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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第6話


「獲得と喪失」


 「別荘」にて出迎えたのは、タカミチに先ほどの茶々丸、そして10歳くらいの金髪少女だった。
 ここで出迎えたのが3人だけ、ということは、消去法で一番可能性が高いのは……。
「君が真祖か」
「そうだ。衛宮士郎とか言ったな。私はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。悪の大魔法使いだよ」
「ふ、む。大魔法使い、ね」
 まあ、見た目小学生が大魔法使いとか言い出しても、イタイだけだ。
 加えて、士郎には目の前の少女から大魔法使いに相応しい迫力を微塵も感じない。
 士郎の世界とて、吸血鬼というのは外見で判断できるような生易しい存在ではない。
 士郎自身、これほど若くはなかったが、少年や少女のカタチをした死徒を刈り取っている。
 だが、それでも、目の前の少女を最強と認めるには、なんだかなぁと思わずにはいられなかった。
 だって、この少女からはギャグの匂いがする。
 溢れんばかりのコミカル体質の予感がする。
 それはこの少女、エヴァンジェリンが、ではなく。主に士郎に対するコミカル属性。
 そう、彼の名だたる師匠たちと同じ属性を感じるのだッ。
 これはマズイ。この少女と関わるのは確かに楽しいかもしれないが、それでも自分の身を考えるのならば全力で回避せよ、と本能が告げている。
 直感ではなく心眼でそれが分かってしまうぐらいにソレを経験している自分を哀れめばいいのか、慰めればいいのか。ともあれ衛宮士郎の女難の相は他の追随を許さない。
 しかし、しかしだ。友、タカミチの為、ここは耐えねばなるまい。
 彼の想いには士郎もいたく共感できるし、何より力になりたいと思うからこそ。
 それに、この別荘を利用できるメリットは士郎にも大きい。これほどまでにマナが充溢しているのであれば、元の世界に帰るための宝石剣多重投影とその大威力共振を再現できるかもしれないからだ。
「何だ、その信じてない目は」
「いいや、信じていないわけではないさ。少しばかり『視て』いただけだよ。まあ、最強を名乗るのであれば、もう少し迫力を出して貰いたいものだが」
「ほう、貴様、喧嘩を売っているのか?」
「やめておけ。この程度も流せぬようでは器が知れる」
「そうか。貴様、自殺志願者か」
 エヴァンジェリンは本気だ。対して士郎も、ここで真祖の現状を見ておくのも悪くないか、などと考えていたところで、
「うごっ」
 強烈な一撃を後頭部に食らって、昏倒しかけた。
「ああ、エヴァ。彼も別に本気だったわけじゃないと思うんだ。だからこの辺で、な?」
「何を言ってる、タカミチ。お前の目は節穴か? こいつは確実に私に喧嘩を売っていた」
「まあまあ。年上なんだし抑えてくれよ」
 タカミチとしては、この別荘を使う以外に修行の手立てはないわけで、故にエヴァの機嫌を損ねるような真似はしたくない。
 それに、もしこの場でエヴァと士郎が全力戦闘でもしようものなら確実に今日の修行は流れる。
 それは、何としても避けたいタカミチだった。
「いてて……何するんだ、タカミチ!」
「それはこっちのセリフだよ、士郎。あんまりエヴァを挑発しないでくれ。今日は! 修行に! 来たんだから!」
 小声で士郎を窘める。小声とはいえ、その必死さが伝わったのか思わず士郎も頷いていた。
「あー、エヴァンジェリンと呼んでも?」
「構わんが、何だ? 今更命乞いか?」
「いや、少々熱くなりすぎたようだ。謝罪する。決着は、そうだな。その封印が解けた時でどうだ?」
「ふん、貴様ごとき、封印なしでもくびり殺すぐらい容易だぞ?」
「ならば帰りに試させてもらおう。今やるとタカミチが煩いからな」
 ふん、と鼻を鳴らしエヴァは見るからに不機嫌そうな顔つきで問いかけた。
「そういえば、ここで何をするつもりなんだ?」
 咄嗟に士郎とタカミチがアイコンタクト。どこまで話していいのか、分からないからだ。
 無言で士郎は首を振り、タカミチは簡単かつ不明瞭に説明することに決めた。
「修行だよ。彼は強いからね」
「ここを使うほど本格的にか?何があった」
「別に、いつもと変わらないよ。ただ、彼の戦い方は初めてみるものだったし、参考にしようと思ってさ」
「その程度の為に、奴の息子の情報を渡したと?」
「どうせあと数ヶ月もすればエヴァも知っていたさ。少し早くなっただけだよ」
 二人の視線が交差する。電撃でも飛んできそうなエヴァの鋭い眼差しに内心ビビるも視線は逸らさないタカミチ。
「まあいい。別荘は自由に使え。茶々丸以外の人形なら自由に使ってもいい。後、出て行く前に衛宮士郎。顔を出せ」
「分かった」
 茶々丸を侍らせ去るエヴァンジェリンの後ろ姿には、確かに不死者の哀愁が漂っていた。
 それに気づかなかったかのように、士郎はタカミチに向き直る。
「さて。では始めるとしようか、タカミチ。死なない覚悟は十分か?」
 返答は、ただひたすら力強かった。







 ◇







 場所は塔の一室、陽の光の差さぬ石室の一つを借りた。ベッドもあったし波の音さえ聞こえぬ程にここは静かだ。
 自分のコントロールは何より集中力が不可欠となる。生存確率を上げるためにも少しでも『他』がない空間を用意しなければならない。
「ではタカミチ。最後の説明だ」
 既に瞑想に入る準備を終えたタカミチに告げる。
「知っての通り、魔術回路の生成は一歩間違えば死に直結する。俺なんかは毎夜無駄に死にかけていたわけだが、君は一回成功すればいい。君が半生録で見たような宝石を使う方法は俺には出来ないから、もっと直接的で荒っぽい方法になる」
 魔力の入った宝石を用意するだけならば、遠坂のアゾット剣を投影するだけなのでそう難しいことではない。
 たが、士郎にはその宝石に貯蔵されている魔力を開放することができない。
 剣というカタチを崩してしまえば、衛宮士郎の魔術的接点は消えてしまうのだ。投影された剣も露と消える。
 よって、もう一つの方法。
「今から君の体の魔術回路を、俺が魔力を流して無理やり目覚めさせる。君は、その魔術回路を安定させスイッチを作ればいい」
 まず、士郎の解析の魔術でタカミチの眠っている魔術回路の基盤に魔力を流す。
 すると、確実に魔術回路は起動するのでそれをコントロールさえできれば生き残れる。
 ただ、そもそも他人の魔力というのは毒のようなものだ。少なくとも、魔術回路を持つ人間にとっては。
 魔術というカタチを持たない純粋魔力を流される痛みに耐え、自分の肉体を精神でコントロールすることが最低条件。
 しかるべき装置か刻印でもあればもう少し安全な方法もとれたが、どちらにせよこの異世界では叶うべくもない。
 これに耐えられないのであれば、所詮その程度の器だと言う事だ。
「さて、俺も理屈で魔術を覚えたわけじゃなかった。話はここまでにして、早速始めよう」
 座禅を組んでいるタカミチは、沈黙のまま頷いた。
 前回魔術回路の有無を確認した時と同様に、士郎がその背後から手をかざす。
同調、開始トレース・オン
 そして、試練は始まった。






 ◇







「これは何事だ!」
 エヴァンジェリンは、その悲鳴を聞きつけて駆けつけた。
 仄暗い室内には苦悶の表情を浮かべて悶え苦しむタカミチと、それを椅子に座りながら眺めている士郎がいる。
「少し、静かにしてくれないか」
「静かにしていられるか! 貴様、タカミチに何をした?」
 分かった、と溜息をつく様に答えた後、士郎はエヴァを落ち着かせる。
「俺が扱う魔法……ある特別な術法を使用する為の試練だ。心配しなくてもあと1時間もすれば安定し始める。暴れなくなったらベッドに移して、あとは風邪の看病と同じだ」
 エヴァは冷えた目で士郎を観察した。
 自分に喧嘩を売ってきた命知らずのバカではなく。不可思議な存在を解析するように。
「貴様、何者だ? 固有技法オリジナルアートを持つなんて本当にトップクラスの魔法使いにしか許されん事。私は、この600年で衛宮士郎なんて魔法使いの名を聞いたことがない」
「自分で調べるのだな。教えてやる義理はない」
 視線で人が殺せるのなら、穴ぐらいは空いただろう。それぐらい、エヴァンジェリンの視線は厳しかった。
「ならば一つだけ問おう。オマエは、私の敵か?」
 今、エヴァンジェリンには600年の時を彷徨い続けた貫禄がある。
 ソレに士郎は、たかだか30年に満たない貫禄でもって答えた。
「君が、俺の信念に立ちはだかるのならば」








 ◇








 タカミチは、開始から1時間程度でベッドに移れる程度には落ち着いた。
 未だ体内で暴れ狂う魔力のうねりを制御しきれていないみたいだが、一旦落ち着けば後は時間の問題だ。
 峠は越えた、ということになる。もっとも、体力が尽きてしまえばそれまでだが。
 タカミチの看護は茶々丸と士郎で交代で行うことになった。
 二晩ぐらいは不眠不休で付き合うつもりだった士郎としては有難い話だが、相手はロボットという事もあり任せることに。
 ちゃんと夜もある別荘に納得しながら、夜風に当たる。
 そしてふと、その気配が近づいていることに気がついた。
「何の用だね、エヴァンジェリン」
「いや、なに。私なりにオマエを調べようと思って、な!」
「ぐっ」
 突然の回し蹴り。士郎は右腕のガード諸共吹っ飛ばされる。
 小さいナリに騙されてはいけない。これは、士郎の価値観からすると死徒クラスの蹴りだ。
 流石は世界が違うとは言え真祖。侮っていた。
 吹っ飛ばされた先は運悪く塔の外側、つまり今から落下開始。
 ビル10階分なんてモンじゃない。ここから落下すれば士郎でも軽傷では済まない。良くて骨折だろう。
 士郎は咄嗟に空っぽの剣を投影、それを踏み割り緩衝材にする形で砂浜に着地した。
「つっ、何をする!」
 俺の割と近くにふわりと着地したエヴァンジェリンに叫ぶ。
「いやいや、まさか飛べないとは思ってなかったんでな。しかしよくもまあ、あの高さから落ちて無事なものだ」
「飛べもしなければ重力制御もできないから、無事ってわけでもない。それより何だ。私を調べると言っていたが」
「その通りだよ。ここに本人が居るんだ。力で聞きだすのが一番早いだろう」
「それはそうだろうな。それができれば、だが」
「ふっ。面白い!」
 超スピードでの接近。目で終えない速度ではないが、士郎は先ほどの着地でヒビが入った右足がまだ治癒しきれていない。
 咄嗟に干将を投影して爪を防ぐが、踏ん張れない為に結局吹き飛ばされる。
 地面が砂浜なので大したダメージではないが、これでは戦えない。とりあえずは間合いと時間が必要だ。
「なんだ、そんなものか!」
「ああ、こんなものだ!」
 干将・莫耶を投擲後即再投影。
 刃には全くふれずに柄を弾き飛ばそうとした、その瞬間に。
壊れた幻想ブロークン・ファンタズム
 士郎の切り札の一つ。これで無傷だったら、士郎としても逃げるしかない。
 倒す方法はあるだろうが、タカミチへの処置などを考えると余力は必要だった。
 爆煙が晴れた先には、血を滴らせるエヴァンジェリンの姿。
 その目は、知識ではなく感覚でキレただけなのだと分かる目をしていた。
 色彩の反転した瞳は、先天的な魔眼のように威圧を発しているが、そこに魔力が集中しているわけではない。
 ゆっくりと治癒していく腕を舌で舐めて、ギロリと士郎を睨む。
「面白いな、人間。今のは何だ?」
 俺の肉体はそろそろ完全に治癒される。既に戦闘に支障はない。
 ならば、会話で時間を引き延ばす必要もなかったのだが、一応言ってみた。
「これで分けにはできないのか?」
「何を馬鹿な。折角面白くなってきたところだろうが。死にたくなければ戦え」
 話しながらも空中へと浮かび上がり、その手を天に翳す。
 明らかに何らかの魔法を行使している。無詠唱か、詠唱破棄か。ともあれ、魔力の密度と収束速度を考えれば、中位呪文クラスであるのは間違いない。
 士郎は距離を取った。
 士郎の魔眼の術式解析では、こちらの世界の魔法はまだ完全に読み取れない。
 広範囲殲滅型の呪文であった場合に対処する為、盾の設計図を脳裏に描きながら少しでも有利なポイントを探す。
氷神の戦鎚マレウス・アクイローニス!」
 エヴァンジェリンは、空中であるというのにまるで地面を蹴ったかの如き超スピードで接近してきた。
 右手の術式は保持されたままだ。瞬間身構えると、術式は開放され巨大な氷塊が出現する。
 それを、まるで砲丸投げのようにエヴァンジェリンは放り出した。
 士郎もこれは予想していなかった。
 今から回避する場合、これが更に爆発するような事があればダメージは免れない。
 故に、士郎が取り得る手段は一つ。
I am the bone of my sword我が 骨子は 捻じれ 狂う
 一息で改変の呪文を。その刃に無双の輝きを与える。
 手の内の干将・莫耶が変貌を遂げ、無類の宝具と化した。
 オーバーエッジ。それは限定的なドーピングのようなものだ。安定性はない。
 だが故に、一撃必殺の好機となる――!
 氷塊を両断する。莫耶で切り、干将で落とす。
 弾くのならば爆発させ、避けるのならば追尾しよう。
 これより先こそ干将・莫耶の本領。剣の英雄とて防ぐこと敵わぬ妙技を見せてやろう。
 と、思ったのだがエヴァンジェリンは呆気なく干将に吹き飛ばされた。
「チィ、別荘ココでもこの程度か。術後硬直が長いし、もう魔力も心許ない」
 倒れた彼女に近づく。戦意も殺気も萎んでいた。
「降参か?」
「違う。引き分けだ」
 何ともまあ、負けず嫌いだった。士郎も少しだけ、彼女を思い出す。或いは、エヴァンジェリンが鮮やかな金髪だったからだろうか。
「立てるか?」
「む」
 俺が差し出した手を取り立ち上がる。
「言って置くが、私は負けたわけではないぞ。今は封印があるから二割の力も出せんがな、封印さえ解ければ…」
「それは怖い。解かないようにしなくてはな」
 いや全く、あれで二割とは恐ろしいものだ、と士郎は思う。そして、あまり2割という数字も信じていない。
 もしも本当に今ので二割だったのなら……タカミチでも、やり様によっては勝てるだろう。つまり、封印なんてせせこましい事をしなくても、打倒が可能であるはずだった。
 だからこそ、士郎は敵対しないように、そして『破戒すべき全ての符ルールブレイカー』の存在を知られないように注意しなければならない。
 第一印象からして何やら嫌な予感がしたのはこの辺が理由なのかもしれなかった。不運だとしか言い様がないが。
「貴様如きが解けるような封印ならとっくに解いている。一応は人間最強の魔法使いがかけたデタラメな呪いだからな。奴が死んだ以上最早解けぬと諦めていたが…」
「見つけたのか?」
「というより、先ほど解ける血を持つ者がこの地に来ることを聞いた」
「タカミチの交換条件というやつか」
 士郎はタカミチの態度を思い出す。それをダシにこの別荘を借りたのだろう。
「そうだ。確かにあと一月もすれば私でも調べ上げてはいただろうがな。ま、そういう事情もあって私は今日機嫌が良かったのだが」
「だが、何だ」
「オマエが現れた」
 要するに、不確定要素ということ。
 エヴァンジェリンにとって味方なのか敵なのか、中立であるのならばそれはどの程度信用できるか、またその脅威度はどの程度か。
 慎重に慎重を期するなら調べるのは当然の事だろう。
「脅威調査にしては、やり口が単純すぎやしないかね?」
「まあ、今日は私もおかしかったのさ。舞い上がっていたからな。しかしこれはこれで得るものはあった」
 確かに、俺は切り札を一枚切ってしまったし、もう少し戦いが続けば奥義まで見せることになっていただろう。
 まあ、現状封印が機能している状態ならば、彼女を無効化する手立てはいくつかある。
 恐るべき能力ではあるが、恐るべき脅威ではない。少なくとも、衛宮士郎にとっては。
「では衛宮士郎。最後に再び尋ねよう。オマエは、私の敵か?」
「君が誇りを失い、魔に堕ちるのであれば」
 君が俺の許せる一線を踏み越えるのならば。
 俺は、君を滅ぼすだろう。

 士郎は、そう付け加えた。






 ◇◇◇







 呼吸は正常。脈は若干早い。
 未だ眠りから覚めてはいないが、魔術回路は安定している。
 結局、俺もエヴァンジェリンとの戦闘の後茶々丸と交代しながらタカミチを看ていたのだが、小康状態に入ってから完全安定するまでが長かった。
 俺が強引に魔術回路を開いてから既に20時間が経過している。
 一般的に言って、これは異常だ。
 人間の精神力・体力でこれだけの長時間、いくら出力が低いと言っても魔術回路を起動させ続けるなんてことは本来不可能。
 この別荘のマナがこれほどまでに濃密でなかったのなら、体力が尽きて死んでいたかもしれない。
 いや、もしかしたらマナが濃すぎることで起きた現象だったのかもしれないが。
「どうだ、タカミチは?」
「まあ、ぼちぼちと言ったところ、だな。後は放っておいても死にはしない」
「その試練とやらは、どんなものだったんだ?」
「企業秘密」
「チッ、ケチめ」
 エヴァンジェリンは悪態付いて部屋を出て行った。
 何をしに来たんだか。今は茶々丸もここにはいないし。
 そして丁度良く、俺以外の人間がいなくなったところでタカミチは覚醒の兆候を強めた。
「ん? あ、士郎、おはよう」
「ああ、おはよう。やっと起きたか」
 至って普通にタカミチは目覚めた。少し騒がしくしていたからかもしれない。
「で、どうだ? 魔術回路を起動させてみろよ」
「あ、ああ。そうだった、やってみるよ」
 眼を閉じて集中しだす。
 カチリと歯車が填まるように、魔力の奔流がタカミチの体内を流れた。
「これでいいのかい?」
「ああ、成功だ、タカミチ。良くやったな!」
「はは、何だか実感が薄いよ」
 まあ、魔術回路を起動できたからと言って、魔術が成功するかと言えばそうではない。
 ただ、行使する権利を得ただけだ。ようやくスタートラインに立てただけにすぎない。
「タカミチ、魔術回路を起動させる時に何かイメージのようなものは浮かばなったか?」
「ああ、何て言うか……肺を圧迫する、いや、穿つって感じかな」
「それは魔術回路起動のスイッチになる。その感覚を忘れずに、いつでも鮮明にイメージできるようにしておけばいい」
 魔術回路のスイッチのイメージというのは千差万別と聞いたことがある。
 俺は撃鉄を上げるイメージ。遠坂は心臓をナイフで突き刺すイメージだと言っていた。
 タカミチの肺を穿つ、というのは遠坂のイメージに近いものだが、そこに関連があるかは分からない。
 何せ、ここは異世界。こちらの基盤を持つ人間がいること自体が異常だ。
「じゃあ士郎、次は魔術そのものだね」
「まあそう急くなよ。体力も魔術回路も疲弊しているはずだ。半日は休んで貰うぞ」
「僕なら大丈夫だよ。絶好調なんだ」
「ダメと言ったらダメだ。この別荘が使えるのなら時間はあることだし、実は俺も少し休みたいんだ。一晩寝てないからな」
「そうか、ありがとう。無理言ってすまなかった」
「いいさ。とにかく、お前もきちんと休め」
「うん」
 こちらの体を引き合いに出さないと休んでくれないというのも困りものだ。
 俺も、他人のことを言えたモンじゃなかったから無理やり休まされたものだけど。
「さて、俺も一休みするかな…」
 エヴァンジェリンとの戦闘で消費した魔力も回復したい。
 用意されたベッドで、俺も緩やかに眠りに就いた。
















 休息の後、タカミチの魔術特性・属性の調査を行った。
 タカミチの属性は火。五大元素の一つだ。
 時計塔では風はノウブル火はノーマルと言われるらしいが……。
 正直、剣ではないにしても特殊な属性が出た方が教えるのには適していたのだが、こればかりはどうしようもない。
 俺が教えられる魔術なんて、強化・変化・解析に低級の補助系魔術、自分では扱えないルーンのみ。
 まあ、知識だけは持っているのもいろいろあるが、実践させるとなると難しいだろう。
 ルーンは剣に刻み込まれているものも多いし、何より剣を自作する時は組み込むことも多い。
 とりあえずは、強化・変化・解析を中心に魔術回路と魔力の効率運用から始めて、応用として扱い易いルーンを二人で模索する、という方針になる。
 タカミチがどの程度覚えがいいかにもよるが、まあ一年もあれば応用に入れるだろう。
 属性がもっともスタンダードな火であるし、基本をマスターするのは早いかもしれない。
「じゃあとりあえず魔術回路の慣らし運転だ。咸卦法の魔力を回路で練ってみろよ」
 コクリと頷いてタカミチは魔術回路を起動させる。
「右手に魔力、左手に気――あれ?」
 あからさまに困惑した表情で、何度も左手に気を集めようとする。
 だが、左手に集まるのはどうみても右手と同じ魔力だった。
「気が、出ない?」
 呆然と、タカミチは繰り返し続けた。












茶々丸「いきなり出番がありませんでした……下剋上は諦めます」
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