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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第56話


「開幕前」





 まほら武道会の会場となる龍宮神社に、選手たちは続々と集まってきていた。
 知る人ぞ知る、錚々たる顔ぶれと言えるだろう。
 麻帆良……いや、関東魔法協会の主たるメンバーこそ顔を出していないものの、この大会には世界トップクラスが出場している。
 となれば、この大会の優勝というのは誉れ高いものではあるのだろう。
 たかが学園祭の催しとしては、大々的に過ぎた。

 そしてその選手たちの集まる控え室の隅で、こそこそと会話を交わしている男たちがいる。
 士郎とタカミチだ。

「分かっていると思うが、魔術は使用禁止だぞ」
「元より使うつもりはないよ。追い込まれたら強化ぐらいは使うかもしれないけど」
「ネギにそこまで出来るとは思えないがな」
「どうかな。あの人の息子なんだから……分からないよ」

 タカミチは楽しそうに笑う。そうであって欲しい、と言うように。

「そういう君はどうなんだい? エヴァ相手に魔術なしはキツイと思うけど」
「そうだな……確かに使う事になるだろう。バレないように工夫すれば、手品にしか見えないだろうさ」
「まぁ、君の魔術はね」

 投影など、突然虚空から道具を取り出す分には手品だと言い張れない事もない。特にこの街では。
 真名開放クラスの大技を使わない限り、基本的に士郎の戦い方は地味だ。
 隠蔽は容易だろう。このご時世、超が言っていたように映像情報がなければ誰も信じない。

「あ、でも、あっちの方はいいんだろ?」
「あっち? ああ、アレか」

 指示語ばかりで第三者にその内容は理解できないが、二人はあえてそういう表現を使っているのだろう。
 アレ、とはタカミチが士郎と共に編み出した固有技法の事だ。
 一応の完成を見せてからもう数カ月……タカミチの体感的にはその倍の時間が経過していた。
 その間全く進歩を遂げていないわけではない。
 より使い易く、より多機能に。着実に進歩は遂げていた。
 朧げながら、その完成形も見えてきている。

「構わないぞ。アレの方が余程派手ではあるが」
「まあ、ね。でも、見ただけで原理は分からないだろうし、豪徳寺君が気弾使っちゃってるから……」
「今更ではあるか」

 本来の魔術的意味を取り込んだ技法としてではなく、単純に魔力放出の効率化としての側面だけを見せるのなら、ただタカミチを中心に風が起こるだけだ。
 それでもネギと戦う分には十分だろうし、今のタカミチでは複雑な制御を行うよりも素直に魔力放出で戦う方がパワーが出るのも事実だった。

 と、そんな会話に口を挟む第三者がいた。
 すっと突然、一瞬前までは確かにそこに存在していなかったのに、浮かび上がるように現れたのだ。

「私も見てみたいですね、タカミチ君の新技」
「アル……心臓に悪いですよ」
「おやおや、そんな柔な鍛え方はしていないでしょう?」

 薄い笑みを張り付けているのは、アルビレオ・イマ。
 今大会においてはクウネル・サンダースなどというふざけた名前で登録していた。
 間違いなく世界トップクラスの実力を持ち、今大会においては隠れた優勝候補でもある。

「そうだとしても、マナーに欠ける行為だとは思うがね」
「これは失礼。面白そうな話をしていたものですから、つい」

 何を考えているのか、薄気味悪い笑みを浮かべるアルに士郎は顔を顰める。
 アルは根城としている図書館島の深部から出てくる事はない。
 いや、出来ない。
 よって、基本的にエヴァンジェリンの別荘で修行しているタカミチの新技法を見たことはなかった。
 興味を持つのも当然ではあるが。

「だいたい、タカミチ君も酷いですよ。折角私の存在を知ったというのに、一度も会いに来ないのですから」
「来て欲しかったんですか?」
「いえ、もし来ていても追い返していたでしょうね」

 しれっと答えるアルに対して、タカミチはこれ以上ない程うんざりした顔を見せる。
 どうして欲しいんだよ、というタカミチの内心は全くもって正しい。
 来ないなら来ないで寂しいが、来たら来たで煩わしいというのは理解こそ出来るものの、それを口に出してはいけないだろう。

 ただ、こうして口に出している以上は、きっとアルの本心は別にある。
 この男は、余程真剣な話でない限り、自分の本心を語らない。
 天の邪鬼ともまた違う、長く生き過ぎた者の精神防衛の形。
 ……などと言うと大仰だが、要は基本的に人を食った性格をしているという事だ。

「アル。その身体、幻影なのか?」
「いいえ。ちゃんと実体がありますよ」
「しかし本体ではあるまい」
「ええ。私の本体は今も私の部屋にあります」

 それは、驚嘆に値する事実だった。
 アルの部屋があるのは、麻帆良の学園都市から直下数キロ程度。
 そして本来分身、影分身というのは本体の視界以上の距離まで伸ばす事はできない。
 これは感覚的な理由でもあるし、何より術としての強度が問題になる。

 西洋魔術と東洋における影分身は、過程は違えど根幹と結果は変わらない。
 だが、基本的に分身の技術は忍術に代表される東洋の技術が優っているとされている。
 だと言うのに、アルは西洋魔術の理論上において、それだけの長距離かつ強力な分身体を維持しているのだ。
 その実力は、推して知るべきだろう。

「まぁ、この術は街に高濃度の魔力が満ちる学祭期間中しか使えませんからね。ズルみたいなものではありますが」
「確かに、ソレで試合に出るならズルでしょうね」

 なにせ、基本的にダメージは無効なのだ。
 本体との繋がりを完全に断ち切るだけの強大な一撃で全てを吹き飛ばすか、特殊な武器、もしくは術が必要になる。
 士郎とて、今大会の刃物の使用禁止というルールがある以上、ルールブレイカーによる解呪は不可能。
 もしも戦う事になったらどうすればいいか……。

 士郎とタカミチは、同時に対抗策へと思考を巡らせる。

「まぁ、それも目的があってこそ。見逃してもらいたいですね」
「さて、その目的次第だな」

 士郎がそう答えるのは予想していたのか、アルは言葉尻に噛み付く勢いで返答する。

「ネギ君と決勝で戦いたい。それだけですよ」
「それは……僕に負けろと言っているんですか?」

 アルの真意を探るべく、一段先の結論をタカミチは尋ねる。

「いえ、そこまではさせられませんね。ただ、彼が勝てる余地ぐらいは残しておいて貰いたいものです。
 自分の全てを出し切れば、或いは勝てる……くらいにはね」
「僕は、ネギ君と本気で戦いますよ。勿論試合として、力を試す場としてね」

 それはつまり、アルの真意に沿うという事だ。
 タカミチとの試合を通してネギがより成長できるように……その手助けをするつもりで、タカミチはここにいる。
 手を抜くわけでもなく、ネギが諦めてしまうまでは真摯に向き合うだけ。
 けれどもしもネギが諦めてしまったら……容赦なく叩き潰してしまうだろうが。

「では士郎、貴方は?」
「まずはタカミチに勝たねばならんだろう。そもそも、私がエヴァンジェリンに勝てるかどうかも分からない」
「はは、冗談が上手いですね、士郎。本気で言っていますか?」
「ああ、本気だ。この試合のルールでは、私もエヴァンジェリンと同じく封印されたようなものだよ」

 実際の所。
 刃のついた武器の使用禁止、というのは衛宮士郎の能力を否定するようなものだ。
 無限の剣製。刃のついたものならば、彼はどんな高位の武装であれその複製を扱える。
 投影魔術として、刃のついていないものもある程度は再現できるが……士郎の戦力は概念武装に依るところが大きすぎた。
 宝具なしでは普通の魔法使いよりは強い程度である。

 とは言え、それでもエヴァンジェリンの封印の方が余程厳しいものである事に変わりはない。
 単純な力で対比した時、素手の士郎の方がまだ今のエヴァンジェリンよりは数段上だろう。
 だがそれでも、士郎は楽観視などしなかった。
 数百年という時を経た知識と経験が、いかに恐ろしいものかをよく知っていたからである。

「まあ、ネギともし当たるような事があれば一考しよう」
「ありがとうございます」

 アルにしては珍しく、その声は真剣だった。

「言うまでもない事ではあるが。もしもお前の目的が、何者かを害するものであったなら――」
「敵に回る、と。分かっていますよ。そして安心しなさい。私は、我が友の願いを果たすだけ」

 そう、あまりに満足そうに言うものだから、士郎も何も言えない。
 元よりタカミチはアルを疑ったりなどしていないし、逆らうつもりもない。
 性格破綻者であったとしても、アルビレオ・イマはマギステル・マギなのだから。





◇ ◆ ◇ ◆






 そんな密談が交わされている裏で、エヴァンジェリンは何故かネギの体調を慮っていた。

「本当に万全か? 何ならもう少し別荘で休んでいても良かったのだぞ」
「いえ、もう時間ですし……いつもの事じゃないですか」
「それはそうだが。私のせいで力が出せなかった、などと言い訳されても困るからな」

 したら殺すが、と目で語っている。
 そんなエヴァンジェリンにネギは内心ガクガクと震えていた。
 何故か、今日のエヴァンジェリンはいつもと違う。
 ネギはおろか小太郎や明日菜までそう感じていた。

 必要以上にネギの体調を慮っていたり。
 やたらと気が充溢していて、今から殺し合いでも始めようかという雰囲気であったり。
 従者である茶々丸がいないから、ではないだろう。
 そういう意味でならチャチャゼロが傍らに控えている。

 原因として考えられるのはただ一つ。
 今日の試合、エヴァンジェリンの一回戦の相手。
 衛宮士郎との戦いを前にして、エヴァンジェリンは緊張しているのか?

 などと。そんな事を訊けたら苦労はしない。
 本人に訊けたらまさしく勇者だ。きっと魔王だって倒せるハズ。

「ねぇエヴァちゃん、何かヘンよ? いつもそんなにネギに優しくないじゃない」

 ぎょっとネギが振り返った先に、勇者はいた。ただの蛮勇なのかもしれないが。
 その勇者の名は神楽坂明日菜。
 ネギでさえ、やるなら明日菜だろうな、とは思っていたものの。
 実際行動に移されると、正直勘弁して欲しいと思う。

「ま、私の事情で弟子に負担をかけたからな。それぐらいの融通は利かせるさ」

 融通というとニュアンスが違ったが、その本意に変わりはないのだろう。
 掛け値なしに、エヴァンジェリンはネギの事を心配しているのだ。

 別に、士郎との対戦に何らかの思惑があるにせよ、それがネギへの態度に繋がるわけではない。
 となれば、ネギの対戦相手……タカミチに対して、何か思う所があるのだろう。

「それに、今のタカミチは不安定だからな。“事故”が起こるかもしれん」
「事故?」
「可能性に過ぎないがな。どちらにせよ、衛宮士郎もいるのだから大事にはならないだろうが」
「それってどういう……」

 ネギは、何かそのエヴァンジェリンの言葉に不吉なものを感じ、先を聞き出そうとした。
 が、狙ったようなタイミングで選手集合のアナウンスがかかる。

「ほらっ、行くわよネギ!」

 呼びかけられれば、反射的に応じてしまう。
 そして、状況に流されるまま、この時感じたモノなど忘却してしまうのだった。







◇ ◆ ◇ ◆






 ネギたちが控え室に入ると、既に集まっていた選手たちの視線を集めた。
 見知った顔、知らない顔、それぞれ半々ぐらいだろうか。

 その中でも、近づいてきたのはタカミチだけだった。

「おはよう、ネギ君」
「うん、おはよう、タカミチ」

 ただの挨拶ではあるけれど、タカミチはその顔つきの違いを見てとった。
 昨日はまだ怯えや不安の色が濃かったが、今はそういった負の感情を受け止め、挑戦しようという気概が感じられる。

「今日はようやく、君があの日からどれだけ成長したか見れる。試合、楽しみにしてるよ」
「僕、今日は頑張るよ。父さんに負けないために。だからタカミチ……」

 そこで、ネギは一呼吸間を置いた。
 きっとそれはネギにとって、その一呼吸が必要な程に勇気が、覚悟が必要な言葉だったのだろう。

「今日は、手加減しないでね」

 言い切ったネギよりも、後ろでその問答を眺めていた小太郎の方が嬉しそうな顔をしていた。
 さらにその後ろでは明日菜が珍しくおろおろとしていたのだが、誰も気づく事はない。

「はは、そう気負う事はないぞ、ネギ君。君は君、お父さんはお父さんなんだからね」

 それに、魔法バレ対策で結局は手加減してしまう事になる、とタカミチは言った。
 けれど、それはきっと言い訳のようなものなのだろう。
 魔術と、それを用いた全力の戦闘は、流石に見せる事ができないから。
 ネギが魔法バレに気をつけなければならないのは事実だが、その程度でこの学園に張り巡らされた誤認識の結界効果を破れるとも思っていない。
 加えるのなら、アルとの直前の会話も尾を引いているのかもしれなかった。

「あの、高畑先生は……ネギのお父さん、サウザンドマスターの事を知っているんですか?」
「え? ああ、そうだね。知っているよ」

 突然の明日菜からの質問に、タカミチは驚きながら返答する。
 その驚きは、単純に突然話しかけられたからではない。
 どちらかと言えば、その質問の内容が問題だった。

「それでその、もしかしてというか……高畑先生も“魔法使い”だったりするんですか?」

 一瞬、タカミチは自虐的な思考に囚われる。
 タカミチは、“魔法使い”という分類に認められてはいない。
 戦士としての資格はあり、その戦闘力がいくら認められたところで、彼が魔法使いとして認定される事はなかった。

 そう、これまでは。
 今のタカミチならば、或いは魔法使いとして認められるかもしれない。
 呪文を詠唱し、魔法に準ずる何かを操るタカミチならば。

 ただ、士郎に言われるまでもなくタカミチとてこの技術、魔術を公にするつもりはない。
 今までマギステル・マギになれなかった自分、そのストレスや憤りがないわけではないが、それでも精神的な余裕はできたのだ。
 今までとは違う、自分は魔法使いなのだと、そう誇れるように。

 それは、明日菜の質問に対する広義的な意味に聞こえたかもしれない。
 けれど、例え世間にどう思われていようとも、己は魔法使いであるのだと。そう誇ってタカミチは口を開く。

「うん。僕は魔法使いだよ」

 場違いな程ににこやかに答えるタカミチに、明日菜はどう応えていいものか迷う。
 それは、タカミチを前にした緊張とは違う、言いようの無い不安だった。

「すまない、アスナ君。君にはもっと早く伝えておくべきだった」
「あ、いえ! 私、あの……」

 その感じてしまった迷いを振り払うように明日菜は慌てるが、どこか遠い目をしたタカミチは続ける。

「そうだな……アスナ君。もしかしたら、君に色々と語る時が来ているのかもしれない」

 かつては否定し、現状維持を優先させた。
 その判断に悔いなどないし、それが正しい事だとも思っている。
 けれど、今こうして裏の世界に関わりながらも純粋で、前を向いて歩いている明日菜を見ていると思うのだ。

 話した方がいいのではないだろうか、と。
 今更こちらの世界に関わるなというのは無理だ。
 ならば、せめて自制するための知識ぐらい与えておかなければ逆に危険かもしれない。

 そういう、表向きの事情と。
 こうして成長した明日菜ならば、自分の過去と向き合えるのではないだろうかという期待。
 どちらかと言えば、後者が大きくなった瞬間だった。

「おはようございます、選手の皆さん!
 30分後に始まる第一試合の前に、ルールを説明しておきましょう」

 朝倉の声は、会話を中断させ視線を集めた。
 それは明日菜とタカミチにしても例外ではない。

 ルールの説明は簡単なものだ。基本的にはおさらいであり、昨日行われた予選会との違いを確認するのみである。
 武器は飛び道具、刃物のついたものは使用禁止。
 ダウン、リングアウトそれぞれ10秒、気絶、ギブアップで勝敗は決定する。
 一応試合の進行上必要な措置として制限時間が設けてあり、オーバーした場合は観客のメール投票によって勝敗が決まることになっていた。

 と、そんな説明が行われる中、刹那は士郎……に話しかけようとした。
 したのだが、士郎が別の選手に話しかけていた為に断念する。
 相手は黒ずくめのローブを羽織ったいかにも怪しげな人間だ。しかし、背格好からすると少女か子供。
 自分と同じぐらいだな、と背の高さを認識して、何やらもやもやとしたものを感じつつも、仕方ないとばかりに次の用事を優先させた。

 今回刹那がこの大会に参加したのは、超の監視の為である。
 ネギにタイムマシンなどというもの代償なく与え、火星人だのネギの子孫だの、怪しげな事ばかり口にしている。
 普通に考えれば、それらは撹乱のための虚言なのだろう。
 しかし、という事は撹乱する必要があるという事だ。つまり、何らかの隠しておきたい事がある。

 それが何なのか、果たして学園に、ネギに、明日菜に、木乃香に害がないものなのか。
 刹那はそれを見極める必要があると己に断じていた。
 そして恐らくは同じ目的だろうタカミチとも、ある程度連携しておく必要がある。

「高畑先生」
「刹那君」

 阿吽の呼吸、ではないが。
 名前を呼び合っただけで、正確にはアイコンタクトで、二人は凡そ話の内容を理解した。

「やはり、高畑先生も超さんの偵察に?」
「うん。彼女は要注意生徒だからね。それに」
「それに?」
「士郎も、何か企んでるみたいだ。超君と共謀してるのかまでは分からないけどね」
「士郎さんが?」

 チラリ、と士郎を流し見る。露骨な動作だったが、士郎は刹那の視線には気付かなかったようだ。
 或いは気づいていて気づかないフリをしているのかもしれないが、少なくとも表面上動きはない。
 そしてもう一度タカミチを見上げて、その視線が予想外に厳しい事に刹那は驚く。

 刹那にとって、士郎とは信頼と信用に値する人間であり、その行動は理由なく信じられる類のものだった。
 例えその行動が一見して理解できないものであったとしても、きっと自分には分からない深い理由があって、いずれはプラスになるのだろう、と。
 士郎だって間違うし、戦いにおいて敗北する事もある。
 それを刹那は知っていたが、それでも根付いた価値観は、より大きな衝撃がなければ塗り変わる事はないのだ。

 数カ月前、共に修行した時の事。
 停電の夜の戦い。
 そして修学旅行での防衛戦。

 いずれも士郎はそれなりに危機的状況を体感し、その上で結果を出してきた。
 故に、最終的には何とかなる。そんな価値観、思い込みも、仕方のないものではあったのかもしれない。

「しかし、もしも士郎さんが超さんと協力関係にあるのなら、それこそ問題はないのでは?」

 士郎が裏切るとは思えない。そういう刹那に、タカミチは内心は苦笑する。
 そんなに甘い男ではないのだ、と。
 衛宮士郎は、味方とか敵とか、そういう枠に当て嵌めて考えていい類の人間ではない。
 それを、おそらくはタカミチだけが理解している。

「士郎はきっと、自分の中の正義に従って行動する。騙されるなんて事もないだろうね。
 でもだからと言って、その正義が僕たちと同じであるとは限らないよ。
 より多く、何の関わりもない人々を助ける為に、見知った数人を見捨てるかもしれない」
「そんな……」

 刹那は、その言葉に強いショックを受けた。
 その言い分が、よりにもよって士郎と一番仲の良いタカミチの口から出た事が許せなかったのだ。
 勿論そんな感情的な思考以外にも、刹那の中で冷静にタカミチの言葉に納得している自分もいた。
 そしてそんな冷静な部分が許せないという感情と、芽生えてしまった猜疑心に抗い、信じていたいと思う気持ち。
 それらが複雑に絡み合い、刹那は何と言っていいのか、どんな表情を浮かべればいいのかも分からなかった。

「まあ、確証はないんだけどね。僕はその辺りを調べる為、って感じかな」

 朗らかとも言えるタカミチの声が遠く聞こえたが、いつまでもショックに浸っているわけにもいかない。
 大体タカミチの言う通り、士郎が超と共謀して学園の敵になろうとしているか、まだ分からない。
 それに、刹那が最初に信じた通り、超の目的そのものが平和的なものかもしれないのだから。
 
「分かりました。一応私の方でも注意はしておきます」
「その辺の面倒な事は僕がやるから、君は試合を楽しんでくれ。君は士郎と当たりそうだし、ね」

 確かに刹那が明日菜に勝利し、士郎がエヴァンジェリンに勝利すれば、二人のカードは実現する。
 そしてそれは、高い確率で起こりうる未来だった。
 そう、何か偶発的な要素でも無い限り。

 士郎と戦うかもしれない。
 そう意識すると、刹那の心はざわついた。
 何かしら、予感を感じていたのかもしれない。
 この時の刹那は、士郎と対戦しないという未来を全く予想しておらず……無意識の内に、勝ち進む理由を探していたのだった。







 




その頃のアキラ

「士郎さんからチケットは貰ったけど、知り合いがいないな……あ、長谷川だ」

(拍手)
 




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あとがき

キリがいいんで大幅カットでお送りします56話。
何か武道会編長くなりそうなんで区切りました。
57話ももう半分ぐらい出てきてるけどどうなることやら。
ただ、次は愛衣VS小太郎で、個人的には武道会編で書きたいシーンの二番目なんで、気合いれて書くつもりです。
今回は殆ど導入で結局話は進んでないので、次はGW明けぐらいには更新したいと思います。

ではまた次回。

2010.04.29 | URL | 夢前 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

一番乗り!?

おお、今まで読んで来てはじめて一番に読めた!

初めまして、いつも楽しく読まして貰ってます
このサイトは他のサイトと比べてかなりイイペースで
更新してくれているので毎日楽しく巡回させてもらってますw
就職活動などで忙しいかと思いますが、ぜひ!挫けずに末永く
続いてください!!

それでは!!!

2010.04.30 | URL | 漂白剤 #UYVRRtOM [ 編集 ]

くそうエヴァvsシロウがやっと見れると思ったのにまだじらすとは・・・
オラわくわくすっぞ・・
次回も楽しみにしてます
これからも頑張ってください 

2010.04.30 | URL | シグ #Hmqf3HRA [ 編集 ]

Re: タイトルなし

・漂白剤さん
うっす。まぁ次は時間かからんと思います。

・シグさん
エヴァ対士郎はかなり先になりそうな……いやだって、組み合わせ順は基本的に原作から弄ってないので、愛衣VSコタロで一話、ネギVSタカミチで一話、他の方々というかアキラ関係でちょこちょこ、明日菜VS刹那を飛ばすとしても……三話ぐらい先になるかなぁ。
来月内には二人の対戦シーンを書けるといいんですが。
しかし考えてみると士郎VSエヴァは二話かかるかもしれないんすよねー。

2010.04.30 | URL | 夢前黒人 #- [ 編集 ]

くそっ、出遅れた

知らない間に更新されてただと!? ちくせう
しかし次はいよいよ試合開始か?
作品の雰囲気からして試合と試合の間だけでまた一話分掛かりそうだけども

2010.04.30 | URL | ぺこぽん #- [ 編集 ]

Re: くそっ、出遅れた

そうっすね。幕間の扱いをどうするかで話数は変わってくるかも。
次はきっちり試合はじまります。個人的には好きなエピソードでもあるんで楽しみにしててください。

2010.05.01 | URL | 夢前黒人 #- [ 編集 ]


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