Twitter

FC2カウンター

カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

カテゴリ

最新記事

最新コメント

リンク

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:


検索フォーム

アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
359位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
二次小説
196位
アクセスランキングを見る>>

屈折領域・裏鏡


一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

TOP > スポンサー広告 > 夢破れし英雄  第60話TOP > 夢破れし英雄 > 夢破れし英雄  第60話

スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

夢破れし英雄  第60話


「一回戦(4) 死闘は悠然なりて」


「成程。あれが彼の新技法ですか」

 渦巻く嵐が円として収束していく様を見ながら、アルは感心したように零す。

「極而無極法。或いは極而法だな。今のタカミチの型が基本にして原点、ここから名を変え発展していく」
「あれだけではない、と?」
「そうだ。尤も、この型にせよタカミチが残りの一生を使っても完成するかどうか……」
「確かに、見た目よりも高度な技のようですね」

 アルが言うように、タカミチの新技法・極而法は見た目とは裏腹に微細なコントロールを要する。
 防御・攻撃に使える程の魔力放出ともなれば、安定させるのは難しいのだ。
 今はタカミチの肉体を基点として放出と収束吸収、そしてまた放出と循環させている為軸にブレはない。
 だが、移動や攻撃などには意図的にそのバランスを崩してやる必要がある。
 この技を修行し始めた時のタカミチは、その場で静止するのも難しかったのだ。
 精密動作は今もまだ出来てはいない。

 だが、流れに乗って戦闘を行うのならば、本来このような型は必要なかった。
 何故タカミチがより完成された方式を編み出すに至ったか。
 それは魔力放出という戦闘技術には大容量の魔力が必要だった事に起因する。

 例えばセイバー。
 彼女の生来の戦い方は、その桁外れの魔力を活かした、悪く言えば力任せの戦い方に他ならない。
 故に、効率など度外視して威力だけを求めていた。
 聖杯戦争、特に士郎がマスターであった時は魔力の温存も留意していたが、戦い方そのものが変わるわけではない。

 しかしタカミチにはそれだけの魔力がなかった。
 いや、魔術回路によって精製される魔力に加えて、彼は旧来の方法でも魔力を得る事ができる。
 故に単純計算で倍。だがそれでも満足な量だとは言えなかった。

 魔術回路が精製する魔力は、他者に分け与える事を考えない、己にのみ合致した毒のようなものである。
 だからタカミチや士郎は他人に魔力を供給する事はないが、代わりに普通の魔力より相性が良かった。
 ただそれは、内界、己の体内においてのみ優位性を発揮する。
 外界に放出した時、旧来の魔力供給と魔術回路経由の魔力放出に大した違いはなかった。
 だからこそ、倍程度の魔力では足りない。
 魔力放出を咸卦法クラスにまで高める為には、爆発と言えるだけの瞬発力と放出量が必要だ。

 けれどタカミチには満足な魔力がない。
 ないのなら別のところから持ってくる。
 それは魔術師の考え方であり、士郎も最初はその考えに則って助言をしていた。
 だが、タカミチが選択したのは技法としての魔力放出の効率化だった。
 己に必要な量が足りないのなら、その必要最低限を減らしてやればいい。
 その発想は、今まで魔術師としてではなく魔法使いの一員として生きてきたからこそのものであったろう。

 タカミチは魔法使いとしても魔術師としても中途半端ではあったけれど、だからこそ突破口を開けた。

「通常、魔力供給している状態とは魔力を垂れ流しているに等しい。
 その行為も厳密に言えば魔力放出だ。しかしそれではタカミチの望みうる出力を得る事はできなかった。
 それを解決する為に編み出した型が極而法というわけだ」
「魔力を循環させる……放出した魔力を再び取り込むことで、無限機関を体現するのですか?」
「最初はそういう発想だったようだな。しかし、我々の魔術回路はそれほどに頑丈ではなかった。
 今タカミチがしているのは魔力に軌道を作り、収束点で高めているだけに過ぎん。
 加速度的に左手に収束した魔力は威力を高め、タカミチの容量を超えて飽和しそうになったら左右を逆転させるか攻撃に使う。
 損失はあるが、負担を減らす事を優先した結果だ」
「竜巻のように一律回転させた方が効率は良かったのでは?」
「確かにそうなのだが、タカミチが攻撃に転用できなかった。インファイトも出来なくなるしな」
「成程。現状の実利優先、故に未完成というわけですか」

 これで、出力は部分的に咸卦法を超えている。
 ただ、それは魔力が収束している左手が飽和状態になった時であり、全体の平均を考えれば大きく下回っていた。
 しかも、攻撃が左からしかこないのは致命的な弱点となる。
 現状では、そのための“曲がる瞬動”による撹乱なのだが、何故かタカミチは動こうとはせずネギに見せる事を優先していた。

 最初の一発はサービス。その言葉通り、タカミチの攻撃はネギの一歩手前に“着弾”した。
 轟音。粉塵で視界が遮られ、やがて晴れるとその異様な痕跡に観客は唖然とする。
 大穴が空いていた。
 これでは居合い拳というより居合い砲とでも言うべきだろう。
 尤も、極而法を行使しているタカミチはポケットを使えない為この技は居合い拳ではない。
 居合い拳と同様に、極限まで加速した拳から放たれる拳圧に、芯として凝縮した魔力を放出している。
 威力だけで言えば、倍増などと言った程度ではなかった。
 咸卦法を使っている時と何ら遜色のない威力でもある。

「さぁ、ここが正念場だぞ、ネギ。ここでタカミチを打倒する事ができたなら――」

 大きく成長できる。
 それは、士郎とアルの共通見解だった。





◇ ◆ ◇ ◆







 極而法は、その原理的に連射ができない。
 少なくとも、最大出力には相応の溜めが必要になる。
 そこに活路を見出そうとしたのか、ネギはひたすらに逃げ回っていた。
 未だ一撃も致命打を受けていないのは、ネギの功績というよりタカミチの技の特性上仕方の無い事でもある。
 尤もタカミチが本気になれば、ネギの足を止め“砲撃”を当てる事など容易だろうが。

「ほ、本気の高畑先生があんなに強いなんて……」
「確かに、アレほどとは」

 明日菜が呆然としたように呟くのに対して、刹那は感嘆しているようだった。
 刹那はタカミチとも修行を共にした事があり、士郎とのその修業を垣間見た事がある。
 だが、それがあのような形で発露するなど思えなかったのだ、当時は。
 それが弛まぬ努力の果てに得た力である事を知っていたからこそ、その技の凄さを刹那は体感している。

「フン。あれでも奴は本気ではない。出力だけは衛宮士郎を相手にしている時並だがな」
「あの上があるのですか?」
「上があるというよりは、あれが底辺だ。最近は衛宮士郎にも隠れて特訓していたからな。
 あんな効率が悪い戦い方をしなくても、インファイト特化の型を使えば一瞬で決着はつく」
「そんな……」

 明日菜の呟きは、完全にネギを心配したものだった。
 尤も、マトモな感性を持っているのなら幾ら想い人であると言っても、この状況でタカミチを応援することなどできないだろう。
 それぐらいに、目の前の光景には“差”がある。
 奇跡が起きなければひっくり返らない、絶望的なまでの差が。

「だが、タカミチは使うつもりはないようだな。衛宮士郎が見ているからかもしれないが」
「士郎さんに……」

 刹那の視線が、この場から離れた所で観戦している士郎へと向く。
 本当にタカミチは士郎と敵対する事を視野に入れているのだと思えて、刹那は悲しかった。
 修行の時は、あれ程和気藹々と、長年の友のように打ち解けていたのに。

「やけど、ネギにも勝機はある」

 今まで黙っていた小太郎が断言する。

「確かにあの技は威力がデカい。一発貰えば即KOや。やけどその分初動から軌道に至るまでモロバレになっとる。
 しかも観客を気にして真横には打ててへん。これはむしろチャンスや」

 確かに、小太郎の言う事にも一理あった。
 極而法は威力を追求した結果、隙も大きくなっている。
 その為の放出・収束による防御壁であり、防護石による対魔力の底上げだ。
 鼓舞や加速など、咸卦法を発動すれば付加されていた諸特性を魔術で補っている分、相対的に攻撃に割けるリソースも少なくなっている。
 これはあくまで攻めの型であり、守りに入るには適していない。
 だからこそ、小太郎が言うようにこれはチャンスとも言えた。
 しかし。

「おおっ」

 ネギが瞬動術でタカミチへの接近に成功した。
 ほとんど決死の特攻だったのだろう。万策尽きて、それでも諦められずに少しでも挽回の手を探る為の。

 だが、そもそも今のタカミチの型は近接特化ではこそないものの、居合い砲のような使い方をするよりもインファイトに徹した方が効果があるものだ。
 接近し崩拳を放とうとしたネギだったが、タカミチの周囲に張り巡らされた循環壁に阻まれる。
 いや、阻まれるというよりは“流された”。
 拳が、狙った場所から逸れてしまう感覚。
 まるでもう一本手があり、その手に払われたような、そんな密度だった。

 ネギの強さを支えている中国拳法は、前述の通り型に裏打ちされている。
 お手本通りに、正確に型をトレースする事によって発揮される力だ。
 ならば、その型を強制的にズラされたらどうなるのか。
 古であれば、それでも経験から即座に対応できるだろう。
 しかしネギは一足跳びで成長してきている。
 その空白が、今どうしようもない壁となってネギの前に立ちふさがっていた。 

「うわっ」

 突き出した右腕が流されてしまえば、完全に隙だらけの胴体を晒す事になる。
 そして、タカミチがそんな隙を見逃すはずがない。
 接近にはリスクがあると理解しての特攻だ。失敗したのなら、当然リスクを支払う必要がある。

「ぐっ、ううぅ」

 轟音。だが、ネギは無事だった。
 直前の風盾が上手く機能し、咄嗟に後ろに飛ぶ事で直撃だけは避けたのだ。
 しかし、それでもダメージはある。
 あの距離、あのタイミングで完全に避ける事などできるはずはなく、ましてや防ぐには威力があり過ぎた。
 
 動きに精彩を欠く程のダメージの代わりに得たのは、接近戦は不可能だと言う教訓。
 仕方無しにネギは瞬動で距離を取る。
 そして同じくタカミチが瞬動で追ってくるのを確認したネギは、その着地点で迎撃する事にした。
 今のタカミチは常に暴風を纏っているようなもの。
 故に、その瞬動に速さはあれど静けさは皆無だ。
 入りと方向から着地点を割り出せれば、ピンポイントの迎撃は意味を成す。
 また攻撃を流される可能性はあったが、タカミチの推進力とネギの攻撃。
 二つの相乗ならば可能性は高いとネギは判断していた。

 だが。

「そんなっ」

 タカミチは、ネギが予測した着地点に現れなかった。
 ネギの拳は空振り、隙を晒した右方にタカミチが現れる。

 「歪曲瞬動」。
 それは、タカミチが極而法を編み出す途中で士郎の助言により完成した歩法である。
 正確には、魔力放出を利用した瞬動であるだけで、風使いならば似たような事はできるだろう。
 タカミチの、打撃さえ逸らす威力の放出により無理やり軌道を変えるこの瞬動は、極而法を使用している際の瞬動の粗さを補う為の技術だ。
 初動、方向も丸わかりになってしまうのならば、軌道をねじ曲げてやればいい。
 己の感覚、経験からその挙動を予測できる者ほど予想外の軌道に対応できないものだ。
 そして、如何に粗いと言っても瞬動は瞬動。
 入ってしまえば目視で追いきれる速さではない。
 瞬動に対する基本的な対処は、入りを察知した上での迎撃だ。
 しかし、その出現位置が予想外の場所であれば、それだけで奇襲となる。
 背後までには回れずとも、横に付けるぐらいは余裕があった。

 空振りした拳、崩れた体勢が痛かった。
 この状況で避ける事はできない。既にタカミチの魔力も左手に収束していた。
 渦巻く魔力が速すぎて、その流れの方向さえ分からない程に。
 無理やり身体を捻り、ネギは風障壁を用意する。
 そして発動、着弾。
 ネギがその場で踏ん張る事を選択したのはこの場合仕方が無かった。
 
「確かに風障壁は優れた対物理障壁だが、効果は一瞬。連続使用も不可能という弱点がある」

 その指摘を背後から受けたネギは、それはタカミチも同じだと言い返そうとして、

 固まった。
 タカミチは、収束した魔力を半分しか使っていなかった。
 つまり、今まで連射してこなかったのは、単なるブラフで。
 この一瞬の隙を誘うためのものだったのだと、そう悟った。

「ゴ、フッ」

 直撃。
 不幸中の幸いだったのは、その威力が半分だった事。
 だが、それでも致命打には代わりが無い。

 ネギの身体が倒れていく。
 追撃を避けようと、それでも藻掻く様子はいっそ滑稽であったかもしれない。
 それを、タカミチは冷めた目で観察していた。
 もう手はないのかと。もう諦めるのかと。抗って見せろ、と。
 そして、“右手”から、凝縮された魔力が放出される。
 それはほとんど魔力弾と言っていいだろう。威力に換算するのなら、魔法の矢で数本分。
 だが、障壁の用意ができていないネギには十分に致命となる一撃だった。

 轟音という程の音はない。
 先程までの技が大砲ならば、今の放出は小銃だ。
 しかしそれでも人間には致命傷である。既にダメージを受けていた身体に対する追撃としては十分過ぎた。

 満身創痍、虫の息。
 いっそ、このまま眠ってしまえればどんなに楽だろうかとネギは思った。
 和美が駆け寄り、タカミチの腕を勝者として掲げているのを見て、もう終わったのだと諦める。
 その意識もどこか遠く、本当にそのまま気絶してしまいそうだった。

 けれど。

「……これで終わりかい? ネギ君。君の想いは、目標は。そんなものだったのか?」

 その、失望すら浮かんでいそうなタカミチの瞳がぼんやりとした視界に入った時。
 どうしようもなく、ネギは身体の芯が燃え上がっていく感覚に襲われた。
 そんなものじゃないと叫びたい。
 諦められるわけがない。これで終わりになんてしてやらない。
 ネギの想いは、その目標は。こんな挫折で霞むものじゃない!

 だって、今戦っている相手はタカミチなのだ。
 男同士の戦いだと、一人前だと認めてくれて。
 初めて会ったその日から、ずっと目標にしてきた男なのだから。

「まだ、だっ! まだ手は、あるっ」

 気付けば、ネギは立ち上がっていた。
 カウントがどうなっていたのかなんて意識にはない。
 今考えている事は一つだけ。
 タカミチの、その失望の染まった目を、驚嘆に塗り替えてやる事!


 遅延呪文・特殊術式「夜に咲く花」
 リミット30sec.
 無詠唱発動鍵設定「水精の主」
 魔法の矢・雷の九矢


 ネギの手の平に雷光が集っていた。
 明らかにナニカを仕掛けている。それが分かって、タカミチは喜びを表情に出していた。
 それでこそナギの息子だと。
 こんな事で諦めるような才能に、タカミチは憧れたわけじゃない。
 どう足掻いても真似できないものだからこそ憧れるのだ。
 届かない光ほど美しい。手に入った瞬間に、それは唾棄すべき不純物となる。

 だから。
 その才能とは別に、それを扱う精神こそを、タカミチは尊重する。
 才能を持つ者の義務。或いは運命。
 それを投げ出さず全うする不屈の精神は、才能に依るものではない。
 その精神があるからこそ、タカミチは腐らず英雄に憧れ続ける事ができる。

 その才能は真似できなくても。
 その道を歩む事は、許されているのだから。


 ネギの周囲に、一本、また一本と待機状態の魔法の矢が増えていった。
 三矢で威力が足りないならば、最大本数で攻めようという腹か。
 そう推測したタカミチは、ネギの準備が終わるまで待つ事にした。
 今ここで勝負を付ける事は容易だが、それではこの試合の意味がなくなってしまう。

 なのに、折角のタカミチの厚意を無にするように、ネギは準備が整う前に突撃してきた。
 タカミチは一瞬、それが最大本数なのかと迎撃しようとしたのだが、突撃しながらも矢を増やすネギに訝しむ。
 とは言え迎撃しないわけにもいかない。
 ネギの打撃を半身ずらすだけで避けたタカミチは、魔力放出で足を払いそのまま極而法の補助を得て力任せに投げ飛ばす。
 極而法の魔力循環を使えば、指先一本でも外力を他所から供給する事で余程の巨体でない限り投げ飛ばす事が可能だ。
 そして、ネギはそのままリングアウト、水中に没する。

 観客はこれで終わりかと嘆くが、タカミチは待っていた。
 先程の突撃の意味は分からないが、それでも何らかの策はあるのだろうと。
 手はあると叫んだのが、ただの負け惜しみである可能性もある。
 しかし、そんなことはないと信じていた。
 いや、ここで浮かび上がってこないなんて可能性を、タカミチは考えてもいない。
 ただ、どんな策を見せてくれるのかとワクワクしていた。

 けれど、それもカウントが進むにつれて不安になる。
 可能性が、頭を過ぎる。
 だが、テンカウントが決まるまではタカミチが動く事はできない。
 心配する事さえ侮辱だ。ネギは立ち上がったのだから、完全な決着がつくまで試合は続く。

 そして、和美の不安そうなカウントが遂に8まで唱えられた時。
 変化は唐突に訪れた。

 全方位からの同時攻撃。
 水面から現れた影は四つ。その内三つは風か水で作られた分身だと、一目でタカミチは見破った。
 が、本物がどれであるのかまで判別がついたわけではない。
 同時に襲って来る分身に攻撃力はないだろうが、本体からの攻撃は無視できなかった。
 結局、タカミチが取った選択は。

「破ッ」

 ネギが全方位からの撹乱攻撃を行ってくるのなら。
 タカミチは、全方位への魔力放出で迎え撃った。
 当然、そんな事をすればスタミナは目減りする。効率など度外視した力任せの攻撃だ。
 分身を吹き飛ばすぐらいは容易のはずだった。

 だが、問題は。タカミチが吹き飛ばす前に、水分身が自分から破裂した事だ。
 魔力放出である程度は吹き飛ばせるとは言え、その効果範囲は数メートルが限度。
 リング上全てを覆えるわけではない。

「これが狙いか、ネギ君」

 つまり、水分身を破裂させる事で水煙を作り目眩ましとする。
 その上での奇襲作戦という事だ。今の突撃に本体は混じっておらず、今は機を伺っているのだろう。
 しかし、先程の放出で数メートルの範囲は水煙が侵出していない。これでは効果も半減だった。
 だがタカミチは油断しない。どこから奇襲を受けても対応できるように、極而法を基本型に戻す。
 そして収束が開始され、加速度的に魔力密度が上がっていった。

 そんなタカミチの万全の迎撃体勢を突破するにはどうしたらいいか。
 全方位、どこからでも突撃できるのならば。最も効果的な奇襲方位、その答えは。

「なっ」

 頂点。頭上からの突撃に限る。
 ネギはタカミチに飛び込ませた分身体の他に、予備を一つ残していたのだ。
 その分身と共に、一秒遅れで水煙による幕を張り視界が限定されたタカミチの頭上に躍り出る。
 そしてその分身を土台に瞬動術。加えて、水中で準備した魔法の矢・五矢を身体に纏っての体当たり。

 察知した時にはもう遅い。
 流石のタカミチでもこれは迎撃できなかった。
 その体当たりの直撃を受け、タカミチも相応のダメージを受ける。

 だが、致命傷ではなかった。そのまま次の迎撃に移れる程度には軽傷。
 しかし運はネギに味方した。
 そもそもタカミチの居合い砲により崩れかけていた土台が、ついに耐えきれなくなってしまったのだ。
 足が埋没し、身動きが取れなくなる。
 少なくとも、抜け出す為には一瞬の猶予は必要だろう。
 そして、未だ水煙は健在である。むしろ激突により空白地帯も消え失せていた。
 どこから再度の奇襲が来るか分からない状況で、特大の隙を晒すわけにはいかない。
 極而法は維持したまま、タカミチは周囲を索敵する。
 そして。

「水精の主」

 タカミチの右側から、そんな単語が聞こえた。
 そこには遅延呪文により発現した、30秒前に準備していた九矢がある。

「最大っ!」
「ぬぅっ」

 極而法を纏っているタカミチの背後は、その実防御力という観点で見れば死角ではない。
 この状態のタカミチの、最も防御が薄い点、それは。

「雷華崩拳!」

 放出点である、右側。
 しかも下半身が埋まっているタカミチは方向転換する事ができない。
 ネギに止めを刺そうとした魔力弾にしても、九矢ならば威力で上回れる。
 事実、その拳を右手でガードしたタカミチは明らかに押されていた。
 とった! とネギが全身全霊を籠めた、その瞬間。
 ガードを突破し、直撃できるとネギが感じたのも束の間で。
 押されて、身動きは取れず、絶体絶命のはずのタカミチは、落ち着いた声で呟いた。

「“左右反転”。故に極而して無極也」

 放出と収束が入れ替わる。
 放出は収束に。収束は放出に。右は左に左は右に。
 故に無極。
 確かに極は存在するのに、その位置は変幻自在、不定である。

 今まで押していたネギの攻撃が、一転して劣勢に陥った。
 だが、今更ネギが諦めきれるわけがない。
 ここで全力を振り絞れなくて何になる。
 気絶してもいい。負けてさえ構わない。だから、今は、この瞬間だけは、

「僕の、全てを!」

 絶叫と共に、ネギは正真正銘全ての魔力を搾り出す。
 魔力のオーバードライヴ、意識的な暴走。
 その膨大な潜在魔力が、本人の制御さえできない規模で解き放たれた。



 閃光。そして轟音。
 鼓膜が破れそうな衝撃が観客席まで伝わった。
 しかしそれでも観客たちは、耳を押さえながらも煙が晴れていく舞台を固唾を飲んで見守る。
 何が起こったのかは分からない。
 一瞬の事で、一般人に理解が追いつける者はいなかった。
 だが、それでも感じ取るものはある。
 この試合がこれで終了した事。それだけは、誰もが肌で感じ取っていた。


 煙が晴れて、最初に見えたのはタカミチだった。
 その姿は凄惨たる有様である。
 スーツの右側は肩口から吹き飛び、火傷を負ったような素肌を晒していた。
 加えて、右腕が明らかにおかしな方向に曲がっている。誰がどう見ても折れていた。

 そして、ネギは。
 全ての魔力を一気に放出したせいか、意識を失っていた。
 本当に限界だったのだろう。むしろ、最後まで動けた事が驚嘆に値する。
 ここまで健闘されたのだ。タカミチも、正直勝利はネギに譲るつもりになっていた。
 けれど。

「ネギ選手の気絶を確認しました。よって、大会規定により、勝者高畑選手!」

 タカミチに意識があり、ネギにはなかった。
 無情なれど、それが結果。
 健闘は健闘でしかなく、これが実戦ならばネギは命を落としている。
 試合は試合であり、そんな仮定に意味はない。
 けれど同様に、試合の結果も覆らないのだ。

「想像以上だったよ、ネギ君。本当に楽しかった。ありがとう。君ならきっと……」

 ナギに、英雄に追いつける。
 聞こえていたならば破顔して喜びそうなその言葉は、しかし今のネギには届かなかった。














 結果は結果。結末は無情であれども真実である。
 だが、少年はこの結果を誇ってもいい。
 同じ者に憧れ、同じ先を目指した男が認めたのは。
 才能でも技術でもなく、不屈の闘志と勇気だったのだから。

(拍手)
 



<前へ>

<次へ>



関連記事

今回は早めに更新

日曜までちょっと用事があって更新できそうにないので急いで更新です。

今回の決着について、実は最終決定を下したのは先週の土曜です。
かなり迷い、悩みましたが、書いている内にこれが自然だと感じました。
ここでネギが勝つか負けるかによって、学園祭編、ひいては魔法世界編のルートは大きく分岐していきます。
正直、ネギを勝たせた方が楽だったのは事実なのですが……それでは今までタカミチを取り上げてきた意味がない。
色んな布石を敷く意味でも、原作通りの結果にはしませんでした。
これが、学園祭編におけるネギの分岐点。
後はもう一つの山場として、士郎の分岐点も存在します。
話を広げすぎて自分の首を絞めているような気もしますが、折角時間もあるのだからガンガン書いていくつもりです。
就職までに、魔法世界編には入っておきたいですねぇ。

2010.06.05 | URL | 夢前 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

この展開・・・
完全にアリ

来週も頑張ってね

2010.06.05 | URL | NoName #- [ 編集 ]

ネギ、かっこ良かったぜ!
でもタカミチもっとかっこ良かったぜ!!!
タカミチの新たな戦闘スタイルの一端も見れましたが、エヴァいわくまだまだ序の口みたいで、全力全開のタカミチはどれ程なのか、楽しみで仕方がない!!!
しかし、このタカミチだと超にやられてあっさり退場なんてことはなさそうだし、一体どんな展開になるのか・・・

2010.06.05 | URL | dai #AGIZr..w [ 編集 ]

ネギが負けるとは……
タカミチの新技法カッケェ!
試合には負けたけど「英雄の資質」を認められたネギに乾杯!
ところで新技法ってなんて読むんですか?

2010.06.05 | URL | ぺこぽん #- [ 編集 ]

Re:

・名無しさん
無難な展開ではないけれど、やってみたい展開の一つではあったので、アリと言ってくれると安心します。

・daiさん
全力全開、出し惜しみなしのタカミチを見る機会は案外近いかもしれません。
現時点において、タカミチが士郎にさえ隠して練習している幾つかの型。
こういう設定考えるのは楽しいです。
まぁ一応ネギ戦でも非効率な使い方をしているだけで、出力だけは全力に近いんですけどね。

・ぺこぽんさん
新技法は、きょくじ法と読みます。きょくじむきょく法です。
明日菜の無極而太極斬とは対極対応の製作概念を持つため、こんな名前にしました。
バリエーションも付け易いですし。
ちなみに而という字はしかして・しこうしてと読みます。漢文なんかに良く出てくる字で、それに加えて、などの意味があります。

2010.06.05 | URL | 夢前 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

悪くない、悪くないぞ。

ただ今後の展開が破綻しないかが心配です。

2010.06.05 | URL | かーぽ #- [ 編集 ]

Re: かーぽさん

そこは私も悩んだのですがね……ぶっちゃけ、原作通りの方が段違いに楽だったけど。
どうせ魔法世界編は独自展開になるし、学園祭編のエンドはこれ以上にばくだn(ry

2010.06.05 | URL | 夢前 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

勝者タカミチって事は高音が次の相手か……手が折れてるが闘志の貯蔵は万全か?

ネギの敗北に小太郎そしてアルはどうする?

この前のネギまはリリカルな白い魔王に感じたのは自分だけじゃないだろう

2010.06.06 | URL | 虎 #GMs.CvUw [ 編集 ]

Re: 虎さん

さて、闘志の方は……元々ネギと戦う為だけに参加した試合だし。推して知るべし。
先週のネギまは、勿論銀幕デビューした魔王様を思い出しました。
けどそれ以上に小太郎立つ瀬ねーなとも思いました。
ただでさえついていけてないのにさぁ。そういう仲間フラグは立てないで欲しかった……。

2010.06.06 | URL | 夢前 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

去年の始めぐらいから 読ませてもらってますが初コメかもしんない・・・。 タカミチ頑張った。 これからどのようなパワーアップになるか楽しみです。 しかし従来のクロスとは全然違う士郎のポジションがどのようになっていくのだろうか・・・?。 季節の変わり目なので体調に気をつけてください。 更新楽しみに待っています。

2010.06.07 | URL | ロック #F13adeLg [ 編集 ]

Re: ロックさん

おお、それはありがとうございます。
しかし思えば他所様のクロスとは随分展開も違ったものになってきたかな。
最初の頃は変えて行こう変えて行こうと思ってたけど最近は意識していませんでした。
学園祭編で士郎のポジションはより異質なものになっていく事になりますが……詳細は本編を待て!という事で。
今日は早速雨に濡れて帰ってきたので早めに寝るとします。お心遣い感謝です。

2010.06.07 | URL | 夢前 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

はじめまして。ずっと楽しく読ませていただいてます。

タカミチの勝利には若干驚きましたが、熱くなりました。が、この結果がネギ(とタカミチ)の評価にどうつながるか。
まだ子供ということと相手がタカミチということが免罪符になるか…
「英雄の息子といってもこんなものか。立派な魔法使いでもないものに遅れをとるなんて」的なことを誰も思わないといいけどと思いました。

2010.06.08 | URL | かず #VJUtxzBU [ 編集 ]

Re:かずさん

どうも、コメントありがとうございます。
ネギの評価は……むしろ上方修正だと思っています。
普通なら、いかに英雄の息子であろうとも10歳の子供が戦力評定AAのタカミチに勝てるなんて考えもしませんから。
原作を知っているとネギの勝利が当然のように見えるかもしれませんが、実際はアレかなり奇跡的なものだったと思うのです。
どちらかと言うとタカミチの評判が落ちる類の結果ですよ。あんな子供相手に本気出して、って。原作にしろ、夢破れし本編にせよ、ね。
麻帆良がその辺りかなり寛容で、ネギにも英雄の息子補正で見ているフシがあるから大した問題にもならない、というのが答えです。
その辺り、他人からの評価という点ではネギにとってこの敗北は大きな問題にはなりません。
問題は内面、ネギ自身がどう考えるか、なのですが。

2010.06.08 | URL | 夢前 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

ついにお披露目となった極而法。攻撃する時以外は両手を合わせておけばもっと楽?ついでに仏様みたいでカッコイイぞ。

2010.06.14 | URL | m.k #OTJYnKmE [ 編集 ]

Re: m.kさん

確かに手を合わせておいた方が効率はいいんだけど、それやっちゃうと防御力が下がるから対策さえあれば……てなところ。
まぁその辺りは学祭終盤か魔法世界編にて。
現在、士郎に秘密にしている型の内容で新しいの思いついたからどっちを採用しようか熟考中。

2010.06.14 | URL | 夢前 #qiIB0A1Q [ 編集 ]


管理者にだけ表示を許可する
« | ホーム |  »
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。