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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第10話


「修行途中の来客模様」


 喫茶「アルトリア」は久しぶりに開店していた。
 というのも、ようやくタカミチの代役が終了し、マトモに店を開けることができるようになったからだ。
 とは言え、未だ危険度の高い仕事は俺が担当している。今は新技法の慣らし運転と言ったところだ。
 つまり、これからもちょくちょく店を閉めることにはなるのだが、タカミチと別荘を使って修行する事も減るのでそう頻繁ではなくなる。
 しかし、やはり閉める事は閉めるので、喫茶「アルトリア」は隠れた名店扱いを受けていた。
 以前からも立地に見合わず客は入っていたので、長期の不定期営業を惜しむ声は少なくなかった。
 主に報道部の朝倉和美による所が大きいのだが、しっかりと開店する日時を売り込んでくれていたおかげで、出張からの復帰初日も以前と変わらぬ客入りだったのだ。
「いやー、これも私のおかげだよね。というわけでケーキセット奢りで」
「やれやれ、調子がいいものだ」
 店主としても、今の状態は異常であることぐらい分かっている。目の前の少女の手腕によるところだと理解しているからこそ、それぐらいの代償ならば安すぎるというものだ。
「んー、美味しい! でもこれ衛宮さんの手作りなんでしょ? やっぱ外国で修行してきたりとか?」
「海外を飛び回っていたが、特に一箇所に留まることはなかったな。様々な土地の技術を参考にしつつ、といったところだ」
 まあ、実際はそんな暇はなかった。ただ、出会う人は多かったので色々と教わることも多かったのだが。
「ふーん、特定の師匠とかいなかったの?」
 別に俺は構わないが、敬語はどこへ行ったのだろうか。この学園がいくら特殊といっても、その辺の教養は変わらないだろうに。
「料理面ではいなかったな」
「では、ってコトは、何か別に習ってたのあるの?」
「剣道と弓道を少し、な」
「へぇ~、強い?」
「君のクラスに桜咲がいるだろう。彼女と同じくらいだよ。残念ながらな」
「それって凄いじゃん! 麻帆良四天王の一人だよ、刹那さんは!」
「麻帆良四天王?」
「そそ。全員ウチのクラスなんだけどね、もう常識からかけ離れた武芸者が居て、4人居るから四天王」
「成る程。しかし桜咲は、そんなに強い事になっているのか?」
「ん~、私は刹那さんが戦ってる所見たことないけど、同じ四天王のくーふぇってコがスッゴイ強いから、桜咲さんも強いと思うよ?」
 そんなに目立っていていいのか桜咲。まあ、竹刀袋に入れているとは言えいつも長物持ち歩いているしなぁ。
「あれ?もしかして自信揺らいできた?」
 俺の沈黙を見て、勘違いしたらしい。まあ、そういう事にしておいた方が楽ではあるか。
「まあな。しかし、女子中学生に負けるというのも悔しい話だ」
「まあ、ウチのクラスの面子は化け物揃いだからなー」
 うんうんと唸りながらぺろりとケーキを食べ上げた。全くどうでもいい話なんだが、この朝倉という子も全く中学生には見えない。
 これは、この世界共通の理なんだろうか。だとしたら桜咲が可哀想だ。
「ん? ちょっと待って。そう言えば、桜咲さんを知ってるの?」
「ああ、知っているよ。この店を開ける前からな」
「どういう関係?」
「関係と言われると困るな。顔見知り程度だよ。彼女の師匠とは少しばかり面識がある」
 少し悩んで、誤魔化す事にした。稽古をつけてやっている何て言ったら、先ほどの回答と矛盾するし。
「師匠って誰?」
「おいおい、そのメモ帳は何だ?」
「気にしない、気にしない。別に悪用するわけじゃないからさ」
 まあ、これからの店の宣伝を考えると、この程度は構わないか。
「葛葉先生だ。まあ、彼女には嫌われているが」
「何かしたの?」
「黙秘しておく事にしよう」
「ふーん、まあいいや」
 以外に呆気なく引き下がる朝倉。最初に会った時の勢いはどこに行ったんだ。いや、刀を折った、なんて実話は話せないからいいのだが。
「でも、お堅いトコとか似てるね」
「そうか? 桜咲は中々愉快な性格をしてるように思えるが」
「へぇ?その心は?」
「弄りがいがある。サドには標的にされやすいかも知れないから気をつけた方がいいかもな」
「つまり、衛宮さんに気をつけろって事?」
「こらこら、何でそんな話になる」
「だって、衛宮さんて眼つきからしてヤバそうじゃん?」
「マジか…」
 正直凹む。この鷹の眼は魔眼処理もしてあるからそりゃマトモとは言えない代物だが。
「私の目は少しばかり良すぎるんだ。だからだろう」
「普通、眼つき悪いのって眼が悪い人じゃないの?」
「確かに、普通はそうだが、私は普通というレベルじゃない」
「視力いくつ?」
「測定不能…どっかの原住民クラスさ」
 へえぇと感心する朝倉。ある意味、自慢できる唯一の才能だ。感心されれば嬉しい。
「覗きしほうだい、って事か!」
 このこの~、ついつい。
 …喜んだ俺が馬鹿だった。
「そんな事はしない。大体、まだこの学園の立地も完全には把握していないんだ。やりようがないさ」
「またまた、そんな事言っても誤魔化されないよ?怒らないから正直に言ってみて!」
「余り大人をからかうものじゃない」
 そこで、お客が伝票を持って現れた。レジを開いて清算する。
 流石にその間は、朝倉も話しかけてはこなかった。
「それじゃ、また報酬がわりのお茶とケーキを貰いに来るから、またね~えみやん!」
 接客を済ませ帰ってきた俺に声をかけて脱兎のごとく走り出した。
 朝倉とはいえ、少しは気まずくなったという事か。
 それにしても、えみやんとは懐かしいあだ名だった。はっきりとは思い出せない虎の親友のイメージが脳内に再生される。
「すいませーん、追加注文いいですか?」
 客の声に、またのんびりと労働に戻った。















 





 魔力放出の技法が完成を見せ、とりあえずの戦力補充が成されたとは言え、士郎とタカミチの修行は継続して行われていた。
 本来の目的だった、魔術の修練が全く進んでいなかったからだ。
 とは言え、魔力放出に肉体が耐えるためには、強化の魔術は必須だった為、タカミチは現在自分の肉体を強化することだけはできている。
 ただ、タカミチは物質解析が苦手で、自分以外のモノへの強化はまだ一度も成功していなかった。
同調、開始トレース・オン
 簡易詠唱が響く。タカミチはまだ、オリジナルスペルを開発できずにいた。
 よって、士郎の詠唱を流用していたのだが、タカミチ自身はこの短い詠唱を気に入っている。
 こちらの世界の魔法詠唱のように、古言語を駆使して意味を連ねていくより、短い音で自分の中に潜り込んで行く感覚はタカミチにとって喜びに近いものがある。
 その在り様は違っても、『詠唱』を自分が口ずさみ、効果を成している事が既に感動なのだ。
 何よりカッコイイ。それを聞いた時、士郎は苦笑いしていたものだが。
 トンッ。手にしたペーパーナイフは、全く木片に刺さってない。
 今やっている修行は、強化したペーパーナイフで木片に穴を空ける、というもの。
 金属製のペーパーナイフならば、強化が成功すれば板ぐらい簡単に穴を開けられるはずだ。
 まだ概念強化の段階にも辿り着いておらず、解析・変化も合わせて修行の進行は遅々として進んでいなかった。
「また失敗か」
「…すまない」
「別に謝るような事じゃないけどな。俺も似たような経験あるし」
 士郎の時はランプで、軽く三桁壊してしまったのだが。タカミチは壊れないだけ、少なくとも特殊ではないだろう。
「しかし、このまま続けても埒が明かないな。やはり、先に火の魔術で感覚を掴むしかないか」
 自分の肉体に働きかけることはできているのだから、それが破壊という形でも、外部への働きかけを練習した方がいいのかもしれない。
 ただ問題があるとすれば、士郎は攻撃に繋がるほどの火系統の魔術を全く使えない。
 専用の魔術礼装を使わないのであれば、杖を使っても焚き火程度の火を起す程度のものである。
 しかもそれさえ、剣を鍛える際の火をイメージしている為、彼の魔術は剣に関わらない限り全くの能無しといえる。
 つまり、使えないものを教えることはできない。
 予想される修練方法を提示し、後は闇雲に試してもらう他ないのだ。
 それが、今まで属性を無視して強化を優先させてきた理由なのだが、2週間近く繰り返して全く成果がでないというのであればフラストレーションも溜まってしまう。
 いくら詠唱が楽しいからと言って、焦りがなくなるわけではないのだ。
「正直、火の魔術は俺にとって門外漢だ。他の属性よりは多少マシであるだけで、大したことはできない。だから自分で試行錯誤してもらうしかないんだが……まあ、自分で技法を編み出せるのだから大丈夫かな」
「あれはエヴァが手伝ってくれたからだよ。あのヒントがなかったら、きっとまだあちらの修行をしていたさ」
 謙遜ぎみに話すタカミチだった。実際そうなのかもしれないが、実現させたのは純粋にタカミチの力なのだから、もっと自信を持てばいいのに。
 士郎でさえそう考えてしまうくらいに、タカミチという男は謙虚だった。
「ではとりあえず、補助礼装を使って火を出すところからだな。魔術はこちらの魔法と違ってエネルギーではなく現象なんだ。火を出すと言ったが、正確には魔術を用いて物を燃やすという結果を起すものに過ぎない。つまり、空中に炎を出して固定するよりは、実際に何かを燃やす方が簡単なんだ」
 そこで士郎は莫耶を投影する。これならば、術の補助礼装としても十分だし、そう簡単には壊れない。
 莫耶をタカミチに渡し、士郎は解説を続ける。
「その剣を使って自分の中から現実に、燃えているイメージを現出させる。燃えるイメージよりも、単純な火の方がイメージしやすいのならそちらでも構わない。やってみてくれ」
「分かったよ」
 タカミチが目を閉じ、いつもの呪文を使って自分の中に潜り込む。
 時を待たずして、莫耶が触れていた先ほどの木片に焦げ目がついた。
「成功…かな?」
「強化に比べれば十分に及第点だな。初めてで自分の属性ならこんなものだろう」
「はは、気を抜かずに頑張るとするよ」
「ああ、その意気だ」
 結果としてその日、タカミチはその木片を燃やすことに成功した。



















 夜、以前よりは閉店時間は遅くなっていた。
 出張を除けば、生活も規則的になっていたし、一部の客からもう少し長く開けていて欲しいという要望があった為だ。
 とは言え、季節は既に冬。日が暮れるのも早いし、朝と夜は客入りも減ってしまう。
 それでも客がいれば律儀に開けてしまうのだが、今日は思いのほか早く客が掃けた。
 外の看板を準備中に戻し、片付ける前に一息つこうと自分用の紅茶を淹れていると、店内の明かりの為に勘違いしたのか、客が一人店内に入ってきた。
「準備中の看板が見えなかったか?」
「店が閉まるのを待っていたんです。喫茶店ではなく貴方が目的なら、別に構わないでしょう?」
 暖かそうなダッフルコートを着て現れたのは、あまりいい思い出のない高音だった。
 いろいろと負い目があるせいで俺としてもやり辛い。まあ、桜咲ほどではないのだが。
 コートを椅子に畳んで置いて、その隣に自分も腰を下ろした。
「何か飲むかね?」
「では、暖かいものを」
 外は雪が降らないのが不思議な程だ。その注文は自然なものだったのだろうが、主体性のない注文ほど厄介なものはない。
 それも腕の見せ所か、と一人諦めて、メニューにはないホットココアを淹れ始める。
 高音はそれをじっと待っている。いや、会話のきっかけが掴めないのかもしれない。
「ココアで良かったかな?」
「ええ」
 差し出されたココアに口をつけて、すぐに離した。猫舌なのかもしれない。
 カップを両手で包み込み、その熱を奪うように小さくなった。
「それで、用件は何かな」
「個人的なものです。前回の話の続きをしようかと」
 前回の『お説教』は、余程気に入らなかったと見える。しかし、カップを持つ手に隠し通せない緊張が伺えた。
 まだまだ可愛いものだと、つい頬が緩んでしまう。
「何かおかしいですか」
「いいや。前向きで実にいい。前も言ったが、ゆっくり歩いていけばいいんだよ」
「そういう事を話にきたわけではありません!」
 相変わらず沸点は低いらしい。理想も高いようだが、これは後々苦労するタイプだろうな。
「今日の夜は予定はないし、ゆっくり聞いてやるから落ち着いてくれ」
「すみません」
 しゅんと項垂れる。まあ、勝手に押しかけて勝手に怒鳴り散らすなど普通は迷惑極まりない。
 俺も、機嫌が悪かったりこんな風な弱々しい態度を見せられなければ追い出していた…かもしれない。
「貴方の…衛宮さんの、正義について意見を聞きたいんです」
「俺の正義、ね」
 しばし、想いを馳せる。
 懐かしい理想。手を伸ばせばいつか届くと思っていた幼い自分。代償となったコウフク。どこまでも腐っていた世界。
 目の前の少女は、自分とは違う。あの頃の自分ならば、何を言われようとも、どんなに悩もうとも、その理想を捨てて生きていくことなどできなかっただろう。
 でも、高音の理想は、自分の中から発生した純粋なものだ。
 そう、自分とは違うから、眩しい。そして、万が一にも自分と同じ道を歩んで欲しくはない。
 聞きたいというのなら話してやろう。前回に懲りずにやって来たぐらいだから、多少の覚悟もあるだろう。
「俺は、幼い頃正義の味方に憧れてた」
「偉大な魔法使いではないんですか?」
「当時は、そんな存在は知らなかった。ただ、俺を救ってくれた親父に憧れて、身に余る願いを抱いただけだった」
 高音は、語りだした俺を黙って見据えている。
「初めは、力なんてなかった。ある闘争に巻き込まれて、力もないのに自分の理想を押し付けた。そして、生き残る為には強くなる以外に方法はなかった」
 思えば、あの頃は幸せだったのかもしれない。何一つ自分の正義を疑わずに走れた若い自分であれたのだから。
「いろいろ犠牲は出しつつも、俺は自分の正義を貫いた。理解者も居てくれたし、共に戦う仲間もいた。見習いではあったが、故郷を飛び出して旅を始めた頃は良かったよ」
 そうして闘争の渦に飛び込むことで、俺は際限なく強くなっていった。
「戦って、その度に強くなり、もっと強くなればより多くを救えると信じた。その為に敵を蹴散らし、悪を殺していく中で、自分の周りで笑顔を見ることがなくなった。俺は、余りに血に濡れ過ぎていた」
 封印指定と、魔術隠匿無視に対する制裁。強くなるほど、降りかかる火の粉も大きくなっていった。
「気がついたのは、一緒に旅をしていた姉が殺された時だ。俺はどれだけ強くなっても、一番大切なモノさえ守れなかった。いや、いつしか多くを助ける為に、大切なモノさえ見えなくなっていた。姉が殺されて、疲弊しきって何もできない自分を認識した時、俺は初めて百より一が恋しくなった」
 それが一番愚かだった事だ。俺は、その時にはきっと、正義の味方として死んでいた。
「だが、それでも上手くいかなかった。それまでに作った敵は、執拗に俺を追ってきた。何度も大切な人を亡くし、戦友に憎まれて、俺にはもう逃げる以外の道が残っていなかった」
「何処に、逃げたのですか?」
 躊躇いがちに、ようやく高音が口を挟んだ。
「何処にも逃げ場なんてなかったな。結局、死を覚悟した時に偶発的にこの学園に飛ばされてきただけだ」
「それで、この学園に…」
 思いつめた表情だ。俺には、むしろその同情が苦しい。
「一つ言っておくが、君は今の話に同情してはいけない」
「何故、ですか?」
「同情なんて感情に残るものはない。必要なのはただ知識として知っておく事だけだ。それ以上深入りするのはお互いの為にならない。全てを受け入れる覚悟と、全てを与える覚悟が必要になる」
「全てを受け入れる覚悟…」
「いつかは、君もままならない現実と向き合う事になる。どんな天才でも、何もかも思い通りになる事なんてない。どんな英雄でも、敵を助けることはできないようにな」
 そう、英雄なんてものは所詮、殺戮者の称号だ。そんなものに憧れること自体が、そもそも間違っているのだから。
「知っておくべき事は、正義とは何も綺麗なものだけが勝ち得るものではなく、英雄とは所詮殺戮者に過ぎないということだ。自分の中に確固たる信念があるのなら、それを正義などと名づけるな。ただ、それを守る為に強くなればいい」
 正義なんて曖昧なモノは、曖昧なまま胸の内に秘めていればいい。そうして行動した結果が正義であるのか、それは後の人間が判断すること。
「色々と語ったがな。結局物事はシンプルなんだ。自分が受け入れられない、受け入れたくない現実なら抗えばいい。譲れない信念が何だったのか、それを決めるのは死の瞬間だけで十分だ」
 だから、急ぐ必要などない。
「なら一体、正義とは何なのですか!?」
「それは歴史が決める事だ。極論、勝った者が正義を決められる。万人に対する正義はなく、同じように悪も人の数だけ存在する」
「なら、私も悪に成り得る、そういう事ですか」
「そうだ。君が悪とする者にだって自分なりの正義がある。それが社会に受け入れられないものであったとしても、人間にとって害でしかなかったとしてもな。家畜からみれば人間など全て死をもたらす悪であるように」
「それとこれとは話が別でしょう!?」
「なら吸血鬼はどうだ。彼女らは生きる為に血が必要だ。真祖ともなればまた別だが、少なくとも別の種族の間に、正義や悪など存在しない」
「しかし、彼らは元々人間でしょう」
 だからこそ彼らは悪などではなく、ただ悲しいだけの存在なのだ。
「以前も言った通り、生きる為に必要な略奪は悪ではない。ただ、それを受け入れられないから戦いが起こる。自分を、守りたいモノを守る為に相手を淘汰するのは、自然の流れだろう?」
「気に入らないのなら、実力で排除すべきだと」
「そうだな。全てを救うなんて幻想は存在しないのだから、優先順位をつける必要はある」
「それでも、全てを救う努力に価値はあるはずです!」
 ダンッと、高音はカウンターを叩いて立ち上がった。
 ああ。
 本当に、この子は懐かしい。そして、眩し過ぎる。
 俺は彼女を笑うことなどできはしない。そんな資格は誰も持ってはいない。
 全てが救われた世界、なんて地獄を教えるわけにはいかないけれど。
 この子が、どこまで間違えずに進むことができるか、そんな事は分からないけれど。
 それでも、破れ散った夢の残滓に押されるように、俺は口を開けていた。
「ああ、そうだ。その努力には価値がある。そして、それを生涯貫き通せたなら。それはきっと、幸せなことなんだろう」

 完全な機械なら良かった。
 人を助けるだけのプログラムなら良かった。
 感情を持たない人形ならば、あるいはまだ救いがあった。
 それでも、人が人のままで、その信念を貫き通せるのなら。
 例えそれが欺瞞に満ちたものであったとしても、きっとその信念は気高く、誇り高い。
 ならば、この少女の行く末を見守ろう。
 既にその夢に食い潰された残滓であろうとも。
 その光に夢を願う事は、間違いなんかじゃないはずだから。



士郎「間違いなんかじゃないんだから――!」
高音「あの、衛宮さん…?」
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