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一次・二次創作を扱っています。現在ネギま!×Fate「夢破れし英雄」連載中。

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夢破れし英雄  第55話


「学園祭開場・まほら武道会予選」  正直、これ程だとは思っていなかった。というのが士郎の率直な感想だ。
 準備の段階である程度その規模は把握していたものの、実際に完成を見るに士郎の予想は過小評価だったらしい。
 これだけ大きな祭りを開催しつつ、魔法を隠匿しようというのだから頭が下がる。
 何を考えているのか、と思わなくもないが。

「長いな……」

 列が、である。
 士郎は3-Aの模擬店を覗きに来ていた。
 短い期間ではあったが教え子たちである。他の生徒たちよりは、やはり親しみもあった。
 あのクラスの大半はアルトリアの常連だという事もある。
 彼女らは格安の喫茶ぐらいにしか思っていないのかもしれないが。

 しかし長い。お化け屋敷だと聞いていたのにこれは予想外だ。
 喫茶店なんかだったらこの列もあながち理解できなくもないのだが、お化け屋敷でコレとは。
 全く、この人気を少し自分の店にも分けてもらいたい――と考えて、やめた。
 考えてみればそんなにお客が来ても困る。今ぐらいのんびりとやっている方が丁度いいのだろう。

 さて。待つのは比較的得意な士郎だが、効率を重んじる方でもある。
 こんなに並んでいては順番が回ってくるのはいつになるか分からないし、正直に言えばダルイ。
 学祭の期間はまだまだあるのだから、明日でもいいだろう。
 超包子でのシフトは既に終わっているとは言え、あと数時間もすれば予選会も始まる。
 別に準備が必要とも思えなかったが、一応余裕は持っておきたかった。
 の、だが。

「あり? 衛宮先生じゃん!」
「……ああ、明石か」

 トリック・オア・トリート! とでも言いそうな格好だった。猫娘、なのだろうか。
 正直に言えば、士郎はあまり明石裕奈という少女に関わりたくはなかった。
 というのも、単純にして明快、明石教授の愛娘だからである。
 溺愛が過ぎるとは言わないが、そこは大事な一人娘。
 特に教授との関係悪化を防ぐ為に、程よい距離間を保ちたいと考えていた。
 別に、かつて刺された釘に怯えているわけではない。ないのだ。

「一応訂正しておくが、もう私は教師ではない。よって、衛宮先生というのは妥当ではないな」
「んー、じゃあマスター?」

 少し、ドキリとした。これで裕奈が金髪だったらマズかったかもしれない。
 士郎にしては珍しい事だが。お祭りの雰囲気に、多少なりとは流されているのかもしれなかった。

「まぁ、好きに呼べばいいさ」
「うんうん。それよりさ、もしかしてウチのお化け屋敷に来てくれたの?」
「ああ。明石は売り込みか?」
「そ。これから休憩だけどね」

 大して疲れた様子も見せずに裕奈は笑う。
 そうして会話している内に、また列が数人分長くなった。

「あ、ちょっとちょっと。割り込みはダメだよー?」

 裕奈はぐいぐいと士郎の手を掴んで列の中へ誘導する。
 ……これで士郎は帰るわけにもいかなくなった。
 果てしてツイているのかいないのか。

「じゃ、楽しんでいってね!」
「ああ、期待している」

 


 結局、待ち時間は1時間40分だった。








◇ ◆ ◇ ◆








 まほら武道会の予選会の開始時刻は午後6時から。
 3-Aの模擬店で思わぬ時間を使った士郎だったが、この予定だけは逃すわけにはいかない。
 少しだけ早足で、会場を目指す。

 とは言え時間はまだ早い。このままのペースならば4時過ぎには会場についてしまうだろう。
 2時間前とはいくら何でも早すぎるが、士郎にはちゃんと予定があった。
 超との約束である。打ち合わせとも言えるかもしれない。
 エヴァンジェリンから超の計画を聞いてから、士郎が超本人と会うのは初めてだった。
 予選前に来てくれ、という連絡を電話で受けたものの、エヴァンジェリンから話を聞いている事のような、突っ込んだ話には全く触れていない。

 だからか、自然に士郎の顔も強ばっている。
 遊びが一切ない、というべきか。とてもお祭りにはそぐわ無い厳しい表情だ。
 そんな男が早足で進んで行くのだから、普段ならば注目を浴びてしまっただろう。
 しかし今日は学園祭の初日。
 今まで徹夜で準備を進めていた生徒たちが多少目に隈を作り歩いているなんていう光景は、探せばどこにでもある。

 けれど、そんな顔した人間が突然止まるというのは、少しばかり奇異に映ったかもしれない。

「あれは……」

 視線の先には刹那がいた。とは言え、実際の距離は1キロ以上あるだろう。
 士郎の超人的な視力だからこそ、その表情に至るまで鮮明に見えるだけだ。
 ある意味覗きのような行為だが、視界に捉えたのが刹那でなければ、或いはそんな表情でなければ、士郎も注視する事はなかっただろう。

 刹那は笑っていた。士郎に見せた事がないような顔で、とても幸せそうに。
 いや、実際には士郎の記憶に残っていないだけで、修学旅行の間にはもう十分打ち解けていただろう。
 ただ、修学旅行以後避けられていた士郎は、この時この瞬間が初めてだった。
 隣には木乃香がいて。明日菜もいて。その辺にいる普通の少女のように、屈託なく笑えている刹那の姿は。

 その事について、士郎に芽生えるのは純粋な喜びだ。
 あんな表情も出来たのか――いや、出来るようになったのか、と。
 士郎はある程度は刹那の事情を知っていたから、今こうして笑えている事の奇跡というものを理解している。
 だからこそ余計に現状が好ましいと思うし、その笑顔を守る為ならどんな努力も尽くすつもりだ。

 ただ。一つだけ、残念な事もある。

「困ったな。あんな笑顔を見せられては、刀など贈れない」

 刀とは、剣とは。
 所詮、傷つけ、壊し、殺すことしかできないものだ。
 誰かを守る。御大層な事だが、それは敵を討ち滅ぼす事でしか叶えられない。
 それでも力が必要な場合はあるだろう。
 しかし、あんな笑顔ができるような少女に、そんな力は似合わない。

 彼女はもう守られる側の人間だろう。それでいい。それが許されて然るべきだ。
 ネギはエヴァンジェリンの元で強くなるだろうし、刹那自身も現時点で十分強い。
 後は、厄介事を避けるように努めればそう困った事態にもならないだろう。
 もしもそんな事態になったとしても、その頃にはネギにも守れる力があるはずだ。
 士郎はこの学園祭で麻帆良を去る事になるだろうから、近くで彼女らを見守る事はできないが……。

「はぁ。真打ちは詠春にでもくれてやるかな」

 それもいいだろう。
 或いは、どうせ士郎も元の世界に帰る事などとうに諦めているのだし、気長に譲る相手を探すのもいい。
 しばらくはエヴァンジェリンに預けてやればいいのだ。
 どうせ彼女は呪いのせいでこの学園から出る事はできない。
 出る事が出来たとしても、返せと言えばぶつくさ文句を言いながらも返す女だ、あれは。
 
 しかし、まぁ。
 譲る相手を探すよりは、いつかできるであろう刹那の子供でも待つ方が、余程早いのかもしれない。
 そんな事を考えながら、士郎は超との約束の場所へ向かった。






◇ ◆ ◇ ◆








「遅いネ」
「すまない」

 対応は簡潔に。悪いのは自分であるだけに士郎の言葉も真摯だった。
 対して超の方は純粋な驚きの色があった。まさか士郎が遅れるような事があるとは思わなかったのだろう。

「何か、面倒事カナ?」
「いいや私事さ。面倒というより、徒労という方が正しい。まあ、終わった事だ。問題はない」
「フム。ならば、早速本題に入らせて貰おうカナ」

 超のバックのスクリーンに映像が映し出される。
 世界樹、巨大な魔法陣、装甲を纏った鬼神、保有戦力……まだ仲間だと決定していない相手に公開するには問題があり過ぎる情報だ。
 士郎は既に超に協力すると決めていて、エヴァンジェリンに対するその決意表明を超は聞いていたが、士郎は見られていた事など知らない。
 故にその性急さに疑念を抱くのも不思議ではなかった。
 今まで慎重過ぎるくらいであったのに、この豹変具合は一体どうしたことかと。

「不思議そうな顔をしているネ?」
「ああ。そんなに状況は逼迫しているのか?」

 もしも超が、士郎の助力なしでは計画遂行が困難な状況にあるのなら、この行為にも納得できる。
 一か八か、やらぬ後悔よりはやる後悔という事だろう。

「イイヤ。ただ、私の計画を知た上でも貴方が協力してくれるという確信を得ただけの事」

 にやり。超の口元が歪む。

「成程。エヴァンジェリンか」
「貴方は察しが良すぎるネ」
「覗き見は感心しないぞ」
「……恐ろしい人ネ」

 飄々としているが、内心超は冷や汗を書いていた。
 言葉を使った戦い、というよりも駆け引きか。
 超にもそこそこの自信はあったのだが、この男には通じないと痛感してしまう。

「まぁ、バレているなら話は早い。私の目的は全世界に魔法を公開する事ネ」
「その第一段階が、武道会というわけか」

 これは別に士郎が鋭いわけではなく、単純に後ろのモニターにそういった趣旨の情報が写されているだけだ。

「そう。強制認識魔法はエヴァンジェリンが言てた内容でほぼ間違いはナイヨ。
 けれど、その下地は必要」

 それが武道会の役割。
 魔法使いたちを集め、戦わせ、魔法という存在の証拠を残しておく。
 ただの映像情報に決定的な証拠能力はないから、あくまで下地、強制認識魔法を発動する上での準備でしかない。
 が、必要なプロセスでもある。

「つまり、私は魔法の存在が知られるように戦えばいいわけか」
「一概にそうとも言えないネ。やり過ぎれば魔法先生たちの総力と戦うハメになる。
 決戦は儀式の時だけで十分ダヨ」

 まぁ尤も、と。

「貴方が居れば、魔法先生たちは問題ないカナ?」
「……対策は打たれている。以前のようにはいかないだろうが、いざ戦うとなれば私も札を切るだけだ」

 必要ならば、もう一度麻帆良の総力を相手にしよう、と。
 士郎は宣言した。澱みなく、かといって自信過剰というわけではない。
 己に出来ること、相手に出来る事をよく把握した上で、それが可能だと断じたのだ。

「ともあれ、貴方には今日の予選会を勝ち抜いてもらた上で、本戦に出場してもらう。
 本戦の詳しいルールや指示は、予選の後で行う事になるヨ」
「了解した」
「では契約ネ。皆」

 超の合図で、部屋に二つの影が入ってきた。
 葉加瀬と龍宮だ。龍宮はともかく、葉加瀬は物々しい武装を纏っている。

「たった3人で一協会に喧嘩を売ろうとはな」
「貴方も入れれば4人さ、士郎さん」
「大した違いはないだろう? 龍宮」
「そうでもないさ。本来なら私一人で敵対者を無力化するなんて予定だったからな。一人と二人では大違いだよ」

 そう、超と葉加瀬は儀式進行の為に手が空かない。
 露払いは龍宮が行う必要があった。
 その役目に士郎も加われば、彼女としてはとても嬉しいだろう。
 一人よりは二人。単純に考えれば戦力は2倍になるのだから。
 敵になったら、と一番シミュレートしていた相手が士郎だった為、龍宮は正直士郎の仲間入りで安堵している節もあった。

「さて。私と君たちとの関係はあくまで雇用関係ネ。が、同時に同じ先を目指す同士でもある……」

 超が士郎たち、彼女が同士と呼んだ者たちの中央に移動する。
 コツコツと、その足音だけが妙に響いた。

「我々の関係は薄弱ネ。ビジネスに信頼はあれど、結束はない。雇用関係が在る限り、我々は強い絆を育む事はできないヨ」
「おいおい。今更契約を反故にする、などと言い出すんじゃないだろうな?」
「人の話は最後まで聞くものネ、龍宮サン。確かに我々には薄弱な繋がりしかないが……目指す正義、希望は同じモノであると信じている」

 どうか、と超は一同を仰ぐ。

「そうだな。その点こそ私が最も重視するものだ。私は金など要らない。ただ、その目的に価値を見出したからここに居る」

 士郎の声はどこか重く、聞く者に不快な圧力さえ感じさせた。
 それが自分に向かっていないと分かっていて尚、気付けてしまう程に。
 不機嫌というわけではない。ただ単純に、その問いへの偽証は許さぬ――覚悟を問う重さがあるだけだ。

「故に、超鈴音。君に問おう。何故この計画を実行する?」

 何が君をそこまで突き動かしているのか、と。
 士郎は問うた。

「魔法にせよ、科学にせよ。技術は須らく開示されねば意味はない。一部の独占は、多くの弱者を産む。
 私はそれが許せない。人を、街を、国を、世界を救う術があるというのに、使わない人間が許せない」

 情念の篭った言葉だった。
 超自身の、何らかの過去を追想しているのだろうか。
 その顔は、悲嘆とも憎悪とも違う、複雑な感情で彩られていた。

 が。士郎は、その言葉に若干の嘘臭さを感じていた。
 信じたい気持ちは山々だが、その口上は綺麗過ぎるのだ。
 個人の分を超える願いを抱き、こんな大それた事を実行する程に……士郎は超に異質さを感じていない。

 得てして、そういった夢物語を語り、実行に移してしまう人間というものは器が大きいものだ。
 そして、それでも届かぬユメがある。
 その結果が分かっていても追い続ける事ができる者が、異質であるのは当然。

 その情念は本物だろう。
 喜怒哀楽の全て、愉悦から悲しみに至るまで、その思いは彼女自身から発した本物であるのに間違いはない。
 けれど、その情念と理想が食い違っている。
 口と心の乖離、と言うべきか。

 だからこそ、士郎は僅かに眉をひそめた。

「――とは言え、私にそこまで崇高な意識があるというわけでもないヨ。
 私自身の発端は、どこにでもある、今も世界で絶えず起こっているような悲劇の一つに過ぎない。
 けれど、士郎サン。覚悟だけは、貴方にも負けないモノがあると、私は自負しているヨ」

 そうして、超はまっすぐに士郎を見据えた。
 見つめ合う時間は、十数秒はあったろう。長いような、短いような、主観に左右される時間だ。
 少なくとも傍から見ている人間、特に葉加瀬にとっては、息苦しく長い瞬間だった。

 空気が張り詰めている。それは、いい。
 ただ、葉加瀬は超と士郎、その二人と自分の間にどうしようもない差、断絶を感じてしまった。
 追いつけず、追いつくべきではないナニカ。
 その、言語化できない曖昧な感覚に、彼女はどうしようもないもどかしさを感じる。

「よかろう。ならば私たちは確かに同志だ。我が剣を君に託そう。遠慮なくこき使ってくれたまえ」

 士郎は、そんな、懐かしい程に騎士らしい契約を成した。
 そこに特別な考えがあったわけではない。ただ、違わぬという宣誓に選んだ言葉がソレだっただけの話。
 しかし麻帆良に来る前までの士郎ならば、絶対に選ばなかったような言葉でもある。

 そしてそれは、一瞬前に感じた微かな疑惑が、完全に払拭されたから出た言葉でもあった。
 その、ほっと肩の力を抜き、崩した表情が、とても人間らしく映ったのだ。
 その本心からの願いが何なのかまでは、心の読めぬ士郎には分からない。
 けれど、その在り様は正しいと感じたから、士郎は宣誓した。
 士郎が同志に足ると認めた理由は、そんなちっぽけで感覚的なもの。
 だからこそ、行動だけは限りなく論理的なのかもしれなかった。

「クク、これで契約完了、ということカナ?」
「ああ。そう言えば、そろそろ予選会の時間じゃないのか? 準備なんかもあるだろう」
「その辺りは、もう準備が済んでいるヨ。しかし、確かに頃合いネ。龍宮サンと士郎サンは予選会に向かってくれるカナ?」
「了解した」

 士郎が動くのと、真名が動き出したのは同じタイミングだった。
 真名はあらかじめやることは聞き及んでいるのだろう。士郎と同じく淀みない歩調だった。

「それではまた会場で。そうそう、できれば二人一緒に会場へ向かわないように。怪しまれるような事は避けて欲しいネ」
「ああ、分かっている」

 予選会までは後30分というところ。
 もうすぐ、戦いが始まる。





◇ ◆ ◇ ◆






「ええーっ! いっせんまんえんーーっ!」

 明日菜の叫びが響く。まぁ、驚きも仕方ないだろう。
 麻帆良祭においては、賞金百万のイベントなど探せば幾つかあるのは事実だが、一千万ともなると別格だ。

「一千万あったら学費と生活費全額払えるかも……」
「アスナさんも出てみたらどうですか? 結構いけるかもしれませんよ」

 刹那が勧めるが、実際のところ優勝は難しいだろう。
 ネギや小太郎も出るわけだし、組み合わせの妙があるとしても他にも実力者がいないわけではないのだ。

「とにかく一千万だぜ! こりゃ優勝するしかねーよ兄貴! 撃て、雷の暴風!」
「おお、賞金に釣られて中々強そうなんが集まってきとるで。おもろなってきたわ!」

 一人と一匹はテンション上がりっ放しだった。
 ネギの小さな突っ込みも全く聞こえていないようで、思わずネギは苦笑してしまう。

「ショボイ大会じゃなくて良かったですね」
「おうよ! お前に男の戦いってモンを見せたるわ、チビ助!」

 のんびりと述べる夕映に、何があったのか気炎を上げる小太郎。
 その小太郎を後から諌める声が上がる。

「ダメだよー、年上のお姉さんに向かってそんな言い方しちゃ、コタロー君」
「うげっ、夏美姉ちゃん!?」
「うげって何よ、うげって。折角調べて来てあげたのに」
「んなこと頼んでへんわ!」
「あ、後でちづ姉も来るからね」
「……マジ?」

 演劇の衣装のまま駆けつけた夏美には、小太郎も弱いようだ。
 出会った時の事もそうだが、あれから小太郎は幾度となく彼女らの部屋にご馳走になりに行っている経緯もある。
 そう言った意味では、士郎もまた彼女らには頭が上がらないのだが。

「小太郎くん、置いてくよー」
「わ、待てやネギ!」

 慌てて駆け出す小太郎の後ろを、夏美と夕映が一緒になってのんびりと追いかける。

 会場は熱気に包まれていた。むさ苦しい男が密集しているのだから当然と言えば当然だが。
 そして何故か司会をしている和美が、慣れたもので前口上を述べ上げる。

「では、本大会の主催者より開会の挨拶を」

 大々的に超が紹介される。
 彼女を知らない人間からは子供かという声も上がるが、麻帆良の天才頭脳などという二つ名を持つだけあって有名らしい。
 そういった声は圧倒的少数だった。

「私が……この大会を買収して復活させた理由はただ一つネ」

 ピシッと指を立て、超はにこやかに笑う。

「表、裏の世界を問わずこの学園の最強を見たい。それだけネ」

 裏の世界、という単語に観衆はざわめいた。
 彼女の言っている本当の内容を理解できるものは少ないだろうが、僅かながらに存在するのも確か。
 そういった者たちは、他多数の人間に埋もれつつも、その言葉の意味を正確に読み取った。
 そして、彼女は更に決定的なルールを発表する。

「私はここに最盛期の『まほら武道会』を復活させるネ。飛び道具及び刃物の使用禁止。
 ……そして、呪文詠唱の禁止!
 この2点を守ればいかなる技を使用してもOKネ!」

「えっ」
「ちょ、ちょっとアレいいの?」

 ネギの驚きも、アスナの困惑も当然だ。
 だが、案ずる事はない。
 科学技術が発達し、映像記録でさえ完全には信じられない時代なのだ。
 呪文詠唱を必要とするクラスの魔法とは、威力が絶大であるが故に信じられない。
 一切の記録装置の使用禁止さえ徹底させる事ができれば、確かに可能ではあるのだ。

 尤も。それを含めて、超の思惑の内なのだが。

「あわ、あわわわわ。い、いいのかなー」
「ええやんか。ちょっとワクワクしてきたで、俺」

 震えるネギとは対照的に、小太郎はこの事態も楽しむつもりでいるようだ。
 確かに問題がある発言ではあったが、致命とまでは言えない。
 記録禁止の電子措置さえ徹底されているのならば、魔法先生側も強くは言えないだろう。

「フフ、中々面白い事になっているな」

 そう言って現れたのは真名、楓、古菲の武道四天王の三人だった。
 刹那も含めて、おそらくは女子中等部最強の4人が揃った事になる。

「面白い大会になりそーネ」
「一千万なら私も出てみるかな。なぁ楓」
「そうでござるなぁ……バレない程度の力でなら」

 三人とものんびりとしたものだが、その力は絶大だ。
 この麻帆良学園都市の中においてもトップクラスの力を誇るのだから、それも当然というもの。
 ネギがビビリ、驚くのも無理はない。

「コ、コタロー君、これはダメくない!?」
「フン、相手にとって不足はないわ。俺は負けん」
「負けんって少しは冷静になろーよ!」

 意気揚々と決意表明する小太郎だが、その背後からは楓に付いて来た鳴滝姉妹がじゃれついており、何とも締まらない。

「古老師は僕の拳法の師匠だし、コタロー君だって楓さんにコテンパンに負けたんでしょ?」
「アホっ、俺かてあれから修行は怠ってないわ!」

 と、言いつつも楓に関しては苦しいだろうな、と小太郎は予想していた。
 小太郎はあれから士郎と共に修行を重ねていたが、その時一緒に修行した事があるのだ、楓とは。
 高音・愛衣のコンビとも何度か修行したが、やはり楓はレベルが違う。
 今のまま、詠唱なしというルールでは小太郎の不利は否めない。
 後はどこまで本気で技を使ってくるか、というところだった。

「たっ、龍宮さんに至っては……」

 殺られるかも。
 とまあ、そのイメージはあながち間違ってはいないのかもしれない。
 実際に命云々というのを遊びに持ち出す人間ではないが、こういった戦いで手加減ができるような甘さもないのだから。

「アホ、お前の方が冷静になれ。たつみー姉ちゃんは拳銃使いなんやから、素手なら勝負は分からんわ」
「で、でも勝てる気がしないってゆーか。どう頑張っても僕とコタロー君は4位と5位だよー!」
「勝手に負ける事にすんな!」

 ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人は年相応だったろう。
 そんな二人を、一瞬で覚ます存在が、楽し気に声をかける。

「ほほう、4位と5位か。中々の自信だな、ぼーや。よもや、私の事を忘れてるんじゃないか?」
「マ、マスター?!」

 終わった、とこの時ネギは諦めた。小太郎でさえゲッと顔を顰める。

「約束は覚えているだろうな?」
「は、ハイっ。それは勿論!」

 ビシッと敬礼しながら答えるネギの身体は緊張で石のように堅い。
 ちなみに約束とは、ネギがエヴァンジェリンよりも先に負けたら最終日丸々一日デートに付き合う、というものである。

「ムリだよやっぱりこの大会ムリ!」
「け、けどあの人魔力封じられとんやろ。ほならただの10歳の女の子やん。いけるって」

 小声でヒソヒソと話すネギと小太郎だが、悪魔の耳は地獄耳、なのだろうか。
 しっかりとエヴァンジェリンには聞こえていた。
 何ならこの場でひき肉にしてやる――などと凄まれたら、流石の小太郎でも怖い。

「やあ、楽しそうだね。ネギ君たちが出るなら僕も出てみようかなー」
「タ、タカミチっ!?」

 気楽な声と対照的に、ネギは奈落に突き落とされたような気分になる。
 ネギにとってタカミチとは、幼い頃に焼き付いた強さの象徴。
 父親とはまた違った憧れなのだ。

 腕試しをしよう、と言われて嬉しくないわけではなかった。
 けれど、何もこんな場でしなくても……というのが正直なところ。
 明日菜が混乱して参加表明したり、とにかく場が騒がしくなる。
 けれど。

「おやおや。これは勢ぞろいだな」

 たった一人の男の登場で、何故かピタリと収まった。
 そう。衛宮士郎である。

「遅かったね、士郎」

 声をかけるタカミチだが、気楽そうな表情とは裏腹に、その声には普段の柔らかさはない。
 近くにいた明日菜が一瞬ビクリとしてしまうくらいに、その声には重みがあった。

「し、士郎兄ちゃん!?」

 まるでエヴァンジェリンと出会ってしまった時のネギのように、今度は小太郎が縮み上がった。

「どうした小太郎。随分と自信があったようだが、私が出たら困るのか?」
「んなッ……望むところや! 俺に当たる前に負けるんやないで!」

 そう啖呵を切るものの、その声には震えが混じっている。
 それも仕方のないことではある。小太郎にとって、衛宮士郎とは“勝てない”という敗北感の象徴だ。
 何をどうやっても勝つイメージが湧かない――そんな相手と戦う可能性を示唆されて、何の反応も示すなと言う方が酷なのだ。
 それを小太郎は認めることはない。けれど、声の震えだけは誤魔化しようがないのだ。

「さてな。それは保証しかねる」
「――――え?」

 小太郎は、信じられないように士郎を仰ぎ見た。
 その士郎の視線の先には、エヴァンジェリンとタカミチの姿がある。
 それでは。そう、それではまるで……。
 衛宮士郎が、あの二人に負けるかもしれない、と。そう、言っているようではないか。

 それを、小太郎は許せないと思った。
 自分が勝てない相手に、最強であって欲しいという願い。
 それはただの我が儘で、感傷でしかないだろう。しかし少年にとって、何よりも大切な事だった。

 だが、小太郎はその感情を持て余した。どう怒ればいいのか、それさえも分からなかったのだ。
 思えば士郎と小太郎の縁はまだ浅い。共同生活だって、始まってからまだ一月足らずだ。
 元々他人との付き合い方が下手な小太郎は、その感情を上手く言葉にできない。

 或いは、したくなかったのかもしれない。
 絶対に負けないでくれ、なんて。目標と反した願いは、何かを決定的に壊してしまうから。

 その結果がこれだ。反応に困り、困惑が口から出ることはない。
 ただ、呆然とした瞳を向けるだけ。そして、それに気づく者は誰もいない。
 いや、一人だけ、その無反応を訝しんだ者はいた。

「小太郎くん……?」

 夏美だ。その目に光がない事に気付けたのは、一番近くに居たからというだけではないだろう。
 戦士としての小太郎を一番理解しているのは士郎かもしれないが。
 少年としての小太郎を一番理解しているのは、夏美と千鶴なのかもしれない。

「ようやく来たか、衛宮士郎」
「来てはいけなかったかな?」
「いいや。煩わしいのは事実だが、貴様が来ない方が余程問題だ」
「エヴァ、それはどういう――」

 士郎とエヴァンジェリンの会話をタカミチが遮ろうとするが、唐突に予選参加者への集合案内が響いた。
 ぞろぞろと参加者と見学者たちが移動し始め、辺りが再び騒然となる。

「さて、そろそろ私たちも行くか。いきなりタカミチとは当たりたくないものだが」
「それは遠回しに、私ならば倒せると言ってるんじゃないだろうな?」
「怖いな。うん、エヴァンジェリンとも出来れば戦いたくない」
「取ってつけたように言うな!」

 別に、二人が意識的にタカミチを無視したわけではないのだろうが、結果的には同じこと。
 士郎とエヴァンジェリンは、まるで長年の親友のように軽口を叩きながら会場に向かう。
 取り残されたタカミチは、一抹の寂しさを覚えた。

「あの二人、あんなに仲が良かったかな」

 万が一にも二人が手を組む事はない、と思いたい。
 が、どうにもタカミチには嫌な予感が頭から離れなかった。

 もしも二人が手を組み、何かを画策しているのなら。
 二人の友として、自分は止める事ができるのか。
 その自信が、どうしてもタカミチには持てない。

 エヴァンジェリンには、確かに同級生としての親しみはある。
 士郎には、友としての気安さがある。
 けれども、それと尊敬、己より上だと認めずにはいられない偉大さに対する想念が変わるものではない。

 しかし。

「取り敢えず、仲がいいなら悪い事ではない、かな」

 そして、タカミチも二人とネギたちを追って会場へ歩いていった。
 そんな甘さも、己には必要なのだと受け入れて。





◇ ◆ ◇ ◆






 予選会は滞りなく行われた。
 力あるものはその力を隠し、順当に勝ち上がる。
 或いは、そういった実力者同士が予選で当たってしまわないよう、ある程度超が操作していたのかもしれない。
 士郎や龍宮が実力で勝ち抜けないとは思っていなくとも、ネギはそうもいかないのだから。

 そして、本戦の組み合わせが発表される。

「ええーっ!?」

 驚きの声はネギだ。殆ど青ざめた表情で対戦表を見ている。
 その対戦相手であるタカミチは、どこか嬉しそうだ。
 けれどその下、ある対戦組を確認した時、ネギとは違った意味で凍りつく。

「…………」
「……チッ」

 衛宮士郎VSエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。
 その二人の険悪な空気に、ピリピリと肌を焦がしながらも、タカミチは小さく安堵の息を吐いていた。

 あの二人とは、しばらく戦わなくても良さそうだ、と。






エヴァ「ハァ? 私と衛宮士郎が仲良しだと? 気色の悪い形容をするな」
士郎「全く同意だな。我々が仲良く見えるのならば、眼科に行った方がいい」
エヴァ「いや精神科だな。一度アタマを精密検査してもらえ」
士郎「そうだな。CTでも撮ってきた方がいいんじゃないのか?」

タカミチ「やっぱり仲イイだろ、二人とも……」

(拍手)
 




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後書き

フタツメノタビが更新していたのでテンション上がりまくりで、突っ走って書き上げました。
ちなみに現在56話は3割ぐらいの文量は書いていたり。
しかし、そこで詰まって今悩んでいるところです。

それと、56話は偽物じゃなく真面目なものを用意しますんで。
エイプリルフールのアレは忘れて下さい。
ただまあ、これから大学も始まるんで、やっぱり内定出るまではそうそう時間も取れないでしょうねぇ。
来週は最終面接もありますし。

それではまた次回。

2010.04.04 | URL | 夢前 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

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2010.04.04 | | # [ 編集 ]

嘘予告実現キターーーーーーー!!!
士郎VSエヴァか……
やはり嘘予告や刹那戦の時のように精神世界でバトるのだろうか?
そして小太郎の嫉妬(?)に気付いた夏美……
同居してなくても順調にフラグは立ってるようですなw

2010.04.04 | URL | ぺこぽん #- [ 編集 ]

Re: タイトルなし

中身については、まぁ続きを楽しみに。肝心の戦いはまだ先になりますが。

コタと夏美のフラグに関しては、一応今番外編を書いている途中(書き始めてはや一月)なんですが、果たして公開するのはいつになることやら。
ウチの小太郎は高音にまでフラグを広げる可能性がありますので。まだそのシーンは書いてないけど。

2010.04.04 | URL | 夢前 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

シロウ対エヴァかぁ…
まぁほんと精神世界でやるぐらいしかないですよねー
いっそこっそりルールブレイカーとかで呪い解いちまったり…
はないか…
ここの二人は仲悪いしなぁ…
まぁ次が更新されるまでは、遠坂のうっかりが伝染してやっちまったZEなんて展開とか勝手に期待してみたりして待ってよう…
あぁ…相性いい二人だとは思うんだけどなぁw

2010.04.04 | URL | じせき #USanPCEI [ 編集 ]

Re: タイトルなし

よっぽど特殊ルールじゃない限り試合にならないよね。
封印解けたらエヴァが強いし、そのままだと士郎が強いし。
ウチの二人は確かに仲が悪い(自己診断)ですが、相性はいいんだと私も思ってます。
そして次回も下準備で終わる、かも。

2010.04.04 | URL | 夢前 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

56話への希望

エヴァがカレイドステッキをつかいますように
エヴァがカレイドステッキをつかいますように
エヴァがカレイドステッキをつかいますように
エヴァがカレイドステッキをつかいますように

2010.04.04 | URL | アストレア #wa5wuvhY [ 編集 ]

Re: 56話への希望

そうだよ、何やってんだよ俺。
高音じゃないよな。やっぱエヴァだよな。あのゲテモノステッキとのコンビは。
あの容姿なら魔法少女と言い張っても通用するよ。

うん、俺が見てええええええっ!!
誰か書かね?

2010.04.04 | URL | 夢前 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

士郎とエヴァ、どうなるんだろうなぁ、と思いつつ……

拍手の掛け合いにお茶吹いた
どーしてくれるw

2010.04.04 | URL | ぬ #oIRPJsuo [ 編集 ]

Re: タイトルなし

まあ、所詮は試合であり殺し合いではありませんから、どうなるという程でも……ない、のかな。
拍手の掛け合いは3分ぐらいで考えた甲斐があったかw

2010.04.05 | URL | 夢前 #qiIB0A1Q [ 編集 ]

エヴァvs士郎・・・緒戦からクライマックスですね!
しかし戦っている様子を傍から見ると“幼く華奢な少女VS強面の筋肉男”であることに今更ながら気が付いた。

アニメや漫画なら絶対士郎が勝っちゃいけない画だね・・・・・・

2010.04.15 | URL | m.k #TWE6/uVY [ 編集 ]

Re: タイトルなし

まあねぇ……ネギVSタカミチでタカミチが勝つよりマズイよね。完全に悪役だよね。
でも下手に手加減したらエヴァの方が絶対怒るだろうしなー。
その辺は絵のない小説だからこそ、という事で。いや、まぁどちらが勝つとかまだ分かりませんが。
というか、嘘予告通りになったら士郎が負ける気がしないでもない。

2010.04.15 | URL | 夢前 #qiIB0A1Q [ 編集 ]


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