だよ」
「そっか」
「元々、私はあーゆー変人連中とは離れて生きていたかったからな。これで避け易くなるってもんだろ」

 今度は千雨が、自分に言い聞かせるように言った。
 そして丁度、料理が運ばれてくる。空腹感も相まって、料理はとても美味しく感じられた。
 食事中、また幾つか千雨の質問に答えて店を出る。

「じゃあ、誰にもこの事は話さないでね」
「ああ。つーか、突然こんな話したって誰も信じないだろ」
「……そうかもね。でも、長谷川は信じてる」
「大河内が言うんなら誰でも信じるっての。数少ない常識派だろ、アンタは」

 千雨と別れて、アキラは一人広場に残る。
 これで千雨が魔法に対して、積極的に関わる事はないだろう。
 いつかボロを出して、結局関わってしまうのかもしれないが、その時はその時だ。
 少なくとも、何の予備知識もないよりはマシだろう。
 これで、目的は達成できた。最初に記憶を残して欲しいと願った時の。積極的に知ろうとした目的は。

 けれど、初めてそうして「魔法を知っている事」で成果を上げたのに、アキラの心中は複雑だった。
 この数ヶ月、確かに色々な事があった。
 しかしそのどれもが、劇的に考えを変えるものではなかったのだ。
 この日常を守っていこうと。その為に知っているだけの魔法、だったはずなのに。

「ああ、そっか……」

 その日常が、随分と士郎たちに関わりあるものになっていた。
 部活もいつも通り、友達とも遊んでいる。
 けれどその視点はどこか変わっていたし、何より暇さえあれば士郎の店に通っていた。
 明日菜や木乃香といった、互いに魔法を知っていると分かっている友達もいる。
 だから。

「私、迷ってるんだ」

 今までの日常の象徴。何も知らない友達。何も知らない自分。
 それはとっくに失われていて、中途半端な状態が嫌だった。
 明日菜たちが、魔法を習っている事は知っている。
 そのせいで、魔法を知らない友達と少しずつ疎遠になっているのも観察していた。
 それは嫌だと思うけれど、しかし程度問題だ。
 ちょっとぐらい疎遠になっても、彼に近づけるのならば。この不安定な立場から抜け出る事が出来るならば。

 そして。役に立てるなら。日常を、少しぐらい犠牲にしたって。
 そんな考えに行き着いて、けれど答えを出せずに迷っている自分が何より嫌だった。
 覚悟なんてない。理由もない。感情を理由にしたら、きっと後悔する。
 そこまで分かっているのに、いつまでもぐじぐじと諦めきれていない自分を自覚してしまった。

「はぁ。どうすればいいんだろ」

 呟いて空を見上げる。綺麗な青空だった。悩みがちっぽけに思えるくらいに。
 まぁ。今は学園祭の真っ只中。悩むのは後回しにした方がいいだろう。
 と言っても予定はない。友達にもそれぞれ予定があるだろうし、一人で回るのも寂しい。
 さてどうしたものかと、取り敢えず当てなく歩いていると携帯が鳴った。

「はい」
『ああ、アキラ。突然で済まないのだが、これから予定があるか?』

 士郎からだった。思わず舞い上がって、アキラは上ずった声で答える。

「い、いえ! 暇で暇で、これからどうしようかと悩んでたところです!」
『そうか。なら丁度良かった。例の約束、今からでも構わないだろうか。少しばかり最終日は忙しくなりそうでね』
「い、今からですかっ? 構いませんけど……少し時間を下さい」
『ああ。私は夜まで空いているから、好きな時間で構わないが』
「なら二時間後でお願いします」
『分かった。そうだな……場所は世界樹広場でいいか?』

 世界樹広場。告白成功率。恋人たちの待ち合わせ定番スポット。
 アキラの脳裏に瞬時に色々な情報が駆け巡り、即答する。

「はい、大丈夫ですっ」
『なら、二時間後に』

 そこで電話は途切れた。携帯の画面を見ながら気持ちを落ち着ける。
 いや、落ち着けようとして失敗した。

「と、取り敢えず……急がないとっ」

 おそらくは過去一番の速さで、アキラは着替えの為に自室へ走るのだった。








・その頃
明日菜「こ、木乃香もいないし……あーもう高畑先生とデートだっていうのに誰も相談する人がいないよ~」
あやか「全く、見てられませんわね」
明日菜「い、いいんちょ!?」
あやか「夜の予定までまだ間がありますし、ここは私が徹底的にプロデュースして差し上げますわ!」
明日菜「わわ、ちょっとドレスなんて持ってこないでよー!」
(拍手)
 
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後書き

遅れに遅れて申し訳ありませんっ。学園祭動乱編の一話目です。
最初ということでどのシーンからやるか色々悩みましたが、忘れられているであろうアキラの方にスポットライトを当ててみました。
ちなみに本編において、明日菜とアキラの関係はアキラSSとほぼ同じですが、木乃香に関しては違うので悪しからず。
来週は奨学金関係の書類集めで実家帰らないといけないんで更新できません。
叶うなら再来週に二話更新したいですが。まぁ、頑張ります。

2010.11.21 | URL | 夢前 黒人 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

「雷の精霊11人 集い来りて敵を射て」
 明日菜が前方で足止めして時間を稼ぎ、その間ネギが誘導性の高い呪文を詠唱。
 そしてネギの詠唱完了を見計らって、明日菜が下がる。
「魔法の射手 連弾・光の11矢!」


雷の精霊を使ったなら,魔法の射手も雷の~矢ではないですか?

2010.11.21 | URL | とろみ #- [ 編集 ]

誤字修正

うっ。すいません。修正しました。

2010.11.21 | URL | 夢前 黒人 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

誤字報告

『雷の精霊11人→×』
『雷の精霊11柱→○』

【ネギま】の呪文詠唱においての精霊の数え方は『~柱』ですよ。

2010.11.22 | URL | 見猿 #/pHIRAno [ 編集 ]

Re: 誤字報告

おかしい、ここは既に訂正していたハズ……と思ったら、二回目の訂正が保存されてなかったっぽいorz

2010.11.22 | URL | 夢前 黒人 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

読みました。来週ですね。がまんができるのは、男の人ですね。
精神的に弱っています。魔法つかえるように、なりたいです。
元気になりたいです。正直うざいですか。わたしは手がかかるから
うざいとおもってたら、やめたほうがいいと思います。自分でも
思います。でもここまでしてくれてるのに、もうしわけないです。
別にわたしじゃなくても、いい人いっぱいいますから
ちょっと頭がまわらないわたしは、テンポがあわないと感じてるんじゃないかと、いつも思います。

2010.11.22 | URL | レモン #- [ 編集 ]

Re: レモンさん

? えっと……感想? ありがとうございます。

2010.11.22 | URL | 夢前 黒人 #qiIB0A1Q [ 編集 ]


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